第341話 宣戦布告と古神城塞
ヘイフィー♪( ◜௰◝و)و 「元気いっぱい花粉一杯!」
作者 (o>Д<)o・'.::「やめれー!」
ヘルニー_(:3 」∠)_「これが地獄か……」
ヘイフィー(┐「ε;)_「そろそろお花見の季節ですね」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
その日、世界が震撼した。
突然空が真っ赤になり、空に半透明の人の姿が浮かび上がったからだ。
「なんだありゃ!? 巨人の幽霊か!?」
道行く人達が驚いたのも無理はない。
何せ空に浮かび上がった人影は地上にいる僕達から見ても分かる程に大きかったのだから。
でも違う。アレは雲をスクリーンにして遠方の映像を映し出しているにすぎない。
問題はそこに映った人物の姿だ。
黒褐色の肌、額から生えた角、そして背中から生える翼。
これまで何度も見て来たその種族の名は。
「魔人!?」
リリエラさんの驚きに応えるかのように、空に映った魔人が声を発する。
『我が名は魔人皇帝ルヴェリアル。魔人を統べし者である」
「「「「「「魔人皇帝っ!?」」」」」」
ただの魔人ではない名乗りに僕達は驚きの声を上げる。
何故なら魔人の王は存在こそ示唆されていたものの、僕がかつて生きていた時代ですら一度も姿を見せたことが無い幻のような存在だったからだ。
まさかそんな謎の存在がこの時代に姿を見せるなんて!
「あれが魔人の王……」
『告げる』
魔人皇帝が重く、そして短く言葉を紡ぐと、周囲が沈黙に包まれる。
『我等魔人は人族に対し攻撃を再開する』
「再開……?」
『そう、再開だ。我等魔人と人族が互いの存続をかけて戦った古の戦い、人魔戦争の再開だ!!交渉も反抗も無意味である。我等が力に貴様等は怯え、震え、地に這いつくばったまま死ぬが良い』
一方的な宣戦布告。交渉の余地など無いと魔人皇帝は言い放つ。
「ふ、ふざけんな! 何好き勝手な事言ってんだ! 魔人とか馬鹿いってんじゃねぇぞ!」
「そ、そうだ! 魔人なんて伝説の存在じゃないか! そんなのが居る訳無いだろ! ふざけるのもいい加減にしろ!」
「あれは魔法か何かのマジックアイテムを使っているんじゃないのか? だとしたらかなり悪質なイタズラだぞ……」
しかし周りの人達は魔人皇帝の宣戦布告に対し、何かのイタズラじゃないかと疑いの声を上げる。
「おいおい、アイツ等マジで言ってんのかよ?」
「あんな風に空に巨大な姿を浮かべる魔法を使える時点で普通の魔法じゃないって気付きそうなもんでしょ」
いや、あれは普通に大規模広告魔法として珍しくないと思うけど。
まぁ派手過ぎてうるさいから大きすぎる広告魔法は禁止になったんだけどね。
「って、それどころじゃなかった。問題はあの魔人の方だ」
「多分皆魔法の事を良く分かってないから、信じられないんだと思う。魔法が使えない人にとっては魔法は何でも出来る凄いものと思われてるし」
「それに突然伝説の魔人が宣戦布告なんてしてきたら、混乱と恐怖もあって辻褄が合わない理由でも信じてしまうのも無理ないと思います」
と、ジャイロ君達のぼやきにメグリさんとノルブさんが一般人なら恐怖から冷静な判断力を失ってもおかしくないと擁護する。
そして僕達がそんな話をしている間にも、魔人皇帝は言葉を続ける。
『短命にして矮小なるお前達は我が言葉を疑い、現実から逃避することだろう。故に、お前達に絶対の恐怖を見せてやろう。逃げられない恐怖をな』
魔人皇帝の姿が消えると、代わりに空に無数の黒い塊が映る。
そして映像が拡大されてゆくと、黒い塊の詳細な姿が見えてきた。
「あれは……要塞?」
そう、黒い塊の正体は空に浮かぶ要塞だった。
『これこそは我等魔人が作り上げた飛行要塞。そして……』
と、飛行要塞から視点がグルリと回ると地上が映しだされる。
その先には大きな町が一つ。
『破壊せよ』
魔人皇帝の言葉に合わせ町に赤いものがいくつも降り注ぐ。
