第355話 騒乱終わりて
作者(:3)レ∠)_「宣伝でーす!ダンジョン暮らしの転生少女電子コミック1巻が本日発売ですー!」
ヘルニー(^ω^)「こちら電子オンリーでの販売となります」
ヘイフィー(´・ω・`)「書下ろしもあるよー」
作者_(:3)レ∠)_「あっ、二度転生コミックも好評連載中なのでよろしくねー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「おーい!!」
戦いを終えて戻って王都に戻ってくると地上から幾つもの人影が僕を出迎えるように空へと上がってくる。
ああ、あれはリリエラさん達、それに王都の冒険者達だ。
「レクスさ……ん?」
「アニ……キ?」
「「「大物喰ら……い?」」」
けれど何故か皆の反応がおかしい。どうしたんだろう?
「皆ただいまー」
「あ、うん、お帰り……それよりもその」
「なぁ兄貴、そんな装備持ってたっけ?」
ああ、皆の反応がおかしかったのはそのせいか。
魔人皇帝との戦いで装備が全壊しちゃったからなぁ。
イメチェンしたみたいでビックリさせちゃったみたいだ。
「うん、魔人皇帝との戦いで新しい装備に換装したんだ」
「魔人皇帝! 勝ったのか兄貴!」
「勿論!」
正直かなりキツい戦いだったけどね。
攻撃手段に縛りがある中で無限回復する敵が相手とか厄介だったよ。
「すげー! 流石アニキ! しかもあの馬鹿デカい要塞まで真っ二つなんてよ!」
「でも心配したわ。全然戻ってくる気配が無かったんだもの。それであんな大爆発したから、巻き込まれたんじゃないかってヒヤヒヤしてたわよ」
「そうそう、リリエラの姐さんめっちゃオロオロしてたもんな」
「バカ、デリカシーない事言わないの!」
「痛ってー!」
と、リリエラさんをからかったジャイロ君がミナさんに頭を叩かれて悶絶する。
今、さりげなく属性強化して叩いたなぁ。
「あはは、でも本当に無事でよかったですよ」
「ん、お宝ザックザクだった」
呆れながら僕を気遣ってくれるノルブさんといつも通りブレないメグリさん。
「こらこら、はしゃぐのは分かるがその辺にして桶。大物喰らいも疲れてるだろ」
と、そこにロディさんが割って入って皆を窘める。
「そうだな。敵の首魁を倒したのだ。皆に伝えて安心させてやるべきだろう」
おっとそうだった。リソウさんの言う通り魔人皇帝を倒した事をみんなに伝えないと。
『みんなー! 魔人皇帝は倒したからもう安心していいよー!』
風魔法で声を拡張して王都全域に伝わるように声を届ける。
よし、これで皆も安心するだろう。
「「「「「「「「……」」」」」」」」
相したら何故か皆がじっとりした目でこっちを見てくる。
「どうしたの皆?」
「いや、うん。レクスさんが良いならいいんだけどね」
「だな、戻ったら面倒なことになると思うぜ」
面倒な事? 単に魔人皇帝を倒したって伝えただけなのに。
ああ、僕がやったってバレたら騒ぎになるって言いたいのかな?
でも直接戦った姿を見ていた人は誰もいないし声だけだからバレやしないよ。
「じゃあ帰ろうか!」
◆
「「「「ワァァァァァァァァ!!」」」」
僕らが地上に戻ってくると沢山の人達が歓声と共に出迎えてくれた。
「冒険者達が戻って来たぞ!」
「あの空飛ぶバケモンをぶっ壊してくれたんだ!」
皆本当に不安だったんだろうね。クリムゾングレイルが爆発した事を心から喜んでいるみたいだ。
けれど、僕達が地上に降りると共にその声が消える。
あれ? どうしたんだろう?
「な、なぁあそこにいるのって……」
「ああ、なんかスゲェキラキラしてるよな」
「もしかしてあの人があの空飛ぶバケモンを倒したのか?」
ヒソヒソと押し殺したような声音でこちらを見ながら何かを話す人々。
「あ、あの! 貴方があの空飛ぶ化け物を倒したんですか?」
あ、やば、ここは否定しておいた方がよさそ「「「「その通り!!!」」」」
だというのに、冒険者の皆が声を揃えて認めてしまう。
「コイツこそ王都にその人ありと言われ最速でSランクに駆け上がった漢!大物喰らいだ!!」
「ちょっ!? なにを!」
いきなり何明かしてるんですかーっ!!
