第75話 聖女と黒死の邪眼
(:3 」∠)「すみません、投稿が遅れました」
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「負傷者の選別を急げー!」
冒険者ギルドの職員さんの指示で負傷者が一か所に運ばれていく。
キャンプ場の救援が間に合った僕達は、急ぎ追いついてきた後続の部隊と合流して負傷者の治療を行う事にした。
でも負傷者の数は多い為、傷の深さに分けて患者を選別していく。
これはランクの高い回復魔法を使える術者が重傷者の回復に専念出来るようにする為だ。
「聖女様、よろしくお願いします」
「ええ、お任せください」
ギルドの職員さんによって集められた重傷者を高位の僧侶であるフォカさんが治療していく。
「ハイヒール」
フォカさんのかざした手から温かな光が立ち上り、重症患者の傷を治療していく。
ここからでは見えないけれど、重症患者と言うからには相当な傷なんだろうな。
癒しの光に照らされたフォカさんの姿は神々しく、治療を受けていない人達までフォカさんの姿に見惚れている。
「ああ……痛みが無くなって来た……」
さっきまで青白い顔をしていた重傷者の頬に赤みが戻り、呼吸も安定してくる。
「これで傷口は塞がりました。ですが失った血は戻りませんので、安静にして血になるモノを食べさせてあげてください」
「分かりました。治療の済んだ者はすぐにテントに戻って休ませろ!」
「では次の患者さんを」
フォカさんの粛々と治療を行う姿は、まさに聖女と呼ぶに相応しい姿だ。
「さて、フォカさんに負けない様にこっちも治療を開始するかな」
フォカさんが重傷者の治療を担当していたので、僕は比較的傷の軽い負傷者の治療を担当していた。
「軽傷者はこれで全部だ……というか、これだけの人数を君一人で治療するのか?」
負傷している冒険者さんが不安そうに僕を見る。
まぁ確かに僕はまだ15歳だからね。
実力を疑問視されるのは仕方がない。
「大丈夫ですよ。確かにまだまだ未熟者ですが、軽傷者の治療をするくらいなら僕でもできます。他の方々には重い怪我をされた方達を治療してもらわなければいけませんから。それに回復魔法で治療するんですから、年齢は関係ありませんよ」
「……まぁ、それもそうか」
冒険者さんも納得してくれた事だし、治療を開始するかな。
「じゃあ皆さんの治療を開始しますね。ハイディスタントヒール!」
僕は範囲回復魔法で集めた人達を纏めて治療する。
重傷者ならともかく、軽傷者なら範囲回復魔法でまとめて治療した方が楽だからね。
「おお、傷が治っていくぞ!」
「おいおい、これだけ離れている俺達の傷まで治っちまったぞ!?」
「凄いな、ここに集めた連中の傷を全部治しちまったのかよ!?」
傷が治った冒険者さん達が興奮した様子で声を上げる。
「ただの範囲回復魔法ですよ。それなりに慣れた回復魔法の使い手ならだれでもできますよ」
「マジかよ!? うちの僧侶はこんな魔法使えないぞ!?」
「おいおい、そんな話初めて聞いたぞ?」
あれ? なんだか冒険者さん達の反応がおかしいな。
範囲回復魔法くらい僧侶なら基本中の基本だと思うんだけど。
「え? 何!? どういう事!?」
そしたら向こうで重症患者さんを治療していたフォカさんが驚きの声を上げる。
フォカさんだけじゃない、他の負傷者を治療していた僧侶さん達もなにやらざわめいている。
「どうかしたんですか?」
「突然目の前の患者の傷が治っちゃったのよ! まだ回復魔法を掛けていなかったのに!?」
「我々もです。まるで最初から怪我などしていなかったかのように……」
あー、こっちの範囲回復魔法でそっちの患者まで回復しちゃったのか。
でもそっちに居るのは重症患者や軽傷以上の患者だったと思うんだけど、軽症患者も混ざっていたのかな?
「多分比較的軽傷だった患者さんがこっちの範囲回復魔法の余波で治ったんだと思います」
「範囲回復? な、何だそれは?」
「余波って……一体どんな回復魔法を使ったの!?」
あれ? 何で皆範囲回復魔法を知らないんだろ?
