第44話 影より現れる軍勢と狩りたてる者達
_(:3 」∠)_風邪気味なので今日は少な目。
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「まさか……我々の計画が気付かれている!?」
そうとしか考えられない。
私の、私達のクーデター計画が何者かによって察知され、今まさに妨害されているのだ!
「くっ、一体何者の仕業だ!?」
私は計画を察知したのが何者であるかを考える。
軍務卿派閥か? それとも王家直属の諜報部隊に気付かれたか?
「いや違う、今考えるべきはそのような事ではない」
そうだ、今私が考えるべきは、貴重なSランクを始めとした上位ランクの魔物を保護する事だ。
我々がこの国の支配権を奪い取る為の戦力を守る為に。
「おのれ、駒として使い潰す為に用意した魔物を、何故私が保護しなければいけないのだ」
全くもって忌々しい。
「魔物使いに命令しろ。魔物を組織的に運用して冒険者達をせん滅するのだ」
「は!? この状況で魔物を使うのですか!? ですがそれでは……」
「既に敵はこちらの動きに気付いている。ならば我々ももうコソコソする必要はあるまい。何、支配下に置いた魔物達の本格的な実戦訓練と思えば丁度よかろう。なにせ相手はたかが冒険者なのだからな」
敵は我々が魔草を使って魔物達を王都に引き寄せた事も察しているだろう。
そして時が来たら王都の各所に魔草を仕込み、おびき寄せた魔物を一斉に王都へ誘い込もうとしているのだと考えている筈だ。
だが見通しが甘かったな。
我々はただ魔物を引き寄せただけではないのだ。
そもそも、こちらの意に従わぬ存在を作戦の要にする訳がないのだ。
そう、我々は魔物達を自在に操る術を手に入れたのだ。
古代の呪法によって魔物を操る術を得た我等は、本来なら従えることの出来ない魔物達を意のままに操る事が出来る様になった。
それは数の優位を容易に得る事が出来るだけでなく、強力な上位の魔物までも戦力として扱う事が出来る。
上位の魔物はそれ単体で熟練の戦士数人から数十人分に相当する。
それはつまり、一頭の上位ランクの魔物を従えれば、熟練の戦士数人を一から育てる手間が省けると言う事だ。
しかもその全てがこちらの意のままに動く!
この技術を使い、我等は魔物の軍団を指揮してこの国を、否この世界を支配するのだ!
「そして騎士団は魔物と戦うフリをして冒険者の中に潜り込んだ敵を探せ!」
「はっ!」
私の命令に部下達が行動を開始する。
なに、少し手順が早まっただけでやる事は同じだ。
「そうだ、後のイレギュラーとなりえる冒険者達を先に始末すると考えればよかろう」
有象無象とはいえ、上位ランクの冒険者の存在は油断できん。
特に今はSランクの冒険者がわが国に来ているとの事だからな。
「さぁ、我々の力を見せつけてやるのだ魔物達よ!」
◆
「フリーズブースト!」
私は氷の属性強化を発動させて魔物達を切り裂いていく。
氷属性の属性強化は色々と応用が効き、敵を凍えさせて動きを鈍らせたり、体の一部を凍らせたりする事も出来る。
また、足の裏に氷の刃を生み出し、更に地面を凍らせることで、意図的に氷の上を滑って高速でトリッキーな動きを表現する事も出来るの。
……まぁこの戦法はレクスさんに教えて貰ったものなのだけれど。
「はぁっ!」
私は魔物達の間をすり抜けざまに足や首を槍で薙いでいく。
レクスさんに鍛えてもらったこの槍は、ただ薙ぐだけで魔物をバターの様に切り裂けるほど素晴らしい切れ味を見せてくれた。
「やるな姉ちゃん! だけど俺も負けないぜ! フレイムブースト!」
ジャイロ君が炎の属性強化を発動させて魔物に突撃する。
炎を攻撃に使わず、自分の後方に放つ事で自らの体を加速させるのはなかなかに変わったスタイルだわ。
「おらぁ!」
そして身体強化魔法で増強された筋力に任せて魔物を切り裂く。
粗削りではあるけれど、その戦い方で強力な魔物をねじ伏せれる実力はあるみたいね。
「やるわね」
「まったく、あんな乱暴な倒し方じゃ買い取り価格が下がるじゃないの! サンダーランス!」
