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第53話 海の国と空の修行

_(:3 」∠)_台風と低気圧の所為かモチベーションの維持が……


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「この度は危ないところを助けて戴き感謝する、私の名はメイリーン・カザティアと言います」


 ずぶ濡れになった女の人が僕達に敬礼をしながらお礼を言ってくる。

 この人はつい先ほどまでメガロホエールに追われていたヴェルティノ船団を指揮する船長さんだった。


 運悪く謎の大波に襲われて転覆した船から彼女達を救助した僕達は、海路の端に船を停めて話し合いをしていた。


 あっ、ヴェルティノの船は僕が責任を持って回収したから大丈夫だよ。ちょっと壊れていたけど、修理すれば大丈夫らしいから問題なしだね。

 うん、全滅するのに比べたらちょっと転覆してびしょ濡れになるくらい全然たいした被害じゃないね!


「私の名はバーン・ドバッグ! ティオン国内大海騎士団団長にして最新鋭戦艦グッドルーザー号の船長だ!」


 いつかの挨拶とまったく同じ内容でバーンさんが自己紹介をする。もしかしたら気に入っているのかもしれない。


「ティオン国の方でありましたか。よもやあの常識外れの魔物を撃退されるとは、見事というよりほかありません」


「いやいや、私は命令しただけでたいした事はしていないさ。すべては優秀な部下達の活躍のお陰だとも」


「なんと謙虚な……」


 凄い、会話がかみ合っていないのに成立している。


「どうぞ、皆様これでお体を拭いてください」


 どこまでも脱線していく会話に対しタオルを差し出す事で、副長が会話に入り込む。


「これはかたじけない」


「ところで船長、そろそろ本題に入りませんと」


「おお、そうだったな」


「本題……ですか?」


 副長の軌道修正のおかげで、バーンさんが本来の目的を思い出す。


「ええ、我々が河口までやってきたのは、先ほどの魔物を調査する為なのです」


「あの魔物について何かご存知なのですか!?」


 僕達がメガロホエールについて調べに来たと知り、メイリーンさんは血相を変えてバーンさんに説明を求める。


「良いでしょう。我々としても魔物の調査に関しては、ヴェルティノの方々と詳細な話し合いをする事を望んでおりましたからな」


「それはありがたい。我々としてもあの魔物には悩まされていたのです」


「お、おおう!?」


 メイリーンさんが笑顔を浮かべてバーンさんの手を握ると、バーンさんが分かりやすく顔を赤くして狼狽する。

 濡れた髪を拭いたものの、柔らかい髪質なのかメイリーンさんの長い髪がしっとりと肌に張り付いてそこはかとなく色っぽい。

 そっかー、バーンさんは色っぽい人がタイプなのかー。うん、割とどうでもいい情報だけど。

 とまぁ、そんなこんなで、僕達はヴェルティノ国へと向かう事になるのだった。


 ◆



「という訳で、僕等はバーンさん達の打ち合わせが終わるまで待機となりました」


 バーンさんとヴェルティノの人達は、この国のお城へ会議に出かけた。

 ヴェルティノは海辺の国だからか、王都も海辺に作られており、河口からほど近い位置に存在していた。

 けれど僕達は平民なので、バーンさん達と一緒に行く事は出来ない。

 だから本来なら他の船員さん達と共に船でお留守番する予定だったんだけど、メイリーンさんの計らいで僕達は彼女の別荘を貸してもらえることになった。


「我々の命の恩人ですからね。この程度の事でしか恩を返せないのが申し訳ないくらいです」


 と言ってポーンとゴージャスな別荘を貸してくれたんだ。

 それも使用人付き、プライベートビーチ付きの別荘を……


「うぉぉー! すげぇぜ!」


「別荘なのに凄い豪邸……もしかしてあの人物凄いお嬢様なんじゃ……」


「これ、船が転覆した原因が私達にもあるって言えないわよね」


 はしゃぐジャイロ君に対して、リリエラさんとミナさんが驚愕と後ろめたさで顔を青くしている。

 大丈夫、悪いのはメガロホエールだから。だから……ワンチャンあるよ!