「一定範囲内に居る全員を治療する回復魔法です。回復量は弱まりますが、人数制限が無いので多数の軽症患者がいる場合にはこちらの方が効率的なんですよ」
「うそ……そんな回復魔法、聖都でも見たことが無いわ」
おっかしいなぁ、通常の回復魔法を覚えたら、範囲回復魔法もすぐに教えられると思うんだけど。
「凄いわ貴方! こんな凄い回復魔法が使えるなんて、きっととても信心深いのね!」
なんだかどこかで聞いた事のあるセリフを言ってくるフォカさん。
そういえば以前にもノルブさんが同じような事を言っていたなぁ。
「回復魔法は神への信仰心が深い程強力な魔法が使える様になる。貴方はその若さで高司祭にも負けない程の信仰心を持っているのね」
あー、フォカさんもそういう風に教えられた僧侶なのか。
元々回復魔法は特別な力でも何でもないんだけど、一部の僧侶達が傷を癒す回復魔法は神から与えられた神聖な力とか言い出したから、前世でも同じように思っている人が結構いたんだよなぁ。
「この依頼が終わったら是非聖都に行って洗礼しましょう! 私が直接司祭様に貴方を紹介するわ!」
受け入れると面倒事に関わるのは間違いないし、回復魔法の理論を説明しても睨まれるだろうから、ここは適当に流しておこう。
「僕みたいな子供の信仰心なんて大したことないですよ。それよりも僕はまだ治療してない負傷者が居ないか見回ってきますね」
「あっ、ちょっと待って!」
「フォカさんは重傷者の治療がんばって下さいねー」
「え? あっ! そうだったわ。次の患者さんを連れてきて」
という訳でさっさと逃げよう。
とりあえず、フォカさんが患者を放っておいて信仰とかなんとかに熱中する人でなくて良かったよ。
◆
「一体どこに行ってしまったのかしら?」
私はフォカ、神に仕える僧侶です。
巷ではSランク冒険者となった私を聖女と呼ぶ人達もいますが、私はごく普通の僧侶です。
私が冒険者になったのも、聖都での権力争いに明け暮れる司祭達を見限り、自分の手と足で人々を救おうと決意したからです。
そんな私は、この地にてとても素晴らしい男の子に出会いました。
その子はまだ年若いのに、私と同じ最高峰の冒険者である事を示すSランクの冒険者でした。
さらにその子は世界中の僧侶達が集まって修行する聖都でも見たことの無い様な広範囲の人々を治療する不思議な回復魔法を操る少年でした。
自画自賛する訳ではありませんが、私も相当に修行を積んできた身、そんな私でも見たことの無い回復魔法の存在には本当に驚かされたのです。
何故なら回復魔法とは、神より与えられた癒しの光を傷ついた者に捧げる事で治療する奇跡だからです。
つまり治癒魔法を使うものの手から、直接傷口に癒しの光を当てる必要があるのです。
だというのに、あの少年は治癒の光を傷口に当てる事無く治療を行ったのです。
本人は軽傷だから治せたと言いましたが、長年負傷者の傷を見て来た私が重傷だと判断した傷まであっという間に治ってしまったのです。
この出会いに私は歓喜しました。
これほどの癒しの奇跡は私の人生において初めての出会いだからです。
この子はきっと神に愛された子なのだと私は確信しました。
そしてこの子もまた神を深く敬愛しているのだと。
でなければこれ程の奇跡を行使できるはずがありませんから。
結局あのあと残りの負傷者の治療をしようとしたものの、既に他の負傷者も全員あの子の離れた場所に居る人間を治療する回復魔法で傷が治っていたの。
その事を確認した私は、さっそくあの子を洗礼に誘おうとしたのだけれど、その姿はどこにも見つからなかったわ。
「もしかして迷子になっているのかしら?」
ちょっと心配ね。
周囲では同行してきた冒険者やギルドの職員が壊されたキャンプ設備や、荒らされた備品のチェックを行っていて、あの子がどこに居るのか知っている人は居なさそうね。
