第56話 爆弾改造班とささやかなお礼
_(:3 」∠)_「いっけなーい、昨日投稿するのわすれてたー!更新こうしーん!」(切腹もの)
_(:3 」∠)_「し、信じられねーとは思うが気がついたら朝になっていた中略」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「で、これからどうする? このままだとこの国が大変な事になりそうだけど……」
魔人を捕らえたものの、リリエラさん達はこれからどうすれば良いのかと不安げに漏らす。
「今から避難しろって伝えても、さっきの魔人のセリフから察するに難しそうよね……」
「私達だけで逃げるっていうのも後味悪いわよね」
「いっそ壊すか?」
「馬鹿! そんな事したらこの中に充満した魔力がどうなるか分からないでしょ!」
武器を振り上げたジャイロ君をミナさんが慌てて制止する。
精密な道具はその精密さゆえに下手な事をしたらどうなるか分からないからね。
更に言うと、メガロホエールの魔力を吸収したコイツは、何が原因で大爆発を起こすか分からない。
けれど僕達はコイツの用途を理解している。
そして幸いにもこのマジックアイテムはそこまで複雑な構造で無いと、コレまで見た光景から僕は推察していた。
「大丈夫ですよ。魔人が解決策を教えてくれましたからね」
「「「「え?」」」」」
僕の言葉に皆が驚きの声をあげる。
「魔人はこのマジックアイテムをメガロホエールの魔力を抽出して発動する兵器だと言いました。そしてそれがまだ発動していないと言う事は、魔力の抽出はまだ完了していないと言う事です」
「そ、そうか! マジックアイテムを操作して魔力の抽出を止めれば良いんですね!」
ノルブさんがこれなら助かると安堵の笑みを浮かべる。
「ク、ククククッ」
けれど、そんな空気をあざ笑うかのように、魔人が笑い声をあげた。
「何がおかしいのよ!」
「何がだと? おかしいに決まっているだろう。 貴様らの、おめでたい考えがなぁ!」
「キュウ!」
「ギャアッ! やめろ食べるな!」
「キュッキュゥ」
「すみません、すぐ説明しますから!」
魔人よ、モフモフに媚びへつらうってどうかと思うよ?
「き、貴様等はこの魔導兵器を操作できるつもりでいたようだが……、残念だったな、コイツにそんな機能はない。一度起動したが最後二度と止まらないのだ!」
「「「「「な、なんだってーっ!」」」」」
魔人の衝撃の発言に、皆が驚愕の声をあげる。
「当然だ、これは兵器なのだぞ! ふははははっ! 悔しかろう! 恐ろしかろう! だがこれが貴様等人間の運命なのだ!」
「けどこのままだとお前も死ぬよね?」
僕は魔人から奪ったマジックアイテムをちらつかせて言う。
「……」
魔人が急に沈黙する。
「く、くくくくっ、くはははははっ!」
けれど魔人は次第に哄笑を大きくし、僕を見つめる。
「取引をしないか人間?」
コイツ面白いなぁ。
「いや取引って言っても、止められないんでしょう? だったら取引なんてする意味もないじゃないか」
でもちょっと何を言い出すのか聞いてみたい気もする。
「まぁ待て。私の提案を飲めば、お前達だけでも助けてやろう」
ふむ、何か良いアイデアでもあるのかな?