「ともあれ、陸地に泊まれるというのはありがたいですね。やはりずっと船の旅というのは疲れますから」


 あー、確かにそれは分かるかも。

 僕も前世で海の向こうの大陸を救いに行った時は、陸地に上がって心底ほっとしたもんなぁ。

 帰る時もまたこの海を渡るくらいなら、もうこの大陸の人になろうかと思ったもん。


「それじゃあヴェルティノの町へゴーッ!」


「はいストップ」


 僕は興奮してヴェルティノの王都へ向かおうとするメグリさんの首根っこを掴んで捕獲する。


「放して! 王都は逃げる!」


「逃げないって。それよりも皆にはこれから覚えて欲しい事があるんだ」


「「「「「覚えて欲しい事?」」」」」


 皆の視線が僕に集まる。


「うん、皆には飛行魔法を覚えて欲しいんだ」


 そう、せっかく時間が出来たんだから、以前からリリエラさんに要求されていた飛行魔法を皆に教えることにしたんだ。


「マジで!? 俺達も兄貴と同じように空を飛べるようになるのか!?」


「訓練しだいではね」


 飛行魔法を覚えると聞いて、皆も真剣な顔になる。


「確かに覚える事が出来たら便利よね。どんな場所だろうと地形の問題を無視できるようになるんだから。」


「ええ、特に今回の依頼を遂行するには、飛行魔法が重要な意味を持ってくると思うわ。空を飛べるようになれば、魔法使いでない私達でも水上の敵とも剣や槍で戦えるようになるし、何より緊急時の避難方法が出来るのは大きいわ」


「そうですね、回復役としても迅速に目的地に到着できるのは利点が大きいと思います。尤も移動に魔力を使いすぎないように注意は必要でしょうけど」


「いいから早く覚えて王都に行きたい!」


 メグリさんだけマイペースだなぁ。


「じゃあこれから飛行魔法の訓練をするから、皆これに着替えて砂浜にあつまってね」


「「「「「はい!」」」」」


 ◆


「という事で、これから飛行魔法の訓練を行います」


 集まった皆に、僕は訓練の開始を宣言する。


「ちょ、ちょっとまって。その前に聞きたい事があるんだけど」


「なんですかリリエラさん?」


「なんですかじゃないわよ! 何なのこの訓練着! ほとんど布地が無いじゃないのよ!」


「え? ちゃんとあるじゃないですか」


 リリエラさん達は僕が用意した水着を着ていた。

 僕達男性陣は普通のパンツ型を。リリエラさん達女性陣はビキニタイプの水着だ。


 一応前世でサバイバル生活になったときのための衣服の作り方を習っておいてよかった。

 もしも海辺の国に来る事があったら、飛行魔法の練習をする為にと用意しておいて良かったよ。

 今回はサバイバル環境下じゃないから、あらかじめ材料を用意しておく事も出来たのが幸いしたね。


「こ、これ下着じゃないの! 全然訓練着じゃないわよ!」


「レクスのエッチ……」


 何故か女性陣が妙に恥ずかしがっている。

 皆内陸の国の人間だから水着を知らないのかなぁ?


