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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
人魔戦争編

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第353話 魔を装うは

作者-⁽ -´꒳`⁾-「プライベートのゴタゴタとなんやかんやでなかなか執筆に回せねぇ!」

ヘルニー(´-ι_-`)「まぁ年末だしね」

ヘイフィー_(·▷._ )_ 「病院で検査受けて来たー。ただの加齢による身体機能低下だといいんだけど」

作者(•᷄ὤ•᷅) 「それはそれで嫌なんよ」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 魔人皇帝との戦いは長引いていた。


「くっ、あれからずっと攻撃を続けているのにまだ魔力が切れないなんて!」


 僕がどれだけ強力な攻撃を繰り出しても、魔人皇帝の装備しているマジックアイテムが瞬く間にその傷を回復させる。


「シ、シヌ……シヌ」


 そしてこちらの攻撃を意に介さず不気味な呪文を詠唱している。

 そもそも魔人は呪文詠唱なんて使わない。圧倒的な魔力量による無詠唱魔法が基本の種族なのに。


 考えられるのは魔人の魔力と魔法制御力をもってしても詠唱による補助が必要な大魔法!!


「させないよ! グラビトンコラプス!」


 回復するのなら回復すら意味がない攻撃をすればいい!

 術の発動と共に魔人皇帝の周囲の重力が崩壊を始め、凄まじいエネルギーが術式によって指定された中心域へと集まってゆく。


「ゴガッ!? ギッァァァアァァ!!」


 クリムゾングレイルには外部から転移魔法を使って内部に侵入されないよう、次元攪乱機構が搭載されている。

 その為内部で空間系の魔法を使うのはかなり危険が伴うけど、その対象が敵なら寧ろ好都合!


「予測不可能な次元の歪みを伴った重力崩壊を喰らえ!」


「ゴバババババッ……ッァ……」


 魔人皇帝の体が崩壊した重力場の中で体が滅茶苦茶な方向を向きながら中心の崩壊場に囚われようとしたその時だった。


 小さな詠唱を終えたのかカクンと首を落とした瞬間、その身に纏った鎧が不気味な発光を始めたんだ。


『着装者のマインドアウトを確認。緊急事態につき敵対勢力を殲滅するジェノサイドモードに移行します。なお、このモードでは着装者の安全は一切考慮されませんのでお覚悟ください』


 魔人皇帝がゆっくりと顔を上げる。


『敵対勢力確認。殲滅を開始する』


「あれは……」


『殲滅』


 瞬間、魔人皇帝の放った一撃が重力崩壊場を粉砕する。


「発動した重力崩壊場を一瞬で!?」


『殲滅』


 魔人皇帝の姿が消えると同時、僕は本能的に防御態勢を取る。


「ぐっ!」


 直後来る衝撃。


「速い!」


 さっきまでの魔人皇帝の比じゃない。明らかに速度も威力も上がってる!


『着装者の身体に150%超の負担。強制回復の範囲内です』


 魔人皇帝の体が回復魔法の光に包まれる。


「そうか、そういうことか!」


 ようやく全て分かったぞ!

 これまでの戦いは魔人皇帝の装着するマジックアイテムの力だったのか。

 身体強化、恐らくは最高クラスの強化を施すマジックアイテムで自身の身体能力を底上げしていたんだ。


「でもそれだけでは不足と判断した魔人皇帝は、本来なら着装者を守る為のリミッターを自ら解除して全ての力を解放したのか」


 あの呪文は呪文じゃなかったんだ。恐らくは何重にもある厳重なプロテクトを解除する為のコード……。


「何て覚悟だ。自分の命すら種族の繁栄の為に使い捨てるなんて!」


 魔人皇帝の放った猛烈な勢いの蹴りがソニックブームを産み出しながら管理室の壁を破壊する。


「まさに、皇帝だね」


 まったく、前世の貴族達にも見習ってほしい精神性だよ。


「ともあれ、これは不味い!」


 マジックアイテム、いやここは便宜上魔人鎧としておこう。あの鎧の性能は凄まじい。


『殲滅、殲滅、殲滅』


 速さ、威力、精密性、そしてフェイントまで使いこなしている。

 魔人皇帝の攻撃精度がさっきまでの比じゃない。

 素人同然だった魔人皇帝の攻撃が今じゃ達人のそれだ。


「疑似思考装置が相当高性能ってことだよね」


 マジックアイテムには防衛装置など自動で判断して行動するものが複数ある。

 大抵は条件付けされた相手を敵と認識して攻撃する程度だけど、この魔人鎧はフェイントを仕掛けるだけの戦術思考、それに装着者の攻撃動作のフォローをする補正機能まで備わっていた。


