第81話 新たなる白き災厄と救いの光
_:(´д`」∠):_「うわーん!忙しくて更新が間に合わないよーなろうえもーん!」
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「なんという事じゃ。まさかアームドキメラによって強化された魔人を倒すとは……」
アンデッドとなって数百年の長きを生きて来た儂じゃが、この様に強力な力を持つ者を見たのは生まれて初めてじゃ……もう死んどるけど。
あとアンデッドになってから外出たことないけど。
アームドキメラは宿主を飛躍的に強化させる非常に強力なキメラ。確かに魔力を大量に消費する事から、今回の戦いでは半ば魔人の自滅にも近い結末となったが、それでも戦いが始まった直後では魔人の魔力には十分な余裕があり、アームドキメラの力を十全に発揮しておったはずじゃ。
だというのに、あの小僧は圧倒的な力量差で魔人を瞬殺しおった。
その姿はまるで、かつて存在したと言われる伝説の『英雄』を思わせたほどじゃ。
伝説に曰く、山ほどの魔物を砕き、海底深く隠れた魔獣を貫き、天空の彼方に逃げた魔物を一矢で仕留めたと謳われた『英雄』を。
今も実在するとすれば、この小僧の様に出鱈目な存在だったんじゃろうなぁ……
いやさすがにそんな出鱈目な存在がそうポンポンと現れる訳が無いか。
それよりも儂にはするべき事があるではないか……
そう、魔人が作りだしたキメラから白き災厄の欠片を回収し、この場から、あの小僧から逃げだすという重要な役目が。
あの小僧は躊躇いなく白き災厄の欠片を宿したキメラを切り捨てた。
魔物の大量出現の調査にきたと言う事からも、儂の研究を容認する可能性は低い。
じゃがこの研究は儂が、儂等が人生を捧げてまで続けてきた大事な研究じゃ。
絶対に邪魔されるわけにはイカン。
幸いあの小僧は倒した魔人の方に意識が集中しておる。
今の内に白き災厄の欠片を回収じゃ!
儂は目立たぬようにそっとキメラの下へと向かった。
そして、見てしまった。
白きなんか良く分からんモフモフした生き物がキメラを貪り喰らっている光景を……
「ってなんて事してくれとるんじゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
お前ぇぇぇぇぇ! なに勝手に食っとるんじゃぁぁぁぁ!
しかも核になる心臓部を真っ先に喰うとか何考えとるんじゃぁぁぁぁ!
真っ二つに切られたから美味しそうなところを選んで喰ったとか言いたいんかぁぁぁぁぁっ!!
儂は好きな物は最後に食う方なんじゃぁぁぁぁぁ!!
「ん、どうかしました?」
しまった! 小僧に気づかれてしもうた!
こうなったら急いで白き災厄の欠片を……
その時じゃった。突然目の前の白いモフモフが不気味なうめき声をあげだしたのじゃ。
「ギュヴヴヴッ‼」
「こ、これは一体!?」
目の前のモフモフの体がみるみる間に膨れ上がり、なんと巨大な魔獣の姿へと変化していった。
「なっ!?」
儂は驚いた。
大きくなった事にではない。
変わり果てたその姿に、その忌まわしき姿に見覚えがあったからじゃ。
「ば、馬鹿な、その姿は……っ!?」
間違いない、この姿はまさしく白き……
「ヴァァァオオゥゥッッッ!!」
魔獣が雄叫びを上げて小僧に飛び掛かる。
「い、いかん! 逃げろ小僧!」
思わず小僧に声をかけてしまったが、既に魔獣は小僧の目と鼻の先。
魔人を倒して気を抜いている小僧ではその攻撃を避ける事など到底かなわぬ。
ゴキャリッ‼
聞くに堪えない凄惨な音が響く。
なんという事じゃ、魔人を相手に互角以上の戦いを繰り広げていたあの小僧がこうもあっさりと……
いや、それも当然か。相手はあの白き……
「びっくりしたなぁ」
びっくり、した……?
あれ? 今聞こえる筈の無い声がした様な気が?
「お前モフモフだよね? 大きくなったなぁ、成長期?」
そんな訳あるか!
儂は思わず口に出しそうになったツッコミをかろうじて飲み込む。
だがどういう事なんじゃ!?
何故小僧の声が聞こえる!?
まさか小僧の幽霊!? いやお化けは儂の方なんじゃが。
「ギュ……」
そして何故か魔獣の体が震え始めたと思ったら、次の瞬間、魔獣の巨体が猛烈な勢いでひっくり返った。
な、何が起こっておるんじゃ!?
「ギュゥーンギュウーン!!」
しかも信じられん事に、魔獣は怯えた獣の様に腹を見せ、あまつさえ尻尾を振っておるではないか。
よく見ると魔獣の顔面は何かにぶつかったかのように見事にへこんでおった。
そして魔獣の向こうには、あの小僧が拳を突き出した姿勢で魔獣を見おろしておった。
まさかこの魔獣、あの小僧の拳一つでひっくり返ったと言うのか!?
あ、ありえん! 一体あの小僧は何者なんじゃ!?
そしてあの小僧は何故この魔獣を連れておったのじゃ!?
今も魔獣は小僧に媚びる様に尻尾を振ってすり寄っておる。
あれほどの巨体と力をもってしてもあの小僧には勝てぬと言うのか!?
お前が、白き災厄の末裔が!?
「まさか……そう、なのか?」
その時儂はある一つの結論に至った。
あの小僧とこの魔獣の関係。
それは儂らが目指した夢が実現した姿なのではないのか?