ミナちゃんがぼやきながらも雷属性の魔法でジャイロ君の近くの魔物を的確に倒していく。
さっきから魔法を使い続けているのに、まだ魔力が切れないあたり、さすがは彼女もレクスさんの弟子だけの事はあるわ。
「ノルブ、メグリ、獲物はなるべく綺麗にね!」
「僕は回復に専念しますので、その辺りは任せます!」
僧侶のノルブくんは向かってくる魔物相手以外では積極的に戦いには参加せず、負傷者の治療に専念していたわ。
「はい、これで治りましたよ」
「す、すまねぇ、助かったよ」
彼に治療された冒険者達がお礼を言って前線に戻っていく。
中には結構な重傷者も居たのだけど、彼はその全員を戦線に戻せるまでに回復させていた。
自分達の仲間以外も回復させるなんて、一見お金にならない無駄な行為に見えるけれど、今回の様な大規模討伐では彼の様に前線で自由に動ける回復役はとても貴重だわ。
なにせ自力で魔物を返り討ちに出来るのだから、彼を守る必要がないのだもの。
あれほどの実力なら、今のパーティを抜けても引っ張りだこでしょうね。
「えい!」
そして盗賊のメグリちゃん、ある意味この子が一番凄い子だわ。
相対した敵の一番弱い部分を見極めて、的確に動けなくしていく。
相手が硬かろうと、早かろうと、一瞬の隙を見つけて仕留めていくスタイルはかなり脅威ね。
他の子の様に、特別な力の使い方をせず基本能力の延長線上の力の使い方をする。
シンプルに強い相手は、敵に回した時崩しづらい。
できれば敵に回したくない子だわ。
「いえーい、一体撃破ー」
そしてとても綺麗な倒し方だから、買い取り価格も高いでしょうね。
冒険者としては、この技術が一番評価するところかしら?
「これは私も油断できないわね!」
さぁ、次の魔物はどこかしら!?
◆
「大変です! SランクだけでなくA,Bランクの魔物も次々に討伐されています!」
「魔物使いはどうした! 奴らに魔物を指揮させれば、有象無象の冒険者などすぐに血祭りにあげられるだろう!」
「それが、魔物使いが指揮した魔物達は、寧ろ固まって現れたのをこれ幸いと撃破されてしまったそうです」
「馬鹿な!」
ありえん! 冒険者など所詮スタンドプレーが得意な烏合の衆ではないか!
多少個人が強かろうと、強大な力と圧倒的な物量を以って臨めば無力な筈!
そして冒険者の中に我らの敵がいたとしても、身分を隠して活動しているのなら組織的な反撃は出来ない筈だ!
「……冒険者達の中に優れた連携を見せた者達は居なかったか!?」
「……いえ、一部のパーティを組んだ冒険者達以外は好き勝手バラバラに活動しており、パーティを組んでいる冒険者達ですら高度なチームワークを見せた者は居なかったとの事です」
「ならばなぜ魔物達が勝てんのだ!? ……っ!? まさかロストアイテムでも使っているのか!?」
こちらは軍人が指揮している魔物の軍団だ。それに対抗するのなら、やはりロストアイテムを使っていると考えるのが妥当か?
あの竜巻のロストアイテムもそれを悟らせないためにわざと最初に派手な物を見せびらかせたのか!?
「それが、普通に戦って倒されているとの事です。魔法を使う者や特殊な戦い方をする者はいくらかおりますが、ロストアイテムを発動させている様子はないとの事です」
馬鹿な、それでは本当にSランクやAランクの魔物に単独で勝てる冒険者が何人も居ると言うのか!?
「そんなバカな!?」
それほどの猛者が偶然集まっただと!? それこそありえん!
「一体何が起こって、いやどうやって対抗しているのだ!?」
「そ、それと……」
部下が言いにくそうに言葉を発する。
「まだ何かあるのか!?」
「なんでも凄まじい速さで走る白く小さなモフモフの生き物が、近隣のAランク上位の魔物達を片っ端から倒して食い漁っているそうです」
「何だその化け物はぁぁぁぁぁっっっ!?」
_(:3 」∠)_ リリ、ドラ「獲物が沢山でおーいしー」
_Σ(:3 」∠)_ 哀願動物「エサが沢山でおーいしー」
_(:3 」∠)_ 黒幕「らめぇー! ボクの魔物を狩らないでー!」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。