第46話 帰ってきた平和な日々
_(:3 」∠)_皆様、先日は沢山のお見舞いのお言葉をいただきありがとうございますー。
_(:3 」∠)_とりあえずこれで王都編は完結。次回より新展開でございまする。
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「ジャイロさんが討伐された魔物は、Aランクが5体とBランクが12体、それにCランクが8体にDランクが13体です」
「「「「「おおー!」」」」
「マジかよ!? ナニモンだあのガキ!?」
ジャイロ君が討伐した魔物の多さに、討伐に参加していた他の冒険者さん達が驚きの声を上げる。
大規模討伐の終了が宣言された後、僕達は荒野に設置された冒険者ギルドの出張窓口で倒した魔物の査定をしていた。
特にリリエラさんとジャイロ君は討伐勝負をしていたので、結果が気になるところだろう。
「次は私ね」
リリエラさんが魔法の袋から自分が討伐した魔物の死体を取り出して並べていく。
ああそうそう、リリエラさんやジャイロ君達には僕が作った魔法の袋を渡しておいたんだ。
なにしろ今回は大規模討伐だから、いちいち窓口に運んでいたらいろいろと面倒そうだったからね。
「ええと……リリエラさんが討伐された魔物は、Aランクが8体とBランクが15体、それにCランクが15体ですね」
「「「「「おおー!」」」」」
「あの姉ちゃんもタダモンじゃねぇな!」
「アイツ等一体何者なんだ!?」
と、いう事は38対38で勝負は引き分けだね。
「くっそー! 引き分けかよー!」
引き分けと聞いてジャイロ君が納得いかないと唸る。
「いいえ、ジャイロの負けよ」
けれどミナさんがジャイロ君の敗北を宣言した。
「は? 引き分けなのになんで俺の負けなんだよ」
ジャイロ君の言葉に、ミナさんが分かってないなぁといった顔になる。
「答えは質よ」
「質?」
ミナさんの言葉に僕等は二人が狩った魔物を見る。
「ああ、なる程討伐した魔物のランクですね」
と、ノルブさんがミナさんの真意を理解する。
「おいどういう事だよノルブ?」
まだ理解していないジャイロ君が、ノルブさんに説明を要求する。
「つまりですね、数こそ同じですが、リリエラさんの方がランクの高い魔物を多く狩っているという事です」
「それだけじゃないわ。ジャイロは倒せば良いって戦い方をしていたから、素材の状態が良くない。買取り価格はけっこう下がるでしょうね。でもリリエラさんが討伐した魔物は最低限の損傷になるように気を使われているわ」
「マジかよ……」
言われて初めてその事実に気付くジャイロ君。
まぁこの辺りは経験の差なんだろうね。
ジャイロ君よりも冒険者歴の長いリリエラさんは、その辺りの加減が無意識に出来ていたという訳だ。
「そういう訳で、この勝負はリリエラさんの勝ちね」
「くっそー! 負けたぁーっっ!」
ジャイロ君が地団駄を踏みながら悔しがる。
「まぁそうは言っても、数の上では同じだから私も偉そうな事は言えないんだけどね」
と、リリエラさんが謙遜すると、ジャイロ君が地団駄をやめてリリエラさんを見る。
「いや、負けは負けだ! 今回は素直に負けを認めるぜ。今はまだアンタの方が上だ! けど次に戦ったら負けねーぜ!」
「ええ、楽しみにしてるわ」
そう言って二人は握手をする。
うんうん、二人の勝負は綺麗にまとまったみたいだね。
「次はレクスさんの番ね」
と、リリエラさんとジャイロ君が僕を見つめる。
「あんまりたいした獲物は狩ってないんだけどね」
僕は討伐した魔物を地面に置いていく。
「お、おい、あの獲物なんかやたらとデカくねぇか? どこから引きずってきたんだよ!?」
「アイツはアレだよ。Sランクと勝負して勝ったっていう新人だ」
「サイクロンのロディと戦って勝ったってヤツか!?」
待って、なんで僕がロディさんと直接戦った事になってるの!?
僕がしたのはあくまで魔物の討伐競争だよ。
「あとは、グリーンドラゴンですね」
そして全ての魔物を並べた僕は、最後にグリーンドラゴンを取り出して受付の人に査定をお願いする。
「「「「ド、ドラゴンだってぇぇぇぇ!?」」」」
周囲の人達が驚きの声をあげるけど、グリーンドラゴンはこの間も倒したし、そう珍しい生き物じゃないと思うんだけどな。
「しょ、少々お待ちください」
受付の人が近くを歩いていたほかの職員さんを呼ぶと、何人かの職員さん達で手分けして査定が始まる。
そして皆が見守る中、全ての査定が終わった。
「えー、レクスさんの査定結果はですね。ドラゴン1体、Sランク9体……」
「Sランクを9体だって!?」
「一体どうやって倒したんだ!?」
周りの冒険者さん達が再び驚きの声を上げる。
「さっすが兄貴だぜ」
「まぁこの程度は予想通りよね」
逆にジャイロ君達は特に驚く様子も見せていない。
まぁグリーンドラゴンと弱い方のSランクだもんなぁ。
「そしてAランクが25体、Bランクが34体、Cランクが57体です」
「「「「「多っ!」」」」」
うん? そんなに多くないと思うよ?