すなわち、あの白き災厄を人の手で従えるという事。
「なんという事じゃ。儂が何百年もの長きにわたって地下に潜っていた間に、地上の人間は白き災厄を従える事に成功しておったのか……」
我ながらなんとも愚かしい事よ。
よもや自分達の悲願が既に叶っている事も知らずに研究を続けていたとはな。
「あの小僧は儂と同じ白き災厄の眷属を操る術を身に着けておったのじゃな」
ふ、ふふ……あの恐ろしい魔獣が人の小僧に腹を撫でられて尻尾を振っておるわ。
成る程、あそこまで魔獣を従順に従えさせる事が出来るのであれば、儂の研究成果などとるに足らぬ児戯という訳か。
そうこうしておったら魔獣の体がみるみる間に元の大きさに戻っていった。
おそらくはあの魔獣が取り込んだ白き災厄の欠片の力が失われたからであろう。
あっ漏らしおった。
コリャ、誰が床を掃除すると思っておるんじゃい!
だがしかし、ここまで見事に従わせられては嫉妬も出来んわい。
「むっ?」
ふと、体の感覚が希薄になっていく事に気づいた。
同時に今まで必死にしがみついていた執着が驚く程どうでも良くなってきた事にも気付く。
ああそうじゃな、目の前には儂等が目指した理想の到達点がある。
ならばもう、生に、研究にしがみつく理由もないか。
我等は、人は、白き災厄の脅威に怯えずに生きていく事が出来る様になったのじゃからな……
『ようやくこっちに来る気になったか』
「っ!?」
その時、肉体から解き放たれつつあった儂の耳に聞こえる筈の無い声が響いた。
『まったく、待ちくたびれたぞ』
間違いではない、確かに聞こえる。
あの懐かしい声が。
『ホント所長は放っておくといつまでも働き続けるんスから』
声は一人ではなかった。
「……なんじゃお前等、揃って儂が帰るのを待っとったんか」
『これが終わったら一杯ひっかけてくんでしょ所長?』
「うむ、そうじゃったな……」
光が見える。
そしてその光の先には懐かしい顔ぶれが待っていた。
「久しぶりに、派手に騒ぐとするか」
『ああ、それが良い。彼女も待っているぞ』
「おお……」
懐かしい顔ぶれの奥から現れたのは、儂が助ける事の出来なかった大切な人だった。
『お帰りなさいあなた。さぁ、皆で一緒に帰りましょう』
「うむ、うむ……本当に待たせたなぁ」
そうか、お前も……待っていてくれたんじゃな。
ああ、これでようやく全ての未練が無くなった。
小僧、感謝するぞ。
お前のお陰で儂は全てのしがらみから解放された。
「あれ?」
小僧が成仏しかけている儂の存在に気づく。
そして驚いた顔でこちらに駆けて来た。
「面倒をかけたな小僧。じゃがもう心配せんで良い。最早この地上に儂の未練は……」
「ちょっと待ったー!」
その時、小僧の手が肉体から解放されかけていた儂の霊体の脳天を掴んで、無理やり肉体に叩き戻した。
『『『ええぇぇーーーーーぇー!?』』』
肉体に叩き戻されて仲間達の声が一気に遠くなる。
「ガフッ!? ちょっ、儂今昇天しようと思っとったんじゃよ!? 普通邪魔しなくない!? っていうか今どうやって邪魔したんじゃ!?」
「別に昇天しても良いですけど、ちゃんと詳しい説明を責任者の方にしてからにしてください」
「何じゃそれー!? そんな事で儂の成仏を邪魔したんかー!?」
「いいから、ちゃんと、今回の事件の説明をしてから昇天してくださいね!」
「とほほ、とんでもない小僧に関わってしまったのう……」
こうして儂は成仏の機会を阻止されたばかりか、小僧に引きずられていずこかへと連れていかれる事となったのじゃった。
お前達、もう少し待っててくれよー。
◆
クハハハハッ、素晴らしい!素晴らしく力が溢れて来るぞ!
我の前に現れた歪な魔物をご主人が倒した時、我はその内に眠る何かに強く惹かれた。
そして獣の内に眠っていた何かを喰らった途端、我の体内に凄まじい力が巡ってきた!
この力、そこに転がっている羽根付きなど比較にならぬほど素晴らしいぞぉぉぉぉ!!
そしてこの力を取り込んだ事が原因なのか、我の体がみるみる間に成長していくではないか!?
素晴らしい! この体、これまでの我の数十倍の力を秘めているぞ!
いや違うな、これこそが我の真の力なのだ!
この獣の肉は我の力を目覚めさせるきっかけに過ぎなかったのだ!
ふはははははっ! これならばご主人、いや人間の小僧などもはや恐るるに足らず!
我が血肉となるがいいわぁーっっ!!
「※※※!?」
ベチン!!
ギャァァァァァァァァッ!?
凄まじい威力のカウンターが我の眉間を襲った。
凄く痛い! とても痛い! もうホント痛い!
「※※※※※※※※※※」
あっ、ヤバイ、ご主人が怒ってる。分かる、超怒ってる。
は、腹見せっ! 腹見せですよ!
ほーらご主人、我ご主人に叛意なんてありませんよー。
超従順ですよー。
ワッシャワッシャ。
オフンッ、あっ、そこ良い! めっちゃ気持ちいい!
キュフゥ、キュフゥン……
何とか底抜けの愛らしさをアピールする事で我はご主人の怒りを鎮める事に成功した。
と、その時であった。
ぷしゅぅぅぅぅ……
あ、あ、力が抜けていくぅぅ……
なんという事でしょう、我は元の姿に戻ってしまいました、アフタービフォー。
うう、儚い夢であった……
(:3 」∠)アンデッド「あっ、あっ、あっ、成仏の光がぁー!」
(:3 」∠)お仲間『ファイト』
(:3 」∠)元スーパーモフモフ「わ、我の凛々しい姿が……キューンキューン」
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