第67話 木造守護神と真なる嵐の王
(:3 」∠)「みんなー! 作者の無茶振りに応えてくれてありがとー! オラスッゲェ嬉しいぞー! よーし、パパこれからも頑張るぞー!」
(:3 」∠)「あ、それと前回のは別にポイントクレクレ要求ではないので、無理にポイントを入れなくても良いですよ(クレクレはなろうのルール違反になるので)」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
木製ゴーレムを隠し畑の近くに配置してから、数日が経過した。
「また来てるなぁ」
何度目かの魔物の群れがまたしても森の隠し畑に向かってやって来る。
そして次の瞬間、ウッドゴーレムにまとめて吹き飛ばされた。
「うんうん、全自動式魔物撃退装置は問題なく動作してるみたいだね」
このウッドゴーレム、実はちょっと普通のゴーレムとは違うつくりをしていたりする。
通常ゴーレムを造るには石とか材木といった材料を集めて造るものなんだ。
でも、前世の知り合いがちょっとゴーレムに人生を捧げた変人で、ある日突然「画期的なゴーレムの造り方を思いついた!」って言い出した。
それがこの再生型ゴーレム。
ゴーレムを半生命体として作り出すことで、生き物の様に自己再生能力を持たせる事に成功したんだ。
このゴーレムの画期的な所は、再生能力を持っているので、破損した部品の修理や摩耗した部品の交換といったメンテナンスが不要な事。
まぁ再生といっても完全じゃなくて、材料として倒した獲物を取り込んだりする必要があったりする。
本人曰く無から有は生まれないとの事。
それでも部品を加工して交換する必要が無いから、画期的な事には変わりなかった。
まぁ一週間後くらいにその画期的な技術は禁呪指定をくらって、本人は速攻行方をくらましたけど。
で、その逃亡劇の際に色々あって、知り合いから自分の研究成果の一部を譲ってもらえたって訳。
うん、気がついたら魔法の袋に勝手に入っていたとも言う。
ちなみに前世や前々世で様々な権力者達の行動を見ていた僕としては、何故この研究を禁呪扱いしたのかはなはだ疑問だ。
だって皆もっとエゲツない事してたんだもん。
ともあれ、そんな背景の下に作られたこのゴーレムは、ゴーレムでありながら木でもあるんだ。
つまり、枝が折れても新しく生えてくるって訳。
成長速度も上げてあるから、倒した魔物を即栄養にして吸収する事でゴーレムは素早く損傷を修復する。
で、そんなゴーレムに僕は西の村と村の住人、それに隠し畑を守る様命令を与えていた。
ただそれ以外の時は好きな様にして良いとも指示して。
何でも半分生き物だから、ガチガチに命令を与えると命令に対する効率が下がるとの事らしい。
そんな訳で、ウッドゴーレムは村と畑を守りながら、偶に自分の意思で日当たりや水はけのよい場所へ移動したりしていた。
せっかくだから、ウッドゴーレム用に栄養剤も作っておくかな。
レシピも村の人に渡せば育ちの悪い植物にも使えるだろうし。
……栄養剤? 何か忘れている様な気も?
まぁ良いか。
「な、何じゃこりゃぁぁぁぁぁ⁉」
翌朝、村長の叫び声に起こされて外に出て来ると、村の人達が森を見て驚きの声をあげていた。
一体何を驚いているんだろう?
僕も一緒になって森を見ると、そこには全長50mはあろうかという大木がそびえ立ってた。
「んん~?」
あんな木あったっけ?
「ねぇレクスさん、アレは何?」
え? 僕に聞くんですかリリエラさん?
「いや、僕に聞かれても」
「でも昨日、森の木になにかポーションみたいなのをかけていたわよね?」
ポーションみたいなもの?
「……あっ」
しまった。あの栄養剤は魔物避けのポーションを委託した村で使った栄養剤だ。
あの凄く大きく育った野菜に使ったのを、ウッドゴーレムにかけちゃってたよ。
「……成長しましたねぇ」
「成長したじゃないわよ! どうするのよアレ!? 村の人達も困ってるわよ絶対!」
そう言えば、村長は凄く驚いていたけれど、村人達の反応はどうなんだろう?
僕はさっきまで驚いていた村人達の反応を再度確認すべく視線を動かす。
ちょっと怖いなぁ。
すると村人達は、全員がウッドゴーレムに向けてひれ伏していた。
「え?」
何コレ? どんな状況?
