第45話 切り札と結末
_(:3 」∠)_まだ具合悪いですー。
_(:3 」∠)_ぼーっとしながら書いたのでちょっとおかしいところがあるかもしれません。
_(:3 」∠)_そんな場面をみつけたらそっと感想でコメを下さるとありがたいです。
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
我は魔物達の頂点たる者。
今我は主と離れ一人狩りをしていた。
何せ主が一緒だと先に獲物を狩られてしまうからな。
それなら大物を譲ってでも別行動を取った方が、好きに食事が出来る。
それに今この地には、非常に食欲をそそる匂いをさせる魔物達であふれ返っていた。
しいて言うなら、人間が食料に色々なモノを付け加えて味を変える行為に似ているな。
これがまたたまらず、人間がわざわざ手間を掛けて味を変える行為に腐心する気持ちも理解できるというものだ。
「ガォォォォッ!!」
更にいうと、こやつ等は非常に戦い易い。
訳のわからない事を喚いて襲い掛かってくるので、何を考えているのかまでは分からぬが、その戦い方は己の力をまるで活かしておらず、まるで人間の様な戦い方だった。
わざわざ自分達の戦い方を捨ててまで人間の真似をするとは、誠に愚かなものよ。
まぁ、我にとっては食べやすいので楽ができるという程度の事でしかないがな。
◆
次々に魔物達が討伐されてゆくのを見て、私はついにある決心をした。
「こうなれば、冒険者共を無視して魔物達を王都に向かわせるのだ!」
そう、クーデター計画を早めるのだ。
「そんな!? まだ早すぎます団長! クーデターは万全の準備を終えてから始める予定だったではありませんか!」
部下が私に意見してくるが、既に状況は動いているのだ。
「馬鹿者! 我々の切り札である魔物軍団が無力化されつつあるのだぞ! 今動かねば戦力は減るばかりだ! そうでなくても最近は魔物避けのポーションの所為で魔物が減っているのだからな」
まったく、何者か分からぬが、あのポーションが市場に流れ始めた事で、我々の魔物集めにも支障をきたすようになってしまった。
「ですが、Bランク以下の魔物は兎も角、Aランクの魔物が相手ですと支配には慎重な制御が必要となります。ましてSランクの魔物はいまだ完全な制御が出来ず、暴走すれば民が被害を受ける危険がありますぞ」
ふん、平民が多少被害を受けたくらいでなんの問題があるというのだ。
「更に言いますと既にS、Aランクの上位の魔物を討伐されている以上、今から攻めても無意味なのでは?」
「逆だ。寧ろ逆と考えるべきなのだ」
「と、言いますと?」
「良いか? SランクやAランクといった魔物は騎士団が総出でかからねば倒せぬ危険な存在だ。確かにそれらの魔物をこの短時間で討伐出来た事は賞賛に値するが、そんな真似がいつまでも続けられると思うか?」
「それはつまり……」
「うむ、敵は上位の魔物を討伐する為に切り札となる何かを使い続けているはずだ。おそらく最初にSランクの魔物が連続して討伐されたのは、こちらにはSランクの魔物であっても容易に倒す手段があるぞという脅し、いやハッタリと見るべきだろう」
そう、ハッタリだ。
そんなデタラメなシロモノが無制限に使えるわけが無いのだから。
「おそらく使用されたのは上位の貴族家が秘匿していたロストアイテムか、もしくは……国宝であろう」
「「「国宝!?」」」
部下達に動揺が走る。
国宝ラーヴェレイン、誰もその力が振るわれる所を見た事の無い我が国の秘宝だ。
曰く、かつてこの地を支配していた強大な邪竜を討伐し、国を建てた初代国王が振るった聖剣と語り継がれている。
その姿が表に現れるのは、代々の国王の即位式のみ。
もはや伝説となったその剣の力なら、Sランクの魔物を討伐する事も可能であろう。
「だが、国宝がそれ程凄まじい力を秘めているのなら、その力は我が国に更なる繁栄をもたらしていた筈だ。つまり、使うには何らかの代償が必要であると考えるべきだろう。魔力か、それとも命を対価とするような代償をな」
だから敵は我々が自分から撤退する事を望んでいるのであろう。
だが、切り札を使うのがいささか早かったな。
「……確かに、国宝がその様な物であれば、気軽に使う事は出来ませんな」
「うむ、それ故、我々は王都に魔物を進軍させる。上位ランクの魔物が一斉に王都を攻めれば、いかなロストアイテムの使い手といえどとても手が回るまい!」
「「「ははっ!!」」」
私の説明に納得した部下達が頷く。
「下位ランクの魔物は冒険者達の足止めに使え。どうせ使い捨ての存在だ」
「かしこまりました!」
「全軍に伝えよ。我々は王都へ向かった魔物の群れを討伐する! ギルドに雑魚は冒険者達に討伐させろと告げよ!」
「「「はっ」」」
これで冒険者に扮した敵の手の者も我等を追う事は困難になるだろう。
まぁ、魔物の動きが早く、我等が現場に到着する前に多くの犠牲が生まれてしまうかもしれんがな。
さぁ、今こそこの国の支配者が替わる時だ!
