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第61話 壊れた城と近衛騎士

書籍化情報の公開が許可されましたのでご報告です!

刊行はアーススターノベル様からとなります。

発売は今冬予定です!

他の情報は順次発表予定です!


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「おお、飛べる! 飛べるぞ!」


「やった、俺達はまた飛べるんだ!」


 騎士達が歓喜の声をあげて空を飛んでいる。


騎士団の羽を直した僕達は、彼等の主である天空王が住む天空城へと向かっていた。


「おお、本当にレクス殿は羽もなく空を飛べるのですな!」


 飛行魔法で飛び上がった僕達に騎士団長のカームさんが驚きの声を上げる。


「レクス殿達も何かのマジックアイテムを所持しておられるのですか?」


「いえ、僕達が使っているのは飛行魔法ですよ」


「飛行魔法!? というと、あの失われた魔法ですか!?」


 全員の羽を直している間、僕達はカームさん達から色々な話を聞いていた。

 彼等は天空王と呼ばれる王様に仕える騎士団で、普段は天空城という場所で暮らしているのだとか。

 そして普段は飛行能力を持つ魔物から空島を守っているとの事らしい。


「それにしても直してもらった羽は素晴らしい! 壊れる前に比べ、驚くほど思い通りに動きますぞ!」


「それに速度も格段にあがっていますよ団長!」


 騎士達は僕が修理した羽の性能に大喜びだ。


「メンテナンスもせずにずっと使い続けていたみたいですからね。直すついでに整備して、ついでに古い機構を新しいものに換えておきましたよ。だいたい壊れる前の3割増しで性能が上がっていますよ」


「三割!? こりゃ凄い!」


「羽が直った途端現金なものねぇ」


 リリエラさんは羽が直ってはしゃいでいる騎士団の人達に呆れているみたいだ。


「本当に直して良かったの? それも性能まで良くしちゃって」


 やり過ぎだとリリエラさんの目が語っている。


「いえ、むしろこれで良いんですよ」


 僕はそっとリリエラさんにささやく。


「僕が彼等のマジックアイテムを直す事が出来たという事実が何より重要なんですよ」


「レクスさんが直せた事が?」


 リリエラさんが眉をひそめて首を傾げる。 


「ええ、彼らには直せないけれど僕には直せる」


「……あっ、そっか」


 リリエラさんがそういう事かと声をあげる。


「マジックアイテムを直せない彼等は、レクスさんが直せると知ればうかつに手を出せなくなる」


 僕はにっこりと笑みを浮かべて頷く。

 そう、僕が彼等のマジックアイテムを直せると分かったなら、彼等は僕達に敵対的な行動を取る事が出来なくなる。

 それは、こちらが全力で戦えても、相手は常に手加減を考えないといけなくなるという事だ。


 もし今後天空人と戦いになった場合、これは大きなアドバンテージになるし、そうでなくても交渉のカードとして使える。


「レクス殿、我らの城が見えましたぞ!」


 先行する騎士が指さした先には、確かに建造物の影が見えた。

 けれどその姿は……


「あれが……城?」


 それを見た僕は騎士達の言葉に首を傾げる。


「え? あれが?」


 同じものを見たリリエラさんも同様に困惑する。


「あれは城と言うよりも……廃墟?」


 そう、僕達の進む先に見えたのは、半壊した大きな建物だった。


「それもどちらかと言うと砦の一部?」


 そう、それは城と言うよりは要所を守る砦の様だった。


「アレこそが我等が王の住まう城、天空城です!」


 騎士達が誇らしく宣言する。

 どうやら本当に城で間違いないみたいだ。


「あれが……城かぁ」


 ◆


「これは、壊れた砦を応急処置して使っているのかな?」


 城の近くまで来た事で、天空城の詳細が見えて来る。

 天空城はやはり半壊した砦を利用しているらしく、崩れた部分が石材や壊れた砦の建材で修理されていた。

 その姿はまるで戦時中の応急処置だ。


「レクス殿、リリエラ殿、そこに見える中庭に降りてください」


 カームさんの誘導に従って中庭に降りると、城の中から騎士団と同じく羽の生えた騎士達が出て来る。


「おお、カーム団長! 不法入国者は無事捕らえる事が出来たか!?」


カームさんに話しかけたのは、他の騎士よりも装飾の施された鎧を纏った騎士だった。

よく見ると城の中から現れた騎士達は皆装飾が施されている。

恐らく近衛兵かな?


「近衛隊長、それなのだが……」


 やっぱり近衛兵か。

 カームさんが近衛隊長から視線を外し、僕達の方をちらりと見る。


「ほう、その者達が不埒な不法入国者か。ふん、予想通り下賤な顔をしている」


 下賤な顔ってどんな顔なんだろう?