たまたま王都に向かってくる魔物達を一網打尽にしただけだから。
「分かってはいたけれど、結果を言葉にされると私達の勝負なんてちっぽけな意地の張り合いだったわね」
「兄貴は今回大物狙いだから、数だけなら勝てるかもって思ったんだけどなぁ。まさか三桁とは……」
「ああ、アンタそんな事考えてたから、手当たり次第に倒してたのね」
ジャイロ君の呟きに、ミナさんがなる程と納得する。
「だってよー、兄貴と一緒に討伐に参加したんだぜ。だったら勝負したいじゃねーか。つっても、数でもあっさり負けちまったけどな」
こうして、大規模魔物討伐の最後は和やかな空気で終わりを迎えた。
でも、その裏で大きな事件が起きていた事を、この時の僕達はまだ知らなかったんだ。
……ところで何かを忘れているような?
◆
数日後、大規模討伐を終えた僕達はギルドでまったりとしていた。
他の冒険者さん達も、大規模討伐が終わった直後は懐に余裕があるからか、皆のんびりしていたんだけれど、何故か今日はギルド内の空気がおかしい。
冒険者さん達だけでなく、職員の人達も浮き足立っているみたいだ。
「やぁ、景気はどうかな? 聞いたぞ、そっちはドラゴンを討伐したんだって?」
と、そんな僕達の下へ、Sランク冒険者のロディさん達がやって来た。
「あっ」
そうだ、何か忘れていると思ったら、ロディさんの事を忘れていたんだ。
「ん? どうした?」
「ああいえ、何でもありません。そういえば、ロディさん達は大規模討伐どうでしたか? やっぱりSランクの魔物を沢山狩ったんですか?」
ロディさん達はSランクの冒険者チームだ。
きっと沢山のSランクの魔物を討伐したんだろうな。
「いや、俺達は今回Sランクの魔物は討伐していない」
「え?」
それは意外だ。てっきり沢山のSランク魔物を討伐していると思ったのに。
「俺達もギルドからSランクの魔物が居たら率先して討伐して欲しいと頼まれたんでな、担当エリア中を回ってSランクの魔物を探していたんだ。だが何故か一体も見当たらなくてな、結局探し回っている間に遭遇したほかの魔物とばかり戦っていたよ」
ああ、そういえば僕がSランクの魔物を討伐したのも、指定されたエリアの外だったからなぁ。
けど、ロディさん達のチームは探査魔法を使える人が居ないのかな?
アレを使えば周囲数キロメートルの魔物達の居場所を探る事が出来る筈なんだけど。
「とはいえ、どのみちドラゴンを討伐なんてされたら、俺達の負けは確定な訳だがな」
はははっ、とロディさんが乾いた笑いを浮かべる。
でも討伐したのはグリーンドラゴンだからなぁ。
あんまり大手を振ってドラゴンを倒したぞーって言えないんだよね。
「まぁ、それはもう終わった話だ。それよりも聞いたか? とある貴族がクーデターを企てていて、何故かそれを実行せずに自首してきたって話を」
「クーデター!?」
また物騒な単語が出てきたなぁ。
「ソイツが自首してきた事で、一緒に動いていた貴族家も芋蔓式に捕らえられているそうだ」
「へぇー……あれ? でも実行せずに自首って一体?」
「なんでも、クーデターの戦力として準備していた魔物達がこの間の大規模討伐であらかた狩りつくされたのが原因らしい」
「クーデターの戦力ってどういう事? 私達が戦ったのは魔物でしょ?」
ミナさんがロディさんの言葉に疑問を抱く。
「それなんだが、クーデターの犯人は古の秘術を使って魔物を操る方法を編み出したそうだ」
「「「「魔物を操る方法!?」」」」
ん? 皆が驚きの声を上げるけど、魔物の支配はわりと昔から研究されてた事だし、それなりに成功例もあるんだよね。
もちろんどんな魔物でも操れるって訳じゃないけどさ。
「しかもそんな戦力を隠し持っていた連中の正体が、この国の騎士団だったというから驚きだ」
「「「「「「騎士団がクーデター!?」」」」」」
思わず大きな声が出てしまった事で、周囲の人達の目が僕達に向いてしまう。
「ああ、既に情報通の連中はこの情報を手に入れていろいろと動いているみたいだぞ」
なる程、だから今朝は妙に冒険者さん達や職員の人達が浮き足立っていたわけだ。
「国を守る騎士団が不祥事を働き、あまつさえ自首してきたんだからな。上層部はおおわらわさ。で、そのしわ寄せが冒険者にも来るかもしれないってんで、皆ピリピリしている訳だ」
確かに、騎士団の仕事は国を守る事だけど、盗賊団や大きな魔物の群れの討伐も本来は騎士団の仕事だもんね。
騎士団がそうした仕事をできなくなったら、冒険者ギルドに大規模な依頼が回ってくるかもしれない。
儲け話なのは間違いないけど、危険度も大きく増す事だろうね。
「でも何で自首なんでしょう? まだクーデターをしてなかったのなら、黙っていればよかったのに」
「ああ、なんでも切り札として用意したドラゴンを操る事に失敗しただけでなく、そのドラゴンをあっさりと倒された所為で心を折られたらしい」
へぇ、クーデターの為にドラゴンなんて用意してたんだ。
きっと強いドラゴンだったんだろうなぁ、ゴールドドラゴンかな? それともエンシェントドラゴン?
「そんなドラゴンを倒すなんて、とんでもない冒険者が居たもんですねぇ」
「「「「「「「「お前の事だよっっっ!!」」」」」」」」
ええ!? 何でギルド中の皆が突っ込んでくるの!?
クーデターに使うようなドラゴンがグリーンドラゴンの訳ないじゃないですか!?
「まったく、国を救ったというのに、自覚が無さ過ぎだわ」
「まったくだぜ。まぁ、その方が兄貴らしいんだけどな」
と、何故か皆に呆れられてしまったのだった。
_(:3 」∠)_ 主人公「ドラゴンとか普通に倒せますよね?」
_(:3 」∠)_ 全員「(ヾノ・∀・`)ないない」
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