僕が取り上げた転移のマジックアイテムは多分一人用、そうでなくてもこの魔人なしでも稼働できるだろうし。
「この奥にゲートがある。それを使えばここに居る全員を安全な場所まで転移させる事が可能だ」
「「「「「なっ!?」」」」」
魔人の提案に皆が驚きの声をあげる。
「装置の操作方法は私しか知らない。そして装置を起動させるには私の魔力波長が必要だ。ここまで言えば私の言いたい事は分かるな?」
つまり、この国の人間を見捨てて自分達だけは生き残ろうと言っている訳だ。
「選択肢などなかろう? 装置を解除する事が出来ないのなら、逃げるより他あるまい。なに、この国の人間を見捨てる事を後ろめたく思う必要などない。大事なのは、自分達だけでも生き残る事だろう?」
「っ!」
ノルブさんが歯を食いしばって魔人を睨む。
けれどそれに対して何を言えば良いのか分からず、言葉を紡ぐ事が出来ないでいた。
他の皆も似たようなもので、魔人に対して怒りの言葉を投げつけたいのに、それが出来ないでいる。
何しろ、この状況ではどうあってもこの国の人は助ける事が出来なくて、唯一出来るのが自分達が生き残る事だけなのだからだ。
怒りと罪悪感と後ろめたさが皆の言葉を奪っていた。
「ふはははははっ! そうだ、それで良い! どうせ人間など自分が一番可愛いのだ! だったら自分の欲望に正直になればよい! さぁ、そういう訳だから私を解放しろ!」
最高に楽しそうな顔で魔人が僕達に答を求めてくる。
「断る」
けれど僕は拒絶した。
「そうだろうそうだろ……何っ!?」
まさか断られるとは思っても居なかったらしく、魔人がギョッと目を見開く。
魔人だけじゃない、皆も驚いている。
「馬鹿な!? 死ぬつもりか!? このままだとお前達も全員死ぬのだぞ!?」
「問題ないさ。何故ならこれからこのマジックアイテムを解体するからね」
「……は?」
魔人がキョトンとした顔で僕を見る。
「え? ちょ、え? そんな事出来るの!?」
ミナさんが信じられないといった顔で僕に聞いてくる。
「出来ますよ。だってどれだけ大きくても、所詮はシンプルな機構のマジックアイテムですから」
そう、このマジックアイテムは対象の魔力を吸い取り、それを限界までため込んで大爆発を起こす装置だ。
それはつまり、実質的には魔力を吸収する機能だけがこのマジックアイテムの中核と言っても良かった。
「だからこのマジックアイテムから魔力を吸いとる機構を妨害すれば、これ以上魔力を吸い取る事は出来なくなるという訳です」
「馬鹿な、そんな事出来る訳が無い! 我らの魔道具技師でさえ発掘したこれを起動させる方法を見つけるので精一杯だったのだぞ!?」
ふむ、魔人達はこれを自分で作った訳じゃないのか。
発掘したっていう事は、過去の人間か魔人が作った物を再利用しているのかな?
「それじゃあ解析を始めるとしようか。皆は魔人の監視をよろしくね」
「お、おう、任せてくれよ兄貴!」
僕がまかせると、ジャイロ君が元気よく返事を返し、皆も任せて欲しいと力強く頷く。
「ではやってみますか」
僕は周囲にあるマジックアイテムの魔力の流れを調べていく。
魔力がどこから来てどこを通じて最終的にどこへ流れていくかを確認する為だ。
「ここに繋がって、ここを通って……やっぱり上に行くのか」
最初に見たときからそんな気はしてたけど、やっぱり魔力は上に向かって進んでいた。
そしてその目的地はおそらく……。
僕は飛行魔法で螺旋階段の中央から上に上がって行き、入り口を通り過ぎてなお上昇した。
「これが魔力を溜めるコアだね」
塔の天井、最上部にそれは存在していた。
一抱えもある大きな核石が、天井に埋め込まれていた。
「巨大な核石を利用した魔力集積装置。これをなんとかすれば、このマジックアイテムは爆発しない」
まずは爆発の危険を取り除く事から始めよう。
僕は魔法の袋から必要な魔物の素材を取り出し作業を開始する。
「メガロホエールの稚魚の髭を配線として使って、クラーケンの墨で術式をちょちょいっと……」
前々世の記憶を思い出しながら、マジックアイテムの活動を阻害する為の魔力放出装置を組み立ててゆく。
周辺の魔力経路は非常にシンプルな構造だから、装置もそんなに複雑な物にしなくて良いのが楽だなぁ。
そして十数分ほどかけて装置を完成させる。
「よし出来た! あとはこれをここにつけてっと……よしオッケー!」
僕は完成した魔力放出装置を核石に続く魔力経路に取り付ける。
するとメガロホエールから注ぎ込まれるはずだった魔力が核石に流れ込まず、途中に付けられた魔力放出装置から放出され始めた。
「うん、ちゃんと動いているね! これで爆発の阻止は成功」
装置の正常な動作を確認した僕は、次に魔力経路から核石を切り離す。
これで魔力放出装置を取り外したとしても、魔力はもう核石に注ぎ込まれる事はない。
「一応これは悪用されないように回収しておくかな」
僕はメガロホエールの魔力が注ぎこまれた核石を魔法の袋に回収する。
といっても、魔力がパンパンに注ぎ込まれた核石なんて危険すぎて売物には出来ないなぁ。
「みんなー、爆発の阻止に成功したよー」
僕は再び地下に降りて、無事解体が終わった事を皆に告げる。
「さっすが兄貴だぜ!」
「本当にやっちゃえるんだから驚きだわ」
「魔人のマジックアイテムを解体できるなんて、信じられない」
「レクスに常識は通用しない」
「けど、それがレクスさんよねぇ」
それって褒めてるのかなぁ?