次の瞬間、町が爆発炎上し、一瞬で火の海へと変貌した。
「「「「なっ!?」」」」
あまりに凄惨な光景に周りの人達から悲鳴が上がる。
更に火の海になった町へ向けて無数の黒い翼が舞い降りてゆく。
拡大されたその姿は、武装した魔人達だった。
『ははははっ! 死ね人族共!』
魔人達は上空から黒い魔力の塊を辛うじて生き残った人達に放ってゆく。
更に地上に降りると、禍々しい剣を振るって更に虐殺を始めた。
『はははははっ!!』
『ぎゃぁぁぁぁ!』
哄笑と悲鳴、人が切り割かれる音、撃ち貫かれる音が響く。
『これなる魔人兵団は全身を強力なマジックアイテムで固めてある。貴様達人族を越える力を持つ我々が、更にマジックアイテムで強化されているのだ』
「そんな、あれだけの数の魔人がマジックアイテムで武装ですって……!?」
凄惨な光景にミナさんが声を震わせる。
『だが、貴様等の絶望はそれだけではない』
魔人皇帝の言葉の後に、重く巨大なモノがいくつも地面に落ちる音が響く。
そこに現れたのは、巨大な灰色の魔獣だった。
『ギュォォォォォォ!!』
魔獣は甲高い雄たけびをあげると、半壊した建物を軽々と破壊してゆく。
『かつて世界を破滅に導いた大魔獣白き災厄の因子を受け継ぎし人造魔獣、その名も灰の従魔獣。ドラゴンすら打ち倒す魔獣の軍勢である!!』
「白き災厄だって!?」
白き災厄と言えばガンエイさんがアンデッドになってまで執着していた恐るべき魔物の筈。
それの因子を受け継いだ魔獣だなんて、一体どれほど危険な存在なんだ!
『だが、貴様達の真の絶望はここからだ』
人々が絶句する中、再び映像が空へと戻る。
そして黒い塊、飛行要塞の背後に、空を覆い隠すほどの巨大な赤い影が現れた。
「アレは……!?」
それは飛行要塞が豆粒のように思える程巨大な要塞だった。
『これこそが我等が最強の切り札。古の時代に産み出された最強最悪の古神城塞! その名もヴァーミリオングレイブ!』
全体が深紅で彩られたソレの中央部が開き中から巨大な砲身が現れる。
『見よ! そして震えろ! 絶望の姿を!『ゴルゴーンノヴァ』発射!!』
次の瞬間、空に浮かんだ映像が眩い光を放つ。
「うわぁぁぁっ!!」
あまりの眩しさに周囲の人達が皆目を覆う。
そして光が止み、皆が顔を上げると誰もが絶句した。
「山が!?」
空に浮かぶ映像には、巨大な穴が開いた山の残骸が映っていたんだ。
当然そんな不自然な形を維持できるはずもなく、山頂部から崩落して山は壊れた砂山の様な有様となる。
『見たか人族よ。これがお前達の末路だ。震えて最期の刻を待つが良い!』
その言葉を最後に、空に映った映像は消え、空は再び青色に戻ったのだった。
「「「「……」」」」
衝撃的な光景を見た人々は無言だった。
誰もが今のは本当の事だったのかと不安げな様子だ。
「い、今のは誰かのイタズラだよな……?」
「魔、魔人なんて誰も見た事ない伝説の存在だぜ? イタズラに決まってるだろ?」
そんな不安をかき消そうと、誰かがやっぱりイタズラに違いないと言い始め、それに縋る様に同調する人達。
けれど、そんな淡い期待を踏みにじるかのように、空が震えた。
「なんだアレは!?」
誰かの声に再び空を見れば、空にはいくつもの黒い塊が浮かんでいた。
「あれって今の映像の!?」
「でもいつの間に!?」
「転移装置だ!」
僕はすぐに飛行要塞には転移装置が組み込まれていて、転移でこの王都に現れたのだと察する。
「いけない! グランドエリアマナガード!」
飛行要塞の群れから発せられた魔力の高まりを感じ、僕は即座に超広域防御魔法を王都全体に展開する。
次の瞬間、空がオレンジ色に輝いた。
「キャアアアア!」
「ウワァァァァァ!」
そこかしこで悲鳴があがる。
「……あ、あれ? 何ともない?」
幸いにも防御が間に合った事で、飛行要塞の攻撃を防ぐ事は出来た。
とはいえ完全にはカバーできず、王都の外周にいくつか被害が出てしまっている。