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
堰を切ったように歓声を上げる人々。
あーもう、どうすりゃいいのさ!
「やっぱりそうだったんだ!」
「スゲェ! 俺勇者様なんて初めて見たよ!」
……ん? 今何か妙な事を言われたような気が。
「だよな! あんなスゲェキラキラした鎧を着てる人なんて騎士にも居ねぇぜ!」
「アレが勇者の鎧か!」
「きっとあの剣もスゲェんだろうな!」
いや待って、何かおかしなことになってるんだけど!?
「「「「勇者様ばんざーい!!」」」」
「なんで勇者になるのさぁーっっ!」
ヤバイ! このままだとなし崩しで勇者にされちゃう!
僕は前世で賢者と英雄にされたからこういう流れには詳しいんだ!
なんとか誤解を解かないとと思ったその時だった。
ズズゥゥゥゥゥゥゥン!!
突然自身のような振動が王都を襲ったんだ。
「な、何だ!?」
「み、見ろ! バケモンだ!」
化け物? 誰かの悲鳴に振り返ると、王都を守る防壁の向こうに巨大な影が立っていた。
『ギュゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!』
「な、何だあの馬鹿デカい怪物は!!」
「灰の従魔獣!? あんな大型個体が……ってあれ?」
灰の従魔獣の生き残りが居たのかと思った僕だったけど、なんだか見た目が違う。
というかあの姿は見覚えがあるんだけど……あれって。
「モフモフ?」
◆モフモフ◆
「キュゥー♪」
わははははは!! 愉快愉快!
我は森の中を駆け巡っていた。
「ゴァァァァァァ!!」
その先には我にちょっと似ているような気がしないでもない魔獣の姿。
だがただ目の前の敵目掛けて暴れまわる程度のデクの坊など、我にとってはタダの餌!
デカいから食いでがあるし美味!
まさに我の為に用意された獲物よ!
しかも何やらコイツ等を食べるとほんのり力が漲る様な気もして尚良し!
多分滋養強壮効果とかあるんじゃないかなー。
ご主人は空飛ぶ石の塊と戦うのに忙しくて我の事を忘れているみたいだし、今のうちに腹いっぱい食べるぞー!
「ギェェェェェェェ!」
「ギャァァァァァァ!」
「ゴギャァァァァァ!」
うーん、美味。とても美味。そして体の芯から溢れるようなエネルギー。
けれど近隣の魔獣をあらかた食い尽くしてしまったのかすっかり姿を見なくなってしまった。
残念。もう打ち止めか。次の喰い放題はいつですか?
その時だった。まるでこの至福の時はもう終わりですとばかりに空に浮かんでいたひと際大きな赤い石の塊が爆発したのだ。
残念。ところで次の喰い放題はいつですか?
ズドォォォォォォォン!!
そうしたらまるで返事のように何かが割れの前に墜ちて来た。
「あ、がが……」
それは魔人だった。
ボロボロの石の殻を体に張り付けたボロボロの魔人だ。
『ビ……ビビ……着装者の命……保護達……せ……。最後の好敵し……と着装し……に敬意を……機能……停……キキュュゥゥン』
魔人の表面を覆っていた魔力が消える。
ふむ、これは……デザートだな!
魔獣肉喰い放題の後で魔人の羽を提供するとは中々に気が利くではないか!
それではいっただっきまーす!
我は魔人の殻を剥がすと、美味しそうな羽に喰いつく。
「っ!!」
おお、これは美味! 表面を炙る事で香りを強くし、外と中の触感と味わいを変えているのか!
うまうま、モグモグ。
「キュッ!?」
と、その時、我の中で何かが弾けるのを感じる。
こ、これは、力が溢れてくる? 否、我が食べ尽くした魔獣達の滋養が一気に体の一部になったのか!?
「キュウウ!」
そうか、分かったぞ! これは魔人の羽の効能だ!