「いやー、いい光景だよなぁ」


「いえその、ちょっと僕には刺激が強いかと……」


 ニマニマと笑みを浮かべるジャイロ君に対し、ノルブさんは顔を真っ赤にしてうつむいている。

 あ、鼻血出した。


「下着じゃなくて水着ですよ。これは水辺で遊んだり活動する為の衣装なんです。ちゃんと水に強い魔物の素材を使っているんですよ」


 うん、海で訓練するのなら、やっぱり水着が必要だからね。

 ちなみに全員のサイズが分からなかったので、紐で長さを調整するタイプの水着になっていたりする。


「何で飛行魔法の訓練で水が関係してくるのよ!」


「勿論空を飛ぶために必要だからです」


「納得のいく説明を求めるわ!」


 うんそうだね。説明は大事だ。

 訓練を始める前に失敗した時の対処法をちゃんと教えないと。


「良いですか皆さん、飛行魔法は空を飛ぶ魔法です。ですがそれはとても危険な魔法でもあるんです」


「ただ飛ぶだけで危険なんですか?」


 ノルブさんが手を上げて疑問をぶつけてくる。


「その通りです。皆も考えてみてください。人間には鳥のように羽根がありません。つまり本来なら人間は飛べないんです」


 僕の言葉に皆がうんうんと頷く。


「そして今回は魔法を使って飛べない人間を無理やり飛ばせようというのが訓練の趣旨です。ここまでは良いですか?」


「「「「「良いでーす」」」」」


「では次に行きますね。訓練を続けて実際に空を飛べたとします」


「「「「「うんうん」」」」」


「でも次の瞬間制御に失敗して地面に落ちたら人間はどうなりますか? はいリリエラさん」


「え? 私? ええっと……高さによっては死んじゃうかも。良くて大怪我?」


「はい、その通りですね。身体強化魔法を発動させれば多少は耐えられるかもしれませんが、それでも限度はあります。そしてパニックに陥っている時に都合よく身体強化魔法を発動させる事が出来る保証はありません」


 そこで僕は目の前の海を指差す。


「だからこの海で訓練をする事にします」


 そこでようやく水着の意味を悟ったミナさんが声を上げる。


「そっか、水の上なら落ちても怪我をしない!」


 それでもあんまり高いと怪我をするけどね。


「そう、だから濡れても良い水着です」


「「「「「なるほどー」」」」」


 ここでようやく水着を着る事に対して納得の声があがる。


「でももう少し厚着にならない訳? ちょっと肌を出しすぎて恥ずかしいんだけど」


「布が多いと水を吸って溺れやすくなるんですよ」


「俺は別に水着でも良いぜ!」

「恥ずかしいから……早く覚えて着替える」


 ジャイロ君は楽しげというか嬉しそうに声をあげ、メグリさんは頬を赤らめつつもやっぱり王都が気になるらしく、視線が泳いでいた。


「じゃあ飛行魔法の訓練を始めますね。飛行魔法には色々種類があるけど、大事なのは己の属性と適性にあったイメージです」


「適性というのは何?」


 自分の知らない魔法技術という事でミナさんが積極的に質問をしてくる。


「そうだね。たとえば風魔法が得意な人は自分が風になったイメージや、体に風をまとわり付かせたりするイメージを持ちながら飛行魔法を操作するそうだよ。でも、別の属性になるとまったく同じイメージは無理だね、たとえば土属性の魔法が得意な人が体に土をまとわり付かせるイメージを持っても空を飛べる気にはならないでしょ?」