キャンプを守る壁の上には近づく魔物を牽制する冒険者や探査魔法で魔物の群れが接近してこないか警戒する術者がいるから、外に抜け出したりは出来なさそうなのは良かったわ。
数時間前に魔物の大規模襲撃があったから、皆真剣そのものね。
そして私達Sランクチームを引き連れてやって来たギルドの幹部であるワンダさん達は、討伐された魔物の検分をしているみたい。
「これまでの報告になかった魔物が居るな」
「新種か?」
「いや、ギルドの資料にある魔物だが、これまで鉱山の内外では発見されたことの無い魔物だ。おそらくは洞窟内の未探査の区画か、例の遺跡に生息していた魔物だろう」
彼等は魔物の種類から、遺跡と洞窟の情報を解き明かそうと議論を重ねている。
遭遇する魔物の種類が分かれば、それだけ危険が減る訳だから、彼らも真剣ね。
「洞窟から出て来た魔物がどれだけ鉱山の中を徘徊しているか気になるな」
「入り組んだ坑道に迷い込んでいた魔物が後ろから襲ってきたらたまらんからな。偵察部隊の報告次第では、まず鉱山内の魔物のせん滅を第一に考えた方が良いだろう」
真面目にお仕事しているし、邪魔しちゃ悪いわね。
そうして私は再びレクス君を捜すべくキャンプの中を歩いていたのだけれど、不意に私を呼ぶ声が聞こえた。
「聖女さまー!」
「はい、何かしら?」
正直言って、この聖女と言う呼び名は恥ずかしいから止めて欲しいのだけれど……
「大変です! 偵察部隊がヘルバジリスクの黒死の邪眼の被害に遭いました!」
「ヘルバジリスク!?」
聞いた事があるわ。
Sランクの危険な魔物で、確かバジリスクの上位種なのよね。
曰く、通常のバジリスクと違いその体は闇のように黒く、その瞳からは石化の邪眼ならぬ黒死の邪眼と呼ばれる特殊な邪視で攻撃してくる魔物だと。
そして、その黒死の邪眼にかかった者は一切の治療を受け付けない最悪の呪いだとも。
「他の僧侶達の解呪魔法では歯が立たず、どうか聖女様のお力をお貸しいただけませんか?」
「分かりました」
そういう事なら手を貸さなければいけませんね。
元々私が冒険者になったのも、どこかで誰かが助けを求めた時にすぐに手を差し伸べれる様にと考えたからなのですから。
「案内します」
私はギルドの方に案内され、件の患者の下へとやって来ました。
患者さんの傍には何人もの僧侶が居たけれど、皆治療に失敗した事で俯いていました。
「聖女様だ!」
「聖女様ならなんとかしてくださる筈!」
皆が私の到着に期待の眼差しを向ける。
正直私もヘルバジリスクの呪いの解呪なんて初めてなんですけれどね。
「聖女様、こちらです」
私は内心の不安を飲み込み、患者に向き直る。
「こ、これは……!?」
呪いに侵された患者を診た私は、その異様な姿に思わず声を上げてしまう。
地面に横たわっていた患者の体は、その半身が黒く染まっていたのだから。
「これが……ヘルバジリスクの黒死の呪い」
噂では、ヘルバジリスクの呪いにかかった者は全身が闇に染まって死ぬと言われている。
と言う事はまだ黒く染まっていない部分が全部黒くなった時が刻限と言う事ね。
「ともかく、解呪の祈りを捧げてみます」
私は患者の前に跪き、解呪の祈りを捧げる。
けれど、どれだけ祈りの光を灯そうとも、目の前の患者の肌は元の色を取り戻そうとはしなかった。
それどころか、益々体が黒く染まっていくばかりだった。
「まさか聖女様でも駄目なのか!?」
私の解呪の魔法が効果を成さず、周囲で見ていた人達がざわめく。
「こうなれば、私の知る全ての治癒呪文を試してみます」
もしかしたら、黒死の邪眼は呪いではないかもしれない。
過去にも思い込みが原因で誤った治療を続けた事で症状が進行して重篤化した患者や、最悪治療が間に合わずに死んでしまった人達を見た事がある。
私はそんな経験から、これが呪いでない可能性を考慮して様々な治療をほどこしてみた。
麻痺治療、病癒し、毒消しなど様々な治癒魔法を患者にかけていく。