「今のってレクスさんの防御魔法!?」
「これだけの広範囲を守ったの!?」
「皆、町の人達にお城へ避難を促して! 一カ所に集めた方が守りやすくなるから!」
「わ、分かったぜ兄貴! おいお前等! 城に避難するんだ!」
「皆! お城に逃げて! ここに居るとまた攻撃されるわよ!」
「お城なら騎士団が居ます! 此処よりも安全です!」
「魔法使いの魔法で守って貰える! 急いで!」
「に、逃げろ!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
ジャイロ君達の警告が怯える人達に行動を促し、皆一目散にお城を目指して走り出した。
分かりやすい目印と、騎士団なら守って貰えると言う分かりやすい安全の保障が功を奏する。
実際には城の中に入れてもらうことはできないだろうけど、必要な防衛範囲が狭い方が守りやすいからね。
「でも守るだけじゃいつかやられるわよ!?」
「うん、だから墜としてくる!」
僕は飛行魔法で飛び上がると、空を覆う飛行要塞を視界全体に納める。
敵は攻撃の大半が防がれた事に困惑しているのか、次の攻撃はまだ来ない。
「問答無用で攻めて来たんだ。自分達も同じ目に合う覚悟はあるよね!」
僕は魔力を高め、空を覆う飛行要塞の群れに向かって魔法を放つ。
「グランドパニッシャー!!」
重力破砕魔法グランドパニッシャー。物質に宿る重力の法則を崩壊させる事で凝縮と破裂を無造作に引き起こす魔法だ。
空を覆っていた飛行要塞の各部位がランダムに凝縮されて小さな塊になったり逆に一瞬で膨れ上がって破裂する。
当然そんなことになったら要塞はまともに飛行することも出来ず、墜落してゆく。
「おっといけない。王都に落ちたら大変だ。アンカーライド!」
落下してゆく飛行要塞を魔力の鎖で連結すると、軌道を変えて王都から離れた安全な場所に集結させる。
アンカーライドは制御を失った乗り物をけん引する為の魔法なんだ。
「さて、中にいる魔人達が出てくる前にケリをつけないとね。テリブラコンデンサ!!」
術の発動と同時に、空を覆っていた飛行要塞達が一点に向かって集まってゆく。
要塞同士が接触して激しい音を立てながらぶつかりつつも、削れ落ちた破片もまた同じ個所に向かって重力に逆らい集まってゆく。
途中魔人が飛行要塞から飛び出して逃げ出そうとするも、彼等は空間を支配する一点に集まる力に逆らうことが出来ずに吸い寄せられてゆく。
そうして、飛行要塞も、その破片も、中から脱出しようと飛び出した魔人達も何もかもが空の一点へと集中し、押しつぶされ、なおも一点へと引き寄せられた事で、小さな小さな小石の様な塊へとその姿を変えたのだった。
「よし、とりあえず第一波は凌いだかな」
◆
魔人の第一波を凌いだ僕達は、王都の屋敷に戻っていた。
「なんかとんでもねぇ事になっちまったな」
「そうね、レクスのお陰で何とかなったけど、それでも王都も無事じゃないわ。他の町はどうなった事やら」
と、皆は王都以外の国や町がどうなったのかと心配そうだ。
実際僕も気になる事がいくつかあるしね。
「でもまぁ、大丈夫だよな。何せこっちには兄貴がいるんだからよ!」
「そ、そうよね。こっちにはレクスが居るんだもの! さっきの飛行要塞みたいになんと……」
「いや、無理だ」
しかし僕は皆の楽観的な発言を否定する。
「え?」
「あの巨大城塞、ヴァーミリオングレイルは破壊できない」
「え? 無理って……」
駄目なんだよ。アレは今の僕じゃ破壊できない。
だってあの、魔人が古神城塞と呼んだあの巨大な飛行城塞ヴァーミリオングレイルは……かつての僕が作った最強兵器なのだから。
モフモフ(;^゜ω゜^)「おおーいご主人!? まさかの元凶!?」
魔人_:(´д`」∠):_「あ、あれ? 俺達出番なし?」
飛行要塞_(:3 」∠)_「濃縮100%」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。




