第343話 人魔戦争第一日目 天を裂く魔と太陽の神の争い
作者_:(´ཀ`」 ∠):_「ぐおお、頭がボーっとして全然執筆ペースを保てねぇ」
ヘイフィー_( _´ω`)_「ポカポカ陽気ですもんね」
ヘルニー(๑꒪ㅁ꒪๑)「意義あり! 気温の平均値出力を求めます!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「さて、それじゃあ素材集めに行こうか」
ヴァーミリオングレイブを破壊する為、僕は四大魔獣素材を集めに向かう。
そうなると大事なのは順番だ。
「今の装備だとちょっと不安な相手もいるからね。そうだな、最初は……バングウイングにしよう」
バングウイング、空の戦いにおいて最強の魔物であるこの魔物は文字通り翼を羽ばたかせただけで嵐を引き起こす生ける災害とも呼ばれる存在だ。
飛行魔法に自信のない人間が挑めば、近づく事すら出来ずに無数の竜巻に全身をボロ雑巾のように引き裂かれてしまう事だろう。
「確かバングウイングはこの辺りに棲息していた筈……」
前世と前々世の記憶を頼りに僕はバングウイングの生息域にやって来た。
基本的に前の人生でも生息域は大きく変わっていなかったから、この辺りに居る筈だ。
「でも魔力反応がないなぁ」
バングウイングレベルの魔物なら探査魔法を使わなくても体から漏れ出る魔力だけで分かるもんなんだけど……
「もっと離れた場所に居るのかな?」
僕は探査魔法の感度を最大にあげて魔物の反応を探る。
「普段なら魔物に気付かれないようにこんな強く操作しないんだけど、これなら逆に……」
と、その瞬間、ゴゴゴゴゴゴと重苦しい音と共に大地が震えだす。
「向こうが僕の存在に気付いて動き出すよね!」
同時に、山が吹き飛んだ。
「キュェェェェェェェェェッッ!!」
まるで何十もの管楽器を至近距離で同時に鳴らしたかのような奇声が一帯に響き渡る。
「いたいた、バングウイングだ」
現れたのは山よりも大きな毛のない、トカゲと鳥を混ぜた様な頭部。
「成る程、土の中で眠っていたのか。初めて見る行動だなぁ。コイツの生態っていつも空を飛びながら睡眠もする筈なのに」
二度の人生を経てもまだ知らない生態があるなんて、これだから野生動物の調査は奥が深いよね。
「っといけない。今日は調査の為に来てるんじゃなかった」
バングウイングの未知の生態は気になるけど、今は素材集めが優先だ。
「ブラストウインド!!」
僕は風の魔法で周辺一帯に小さな杭を猛烈な速度で飛ばして地面に突き刺す。
「チャージ! コントロールストリーム!」
すると普段以上に広範囲の風を制御する空間が発動する。
今投げたのは魔法補助用のマジックアイテムだ。
バングウイングが地上付近で羽ばたけば、周辺の自然が壊滅的な被害を受けるからね。
より広範囲に強力な風を相殺する結界を維持する為に使った訳だ。
「さぁ、姿を見せろバングウイング!」
「ギェェェェェェェェェェッ!!」
バングウイングが雄たけびを上げると、地面が盛り上がり巨大な山脈が出来あがる。
いや違う、あれは山脈なんかじゃない。あれは……バングウイングの全身だ。
「キィェェェェェェェェェェ!!」
山脈、いや盛り上がった大量の土が空に舞い上がり、その中から現れたバングウイングの翼が羽ばたく。
すると舞い上げられた土が、岩が、木々が、動物や魔物が、水の中でかき回されるスープの具のように滅茶苦茶な動きで舞う。
「大きさはなかなかだね。これなら良い素材が手に入りそうだ」
バングウイングの視線が僕に突き刺さる。
あんなに大きいのに、奴の眼は砂粒のように小さな僕をハッキリと認識していた。
自分の眠りを覚ました愚か者に罰を与えんと。
「やっぱり結界を張っておいて正解だったなぁ」
結界内は酷い有り様だけど、外に影響はほとんど出ていない。
「さて、それじゃあ時間もないし、すぐに狩らせてもらうよ!」
「ギィェェェェェェェェェ!!」
といってもバングウイングは冗談抜きで強力な魔物だ。
今の装備が心もとない状態ではかなり苦戦する事だろう。
「それでも、やらないとね!」
「いくよ! 魔力剣展開! 今日は本気で行くよ! 次元切断ディメンジョンブレイク!」
初手は嵐の影響を受けない次元攻撃だ!!
