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第66話 隠し畑と森の守護神

 (:3 」∠)「うう、忙しいのと暑いのとで、いろいろとパワーが不足している。皆、オラを応援して元気を分けてくれー! 具体的には感想欄とかで楽しいとか大好きとか応援してくれー!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「エリアヒール」


 僕は魔物達に襲われて怪我をした西の村の住人達を纏めて回復する。


「おお、傷があっという間に!」


「これだけの人数を一度に治療するなんて、なんて凄い魔法なんだ!」


「ありがとうございます! 魔法使い様!」


 村人達が治療の終わった自分達の体を見て興奮気味にお礼を言ってくる。


「いえいえ、この程度の回復魔法なら、都会に行けばいくらでも使える人が居ますよ」


そうそう、知り合いの回復魔法使いはバカみたいに広い範囲にいる怪我人を一瞬で回復したからね。

戦場全体を覆う回復魔法とかもう卑怯とかいうレベルを超えてるよ。

しかも回復するのは味方だけとかさ。


「ええ!? そうなんですか⁉」


「他所の村の魔法使いは凄いなぁ」


 けど、これだけの人数っていう割りには、随分と村人の数が少ないんだよなぁ。

あっ、もしかしてこの人達は逃げ遅れた人達だったのかな?


「それよりもだ……」


 と、治療が終わるのを待っていたカームさんがやって来る。


「お前達、隠し畑を作っていたな」


「「「「「うっ」」」」


 隠し畑という発言に、村の人達が体を震わせる。


「隠し畑ってなんですか?」


 言葉通りなら隠した畑だけど。


「聞いた事があるわ。確か重い税を課す領主に隠れて、自分達が食べる分の食糧を確保する為にこっそり作る畑よ」


 へぇー、そんな畑があるのか。

ウチの村には隠し畑なんてなかったから、治めているのは良い領主様だったのかな?


「いえ、我々にとって隠し畑とは、魔物から隠す畑の事を意味します」


 と、カームさんがリリエラさんの説明を補足してくれた。


「魔物から隠す為ですか?」


 ああ、そう言えば天空王が大きな畑を作ると魔物が襲ってくるとか言っていたっけ。


「ええ、村の畑と天空王陛下より与えられた食糧だけでは足りないという者達が、村の近くの見つかりにくい場所に隠れて畑を作るのです」


 成る程ね。与えられた食糧だけじゃとても足らないって訳だ。

 そして助けた西の村の住人が少なかった理由は、彼らが畑作業をする為に森の中に居たからだったんだね。


「バハムートを倒してもまだまだ危険は無くならないのね」


 と、リリエラさんが悲しそうに言う。

 きっと自分の故郷が魔物と魔獣の森によって滅びた時の事を思い出してしまったんだろう。


「隠し畑を作る事は禁じられている。お前達も知らない訳はあるまい?」


「も、申し訳ありません騎士様」


 カームさんに叱られて、村人達がうな垂れる。


「隠し畑の存在を魔物に見つかれば襲われるのは知っているだろうに。どうせ欲をかいて畑を拡大してしまったのだろう?」


「「「ううっ!」」」


 カームさんの奇妙な発言に、村人達がうめき声をあげる。


「隠し畑を作るのは禁止されているのに、何で畑を拡大してしまったんだろうなんて聞いたんだろう?」


「そういえばそうね」


 不思議がる僕達に、近くに居た騎士が耳打ちして教えてくれる。


「食糧が慢性的に足りないので、魔物に見つからない程度の小さな隠し畑を作る分には目こぼしされているんですよ」


 へぇ、わりと緩いと言うか、温情のある判断なんだなぁ。

 うーん、意外と天空王はマシな王様なのかな?

