第74話 キャンプ基地を守れ!
(:3 」∠)「書き溜めがあるって良いね!」
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皆に実力を示す為、単独でハイトロールの群れを退治する事になった僕だったけど、問題なく魔物を討伐した事でなんとか認めて貰う事が出来た。
「だがこんな場所にハイトロールの群れが現れるとはおかしいな。そもそもコイツ等は人里の近くや街道には近づかないはずなんだが」
ロディさんがハイトロール達の死体を見て首をかしげている。
確かに言われてみればそうだね。
「ふむ、例の遺跡がらみかもしれんな」
「となれば、周辺の村々に被害が及ぶ前に調査を急ぐ必要がありますね」
「うむ」
と、新しい方針が決まったその時だった。
「おい、あれを見ろ!」
周囲を警戒していた冒険者さんがある方向を指差して声を上げる。
僕達もつられて同じ方向を見ると、彼方に煙が上がっているのが見えた。
「あれは……煙?」
煙が上がっていたのは街道の先の、山のふもとだ。
「あれは……第一キャンプがある方向だぞ!?」
ワンダさんの言葉に、冒険者さん達がどよめきをあげる。
「第一キャンプ!? まさかトラブルか!?」
「どうする? 偵察を送るか?」
「いや、何か起きているのは明白だ。急ぎ我々も合流するべきだろう。我々の目的は遺跡の探索なのだから、どのみちキャンプには向かわねばならん」
慎重に行動するべきだという意見と、どのみち向かうのだから急ぐべきだという意見がぶつかり合う。
「ならば私が行こう」
と偵察に立候補したのはSランクの先輩、天魔導のラミーズさんだった。
「私はロストマジックの飛行魔法が使える。馬車で進むよりは早くたどり着くだろう」
「ふむ、頼めるか?」
ワンダさんは一瞬悩んだみたいだけど、即座にラミーズさんの提案を受け入れる。
この決断力の早さはさすがSランクの禁止領域で陣頭指揮をとるだけの事はあるね。
優秀な指揮官って素敵だなぁ。
とと、いけないいけない。
感心してる場合じゃないや。
「あの、僕も飛行魔法が使えるので同行しても良いですか?」
「私も使えるわ」
僕達はこのメンバーの中じゃ新人だからやれる事があるなら前に出ないとね。
「何だとっ!?」
僕とリリエラさんが前に出ると、何故かラミーズさんがギョッとした顔になる。
「お、お前達も飛行魔法が使えるのか!?」
何故かラミーズさんが驚いているけど、どうかしたのかな?
「はい、足手まといにはならないつもりです」
「分かった。戦闘の後で悪いが、君達にも偵察を頼もう」
ワンダさんの許可を得て、僕達は第一キャンプへ先行する事となったのだった。
◆
「見えた、あれがキャンプだ」
先行して空を飛んできた僕達は、山のふもとにある四角い壁で覆われた沢山のテントと、ソレに群がる魔物達の姿を確認する。
「大変だ、壁の一部が壊されてる!」
僕はキャンプを守る壁の一角が破壊されている事に気付き、急ぎ向かおうとする。
「ま、待て! お前達速すぎるぞ!」
振り返ると、ラミーズさんの姿がかなり後ろにあった。
おや? もしかしてラミーズさんは飛行魔法が苦手なのかな?
「すみません、キャンプが危険なので僕達は先に行きます!」
「お、おい!!」
「行こうリリエラさん!」
「ええ!」
僕達はラミーズさんが追いつくのを待たず、キャンプ地へと向かった。
「な、なんだあの速さは!? 飛行魔法の第一人者である私よりも速いだと!?」
んー? なにかラミーズさんが飛行魔法が得意って言っていたように聞こえたけど、聞き間違いかな?