とはいえ、バングウイングの強大な魔法防御の前には大した効果はない。
シュパッ
でも自分が傷つけられたという事実が、バングウイングに警戒心を抱かせて動きやすくなる。
ズルッ
バングウイングの体が斜めにズルリとズレる。
「って、あれ?」
キュゴゴゴゴゴゴッという音が鳴り響き、バングウイングの巨体が次元のはざまに吸い込まれ始める。
「って解除解除―――っ!!」
慌てて魔法を解除してバングウイングの体が吸い込まれるのを防ぐ。
「あっぶなー、危うく素材部分まで吸い込まれちゃうところだったよ」
地上に落ちたバングウイングの巨体を確認して必要な素材が無事だと確認する。
「良かった、ちゃんと残ってる」
素材が無事だったことにホッと安堵の溜息を吐く。
「でもなんであんな牽制の攻撃で倒せちゃったんだろ?」
いくら何でもこんな事はありえないんだけど……
「ん? あれ?」
と、そこで僕はバングウイングの体に違和感を感じた。
「……胃に何も入ってない? 胃だけじゃない、腸にも、消化途中の獲物の残骸が見当たらない」
ディメンジョンブレイクで切断したバングウイングの内臓の断面からは、彼が食べた筈の食事の痕跡が全くなかったんだ。
「そういえば土の中に埋まっていた時、その上の山は緑で溢れていた。って事は最低でも数百年は土の下で眠っていたって事だよね?」
どういう事だろう。バングウイングが地上でそんな長期間眠るなんて記録を見たことは前世でもなかった。
これじゃまるで冬眠する動物みたいじゃないか。
「それとも、僕が死んでいる間にバングウイングの生態が変わる様な事件が起きたのかな?」
考えれば考える程分からない。
「んー。魔人の件が終わったら図書館で調べてみようかな。あっそうだ。ガンエイさんならキメラ研究の一環で魔物の生態も詳しい筈。あとで聞きに行こう!」
こうして、僕は新たな武具作成の為に必要な素材、バングウイングの頭骨を手に入れたのだった。
◆とある村の老婆◆
この村には昔から伝わる伝説がある。
村から見える一番大きなバウグ山には、巨大な魔物が封じられていると。
魔物は空を夜にする程大きく、何日も続く嵐を起こしたり、地上に暮らす者を人も魔物も関係なく大地ごと喰らう恐ろしい怪物であると。
しかしそんな魔物の横暴に怒った白い太陽の神によって魔物は地の底に封じられたのじゃという……
けれど、そんな伝説も今ではおとぎ話と馬鹿にされ、若者はバウグ山を恐れることなく狩りや採取に足を運んでいた。そんなバウグ山が……
「キェェェェェェェェェェ!!」
「山が……鳴いておる!?」
信じられん程大きな鳥の鳴き声が響き渡る。
「な、なんだこのバカデカい鳥の声は!?」
「ひぃぃぃぃっ!」
誰も彼もがこの恐ろしい鳴き声に腰を抜かし、へたり込む。
更に次の瞬間、バウグ山が吹き飛んだ。
「や、山が……っ!?」
山が吹き飛んだ驚きは直後姿を現した巨大な怪物の頭の異形さに吹き飛ばされる。
「な? 頭? と、鳥の?」
「なに……あれ」
「ば、化け物……」
山が吹き飛んでその中から同じ大きさの鳥のような怪物の頭が現れる。
正気を疑うかのような光景に、多くの者が頭を抱えて我を失う。
更に頭を超える大きさの体が地面を破壊しながら現れ空へと飛び立つ。
「おお……伝説は真実じゃった……」
巨大な鳥のごとき魔物が翼を広げると同時に、その周辺一帯に無数の竜巻が生まれる。
土が、岩が、大木が、空へと舞い上がる光景は、この世の終わりとしか思えないものじゃった。
じゃが、その光景は奇妙でもあった。
舞い上がった土砂が、無数の竜巻が、何故か巨大な魔物の周辺だけに吹き荒れており、ある距離から先は何事も起きていないかのように青空じゃったのじゃ。
「なんじゃあこれは……」
無理やりに理由を付けるとしたら、巨大な魔物が、見えない壁に封じられていると言えばよいのか……
そして次の瞬間、突然巨大な魔物が真っ二つになって地面へと落ちていった。
「……は?」
訳が分からなかった。伝説の魔物が現れたと思ったら突然真っ二つになって死んだのじゃ。
更に魔物の死体はまるで幻だったかのように消えてしもうた。
「一体何が起きたんじゃあ……?」
ただ一つはっきりしておる事があった。
今目の前で起きた事は現実という事じゃ。
なにせ、あの巨大な魔物が現れた付近の山が根こそぎ吹き飛んでおったからじゃ。
「お、おばば、今のは一体……」
いち早く我に返った村長が、縋るように儂に問うてくる。
じゃが儂に分かる訳がないじゃろう。儂だって何が起きたのか分からんのじゃから。
「分からん。じゃが今起きたことは間違いなく事実で、そして儂等は救われたという事じゃ」
「一体誰に……?」
「決まっておるじゃろう」
儂は静かに膝をつき、空に向けて手を組む。
「白き太陽の神じゃ」
蘇った魔物は、復活を察していた神によって退治されたのじゃろう。
気が付けば周囲に居る者達も、皆一心不乱に空へと祈りを捧げておった……
モフモフ_Σ(:3」∠)「白き太陽の神って一体誰の事なんでしょうね?」
バングウイング( ´;//д;)ノ「せっかくアイツが居なくなるまで隠れ潜んでいたのに……」
おばば (;°-°;))) 「悪しきモノが神に裁かれたのじゃー!」
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