 まぁ、王族貴族も全員が悪人って訳でも無いからなぁ


「とはいえ、畑に魔物が襲ってきたら、折角の作物は無駄になりますし、畑作業をしていた村人も襲われます。畑を作る場所が村に近ければ、村そのものが襲われる危険がありますから、基本的に隠し畑は禁止となっているんですよ」


「し、しかし今年の畑は実りが悪く、天空王陛下のお慈悲を受けても一年を越せるかわからないのです」


 天空王の慈悲ってのは、地上の町からの貢ぎ物の事なんだろうな。


「それで隠し畑を拡大して魔物に見つかったのか」


 カームさんがやれやれと眉間に指を当ててため息を吐く。


「だがまぁ、それについては心配いらん」


「そ、それはどういう意味で……?」


 カームさんが僕の方に手を差し出し、村人達に告げる。


「天空王陛下の英断と地上より来訪した彼らの協力によって、我等を長らく苦しめて来た森島の主が討伐されたのだ。そして森島に残った魔物の討伐が完了すれば、近く森島の恵みを得る事が出来るようになるだろう」


「な、なんと!? それはまことですか騎士様!?」


 長年の食糧不足が解決すると分かり、村人達が驚きの声をあげる。


「うむ、それだけではない。我等は森島で多くの魔物を討伐した。ゆえにここを襲ったのは我々の討伐が始まる前に森島を離れた生き残りの魔物であろう」


「それは……つまり?」


「今の森島には以前ほどの魔物はおらぬ。そして残った魔物も我等騎士団が討伐する。つまりは今後新たに畑を作ったとしても、もう魔物に襲われる事は無いと言う事だ」


 カームさんの言葉に再び村人達が沸き上がる。


「おおおおっ!!」


「ありがたや、ありがたや」


「これで魔物の陰に怯えながら隠し畑を作らないで済むんだ」


 村人達は歓喜の声をあげてカームさん達に感謝の言葉を告げる。


「とはいえ、完全に魔物を討伐したと判断するまでは隠し畑を容認するわけにはいかん。急ぎ拡大した分の畑を壊しておけ」


「は、ははー!」


 村人達が慌てて隠し畑を壊しに向かう。

 けっこうキツキツの生活みたいだけど、それでも隠し畑を全部壊せって言わない辺り優しいなぁ。


「ではこれで我々の任務は終了しました。天空城へ帰投するとしましょうかレクス殿」


カームさんがそう言って僕達に声をかけてくる。

 けど僕は天空城へ戻るつもりはなかった。


「いえ、僕達はこのまま西の村で一晩明かしたいと思います」


「何ですって?」


 カームさんがどうして? と首を傾げる。


「隠し畑を襲ってきた魔物は討伐しましたが、まだ近くに潜んでいる魔物がいるかも知れませんし、別の魔物が森島からやってくる可能性もあります。なので念の為一晩残る事にします」


「それは……いえ、レクス殿がそうしたいのでしたら、構いません。それでは私も部下を数名残すとしましょう。お前達、レクス殿と共に一晩村の護衛にまわれ」


「「「はっ!」」」


 僕の我が侭を受け入れてくれたカームさんが、部下の人達に残るよう命令をする。

 それにしても残る人数が数名と言うには多いような……

 もしかしてカームさんも理由をつけて人を残したかったのかな?