「あ、いやそのだな……」


 カームさんが口ごもる。

 彼は近衛隊長に対して僕達の事をどう説明するつもりなんだろう。

 ちょっと楽しみ。


「どうしたのだカーム団長?」


「そのだな、彼は……そう、彼は旅のマジックアイテム技師なのだ!」


「はぁ!?」


 近衛隊長がコイツ何を言っているんだ? という顔でカームさんを見る。


「いや本当なのだ。我々の羽が長年の酷使で性能に問題が見られるのは貴公も知っているだろう? だが彼に羽を修理して貰った事で、その問題が解決したのだ!」


「修理だと!? 貴公陛下からお借りした羽をどこの馬の骨とも分からぬ不審者に見せたのか?」


「うっ、いやそれはだな……そう、先程の出撃で部下の羽が著しく不調になってしまってな。このままではじきに使えなくなるのが目に見える程だったのだ」


「……」


 カームさんの言葉に近衛団長が眉を顰める。

 半信半疑、というよりは無信全疑って感じだなぁ。


「ならばと思い私は彼に言ったのだ。もし本当に直せるのなら直してみろとな。それが出来たら信用してやろうと。その結果彼は見事に羽を直し、それどころか我らの羽の中でも一、二を争う程、性能が良くなったのだ」


 カームさんが後ろを見ると、部下の一人が空を浮き上がって高速で飛行し、複雑な空中機動を披露する。


「見ろ、あのような飛び方を出来る羽は我が騎士団だけでなく、貴公らの近衛騎士団にも残っておるまい?」


 なにげにカームさんの言葉には真剣な響きが含まれている。


「なんと……信じられん事だが、確かに見違える様な動きだ」


「これ程の腕前だ、下手な真似は出来んと貴公も理解できよう」


 近衛隊長がカームさんからこちらに視線を移す。


「成程、貴様がマジックアイテムの技師だと言うのは理解した。だが何の目的で我が国にやって来た? その理由を聞かせて貰おうか」


 ここで僕はこれまで何度も繰り返した理由を口にする。


「僕達は古の天空大陸について調べに来ました。そしてこの空島で出逢った天空人の皆さんから、この空島がかつての天空大陸の名残だと聞き及んだのです。だから僕達は、その顛末を、何らかの情報を知っている人から、なぜそんな事になったのかを教えてもらいたいんです」


 うん、この国の上層部なら、その辺りの情報を知っている可能性が高いからね。

 正直国に関わるつもりはないけれど、さすがに大陸が一つなくなっているのはちょっとどころじゃなく気になる。

 マジックアイテムの修理でうまく取引が出来ると良いんだけど。


「おとぎ話の天空大陸か。確かに子供の頃に良く聞いた話ではあるな。だがそれが貴様等がマジックアイテム技師である事となんの関係がある?」


 まぁ無いんだけどね。

 そもそも僕はマジックアイテム技師じゃないし。

 どちらかと言えばマジックアイテム開発もやっていた方だし。


「特にありません。単に天空大陸を見たかっただけです」


「そんなあやふやな理由が通じるとでも思ったか! やはり貴様等は怪し過ぎる。拘束して本当の理由を吐かせてくれるわ」


「ま、待ってくれ近衛隊長! 彼等は有用な技術を持っているんだ。あまり乱暴な真似はしないでくれ!」


 カームさんの懇願に、近衛隊長は鼻で笑う。


「何を生ぬるい事を。そもそもたとえ有用な技師だとしても、拘束もせずにつれて来るとは何事か! 使えるというのなら、牢に放り込んで鎖につないで逃げれないようにすれば良いのだ!」