「木の精霊様が大きくなられた! これはきっと我々を守る為に更なるお力を示されたに違いない!」
「「「「ははぁー!」」」」
あ、そう判断した訳ね。
どうやら村人達は、ウッドゴーレムが自分達を守る為に本気を出してくれたと解釈したらしい。
「じゃあそういう事で」
「そういう事でじゃないでしょ!」
◆
「レクス殿はいらっしゃいますかぁぁぁぁ⁉」
大きくなったウッドゴーレムがちゃんと動くか様子見をしていたら村の外から騎士達がやって来た。
といっても僕達と西の村に残った騎士ではなく、村の外、恐らく天空城からやって来た騎士達だ。
騎士達は僕の姿を見つけると、まっすぐにこっちに向かってくる。
「どうかしたんですか?」
「大変です! バハムートが! 新たなバハムートが現れました!」
「何ですって⁉」
新しいバハムート!?
まさかここに来て二頭目が出て来るとはね。
「しかもバハムートは前回の個体の二倍近い大きさです!」
「二倍ですか!?」
おいおい、それってつまり……
「ねぇレクスさん、二倍って事はつまり……」
やっぱりリリエラさんも察したみたいだ。
「ええ、バハムートの成体だと思います」
小型のバハムートを倒した後で成体のバハムートが出て来たか。
……あれ? それってつまり。
「もしかして、この前倒したバハムートの親って事なんじゃ?」
「「ええ⁉」」
騎士とリリエラさんが目を丸くして驚く。
「まぁ以前のバハムートが不自然に小さかった事と、その数日後に突然成体のバハムートが現れた事を考えると、そういう事なんじゃないですかね?」
仮に縄張りを奪いに来たのなら、もっとずっと前に力づくで奪うだろうし。
そう考えると、家族だと考えた方が納得がいく。
「まさか我々に復讐に来たのでは……?」
うーん、どうだろうねぇ。
基本動物ってある程度育てたらあとは巣立ちさせるものだし、魔物は、バハムートはどうなのかなぁ?
戦い方は知っているけど、生き物としての生態はあんまり詳しくないんだよね。
「それとですね」
と、騎士が更に何かを伝えようとしてくる。
「バハムートなのですが、手になにか見たことの無い物を握っていたのですよ」
「見たことの無い物?」
「ええ、見た感じ人工物ですね。おそらくは地上で作られた何かなのではないかと思うのですが」
ふむ、何らかの人工物を持ったバハムートねぇ。
「それで、是非レクス殿にも偵察に参加して頂きたいと騎士団長が仰せで」
あー、カームさんからか。
まぁやっとバハムートが居なくなったのに、また新しいバハムートが出てきたら堪らないよね。
しかも以前より明らかに強そうとなればなおさらだ。
「分かりました。僕もご一緒しますよ」
もしも新しいバハムートが来た理由が以前のバハムートを倒したからだったら、僕にも責任の一端があるからなぁ。
「おお、ありがとうございます!」
騎士さんが感謝の声をあげて頭を下げて来る。
「ところで……」
え? まだ何かあるの?
「このひと際大きい木は一体なんでしょうか? 以前は無かったと思うのですが」
そっちかぁぁぁぁぁ!
「……せ、成長したみたいです」
「はぁ、成長……?」
よし、説明もしたし、さっさとカームさん達と合流して森島に行こう!
◆
そして、カームさん達と合流した僕達は、偵察の為に森島の外周近くへとやって来た。
島の中に入らないのは、噂のバハムートを刺激しない為だ。
「ご覧ください、あの黒い山に見えるものが、突如現れた新たなバハムートです」
カームさんが説明するまでもなく、森島に居座った新たなバハムートの姿は分かりやすかった。
何しろ森を突き抜けてそびえ立っていたんだからね。
「しかしバハムートが手に持っているアレは何なのでしょう? バハムートも人間と同じように道具を使うと言う事なのでしょうか? そのような魔物は見た事もありませんが」
僕はカームさんの言葉を聞きながら、バハムートの手に握られているモノを見つめていた。
うん、間違いない。あれは……
「アレは船ですね」
「船? 船とは何ですか?」
どうやら空島の住人であるカームさん達天空人は船を知らないみたいだ。
「船というのは、川や海の上に浮かべて移動したり、魚を獲ったりする為に使う乗り物の事ですよ」
「川に浮べて移動する? しかし川に浮かべたら流されて地上に落ちてしまうのでは⁉」
ああ、空島の川って最終的には滝みたいに地上に落ちるもんなぁ。
文化の違いってやつだね。
「地上の川はそれ以上落ちる場所がないんですよ」
「なんと!?」
僕の説明に騎士達が驚きの声をあげる。
まぁ滝のある川とかもあるけどね。
というかなんだけど、あの船なんか見覚えがある様な……。
いや見覚えどころか……
「ねぇ、あの船ってもしかして……」
リリエラさんが僕に話しかけたその時だった。
バハムートが首だけを動かしてこちらを向いたんだ。
「イカン、気付かれた!」
結構離れていると思ったんだけど、意外と目が良いなぁ。
そしてバハムートは大きな雄叫びをあげると、体をこちらに向けて翼を広げ威嚇してくる。
いや、威嚇じゃないな。 アレはこれからお前達を狩るぞっていう意思表示だ。
「総員撤退!」
カームさんが号令をあげるけど、もう遅い。
バハムートは手にしていた船を振り上げると、なんとこちらに向けてぶん投げて来た。
フォームはめちゃくちゃだけど、船はとにかく大きいから当たったら大変な事になる。
そして船の中に人が居たら、その中の人達も。
「フィジカルブースト!」
僕は身体能力で肉体を強化し、更に風の魔法を発動する。
ただし発動するのは攻撃魔法じゃない。
「ガイドストリーム!」
発動した魔法が僕の周囲を巡る気流になる。
「いくぞ!」
僕は飛んでくる船の正面へと躍り出た。
「レクスさん!?」
「レクス殿!?」
リリエラさんとカームさんの声が重なる。
でも説明するのは後!