◆
キャンプ地まで来た僕達は、乱戦となった現場を目にしていた。
「急いで魔物を倒しましょう!」
リリエラさんが上空から降下して、危うく魔物に殺されそうになっていた冒険者さんを救助する。
僕もすぐに参加したいけど、まずは壊れた壁の修復が先かな。
「プロテクトストーンウォール!」
僕は石壁の魔法で破壊された壁の代わりに新たな壁を作り出す。
破壊された壁の穴を通り抜けようとした魔物達が、地面から競りあがった石の壁に吹き飛ばされて後方の魔物へと倒れこむ。
吹き飛ばされた魔物は怒って壁を攻撃するけれど、それはただの石壁じゃない。
付与魔法の効果によって鉄よりも堅い壁になっているんだ。
案の定、攻撃した魔物の爪の方が折れてしまった。
「よし、これで応急処置は完了だ」
けど穴の開いた壁以外も攻撃を受けているから、そっちの壁にも石壁で補強しておこう。
「更にプロテクトストーンウォール!」
キャンプ地を覆う4つの壁を全て石壁で覆った事で、魔物達はキャンプ地への侵入が不可能になった。
どの魔物も必死で壁を叩いたり爪で引っかいているけれど、壁が壊れる気配はない。
寧ろ魔物達の爪の方がボロボロになっていた。
よし、後はキャンプの中に入り込んだ魔物を倒せばこの場は凌げるぞ。
「や、やっと追いついたぞ!」
これから戦いに参加しようと思ったら、ラミーズさんが到着した。
「状況は!?」
「キャンプを守る壁が破壊されていたので魔法で補修しました。後はキャンプ内の魔物を殲滅すれば後続の皆さんが来るまで持ちこたえる事が出来ます」
そうだ、Aランク冒険者さん達で構成されたキャンプがここまで苦戦している以上、無理に敵と戦う必要は無い。
キャンプ内の安全を確保してから後続の皆を待つのが正解だと思う。
「そんなまだるっこしい事をしている場合か。見たところかなりの数の魔物が入り込んでいる。ここは一気に殲滅するべきだ!」
そう言うとラミーズさんが呪文を唱え始める。
「炎の大河に住まう者よ。その姿、燃え溶ける岩の蛇にして血の如く滴る焔をもたらす意思ある炎なり。汝我が意に従い我が敵を焼き尽くせ、ラヴァスネーク!!」
ラミーズさんの前に真っ赤な溶岩が現れ、それが巨大な溶岩の大蛇へと姿を変えていく。
これは生物を模した追尾系の攻撃魔法だね。
って、この魔法だと……
「さぁラヴァスネークよ! キャンプに侵入した魔物共を一掃しろ!」
炎の大蛇がキャンプを襲う魔物達に襲い掛かる。
「いけない!」
その魔法じゃ駄目だ!
「フロストゲイル!!」
僕は氷風の魔法でラミーズさんの魔法を相殺する。
「な、何!? 私の魔法が!? お前今何をした!? 私の魔法はロストマジックなんだぞ!? それをただの氷風の魔法などで相殺出来る訳が無い!?」
「そんな事よりも、今の魔法じゃキャンプまで燃やしちゃいますよ! 最悪救うべき冒険者さん達まで巻き添えにしちゃいます!」
けれどそんな僕の提言をラミーズさんは鼻で笑う。
「そんな甘い事を言っている場合か。Aランクの冒険者達が守るキャンプが為すすべなく攻め込まれているのだぞ! この状況では多少の犠牲を覚悟してでも魔物を殲滅しなければ、助ける事の出来た者まで助けられなくなるぞ! それともお前ならこの乱戦の中で冒険者達を巻き添えにせず魔物だけを攻撃出来ると言うのか!?」
「出来ます!」
「そらみろ……って、何っ!?」
断言した僕にラミーズさんが驚きの声をあげる。
「だ、だったらやって見せろ! これだけの数の魔物を全て倒して見せろ! やれるものならな!」
「やってみせます!」
僕はキャンプ中央の上空に位置取り、魔法を発動する。
「ヒュドラヴェノムステーク!」
放たれた魔法は幾重にも枝分かれし、まるでヒュドラの首の様に増えていく。
そして魔法の杭はキャンプ内の魔物だけを狙って襲い掛かる。
魔法の杭に貫かれた魔物達が痛みに悲鳴を上げる。
「駄目だ! あの程度のダメージでは倒しきれん!」
そういって、ラミーズさんが魔物に攻撃すべく呪文を唱え始める。