◆
「ふぅ、これでこの辺りのS、Aランクの魔物は討伐し終えたかな」
僕は倒した魔物達を魔法の袋に収納すると、探査魔法で新たな魔物達の気配を探る。
「あれ? これは……不味いぞ!?」
大変だ、魔物の集団が王都に向かっているじゃないか!
魔物達の後方から集団、おそらくは騎士団の反応が追ってきているけれど、このままじゃ間に合わない。
「ううん、騎士団とは顔を合わせたくないけれど、仕方ない!」
そうだ、放っておいたら沢山の人達が犠牲になってしまう。
冒険者として、そんな事を許すわけにはいかないよ!
「いくぞ!」
僕は飛行魔法で王都へと向かう。
僕が全力で飛べば、王都までそう時間は掛からない。
そうこうしている間に王都の正門と、それに近づく魔物達の群れが見えてきた。
王都は全体が壁に囲まれているけれど、これだけの魔物が相手じゃとても持ちそうに無い。
「城壁を壊される危険があるから、まずは大型の魔物からだね! ライトニングレイン!!」
雲ひとつ無い青空から轟音と共に雷の雨が降り注ぎ、魔物達の群れを吹き飛ばす。
ライトニングレイン、広範囲に広がる敵の集団を接敵前に減らす為の屋外専用攻撃魔法だ。
「よし、第一陣は無力化した!」
僕は急ぎ王都の正門へ向かうと、壁の上に居た騎士に話しかける。
「まだ後続の魔物達が居ます! 急ぎ門を閉めて市民を王都の中央に避難させてください!」
「き、君は一体!?」
騎士が僕の素性を聞いてくるけど、それは答えたくないから無視だ。
「魔物達が壁を破壊したら、そこから王都に侵入されます。僕が大型の魔物を優先して倒しますから、皆さんは壁の上から小型の魔物を討伐してください。じきに討伐に参加していた騎士団が援軍に来てくれますから」
「わ、分かった! 何者かは知らんが助太刀感謝する!」
さぁ、王都に魔物は近づけさせないぞ!
◆
「大変です隊長! 信じられない数の魔物の集団が王都に向かってきています!」
「何だと!?」
部下の報告を受けた私は、王都を囲む壁の上にある物見台へと急いだ。
そして見てしまった。こちらに向かってくる魔物達の姿を。
大きさも、種族も違う魔物が大挙してこちらに向かってきている。
正確な数は分からないが、これほど離れた距離からその姿を確認できるという事は、相当な数だ。
「いかん、これはとんでもない事になるぞ! 門を緊急封鎖しろ! 王都から出た者達を呼び戻せ!馬を使って良い! それと城に報告だ! 魔物の大群が王都に向かってきたと伝えろ!」
「……は、はっ!」
部下達が慌てて行動を開始する。
「だがこの状況でどこまで保たせられる? 壁があるとはいえ、碌に補修もしていないオンボロの壁だぞ?」
この壁は王都が出来て間もない頃に作られたものだ。
城を守る城壁と違い、つくってから放置されているから、今にも崩れそうなところばかりだ。
とてもあの魔物達の襲撃に耐えられそうも無い。
「しかもここに居るのは実戦経験の無い新兵ばかり。戦争の経験者などろくに居ないんだぞ」
どう考えても絶望的な結果にしかならない。
だが、それでも私には逃げるという選択肢は無かった。
何故なら、ここを守るのが私達の使命であり、誇りだからだ。
部下達もそうだからこそ、私の命令に従って動いている。
皆あの光景を見て逃げ出したいだろうに。
まぁ、いまさら逃げ出してもとても間に合いそうもないというのもあるだろうがな。
「若い連中は理由をつけて逃し、年寄り連中だけでなんとか時間を稼ぐかな」
だがそんな時だった。
突如雲ひとつ無い青空にまばゆいばかりの閃光が走った。
次いで耳が壊れるかと思うほどの轟音が全ての音を掻き消す。
「な、何が起こった!?」
驚いた私は慌てて周囲を見回す。
その時、私は信じられない光景を目にした。
「ま、魔物達が全滅しているだと!?」
そう、先ほどまで私達を絶望の底へと追い落とそうとしていた筈の魔物の群れが綺麗さっぱり消えうせていたのだ!