「では村の事をよろしくお願いいたします」


「ええ、任せてください」


 そうして、カームさん達は僕達に村を任せて、自分達は天空城へと帰っていった。


 ◆


「この度は村の隠し畑を守ってくださり、まことにありがとうございました」


 その後、村人達が隠し畑の拡大した部分を壊すのを待ってから、僕達は西の村へと向かった。

 そして事情を聴いた村長さんが、深々とお礼を言ってくる。


「いえいえ、大した事はしていませんよ」


「大した事ですよ、隠し畑を守ってくださったお陰で、子供達にひもじい思いをさせずに済みます」


そういって村長だけでなく、村の大人達も感謝の言葉と共に頭を下げてくる。


「森島の魔物も退治されたとの事ですし、これからは安心して畑を広げる事が出来ます」


 いや、厳密には魔物の数を減らしただけで、全滅させたわけじゃないんだけどね。

 まぁそれは今言う事でもないか。


「だがまだ森島の魔物を全て退治したわけではない。天空王陛下の許可なく畑の拡大は認められんぞ」


「そ、それは分かっております騎士様」


 残った騎士達にたしなめられ、村長が慌てて頭をさげる。


 でもまぁ。カームさん達騎士団が総力を挙げて森島の魔物退治を進めれば、そう遠くないうちに魔物の討伐は完了するだろう。

 探知魔法で探った感じだと、バハムートを越えるような魔物の存在は感じなかった。

 カームさん達の持っているマジックアイテムでも十分倒せる魔物ばかりだ。


 多分あと数回森島で魔物討伐を行えば、空島も安全になるだろうね。


「大したものは出せませんが、出来うるかぎりおもてなしをさせて戴きますぞ」


 村長達はそう言って僕達に食事をご馳走してくれた。

 それは決して美味しい訳でも、おなか一杯食べられるという訳でもなかったけど、それでも村の人達が精一杯もてなそうとしている事だけは伝わってきたんだ。


「ところで旅のお方」


 と、村長が僕に話しかけて来る。


「はい、何でしょうか?」


「そのですね、この度我々を助けて下さった森の精霊様に御礼をしたいのですが、何を差し上げたらお喜びになるでしょうか?」


「森の精霊様?」


 一瞬何の事かと思ったけど、村長の視線から魔物を倒す為に使った植物魔法で急成長した森の植物の事のようだ。


「ええと、適量の水で良いと思いますよ。木ですし」


「成程、分かりました! 皆の衆、木の精霊様に御水を差し上げるのじゃ!」


「「「はい!!」」」


 村の人達が元気よく返事をし、皆が桶に水を入れて森へと向かって行く。

 ……うーん、まぁ良いか。

 根腐れしないと良いけど。


「討伐、手伝ってよかったわね」


 そっとリリエラさんが呟く。

 リリエラさんは笑顔で桶を持っていく村の人達を眺めている。


「んー、そうですね」


 うん、確かに。

 皆が喜んでくれるのは良いことだよね。

 今回の騒動は色々ゴタゴタしていたけれど、結果的に村の人達が助かったのなら、それで良いのかもしれない。

 うん、そう思おう。


 ◆


「あー、やっぱり来たね」


 夜、暗くなった西の村に向かって魔物の群れが近づいてくる。

 いや、厳密には西の村の近くに隠された隠し畑に向かってきている。


「まさか本当に来るとは」


 一緒に待機していた騎士達が驚きの声を上げる。


「一度来たから二度来るのは当然なんじゃないですか?」


「いえ、レクス殿があれだけ倒したというのに、まだコレだけの魔物が居たのかと思いまして」


 ああ、探知魔法を使えない人には魔物の数を把握する事は難しいから、そう思うのも仕方ないか。


「こうなると我々が残ったのは不幸中の幸いでしたな」


 騎士達が気を取り直す様に武器を構える。


「それじゃあ迎撃しますか。僕が大きい魔法で魔物を倒しますので、打ち漏らした魔物をお願いします」


「任せて!」


「「「お任せください!!」」」 


 リリエラさんと騎士達が力強い声を上げる。


「それじゃあ戦闘開始だ! サイクロンブレイク!!」


 僕は嵐の魔法を放って魔物達を吹き飛ばす。

 空島に住む魔物は基本的に飛べる魔物ばかりだから、一体一体狙うよりも飛行能力を阻害しつつダメージを与えれる広範囲の風系の魔法の方が効率が良い。


 数体が魔法の範囲外に居た為、まっすぐにこちらに向かってきた。

 うん? これだけ仲間がやられたのに、なお向かってくる?

 空島周辺で暮らす魔物の習性なのかなぁ?


「皆さんお願いします!」


「ええ! 行くわよ!」


「「「はっ!」」」


 あはは、なんだかリリエラさんが騎士達を引き連れているみたいな光景だ。


「さて、倒しきれなかった魔物達をしとめないと」


 僕は魔法を喰らって生き残った魔物達に向き直る。

 コイツ等はバハムートほどじゃないけど、結構な強さだ。

 んー、お互い万全な状態でカームさん達が戦うとちょっと、いやかなりキツイかな?


 何しろカームさん達のご先祖は、元々空島の崩壊から逃げきてた避難民だ。

 そこから人々を守る為の騎士として戦う事を選んだみたいだけど、マジックアイテムがそれなりに強かったのが災いしてか、戦士としての練度が低い。


 大抵の雑魚は槍から放たれる光で遠距離から倒し、バハムートの様に勝てないけど手を出さない限りは空島まで侵攻してこなかった敵は無視していたらしい。

 つまり勝てる相手としか戦わなかった所為で練度が向上していないって訳。


「あれ? でも森島にはもうこんな強い魔物は居なかったよなぁ」


 どういう事だ? もしかして討伐開始前に森島の外に出ていたのかな?