けれどどんな魔法を唱えても、負傷者の肌が元に戻る気配はなかった。
「そ、そんな……」
万策尽きた私は、他の僧侶達と同じように治療の手を止めてしまう。
「そんな、聖女様でも治療できないなんて……」
「もしかしてこの依頼、かなりやばいんじゃないか?」
「バカ、そんなの最初からわかってただろ」
周囲の人達の空気が不安と恐怖に包まれていく。
恐らくこの中で最も治癒の力が優れた私でも治療できないとあれば、皆が動揺するのも無理からぬことね。
「ぐううっ!」
その時、目の前の患者がひと際大きく苦しみだした。
「いけない、もう限界なんだわ!」
見れば患者の肌は殆どが黒く染まっている。
これ以上はもう患者が保たない。
「クソッ! 駄目なのかよ!」
もうどうにもならないと皆の心が絶望に包まれた、その時だった。
「あれ? どうしたんですか?」
そこに現れたのは、先程の少年レクスくんだった。
「あれ? この人……」
レクス君が患者の黒く染まった肌を覗き込む。
……っ! いけない! こんな少年に残酷な光景を見せてはいけないわ!
「駄目よレクス君! すぐにここから離れて!」
「ヘルバジリスクの黒死の邪眼ですね。早く治さないと、エルダーヒール!」
ふとそんな事を言ったレクス君の手のひらから、信じられない位神々しい光が生まれる。 そして光は患者の体を包むと、瞬く間にその身を侵食していた黒い呪いを消し去ってしまった。
「…………え?」
あれ? 今、呪いが、消えた様な……
私は、もう一度患者を診る。
私だけじゃなく、周囲の皆も患者を凝視している。
うん、肌の色は戻っているわね。
黒くない。
呼吸も落ち着ている。
「「「「「……ええっっっっっ!?」」」」」
ちょ、ちょっと待って!?
どういう事!? たしか今この患者は死ぬ直前だったわよね!?
「ど、どどどどういう事!? どうやって治したの!?」
信じられない光景を見た私達は、居てもたってもいられずレクス君に質問する。
「え? 普通に複合回復魔法で治療したんですけど?」
ふくごうかいふくまほう? なにそれ?
「へルバジリスクの黒死の邪眼は、複数の状態異常を同時に発生させるものなんですよ。呪い、毒、麻痺といった具合に。しかもこの効果は一つだけを治療してもすぐに元に戻ってしまうんです。だから同時に全部治療する必要があるんですよ」
「あるんですよって、そんな簡単に……」
「ヘルバジリスクの黒死の邪眼って治療出来たのか……」
「はい、複数の状態異常だと言う事が分からなかった昔は大勢の死者が出たそうですが、今は複合回復魔法で容易に治療する事が出来る様になりました」
待って待って、そんな魔法知らないし、全然容易じゃないと思うの。
そもそも何で貴方はそんな事を知っているの!?
私はたまたま近くを歩いていた同じSランクで天魔導と呼ばれる魔法使いのラミーズを見る。
彼はただ強力な魔法使いではなく、多くの遺跡を巡り古の魔法を蘇らせる学者でもあったから。
けれど彼は首と手を横に振って初めて聞いたとジェスチャーをする。
つまりこの子は、彼ですら知らない事を知っていると言うの?
「その複合回復魔法というのがあれば、もうヘルバジリスクの邪眼を恐れる心配はないんだな?」
他の冒険者達が安心した様子でレクス君に話しかける。
「ええ、でも複数の術者が同時に複数種類の回復魔法を唱えても治療は可能ですよ」
「本当か!? よし、治癒魔法の使い手がどの回復魔法を使えるか直ぐにリストを作れ! そして全種類の回復魔法の使い手を最低二人はキャンプに待機させろ!」
「分かりました!」
レクス君の説明を聞いたワンダさん達がすぐに動き出す。
でも私はそれどころじゃなかった。
だって、目の前のこの子はきっと……きっと。
「貴方こそ癒しを司る神子よ! レクス君!」
そう、この子は神が遣わした癒しの神子に違いないのだから!