『殲滅 殲滅』


 魔人皇帝の両手から赤黒い魔力の塊が放たれる。

 慌てて攻撃を回避すると凄まじい威力の光線が室内を破壊する。


「威力もとんでもない。装着者の能力を増幅して引き出しているのか?」


 これは長引かせたくないなぁ。


「なら速攻だ!」


 属性強化を速度重視の光の属性強化に切り替え、亜光速で魔人皇帝に接近する。


『カウンターモード』


 そんな速度に合わせるように魔人皇帝の迎撃が放たれる。


「予測して迎撃を置いた!?」


 ギリギリでカウンターを回避。

 凄いよこの魔人鎧。攻撃予測も相当だ!

 僕達はお互いの攻撃を予測し、フェイントを行い、魔人皇帝の体が強制回復し、しかし有効打を与えられないでいた。


「まさかこんな強敵がいたなんて予想外だったよ」


『す、すす、素晴らしい』


 と、戦いの最中に魔人皇帝が言葉を発する。


『なんという強さ。なんという洗練された技の数々。素晴らしい』


「ええと、ありがとう?」


 何か褒められた?


『私は感動している。稼働して数千年、遂に私は敵と呼べる存在と出会えた』


 感動? 魔人が?


『これまで私は敵ともいえない相手との戦いともいえない戦いばかり強要されてきた。人族を殲滅する為、最強の存在として生み出されたにもかかわらず。私に相応しくない戦いばかり』


 魔人皇帝が失望する様に肩を落とす。

 どういうこと? 人族を殲滅する為に産み出された? 皇帝なのに?


『だが! 遂に出会えた! 遂に私の機能を最大限に発揮できる相手に出会えた! この出会いに感謝を!』


「まさか魔人皇帝って……」


 そこで僕はある推論に至る。

 魔人とは力こそ全てと考え、それ以外の全てを力で踏みにじる事を是とする存在だ。

 であればその対象は魔人にも適用されるんじゃないだろうか。


 ならば魔人皇帝とはどういう存在か。

 それはつまり、魔人達の頂点に立つべく品種改良された存在なんじゃないだろうか。

 より優秀な個体同士を掛け合わせ、より洗練された武術や髙い魔力を持つように鍛え上げられた存在。

 それが魔人皇帝と呼ばれる存在の意義なんじゃないだろうか?


 現に僕達人族にもそう言った優良個体同士を掛け合わせる事は昔から行われてきたしね。


「そう考えるとこの魔人皇帝は高度なマジックアイテムへの適性を最大限まで高めた特殊個体ってことかな?」


 きっと魔人達は身体能力特化魔人や魔法特化魔人と言った感じで色んな魔人皇帝候補を育てて来たんだろう。

 その結果この時代で勝ち残ったのはマジックアイテム適性特化型の魔人が勝ち残り皇帝の座を手にしたんじゃないかな?

 成程、あの異常な回復回数の多さもマジックアイテムの適性が理由だったのか。


 それは前世の時代でも成し得なかった奇跡だ。

 奇跡的な設計と奇跡的な経験の蓄積が生み出した、掛け値なしの奇跡の光景だった。


『だが、惜しむらくはあなたの装備だ』


 と、魔人皇帝は僕を、いや僕の装備を指差す。


『それらの装備は私とは比べ物にならない程質が悪い。解析の結果技術レベルは十分私に対抗しうるものだが、素材性能が圧倒的に足りていない。それゆえに折角の高度な技術を最大限に生かす事が出来ないでいる。惜しい、あまりにも惜しい』