 でも最初の群れに混ざっていなかった理由は?


「グァァァァァオゥ!!」


 などと考えている間に、魔物達が攻めて来た。

 いけないいけない、考えるのは倒した後だね。


「チェイスソニックランサー!!」


 僕は追尾式の魔法で次々と生き残った魔物達を貫いていく。

 コイツ等は飛べるだけあって、負傷していても普通の魔物よりも逃げるのが上手い。

 だから追尾系の魔法で確実に倒していこう。



「ふぅ、結構多かったなぁ」


 隠し畑を狙ってきた魔物達を討伐した僕達は、西の村へと戻る。


「けどなんで襲ってきたんだろう? 隠し畑の拡張した部分は壊したんですよね?」


「ええ、その筈です」


 僕の質問に騎士達が答える。


「魔物は畑が一定の大きさにならないと襲ってこない筈……」


 何故ここに来て魔物達は自分達のルールを逸脱してまで襲ってきたんだろう?

 しかも仲間の大半が倒されたにもかかわらず攻撃の手を辞めなかった。


「何か起きているのかな?」


「とりあえず村長さんに他に隠し畑が無いか聞いてみよう」


 うん、可能性として一番ありそうなのは隠し畑が他にもある事だ。


 ◆


「いえいえ、いくらなんでもそこまでは致しませんよ。森島程ではありませんが、村の近くにも魔物はおります。ですのであまり離れたところに畑を作る事は不可能です」


「あっ、そうか」


 空島は隔離された環境で、森島から魔物が大挙してやって来るのは隠し畑などの餌が大量に手に入る場所を見つけた時だけだ。


 でもそれだけじゃない、ハグれた魔物が居る可能性は十分あるし、なにより森島以外の場所からやってきた魔物が近くに棲み着く可能性だって十分あるじゃないか。

 いけないいけない、空島の環境が特殊だからってつい考えが凝り固まっていたよ。


「そうなると、外部の魔物が村を狙っている可能性があるのか」


 さっき襲ってきた魔物達も、森島の魔物じゃなく、もしかしたら他の空島の魔物なのかもしれない。

 そう考えると、さっきの魔物の強さも納得ができる。


「これは森島の魔物の討伐が終わった後も、別の場所から魔物が襲ってくる可能性が高いなぁ」


「なんと、まことですか!?」


 村長が話が違うと顔を青くする。

 まぁ、気持ちは分かる。

 森島の主を倒してもう大丈夫だと思っていたのに、今度は他の場所から魔物が襲ってくるとあっては気が気じゃないだろう。


「これってもしかしてバハムートを倒したのが原因なのかしら?」


「え?」


 とその時、リリエラさんが妙な事を言いだした。


「いえね、バハムートがこの周辺を縄張りにしていたのなら、他の縄張りの魔物がこれ幸いと襲ってくる可能性もあるかなと」


「あっ」


 言われてみればそうかもしれない。

 となると、今度は他の縄張りの魔物を相手にしないといけないのか。


 うーん、敵の規模が分からないし、本拠地も不明。

 これじゃあ森島の魔物討伐どころじゃないな。


 それに僕達がここを去った後で、カームさん達空島の騎士達では倒せない魔物が現れたら目も当てられない。

 というかそんな相手が現れる可能性は十分高い。


 頼まれたとはいえ、バハムートを倒したのは僕だ。

ここまで来たら最後まで面倒を見ないと気分が悪いや。


「よし、護衛を用意しよう」


「護衛?」


「ええ、魔物襲撃の原因を見つけてそれを討伐するまでの間、この村を守ってくれる護衛を用意するんです」


 ◆


儂は西の村の村長。


 不作が原因で不足気味な食料を何とかする為に隠し畑を作っておったのじゃが、魔物に見つかってあわや村壊滅の危機かと慌てた。


 幸いにも騎士様となんか凄い木の精霊様の救援で村は無事助かった。

 隠し畑が破壊されたら、次は村の番じゃったからのう。

 更に運が良かった事に、隠し畑は多少壊れたものの大半は無事で、怪我をした者も騎士様達と一緒に居らっしゃった旅のお方が治療してくださった。

 本当にありがたい事じゃ。


 更にありがたい事に、旅のお方と騎士様達が村に残って様子を見て下さると仰ってくださった。

 拡大した分の隠し畑を壊したので魔物に襲われる可能性はまず無いと思うのじゃが、それでも子供や若い衆が安心できるのでありがたい。


 などと思っておったらまたしても魔物が攻めて来た。

 隠し畑も広げた分は壊したのに何故か攻めて来た。

 一体何でじゃぁぁぁぁ!?