更に驚く事が起きた。
なんと何も無い空から一人の少年が降りてきたのだ。
「まだ後続の魔物達が居ます! 急ぎ門を閉めて市民を王都の中央に避難させてください!」
こ、この少年が魔物の群れを撃退したのか!?
「き、君は一体!?」
だが少年は私の質問には答えず、援軍の騎士団が来る事だけを伝えると、音もなく空へと消えていった。
そして再び、先ほどの轟音が数度響くと、いくつもの場所に煙が立ち、そこには先ほどと同じように魔物達の死骸であふれていた。
「まるで建国の英雄王ウォードラム様の伝説の様だ……」
魔物渦巻くこの土地にふらりと現れ、魔物達を瞬く間に退治し、土地の支配者である邪龍を打ち倒した国生みの英雄、建国王にして剣国王たるウォードラム初代国王陛下。
その戦いとはこの様な光景だったのだろう。
私は我知らず空へと消えた少年へと敬礼をしていた。
◆
「大変です! 王都に向かわせた魔物達が全滅しました!」
「どうしてそうなるのだぁぁぁぁぁ!!」
何故だ!? 何故そんな事が起きる!?
まさか、敵は我々がこう動くと予測して、あらかじめ王都に切り札を温存していたのか!?
「こうなったら、アレだ! アレを使うぞ!」
「アレ? ……まさかヤツを使うのですか!? 無茶です! アレは碌に制御も出来ないシロモノですよ!?」
部下が顔を青くして叫ぶ。
「構わん! こうなればアレを投入して連中に真の絶望を与えてくれる!」
くくく、我が敵よ、貴様等が悪いのだ。
我が野望に水を差した貴様等がなぁ!
「我等の真の切り札、ドラゴンを目覚めさせよ!」
◆
「あれ? 騎士団が急に向きを変えたぞ!?」
何故か王都へ向かってきていた騎士団が急に進路を変えてあさっての方向に向かいだした。
「確かあっちは荒野の方角……何かあったのかな?」
騎士団の不審な動きが気になった僕は、彼等を追うことにした。
幸い王都に向かってくる敵の集団はあらかた倒したし、あとの散発的な魔物達の襲撃は王都の防衛隊と冒険者さん達でなんとかなるだろう。
「よし、それじゃあ僕も行くぞ!」
◆
荒野に隠された秘密施設へとやって来た我々は、切り札であるドラゴンを目覚めさせるべく行動を開始した。
目の前には大きな檻に閉じ込められたドラゴンの姿がある。
「団長、考え直してください! ドラゴンは魔草を原料とした強力な眠り薬で眠らせてあるだけです。目覚めても操れる保証が無いのですよ!」
だがこの期に及んで部下が弱気な事を言ってくる。
「何を弱気な事を。その為に魔物を操る術を研究したのではないか」
「ですが、ドラゴンは普通の魔物とは違います。その在り様は同じく強大な存在であるSランクの魔物とも異なるのです。ですから魔物を操る術で支配できない可能性が高いのです」
「なら失敗したら薬で眠らせれば良いだけであろう。さっさとやるのだ!」
「……承知しました」
ようやく命令を受け入れた部下達がドラゴンを眠りより目覚めさせる準備を始める。
ふん、ドラゴンといえど、所詮は巨大なトカゲよ。
完全に操る事が出来ずとも、大雑把な命令が出来ればそれで構わん。
要は私が襲われなければ良いのだ。
「ドラゴンに眠りを解くポーションを飲ませました。まもなく目が覚めます」
「ドラゴンの目覚めと同時に支配術をかけろ! 結界術師は全力で結界を張れ!」
そして施設の床で眠っていたドラゴンが小さな唸り声と共にうっすらと目をあける。
「支配術発動!」
「「「「支配術発動!」」」」
術者達が魔物を支配する術をドラゴンにかける。
その瞬間、術者達の姿が掻き消えた。
「何?」
そしてベシャ、という音が部屋の片隅から聞こえる。
その場に居た全員が、音のなった方向を見ると、そこには血まみれで倒れている術者達の姿があった。
そしてガシャンという音が鳴り、視線を戻すとドラゴンを閉じ込めていた檻が拉げてその尻尾に引っかかっていた。
「なっ!?」
「く、薬だ! 眠り薬入りのエサを食べさせろ!」
部下が慌てて薬の使用を命じる。
目覚めたばかりのドラゴンは数度目を瞬かせると、目の前に運びこまれたエサに喰らいつく。
「よし! このまま再び眠らせ……」
だが、ドラゴンは眠りに就くどころか喰らった筈の肉を吐き出すと、大きく目を見開いて立ち上がりその翼を広げる。