 全く以って言えばその通りだ。

 僕の装備は材質の性能不足が原因で魔人鎧を傷つける事が出来ないでいた。

 更に魔人鎧が手にするポーヴァライザーによってこちらの装備はどんどん壊されてゆく。

 魔法の袋にまだ装備の在庫はあるけれど、通用しないんじゃ時間稼ぎにしかならない。


「なら頭を!」


 唯一生身の部分が出ている頭部を狙う。

けれど魔人鎧の開発者もそれを予測していたようで、あっという間に頭部が再生する。


『惜しいが、しかしあなたを倒せば私が真に至高の武具である証明となる。戦いに情けは相手への侮辱。いかに不本意であろうと私は全力であなたを打倒しよう』


 そこは情けをかけてほしかったなぁ。


「でも、やるしかないか」


『それでこそ私が戦うべき戦士だ』


 僕達の姿が消える。

 超高速によって姿が視認できなくなる程の速度で攻撃位置を取り合う。

 属性強化によって全力で五感を強化する事で、魔人皇帝の現在位置と向かう先を肌に触れる風、魔力を感じ取り、かすかに見える残像の欠片を見つけ、耳が魔人鎧のかすかな駆動音と戦場全体の音を拾い、嗅覚が金属と血の匂いを察知する。


 何より、魔人皇帝の肉体が負傷する為の回復魔法の発動が目印になる!!


「そこだ!」


 回復魔法の発動を察知して僕は攻撃を置く。


『かかりましたね』


 だがそれは罠だった。

 回復魔法がキャンセルされ、直後無数の回復魔法の発動魔力がそこかしこに発動して魔力の察知が困難になる。


「装着者の保護機能をフェイントに!?」


『着装者が武具を使う時、着装者もまた武具に使われるのです』


「何て哲学的な!!」


 魔人皇帝の攻撃を辛うじて受けるも、ポーヴァライザーの武具破壊効果で守りはあっさり貫かれる。

 そして人体を破壊出来ない仕様など知った事かと鈍器として叩きつけられる。


「ぅっ!!」


『良い鎧です。剣で受けたことで減速したとはいえ、こちらの攻撃が相殺されました。ですが二度目はありません』


 僕の鎧はポーヴァライザーの攻撃で破壊されてしまった。

 これで防御力は自前の魔力由来の防御魔法だけか。

 まぁそれはいい。問題は魔人鎧の方だ。


「いい加減おかしすぎる。あれだけの戦闘機動と回復を行ってなんで魔力切れにならないんだ?」 


一体どういう仕組みなんだ? 幾ら適性があったとしても魔力消費は凄まじい筈。既存の魔法理論じゃああのサイズの装備にこんな膨大な魔力をチャージするのは不可能なはずだし。それとも魔人皇帝は体内魔力が莫大なのか、もしくは僕が死んでいる間に新技術が開発されたのか?

他に考えられるとしたら……。


「クリムゾングレイルの貯蔵魔力を利用している?」


 何らかの方法でクリムゾングレイル内の魔力を引き出して利用しているのか?


「駄目だ、情報が足りなさすぎる。分かるのは実質無尽蔵の魔力って事だけだね」


『魔力減少。着装者から絞り出します』


「アバババッ!!」


 魔人皇帝の体がビクンビクンと震え、魔人鎧が出力を増す。


『あなたとの戦いは有意義でした。ですが楽しい時間は引き延ばすべきではありません。美しいままに終わりましょう』


 魔人皇帝の姿が消える。


「くっ!」


 嫌な予感がした僕は回避よりも防御に全振りして魔力を込める。

 その予感は的中した。刹那の時間差で防御障壁に凄まじい攻撃が叩き込まれたんだ。


「これはポーヴァライザーの粉砕モード最大出力!?」


ポーヴァライザーは個人が携帯する規模の工事用マジックアイテムだけど、戦場で使う為に大規模な工事をする事にも使えるように設計してある。

 それがこの最大出力モード。

 このモードで掘削作業を行えば、何十人が入れる大きな穴を一瞬で開ける事も可能だ。

 それでいて生物を傷つけない我ながら親切設計!


「それをここで使う!?」


『貴方の予備装備を破壊して、丸腰にしてから倒します』


 思った以上によく考えた脳筋戦法だった!