「え? ええ?」
「素晴らしいわ! 世が乱れた時に神が遣わすと言われる神子に出会う事が出来るなんて!」
私は感動のあまり思わずレクス君を抱きしめてしまう。
「むぶっ!?」
「やっぱり貴方は聖都で洗礼を受けるべきよ!」
「もがっ!? むがっ!?」
興奮した私は我知らずレクス君を抱きしめる腕に力を込めてしまう。
「あ、あのガキ! 聖女様の胸に埋もれてなんて羨ましい!」
「クソ! 俺が代わりたいくらいだぜ!」
「いやでも、あのガキ痙攣してないか?」
「もぱぁっ!」
そしたらレクス君が凄い力で抱きしめていた私の腕を引きはがして離れてしまった。
いけない、ちょっと馴れ馴れしかったわね。反省しなきゃ。
「ぜぇっぜぇ! 死、死ぬかと思った……」
「ごめんなさいねぇ。つい興奮しちゃって。それでね、是非とも一緒に聖都に行って欲しいの。神子である貴方が洗礼に向かえば、神もお喜びになると思うのよ」
「ええと……お断りします」
「ええ!? 何で!?」
そんな、聖都で洗礼なんて、信者ならだれでも憧れる筈なのに。
「そもそも、その神子っていうのはなんなんですか?」
あらいけない。
そうよね、まずはその説明からしないと。
「ええとね、神子って言うのは、神が遣わしたとても神聖な子の事なの。世の中が大変な事になった時、凄い活躍で民を救ってくれるのよ。誰にも使えない様な、文字通り奇跡みたいな回復魔法を使ったり、不可能を可能にしたりする凄い人の事なの」
「えーっと、僕は普通に出来る事をしただけですよ。ヘルバジリスクの邪眼の治療は複合回復魔法さえ使えれば誰にでもできますから」
え? そうかしら?
「それに、複合回復魔法が使えなくても、複数の回復魔法を皆で分担すれば誰にでも出来ます。誰にでも出来る事をしても神子とは言えないでしょう?」
「そ、そう言われると……そうなのかしら?」
「そうですよ」
言われてみるとそんな気も……
複合回復魔法は凄いけれど、確かに複数の僧侶達で分担して治療が可能なら神子の偉業とは言えないのかしら?
「うーん……」
そ、そうよね。
そう簡単に伝説の神子が居る訳ないわよね。
「伝説に語られる様な戦場で傷ついた全ての兵を敵味方問わずに救える様な超広範囲回復魔法を使えたり、誰にも治せなかった魔毒を治療する方法をあっさりと発見したりできる人なんてそうそういないわよね」
「そうそう、じゃあ僕はそういう事で」
そう言ってレクス君はどこかに行ってしまったわ。
私の勘違いで驚かせて悪い事をしちゃったわね。
「……あの、聖女様」
近くに居た僧侶がおずおずと私に話しかけて来る。
「何かしら?」
「彼、さっきの範囲回復魔法でしたっけ? あれで小さな村ほどあるキャンプの負傷者を全員治療したんですけど」
ん?
「それもかなりの重傷も治ってましたよ」
んん?
「あと、ヘルバジリスクの黒死の邪眼も誰にも治療出来なかった魔毒の一種に分類されると思うんですけど、あと誰にでも治療できるように治療法を教えてくれた事も素晴らしく高潔な行いなのでは?」
……んんん?
「「「それって、聖女様の言う神子そのものじゃないんですか?」」」
「……」
「聖女様?」
「や、やっぱり神子なんじゃなーい! ちょっとー!どこ行ったのーレクスくーん!?」
しまったー! 誰にでも治療できるからって口車にひっかかっちゃったー!
もー! 絶対あの子を聖都に連れて行って洗礼させちゃうんだから!
(´・ω・`)ヘルバジリスク「戦ってもいないのに邪眼封じられたンゴ……」
(:3 」∠)「ヘルバジリスク「これは遭遇した瞬間、雑魚敵扱い確定の悪寒……(諦観)」
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