「つまり自分なりの空が飛べそうなイメージが必要ってこと?」


「そう、更に言うとジャイロ君が使うらしい火の属性強化を使った高速移動も、出力を上げれば飛行に使えるよ」


「マジで!? 俺もう空飛べるのか!?」


「上手く出力を調整すればね」


「よっしゃやってみるぜー!」


 言うやいなや、ジャイロ君は身体強化魔法を発動させ、自分の後ろから炎を噴出させる。


「うぉぉぉぉぉぉ!!」


 気合を入れたジャイロ君の体の後ろから炎が噴出し、ふわりと宙に浮き上がる。


「「「「と、飛んだ!?」」」」


 皆が驚きの声を上げると共に、ポヒュッっという音と共にジャイロ君が墜落した。


「ぐえっ」


「大丈夫かいジャイロ君?」


 倒れたジャイロ君に近寄っていくと、ジャイロ君が疲れ果てた顔で体を大の字にする。


「なんだこれ、滅茶苦茶疲れるぞ」


「あー、無駄に魔力を放出しすぎてるんだよ。ジャイロ君みたいな飛び方をする人は力を出す場所を絞らないと」


「絞る?」


「そう、全部一気に出すんじゃなくて、小さく絞って勢いを増すんだ。こんな感じで」


 そう言って、僕は足の裏に炎の魔力を噴出させ、空へと舞い上がる。


「最初のうちは姿勢制御が難しいだろうから、こうやって手からも魔力を噴出させてバランスを取るといいかもね」


 そういって手のひらや指先から炎を放出して体のバランスを変えていく。


「おおー! あんな風に飛べばいいのか! よっしゃ魔力が回復したらやってみるぜ!」


「がんばれー」


 やる気満々だね。


「あの、さっきの説明だと、地属性の防御が得意な僕は空を飛ぶ才能がないんでしょうか?」


 と、ノルブさんがショボンと気落ちした様子で質問してくる。


「心配いりませんよ。さっきも言いましたけど、大事なのは自分の適性に合ったイメージです。地属性の人だと、空に見えない地面があるイメージにすると良いらしいですよ」

「見えない地面ですか?」


「ええ、飛ぶために魔力を体にまとわり付かせるのではなく、魔力の力場を足元に作ってその上に乗るんです。こんな感じに」


 と、僕は空中にジャンプし、魔力で作った足場に乗って空中に静止する。


「空中で止まった!?」


「とまぁこんな感じで、自分が空を飛ぶならどうやって空を飛ぶか、自分の得意な属性をどう使えば空を飛べるのかって考えるのが飛行魔法のコツなんだ」


「つまり飛行魔法は一種類じゃないって事なのね」


「その通り。飛行魔法は魔法使いの数だけあると言われるほど種類が多い魔法なんです。だから自分なりの飛び方を考えてみてください」


「上手くできるかしら?」


「とにかくやってみる!」


 自信のないミナさんに対し、メグリさんはとにかく空を飛んでみようと、体に魔力を纏わせながら空中にジャンプを繰り返している。


「あと皆飛ぶときは海に向かってやってくださいねー。一応何かあったら受け止めるけど、うっかり間に合わない危険性もあるから」


「「「「「分かりましたっ!!」」」」」


 うんうん、命がかかってるから、皆真剣な返事だね。


 ◆


「うぉぉぉぉぉっ!?」


 空に飛び上がったジャイロ君が姿勢制御に失敗して海に墜落する。

 勢い良く飛び上がったから、落ちる時も勢いよく突っ込んだ。


「うわわわっ!?」


 空中に発生させた力場の出力が足りなくて、ミナさんが魔力の床を踏み抜いて落ちた。

 ちょっとパントマイムみたいで面白かった。


「うきゃあっ!?」


 メグリさんが風の操作に失敗して、くるくる回りながら海に落ちた。


「あーれーっ!」


 ノルブさんはじわりじわりと空中に浮かんていたんだけど、前に飛ぼうと移動を始めたら浮く力を維持できなくなって海に突っ込んだ。


「あわわわわっ」


 リリエラさんは結構な勢いで飛び上がり空中を上手く飛べたかと思ったんだけど、曲がるのに失敗してそのまま海に落ちていった。


「まぁ最初はこんなモンだよね」


 ここならいくら失敗しても怪我の心配はないから皆頑張ってね。


「キュキュキュウ!」


 そんな中、モフモフが海面を走りながら飛び上がった魚を捕らえた。

 そして水上でおいしそうに魚を食べ始める。


 あれ、まるで水上を歩いているみたいだけど、実は飛行魔法を使っているんだよね。

 海の上を走っているように飛ぶなんて、随分と器用な飛び方だよ。


「くっそー、アイツに出来るのになんで俺に出来ないんだよ」


「っていうか、本当になんなのあの生き物?」


 皆が飛行魔法をマスターしたモフモフに視線を投げかけると、それに気付いたのかモフモフが皆の方を見てニヤリと笑う。


「プキュッ」


「「「「「っ!?」」」」」


「ヤロウ! 今鼻で笑いやがったな!」


 いやいや、相手はモフモフだよ?


「けだもののクセに魔法使いである私を哀れんだわね!」


ちょっとちょっと、落ち着いてミナさん。


「神は仰いました。汝慢心する事なかれと。あまり己の力を過信しない方が良いかと思いますよ」


 ああノルブさんまで。


「……王都に行くのは少し後にする。今から本気になる」


 うん、メグリさんは最初から本気になってください。


「……」


 良かった。リリエラさんは冷静だね。


「偶然を装って海に引きずり込んでやる」


 ダメだ! 全然冷静じゃない!


「やるぞオラァァァ!」


「「「「おーっっ!」」」」


 まぁ、やる気になったのなら良いのかな?