けれど僕はそんなラミーズさんを制止する。
「大丈夫ですよ。もう終わりましたから」
「何?」
僕の言葉を訝しんだラミーズさんだったけれど、地上の魔物達の動きがおかしくなった事で、表情を変えた。
「何だ!? 何が起きた!?」
おかしな動きを見せていた魔物達が地面に倒れてのたうち回る。
「ヒュドラヴェノムステーク、見た通りヒュドラの様に首を伸ばして敵を攻撃する魔法です。ですが効果はそれだけではなく、攻撃を受けた相手は猛毒によって死に至る付与効果付きの魔法です」
「も、猛毒!?」
「この魔法は短期間に大増殖する災害級の魔物を即時殲滅する為に編み出された魔法です」
「短期間に大増殖する災害級の魔物? ……まさかバミヤムの都を一晩で滅ぼしたという、あの伝説の魔物インフィニティマウスか!?」
インフィニティマウス、5秒に一回産卵してとんでもない勢いで増えていくネズミ型の魔物だ。
その性質上、大量の栄養を求めるので、インフィニティマウスが発見された町は一夜で滅びると言われるくらいだ。
ちなみに比喩じゃなくてリアルに一晩で滅びる。
この魔法はそんなインフィニティマウスをせん滅する為に開発されたんだ。
5秒に一回産卵するなら、それを上回る速度で殺せばいいっていうとってもシンプルな理論良いよね。
うん、勿論作ったのは前々世の僕だ。
そしてインフィニティマウスが生まれたのは当時の魔法技術者の大失敗だったりする。
まったく、失敗の尻ぬぐいを他人にさせないで欲しいね。
「し、信じられん。あの伝説の魔物を討伐した魔法が実在したとは……、いやそれだけではない! 一体どれ程の精度で魔法を制御すればこの様な魔法が……それに魔力消費も凄まじい事になっている筈だ」
「ああ、制御は探査魔法の応用ですよ。これで魔物反応だけをピックアップします。そして魔力消費は効率の良い術式を組めばかなり抑える事が出来ます」
例えば空気中の魔力を消費するタイプの魔法とかだね。
「術式を組むだと!? まさかお前は魔法の創造が出来ると言うのか!?」
術式を組むと聞いてラミーズさんが驚愕の顔を見せる。
いやいや、創造だなんで、まるで神様みたいな物言いだなぁ。
「そんな難しい魔法じゃないですよ。基本は通常の追尾魔法を……」
「ちょっ、ちょっと待っててくれ! 今メモを出す! ……よし、良いぞ!続けてくれ!」
ラミーズさんのメモの用意が済んだみたいなので、僕は説明を再開しようとしたんだけど。
「って、そんな場合じゃないでしょ! 負傷者が居るんだから早く救助に行きなさい! 回復魔法使えるんでしょ!!」
うっかり魔法談議に没頭しかけた僕達に、戻って来たリリエラさんのカミナリが落ちた。
「「ゴメンなさい」」
いけないいけない、つい久しぶりの技術的な話に夢中になっちゃったよ。
僕達は急いで負傷者の治療へと向かう事にした。
「それにしても大した魔法だ。先ほどの戦闘といい、史上最年少でSランクになったのも納得の実力だな。クククッこれは後が楽しみだ」
「え?」
そんな事を言ったラミーズさんの雰囲気は、先程までのキツイ空気は全くなく、むしろとても柔らかかった。
もしかして、あそこで溶岩の蛇の魔法を使ったのは、僕の力を測るための演技だったんだろうか?
うん、ありえない話じゃない。
仮にもSランク冒険者がこの程度の数の魔物を捌けない訳が無いもんね。
成る程、ハイトロールとの戦いで油断した直後に極限状態での選択を迫る事で、相手の真価を測る作戦だったんだね。
さすがSランク冒険者、実力の見極め方もスパルタ式だ。
「よーし! 改めて気合を入れていくぞ!」
(:3 」∠)ラミーズ「自信満々に放った魔法がさらっと相殺されたんゴ……orz」
三└(┐Lε:)┘ラミーズ「ほわぁぁぁ! 新しい魔法の知識キタァァァァ! ビターンビターン!!」
(⑅:3っ )∋リリエラ「お前等いい加減にせぇよ?」
(:3 」∠)レクス/ラミーズ「さーせん」
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