僕は身体強化魔法で強化された視力と反射神経を最大限活用しながら船の速度と自分の速度を調整して後退しながら少しずつ船に近づく。
接触する程に近づいた僕は速度を完全に船と同調させる。
そして船に手を当てると、僕はゆっくりと速度を下げて船より遅くしていく。
当然船は僕の体を押しつぶそうと重量をかけてくるけれど、それを一気に押しとどめたりはしない。
このまま受け止めるとショックで中の人が壁に叩きつけれられてしまうからだ。
ゆっくりと自分のスピードを下げながら船の速度を下げていく。
更に発動したガイドストリームの気流が、ゆっくりとだけど力強く船の逆方向から吹いてくる。
このガイドストリームの魔法は大型の飛行マジックアイテムなどを空中大陸の港に誘導する時に使われる魔法で、操縦不能に陥った飛行マジックアイテムを受け止める時にも使われる魔法でもある。
つまり、こういう時にも有効な魔法って訳だ。
身体能力を強化した僕の筋力と、魔法による減速で船は騎士達と激突する事も、このまま落下して地上に叩きつけられる事もなく無事に停止した。
「よし、なんとかそっと受け止める事が出来たね。あとはこの船を空島の安全な場所に降ろす為に撤退しましょうか」
船を持ち上げたまま、僕はカームさんに提案する。
「……」
けれどカームさん達は目を丸くしてこちらを見ながら固まっていた。
あ、リリエラさんも固まってる。
「あのー皆さん、一旦撤退しませんか?」
「「「っ!?」」」
声をかけるとようやく皆がハッとなって動きを取り戻した。
「「「う、受け止めたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
え? なんでそんな事で驚いてるの?
リリエラさんまで一緒になってさ。
◆
私は木だ。
元々は地上の木を親に持つ木の実だったが、鳥に運ばれて人間が空島と呼ぶ天空の島へと連れてこられた。
そして私はとある森の木の一本としてすくすくと成長していた。
そんなある日人間が私の近くで土を弄って小さな同胞達を育て始めた。
甲斐甲斐しく私達の世話をする人間超便利。
とか思ってたら魔物がやって来た。
あっ、こら、小さな同胞達を襲うな。
あと私も襲うなよ。絶対だぞ!
ん? なんだか枝がムズムズするなぁ。
……うわぁぁぁぁぁぁ!? 枝が! 枝が伸びたぁぁぁぁぁ!
しかも勝手に魔物を攻撃してる!?
私の体が勝手に動くぅぅぅうぅ!
超怖い!! 自分の意思で体を制御できない!
……と思ったけど、私木だから最初から動けなかったわ。
なんか知らんけど人間が拝むようになった。
そして水をかけてくれた。
んん~! 美味しい!
まぁ偶にはこんな生活も良いかな。
と思っていたらなんか人間に体を弄られた。
根っこや枝が動いて魔物に攻撃してる。
何これ、どうなってるの⁉
なんか人間から村と人間と畑を守れって言われた。
え? 何でそんな命令を聞かないといけな……あ、また体が勝手に。
ええと、それ以外の時は好きにしていい?
あ、ほんとだ。戦ってない時は動く。
自分の意思で戦おうとすれば自由に動かせる。
成程、命令に逆らわなければ自由に動けるんだな。
Ok、ご飯を自分で獲る事が出来る様になったと割り切ろう。
あと魔物を倒すと人間が拝んで色々くれる様になった。
ふむ、こんな生活もありなのかなぁ。
あっ、その色のついた水美味しい。超美味しい。
翌日、凄く成長した。
(:3 」∠)森の木「まさかの二次成長期」
(:3 」∠)船「ちょっと私の扱い悪すぎませんかね?」
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