「ウキャー! 水着が流れたー」


「ブフーッ!」


「今取ってきますから。あとノルブさんは自分で回復魔法を使ってください」


「うぉぉぉぉぉ! 上手く姿勢が維持できねぇー!」


「ジャイロ君、落ち着いて。慌てる前に出力を下げる。それが加速系の魔法の鉄則だよ。ほらこうやって」


 加速しすぎて今どっちを向いているのか分からなくなっているジャイロ君に一旦出力を下げるようアドバイスをする。

 そして僕も足の下から炎を出して高速で飛行し、今度は落ちない程度の出力まで下げて高度を維持する。あとはどんな角度や姿勢でも良いように手のひらから炎を出して姿勢を維持した。


「ねっ」


「よっとと、出力の維持が難しいわね」


「ミナさん、無理に同じ出力を維持しようと考えないで、最初に少し強めに浮き上がって、次は滑空しながら姿勢を制御してください。ほら、こうして」


 安定した術の発動に苦労しているミナさんには段階的な制御を教える。

 一度加速したら、そこで加速を止めて体の下に風の膜を張って滑空する。

 滑空する時は姿勢の制御にのみ集中だ。


「困ったときは一つずつ解決しましょう」



「こ、これなら! あわわっ」


「ノルブさん、そのタイプなら自分の体を持ち上げて運ぶイメージにしてみてください。大きな手が自分を持っている感じです。こんな感じで」


移動が上手くいかないノルブさんには他人が自分を運ぶイメージを勧めてみる。

 僕も己が誰かの手に握られた人形になったつもりで体を浮かばせる。

 そしてイメージの手が僕の体を持ち上げてまるで人形遊びをしているかの様に動かす。


「コツは自分の手の中に自分の人形がある感じです」


「よっとっと。ぬぬぬぬっ」


「メグリさん、風を支配しようとしないで、風が自分を運んでくれる感じにしてみたらどうですか? ほらこんな風に下から持ち上げて貰うように」


 メグリさんが風の制御に苦労していたので、僕はもっと彼女らしい自由な風のイメージを提案してみた。

 僕は自分の下から風が吹き上がるイメージで体を風に乗せてみせる。

 そして僕を持ち上げた風が好きなところに運んでくれる感じで風を操作した。


「ほら、どんな姿勢でも風が持ち上げて運んでくれるから落ちたりしませんよ」


「くぅー! うわっ! あぶぶっ」


「リリエラさん、落ち着いて。いつも一緒に飛んでる時の事を思い出してください。飛ぶときはもっとゆっくりで良いんですよ。体を風に包まれるイメージを持つんです」


 空中でフラフラとしているリリエラさんには、僕の飛行イメージが合いそうだったので、手を繋いで一緒に飛んでみた。


「いつもの飛び方の時に自分が一番不安に思う部分をなくす所から始めてみましょうか」


 そして日が暮れる頃になり……。


「よっしゃー! 飛べるぜー!」


「後は長時間飛ぶ為のペース配分ってとこかしら」


「だいぶ慣れてきました。速く飛ぶのは難しいですが、そのぶん同じ場所に居続けたりと繊細な動きができますね」


「うん速く飛べるようになった。これで王都までビューっと行ける!」


「あー、自分で飛べるって良いわぁ。これで他人の飛行魔法に頼る足元が不安な生活とはおさらばよ!」


 皆すっかり飛ぶのが上手くなったね。


「うん、これだけ飛べれば大丈夫だね」


 これなら今度何かトラブルがあっても対応の幅が広がるぞ!


「ただね、私ちょっと納得いかない事があるのよ」


「あ、俺も俺も」


「多分私もだわ」


「実は僕も」


「同じく。私達は凄く苦労したのに」


 と、なにやら皆が僕の方を見つめてくる。


「ええと、どうしたの皆?」


「「「「「なんで当たり前の様に全員と同じ飛び方が出来るわけ!?」」」」」


 あれー? 何だか理不尽な理由で文句を言われた気がするぞー。

Σ(:3 」∠)哀願動物「フハハハハッ! 凡百の民は大変よなぁ(愉悦)」

 (:3 」∠)ドラスレ/リリ「お前も海に落ちてみろー!」

Σ(:3 」∠)哀願動物「ギニャー!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 凄い、凄いよこの人達!会話がかみ合っていないのに成立している。
[良い点] 女性陣水着回、キャキャうふふでないがお色気回ありがとうございます。
[一言] 確実に成長する、レクスの舎弟たち
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