「ば、馬鹿な!? そんな事が出来るわけがない! 一体何をしたのだ!?」
魔人はありえないと驚愕に顔を歪めさせる。
「いや、単に魔力を放出する為の装置を作っただけだよ」
「魔力を放出する装置?」
ミナさんが首をかしげる。
「マジックアイテムには本来、注ぎ込まれた魔力を必要なだけ使い、過剰な魔力は放出する機能が付いているんだ。これはマジックアイテムに負荷をかけて壊さない様にする機能で、大抵のマジックアイテムには付いているものなんだ。で、このマジックアイテムは爆発させる為に溜め込むのが目的だったから、当然そんな装置は付いていない」
「だからその装置を取り付ける事で塔が爆破されないようにしたって訳ね」
「そう、本来核石……魔石に注ぎこまれるはずだった魔力を手前でせき止めて別の方向に放出するようにしたから、もう魔石に魔力を注ぎ込まれる事もない」
ついでに言うと核石は回収済みだからね。
「し、信じられん。今の人間にそんなものを作れるはずがない……いったい貴様は何者なのだ?」
魔人が呆然とした顔で僕を見てくる。
おっ、これはライガードのあのセリフを言うチャンスじゃないかな?
「ふっ、ただの冒険者さ」
「「「「「いやソレは嘘だ」」」」」
「キュウ!」
皆否定するのが早いよ!?
「兎も角、これでもうこの塔は役目を果たす事は出来なくなった訳さ。あとはこっちの装置を破壊してしまえば、メガロホエールの魔力を吸収する事も出来なくなる」
このままだとメガロホエールはずっと魔力を吸収され続けるからね。
魔物とはいえ、誰かに利用されたままというのはちょっとかわいそうだ。
僕はさっき作った魔力を放出する装置を取り外し、今度は魔力経路とメガロホエールから魔力を吸収する装置との間に取り付ける。
これで魔力吸収装置に魔力が流れ込む事はなくなったから、今のうちにこれも分解だ。
「みるみる間にマジックアイテムを解体していってる。本当に何者な訳?」
ミナさんが呆れた様子で僕を見ているけれど、別に分解だけなら誰でも出来るよ。
「小さい子だって工具さえ与えれば何だって分解できますよ」
「いやその例えはおかしい」
そうかなぁ?
僕は次々と装置を解体し、魔法の袋に放り込んでいく。
いやー、貴重な材料がただで手に入るっていいよねぇ。
「こっちの部屋にあるのはゲートか。へぇ、コレもメガロホエールの魔力を動力にしてたんだな」
もしかしたら以前カースドバイパーをゲートで召喚した魔人も、同じように強力な魔物の魔力を動力に使っていたのかもね。
「このゲートも解体しておこう。材料は何かに利用できるかもしれないし」
そしてしばらく時間をかけて、塔の中にあったすべての装置を僕は解体した。
既に塔の中を照らしていた魔力の灯りは消えうせ、皆の武器に灯していた魔法の光以外に灯りはない。
「さぁ、外に出よう。この塔も破壊してメガロホエールを自由にしてやらないとね」
「ええそうね」
僕達は拘束した魔人を引きずって塔の外に出る。
そしてがらんどうになった塔の解体を始めた。
「マッシュナックル!!」
両手の周囲に高速振動する魔力塊を纏わせ、ノコギリで切る様に塔を分解していく。
あまり派手な魔法だとメガロホエールの体を傷つけてしまうからね。
塔を適度な大きさに切り分けつつ、少しずつ塔を解体していき地表部分まで解体が終了する。
体内に食いこんでいる部分は肉を傷つけないよう、反対側まで完全にカットしきらずに、ある程度まで削ったら身体強化魔法で無理やり剥ぎ取る。
「よし、あとはハイヒーリング!! トランスファーマナ!」
完全に塔を除去し終えた僕はメガロホエールに回復魔法と魔力譲渡魔法を唱えて傷と奪われた魔力を回復してやる。
「これだけの巨体だから、まだ完全に魔力は回復しないだろうけどもう魔力を奪われる心配はないからゆっくり回復するだろう」
メガロホエールが大きく鳴き声を上げる。
自分の命を危機に陥れていたマジックアイテムがなくなった事に気付いたのかもしれない。
「うわっ!?」
グラリと大きく地面が揺れる。