 ほんに騎士様達が残って下さらなんだら、今度こそ村が壊滅しておったところじゃわい。

 ありがたやありがたや。


 え? やっぱこれからも魔物が来るかもしれない?

 そ、そんな殺生な……希望を与えておきながら落とすなんて酷いですじゃ。


 そしたら旅のお方がこの様な事を言いなされた。


「魔物がいつ来るか分かりませんから、護衛を作りましょう」


 作る? 護衛を呼ぶでなく作るですか?


「幸い丁度良い素材が西の森にあるので、ちょっと作ってきます」


 そう旅のお方は仰り、西の森へと向かっていったのじゃ。

 護衛って作れるもんなのかのう?


 そして夕刻、日が暮れる頃に魔物達は再び現れた。

 あわわわっ、本当にまた現れたぞい。

 

 儂は騎士様達が魔物を退治してくださる事を期待したのじゃが、何故か騎士様達は動こうとせなんだ。

 何で魔物と戦ってくださらんのですじゃ騎士様!?


 と、その時、旅のお方が仰った。


「大丈夫ですよ」


 そして、魔物達が西の村に近づいた時、ソレが動いた。


「な、なんだアレ!?」


村の若い衆のあげた言葉に、儂等はソレを見た。

 西の森の中から何か巨大な物が動いて魔物達の前に立ちはだかったのじゃ。


「あ、あれは……木の精霊様!?」


ソレは昨日儂らを助けて下さった木の精霊様じゃった。

精霊様は大きく、そして長く太い枝や根っこを伸ばして魔物達を威嚇する。


魔物達は突然現れた木の精霊様に襲い掛かる。

じゃが木の精霊様の体は魔物達の攻撃にビクともせず、代わりに自分の体に噛みついた魔物達をその太い根っこで貫いていく。


慌てて魔物が空へ逃げようとするが、その長い枝が体に巻き付き、情け容赦なく地面へと叩きつける。


「頑張れ木の精霊さまー!」


 儂等は歓声を上げて木の精霊様を応援する。


 じゃがそこで散発的な攻撃しかしていなかった魔物達の動きが変わった。

 魔物達は木の精霊様を危険と判断したのか、周囲を囲み一斉に襲い掛かったのじゃ。

 いかん、いくら木の精霊様でもこれだけの魔物に同時に襲い掛かられては勝ち目がない!


「心配ご無用」


 そう、旅のお方が仰った瞬間、木の精霊様のお体が神々しく輝き、襲い掛かる魔物達が吹き飛んだ。


「よしよし、なかなかの出来だね」


「……ねぇ、何をしたわけ?」


 旅のお方のお連れがお連れ様と何やら話をされておる。


「いやー、今後どれだけの数の魔物が村を襲い続けるか分かりませんでしたから、それならいつまでも村を守る事が出来る様に、ゴーレムでも用意しようかなと思いまして」


「ゴーレム!? あれゴーレムなの!?」


「ええ、元は普通の木だったんですけど、色々加工してウッドゴーレムに改造してみました。ついでにマジックアイテムとかも埋め込んで遠近両対応ですよ。理論上は先日のバハムート程度の魔物なら十分対応できます」


「それ程度って言わないから!」


 何を話しているのかチンプンカンプンじゃが、どうやら木の精霊様はこれからも儂らの村を守ってくださるみたいじゃ。


 おお、なんとありがたい事か。

 儂等は皆跪いて木の精霊様を拝んだ。

 そして木の精霊様にこの村を守って下さるよう説得してくださった旅のお方に、心からの感謝を捧げたのじゃった。

 (:3 」∠)森の木「背が伸びたら人間に拝まれるようになった」

 (:3 」∠)長老「ありがてぇありがてぇ」

 (:3 」∠)森の木「水美味ぇから別に良いか」

 (:3 」∠)森の木「そして気が付いたらサイボーグになってた」


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[良い点] レクス、・`ω・)ス・スゲェ… 安定の面白さ、発想が良き
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