 近衛隊長が手を振ると、周囲の近衛騎士が僕達を囲む。


「その二人を捕らえろ!」


「「「「はっ!」」」」


 近衛騎士達が剣を抜いて僕達に襲い掛かって来る。


 まったく、随分と勝手な事を言ってくれるなぁ。


「倒して良いのよね?」


 リリエラさんが槍を構えて聞いてくる。


「ええ、大怪我を負わせても治しますから手加減無用です」


「分かったわ」


 そう、こちらは友好的に対応したというのに、向こうは牢屋に閉じ込めてでも言う事を聞かせると言ってきた。

 うん、これはもう手加減はいらないね。

 ちょっと、ううん、かなり痛い目に遭って貰おう。


「ふん、我等に歯向かうつもりか! 我等近衛騎士は選ばれた騎士、陛下をお守りする神聖天空王国最強の騎士だぞ!」


「ぶふっ!」


 いけない、その恥ずかしい名前を聞いて思わず笑ってしまった。


「貴様! 我らを侮辱するか!」


 ゴメン。でもそのネーミング明らかにこう二回り昔のセンスなんだもん。

 あ、前世の時代の二回り前ね。


「はぁ!」


 光を帯びた近衛騎士達の剣が僕達に襲い掛かる。

 どうやらこの剣もマジックアイテムみたいだ。


「よっと」


 僕は体を半身にして剣を回避すると、近衛騎士の剣を根元から切断する。


「馬鹿な!? 俺の剣が!?」


 自慢の剣を破壊された近衛騎士が驚愕する。

 それだけでは済まさないよ。

 僕は近衛騎士達の背中の羽を切断し、更に鎧の結合部を切って彼等を丸裸にする。

 とどめに支えを失って落下する鎧を真っ二つにしてやった。


「うわぁぁぁ、羽がぁぁぁ!?」


「よ、鎧がぁぁぁぁ!?」


 装備を破壊された近衛騎士達が悲鳴をあげる。


「スパーククラウドッ!!」


「「「「がぁぁぁぁぁっ!?」」」」


 そしてあらゆる装備を失った近衛騎士達の体が、小型の雷雲に飲み込まれ稲光が光った瞬間、全身を感電させて倒れていった。


「せいっ‼」


 リリエラさんがリーチの差を活かして騎士達をけん制し、隙を見て太ももに槍を突き刺して動けなくしていく。

 何気にリリエラさんの戦い方は相手の機動力を削ぐ渋い、けれど堅実な戦い方だ。


 近衛騎士達は動けなくなった仲間達が邪魔をして上手く立ち回れなくなり、業を煮やした近衛騎士が羽根を使って上から攻撃しようとした瞬間、待ってましたと飛行魔法で飛びあがったリリエラさんによって羽を切断されて地面に落ちて行った。


「てい!」


 僕は近衛騎士達の中に飛び込み、彼らの間をすり抜けざまに剣で薙ぎ、魔法で吹き飛ばしていく。


「おのれ!」


「待て、うかつに攻撃するな! 同士討ちになるぞ!


 やっぱりというか何と言うか、さっきの騎士達と同じく近衛騎士達も実戦経験が乏しい感じだ。

 乱戦になった瞬間、その動きは精彩を欠いていた。

 まぁ乱戦になる前から動きはいまいちだったけど。


ずっとお城で王様の護衛をしていたから、あまり戦う機会がなかったのかな?


「ええい、何をやっている! 相手はたかが二人だぞ!」


 近衛隊長が怒声をあげるけど、近衛騎士達は身体強化魔法で能力を向上させた僕達の動きにとてもついてこれていない。

 というかこの人達、身体強化魔法を使えないの?


 そういえば飛行魔法も使えなかったし、そもそもこの人達の戦い方には洗練された技術を感じない。

 天空大陸が存在していた頃の騎士の末裔なら、当時の戦闘技術が伝わっていると思うん

だけどなぁ?


 これも僕の知らない天空大陸崩壊が関係しているんだろうか?

 結局、近衛騎士達は数分とかからず全滅してしまった。


「お、おのれぇぇぇ!!」


 近衛隊長が剣を振り上げて僕に襲い掛かって来る。

 けれど頭に血が上った攻撃なんて回避するのは容易で、僕はその攻撃をバックステップで回避すると、勢い余って地面に叩きつけられた剣を切断して更に背中の羽も根元から切り捨てた。


「わ、私の剣がぁぁぁぁ!?」


「剣だけじゃないですよ」


 僕は指で足もとに落ちた羽を指摘する。

 近衛隊長はその羽を見た後、首を回して自分の背中から生えている筈の羽に視線を送る。

 けれどそこには羽はなく、両手でペタペタと羽が無いか探し始める。

 そして背中の肩甲骨の間あたりに手を触れ、切断された羽の根元に触れる。


「は、羽が……」


 近衛隊長が真っ青な顔になってへたり込む。



「さて近衛隊長さん」


 僕はへたり込んだ近衛隊長に向かって笑みを浮かべる。


「マジックアイテムの修理はいかがですか?」


「……」


 真っ青な顔の近衛隊長がカームさんを見る。

 するとカームさんがとても優しい微笑みを浮かべる。

 それを見た近衛隊長は、全てを察したのか大きく肩を落として項垂れる。

 そして肩を震わせながら、こう言った。


「……お、お願いします」

╭( ・ㅂ・)وカーム「こうなるのが分かっていたので止め(られ)なかったよ!」

\(^o^)/近衛隊長「オワタ」

Σ(:3 」∠)哀願動物「そろそろご飯出ませんかね?」


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[一言] オモチャを振り回すから、こうなるのだー ザマァ(  ゜∀゜)ハァーハッハッハッハ!!
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