手にした武器だけじゃない、防御魔法の練り込まれた服まで破壊されてゆく。


「子の武具に殺傷能力はありませんが、それは他の武器で補えば良い。私には古代魔人族の技師によって内蔵された武具がある。貴方の守りを全て剥ぎ取った後で全力の一撃を差し上げましょう」


 これは流石に不味いかな。

 魔人皇帝の攻撃は管理室の壁を破壊し、更にその奥の部屋の壁に叩きつけその壁も破壊して更にその奥の部屋の壁へと叩き続ける。

その攻撃は執拗で、たった一つの逆転の手段も残すまいとクリムゾングレイル内部が破壊される事も厭わず壁ごと僕の装備を破壊してゆく。


僕も魔法の袋から防御アイテムを取りだしながら対応するものの、最大出力モードの範囲効果によって遂に魔法の袋が破壊され、内部に内蔵されていた無数の素材やアイテムが放出される。


「しまった!」


『なんと!?』


 最悪の、しかし唯一のチャンスが生まれた。

 魔法の袋から溢れた荷物が目くらましとなって一瞬だけど魔人皇帝の視界を防いでくれたんだ。


「今のうちに……!?」


 この隙に態勢を立て直すべく撤退しようとした僕は、あるものに気付いた。

 それを見た瞬間、僕は逃げる事を止めそれと手にするべく走る。


『なんという膨大な数の物資。これ程の資源を有していたとは……』


 魔法の袋から溢れた荷物に驚いていた魔人鎧は、すぐに意識を切り替えたのかこちらを見る。


『意外でした。まさか逃げずに残るとは。それとも諦めたのですか?』


「まさか、逆転の一手が見つかったから逃げる必要が無くなったのさ」


『逆転の一手? この状況で一体どのような手段を思いついたというのです』


「気付かないかい? ここがどこなのか」


 魔人皇帝は魔法の袋から溢れた無数の荷物が部屋を埋め尽くした事で気付いていない。

 僕達が今いる場所が何の為の部屋なのか。


 僕は手にした一つのマジックアイテムを腕にはめる。

すると裸だった体に繊維が纏わりつき全身を覆う。


『それは!?』


「王族直属近衛騎士団正式採用型瞬間着装型戦闘衣装。通称カイゼルアタイア」


 そして壁のラックに設置されていた剣を引き抜く。


「王族直属近衛騎士団正式採用型全天候全属性戦闘型魔法剣、通称ロワイヤスレイヤ」


『……解析不能。非常に高度な技術と材質によって作られた装備と推測。何故そのようなものがここに……』


 魔人皇帝が驚くのも無理はない。普通ならこんな高級装備がポンと置いてあるわけないもんね。


「ここは武器庫だよ。それも最終兵器として作られたクリムゾングレイルの乗組員に相応しい装備を貯蔵する為のね」


 恐らくだけど、ここの扉には厳重なロックがかけられていたんだろう。

 だから魔人達に遺跡が発見されていてもこれらの装備が持ち出される事はなかった。

 けれど、そんなロックを無視して魔人皇帝は壁ごとこの部屋を解放してしまったんだ。


「この装備ならお前の魔人鎧に十分対抗できる」


 何せこれらの装備は僕の前世の時代の最高級装備なんだから。


「君に対抗する為の装備は手に入ったなら後は……」


『う、うう……』


 魔人皇帝が危機を察したのか後ずさる。


「実力の勝負だね!!」

クリムゾングレイルヽ( ゜∀゜)ノ┌┛)`Д゜)・;「ほら、格闘ゲームで相手に連続で攻撃を叩き込むコンボってあるじゃないですか」

壁(:3)レ∠)_「その一種で敵を地面に落とさず延々と攻撃を叩き込み続ける光景って見たことないですか?」

魔人皇帝 ( ̊꒳ ̊◟ )⁾⁾「シテ……コロ……シテ」

魔人鎧┗( ^ω^)┛「我、目覚めたり!」

壁(:3)レ∠)_「ところで壁に厳しくないですかこの戦い?」

魔法の袋(˚ଳ˚ ) :「オゲェェェェェェェ!」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_

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― 新着の感想 ―
魔人皇帝の寿命も消費してねえか? 無間地獄で精神摩耗だけじゃなくて
あぁ魔神鎧が自信を失くして行く未来しか見えないんだが(笑)
魔人皇帝本人の意志を無視して勝手に動いたりレクスに話しかけたりもする魔人鎧・・・こうなると着装者も哀れなものだな。
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