そして天井を突き破り空高くへと舞い上がった。
「グォォォォンッッ!!」
「馬鹿な!? 薬入りの肉を吐き出した!? ……薬が効いていない? いや、まさか薬の精製に失敗したのか!?」
「な、何が起こっているのだ!? 何故薬入りの肉を吐き出したのだ!?」
部下の胸倉を掴んで事情を説明させる。
「お、おそらくですが、仕入れた魔草の質が悪かったらしく、薬の精製に失敗したのだと……」
「それじゃああのドラゴンはどうなるのだ?」
「魔草を使った眠り薬の実験をした際に偶然捕らえる事が出来た相手ですので、再び捕らえるのは不可能かと」
「つまり……」
私の言葉に、部下が青い顔で頷く。
「久々に目覚めた以上、次は腹いっぱいになるまで食事をするのではないかと思われます」
「そのエサとは……」
「最初に我々で、次に一番近くて人間が大量にいる王都でしょうな」
「だ、退避―っっ! 総員退避―っっ!」
私達は即座に逃げる事を選んだ。
だが、そう決めた瞬間、天井が吹き飛んだ。
エサである我々を探すため、ドラゴンが尻尾で払いのけたのだ。
ちょっと邪魔なものを払いのける気分で。
「あわわっ」
「グルルルルッ」
ドラゴンがこちらを見ている。
間違いなく私達をエサとして見ている。
「ガハァァァァ……」
ドラゴンの口がゆっくり開き、よだれが滴り落ちる。
「わ、私は美味しくないぞ……」
「ドラゴン相手にそんな事を言っても無駄かと」
「だったらお前が先に食われろ! その間に私が逃げる!」
「どのみちこんな場所では逃げ切れません! どちらが先に死ぬかだけの違いですよ!」
「ギャォォォォウ!!」
口論をしていた私達に、ドラゴンが吼えた。
「「ひぃ!?」」
そしてドラゴンは少しだけ首を後ろに反らせると、私達に向かって大きく口を開けて襲い掛かってきた。
ああ、死んだ。
クーデターを始める事すら出来ず、私達は死ぬのだ。
なんと惨めな人生であった事か。
「てりゃぁぁぁぁ!」
その時だった、突如現れた疾風が、ドラゴンの体にぶつかっていった。
そしてドラゴンの体が宙を舞い、隠れ家の壁を破壊しながら吹き飛んで行く。
「「なっ!?」」
「大丈夫ですか!?」
そこに現れたのは、一人の少年だった。
◆
危なかった、あと少しで見知らぬ騎士の人がドラゴンに襲われるところだった。
騎士団とはあまりいい思い出が無いけど、それでも命の危険にさらされている人を見過ごす訳にはいかないからね。
それにしてもさすがは騎士団だ。
こんな所にドラゴンが隠れている事に気付いていたなんて。
けれど、ドラゴンがこんな所に自分から隠れるとは思えない。
だとすると、誰かがドラゴンを操ろうとして連れてきたのかな?
あっ、もしかして騎士団の人達は今回の魔物の異常発生がこの建物にあると気づいて捜索していたのかも。
なるほど、やるなぁこの時代の騎士団。
騎士団というと、腐敗と汚職ってイメージだったけど、さすがは未来の時代の騎士団だね! 見直したよ!
「ともあれ、さっさと倒そうか!」
相手はまたグリーンドラゴンだし、さくっと倒しちゃうか。
「たぁ!」
僕は大きく跳躍すると、地面に叩きつけられてフラフラしているドラゴンの首を一撃で狩った。
「うん、さすが変異種の刃で作った剣だね。普通の鉄の剣よりも切れ味が良いや」
この切れ味なら、以前狩ったグリーンドラゴンよりも買取り価格が上になるかもしれない!
僕は倒したグリーンドラゴンを魔法の袋に収納すると、騎士の人に向き直る。
「お務めご苦労様です! 僕は周辺の魔物討伐に戻りますので、皆さんは安心してこの施設の捜索を続けてください!」
「あ、ああ」
騎士の人にそれだけ伝えると、僕は急ぎ魔物討伐へと戻るのだった。
◆
ドラゴンは突然現れた少年によって倒された。
それも一撃で。
「なぁ……」
私は部下に話しかける。
「はい、なんでしょう」
「自首するか」
「ですな」
うん、こんな化け物がいる国をクーデターで支配するとか、とてもじゃないがムリだ。
_(:3 」∠)_ ドラゴン「起きたら退治された。解せぬ」
_(:3 」∠)_ 黒幕「こんな国に居られるか! 俺は自首させて貰う!」
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