「な、何だ!? 何が起きたんだ!?」
「メガロホエールが動いている」
メグリさんの言うとおり、メガロホエールの体が動き出したようだ。
「あれ? ねぇ、陸地が遠くなってない?」
リリエラさんの言うとおり、メガロホエールの巨体の向こうに見える本物の陸地が少しずつ遠ざかっている。
「皆、すぐに飛んで避難するんだ! このままだとメガロホエールと一緒に外洋に出ちゃうよ!」
「わ、分かったわ!」
皆が慌てて飛行魔法を発動して飛び上がる。
おっと、魔人も回収しないとね。
上空から見ると既にだいぶ陸地から遠ざかっていたらしく、海岸はかなり遠くに見えた。
「みて、メガロホエール達が帰っていく」
メグリさんの言葉に皆が下を見ると、メガロホエールの周囲を稚魚達が囲むように泳いでいた。
時折その体に擦り寄る様に接触しているのは甘えているのか、それとも親の命が助かって喜んだのか。
「やっぱり、あのマジックアイテムが原因で陸地までつれてこられたんだな」
「元気でなー! もう魔人なんかに捕まるなよー!」
「人間とも関わっちゃだめよー!」
ジャイロ君達がメガロホエールに大声で呼びかける。
既に彼等の中でメガロホエールは危険で巨大な魔物から、魔人によって酷い目にあわされた被害者としてしか映っていないみたいだ。
その時だった。突然メガロホエールがとんでもなく大きな声で鳴いたかと思ったら、一際大きな潮を吹いたんだ。
「げげっ!? なんで攻撃してくるんだよ!?」
「私達アンタを助けたのよー!?」
皆で慌ててメガロホエールの潮が届かない安全圏まで避難する。
潮は勢い良く吹き上がって周囲の海域に大量の海水と骨岩を降り注がせてゆく。
「だいぶ沖に出ているから、陸地に被害がないのが不幸中の幸いかな」
メガロホエールの潮吹きはまだ続いていて、大量の海水がキラキラと光り輝いていた。
「遠くから見る分には綺麗なのよね」
リリエラさんが呆れたような口調で潮の輝きを眺めている。
確かに、安全圏から見ればとても綺麗だね。
「けど、なんだか妙に長いなぁ」
何故かメガロホエールの潮を噴く時間が長い気がする。さっきの潮噴きはここまで長くなかったし、前世の記憶でもそうだった。
「何か光った」
「え?」
メグリさんの言葉に空を見ると、確かに何かキラリと光るものが潮の中を上昇している。
そして潮の頂点に達したソレは……
「こっちに飛んできた!?」
そう、僕達に向かって飛んできたんだ。
「よ、避けろぉぉぉぉぉ!!」
ジャイロ君の絶叫に皆が慌てて従う。
全員が文字通り飛んで逃げると、ソレは僕達が居た場所を通り越して海面へと落下していった。
キラキラとした輝きに身を包みながら。
「今のは骨岩じゃない!?」
落下していったそれが気になった僕は、急降下してソレを追いかける。
「お、おおおおおおっ!?」
掴んでいた魔人の悲鳴が聞こえるけど、それは無視しておこう。
そして落下していくソレに追いついた僕は、驚くべき物を見た。
「これは巨大な宝石!?」
そう、メガロホエールの潮から飛び出してきたソレは、透明な海の色をした宝石だった。
しかも大きいなんてもんじゃない。文字通り巨大で僕の身長よりも更に大きい宝石の原石だった。
「もしかして、メガロホエールからのお礼?」
なんて考えが思い浮かんだけど、さすがにそれは考えすぎかな?
「まぁでも、くれたと考えた方がロマンチックではあるかもね」
僕はそっと巨大な宝石の原石を魔法の袋に収納するのだった。
「ありがとうメガロホエール」
僕のお礼に応えるように、はるか水平線の彼方で小さくなったメガロホエールが再び雄叫びを上げたのだった。
(・∃#)∠鯨「アリガトナス」
(:3 」∠)魔人「気がついたらマジックアイテム解体されたんだが、どういう事?」
Σ(:3 」∠)哀願動物「そらお前ぇ相手が悪かったのよ。まぁ海水でも飲めや」
(:3 」∠)魔人「しょっぺぇ」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。