魔人の羽はただ美味なだけではなく、我が摂取した栄養を効率的かつ迅速に体に染み込ませる効能があったのだ!
この魔人はそんな魔人の羽の中でもひときわ質の良い羽だったのだろう。
「ギュ、ギュギュギュウ!」
おお、溢れる、溢れるぞ! 我の中の力が溢れてくるぞぉぉぉぉぉ!
『ギュォォォォォォォォォォン!!』
はははははっ! 凄い! 凄いぞ! 世界が広い! 世界がちっぽけだ!
まるで自分の周りの全てのものが小さくなったように感じる!
素晴らしい! 今までにない程力に満ち溢れている!
……これなら、やれる!ご主人であっても勝てる!
と、視界が広がった我に人間達の暮らす巣が見える。
ふっ、丁度いい。ご主人を倒す前の腹ごなしとして人間の巣を滅茶苦茶にしてやるとしようか!
『ギュゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!』
ふははははっ! 怯えろ! 悲鳴を上げろ! 我の玩具として翻弄されるが良い人間共!
ズドォォォォォォォン!!
ギャァァァァァァァァァァッッ! めっちゃ痛い! 凄く痛い! 信じられない程痛い!
誰が全ての獣の王たる我に一撃かました奴はぁぁぁぁっ!
全身を引き千切ってバラバラにしたあげく美味しく戴いて……ん、あれ? あの姿って……
「※※※※※※※※」
げ、げぇーーーーーっ! ご主人!?
空飛ぶ石の塊の相手に忙しいんじゃなかったんですかー!? あっ、さっき吹っ飛んでたわ。
や、やばい、ご主人に見つかってしま……いや待て、今の我は力に満ち溢れているのだ。
見ろ、あの恐るべきご主人があんなにちっぽけに見える。
そう、そうだ。我は力を手に入れたのだ。あの姿は正しく力の差を認識した光景と言えよう。
つまり我が圧倒的に有利! ご主人覚悟ぉぉぉぉぉぉ!
『ギュォォォォォォンッッ!!』
『※※※※※※※※っ!!』
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッ!!
ウギャアァァァァァァァァ! めっちゃ痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!
ドゴンドゴンドゴンドゴン! 痛い痛い痛い痛い!! スンマセン勘弁してください!
ズドォォォォォォォム!!
『ギュェェェェェェェェェェェ!!』
プスッ、プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
ああ、抜ける! 力が抜ける!
力が抜けると共に我の世界が小さくなってゆく。あ、ああ、あああぁぁぁぁ……
「※※※※※」
そしていつも通りの大きさになったご主人が我を上から見つめてくる。
ヤ、ヤバい、我死ぬ? 今度こそ死ぬ?
チョロロロロロロッ
我は漏らした。
◆
「危なかったー、あとちょっとで責任問題になるところだったよ」
何か変なものを食べたのか、モフモフは巨大な姿へと変貌していた。
そしてそのサイズのまま王都に戻ろうとしていたから、危うく大惨事になる所だったよ。
飼っているペットの不始末は飼い主の責任。
あと少し遅かったら防壁を破壊して王都に入り込み、近隣の建物を破壊して我が家に向かうところだったよ。
「そしたら罰金どころかお尋ね者になっていたところだよ」
幸い何発か衝撃を与えたことで変なモノが抜けたのか、モフモフは元の大きさに戻った。
でも何であんな姿になっていたんだろう?
「クリムゾングレイルから変なマジックアイテムでも落ちてそれを食べちゃったのかな?」
モフモフには落ちているもの食べないように教育しておかないと。
「でもなんでも食べようとしちゃうんだよね。子供のうちに躾けておかないとなぁ」
何食わぬ顔でモフモフを回収し皆の所に戻ると……
「すげぇぇぇぇ! あんな大きな魔物を倒しちまったぜ!」
「流石は勇者様!」
「「「「さす勇者! さす勇者!!」」」」
……しまった、こっちの問題は解決してなかったんだった。
そっと向きを変えると、僕は全速力で王都から逃げるのだった。
「何でこうなっちゃうの!」
謎の魔人の炙り -⁽ -´꒳`⁾-「踏んだり蹴ったり」
モフモフΣ(:3)レ∠)_「食べ放題最高でした」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。




