第339話 魔の森蹂躙劇
作者_(:3 」∠)_「久々の更新ですよー!」
ヘルニー (´∀`*)「少し涼しくなってきたねぇ」
ヘイフィ(┐「ε;)_「でもまだまだ暑いは暑いんだよね」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆モフモフ◆
オーリエの匂いを追ってやってきたのは懐かしの魔獣の森だった。
おお、懐かしきわが生誕の地。
え? 洞窟で立ちはだかって来た人間? そんなのワンパンである。
結局洞窟内にオーリエの姿はなかった為、我はオーリエの匂いを追ってここまでやって来たのである。
そして森の最奥にやって来た我が目にしたのは、ボンヤリした様子のオーリエと見知らぬ人間のオスであった。
やれやれ、やっと見つけたぞオーリエ。
「な、何だこの珍妙な生き物は!? ここは魔物以外は生きていけぬ魔獣の森だぞ!?」
「ヴィ、ヴィザンド様、奴です! あれがエネデルの民の村を守護していた魔獣です!」
「あれが!? あんな気味の悪い目をした小さな毛玉が魔獣達を駆逐していたというのか!? 馬鹿も休み休み言え!」
うむ、何を言っているか分からんが、舐められているようなのでちょっと思い知らせてやるか。
我は後ろから忍び寄って来た人間に向かってバックジャンプをすると、後ろ足で蹴っ飛ばしてやる。
「ゴバッッッ!?」
我に蹴られた人間はその後ろにいたエルダープラント達を何本もへし折りながら森の中へと消えてゆく。
ふっ、そんな雑な不意打ちが我に通じる訳が無かろう。
まだご主人の群れの鳴き声の少ない人間のメスの方が隠れるのが上手かったぞ。
「くっ、エネデルの巫女よ、あの魔獣に我々に敵対するなと命令するのだ!」
我に恐れをなしたのか、人間のオスが怯えた鳴き声を上げる。
「……」
「どうしたエネデルの巫女よ! 速くあの魔獣に命じろ!」
「……できません。神獣様は私に支配されてはいません」
「はぁ!? 魔物使いが魔物を支配してないだと!? そんな訳があるか! 本当に支配していないと言うのならさっさと支配しろ! お前は悪名高きエネデルの民だろうが!」
「……分かりました」
何やら人間のオスに怒鳴られていたオーリエは、ぼんやりとした様子でこちらに歩いてくる。
「神獣様……私と……契約して私の使役獣に……なってください」
……何を言っているのだこやつは?
我は地上全ての獣の王ぞ。
その我が矮小な人の子に従う訳がなかろう。
ドラゴンがアリに従うようなものだぞ。身の程を知れ!
「……駄目でした」
「はぁ!? そんな訳ないだろう! お前は全ての魔物を従える事が出来るエネデルの民なんだぞ! そのお前に従えられない魔物などいる筈がない! いるとすればそれは白き災厄しか……」
突然、後ろでチワワのように喚き散らしていた人間のオスがピタリと静かになる。
「ま、まさかアレが、我等の求めた白き災厄だとでも……いうのか……!?」
おっ、良い感じの恐怖の感情。そうだもっと我を畏れろ。我に畏怖するがいい。
矮小な人間には強大な存在に媚びへつらうのがお似合いなのだよ!
「あ、ありえん! 伝説の白き災厄があのような珍妙な毛玉であるはずがない! ただの色の空似だ!」
すると我にビビり散らかしていたニンゲンのオスは胸元の袋から何やらキラキラした石を取り出す。
ふむ、人間は体中に子供を育てる為の袋があるのだなぁ。
「エネデルの巫女よ! これを使え! 白き災厄を支配する為に用意した支配のマジックアイテムだ! これでその気味の悪い魔物を支配しろ!」
「分かりました……神獣様、私の使役獣になってください」
すると人間のオスからキラキラした石を受け取ったオーリエが我にそれを差し出してまた従えと言ってくる。
やれやれ、貢ぎ物を差し出してきた事は評価してやるが、我がそんなもので従う訳が無かろう。だがそれは貰って置いてやる。
我はキラキラした石が嵌った輪を角にひっかけて飾る。
どうだ? 似合うだろう?
「はいお似合いです」
「待て待て待て! 何を着飾らせているんだ! それを使って支配しろと言ったのだ!」
「これでは通じませんでした」
「なんだとぉ!?」
やれやれ、やかましい人間だ。我を前にしてはしゃぐのは分かるが、もう少し落ち着きを持つべきだと思うぞ。
「くっ、ならばお前達、このふざけた魔物を始末しろ! マジックアイテムの使用を許可する!」
「「「はっ!」」」
人間のオスが雄たけびを上げると、周囲の人間のオス達が殺気を放ち始め、魔力の籠った爪や牙を見せる。
ふむ、我に挑むつもりか?
「死ねっ!」
人間のオス達が一斉に我に襲い掛かって来る。
「しっ!」
しかし一斉に向かってくると思わせたところで一部の者達がわざとタイミングを遅らせる。
ふむ、我が避けたところを狙うつもりか。しかも二段構えで。
悪くない。強き者を倒す為に群れで挑むのだ。多少は知恵を働かせてくれないとな。
だが、それは我が避けるに値する攻撃である事が前提だ。
「なっ!?」
我は最初に攻撃してきた者達の攻撃を爪で、牙で、角で受け止める。
「う、受け止めただと!?」
「そのまま押さえつけておけ!」
動揺する者達を叱責し、時間差で攻撃してくる人間達。
うむ、良い覚悟だ。しかしまだ我を甘く見ている。それっ。
我は受け止めた人間達の爪をへし折ると、そのまま遅れて攻撃してきた人間達の爪もへし折る。
「なっ!?」
更にその陰から現れた者達は魔法で吹き飛ばしてやった。
「がはぁっ!」
この間一呼吸の刹那! ふはははは、我強すぎたかな?
「ば、馬鹿な! マジックアイテムで強化した精鋭だぞ!? それが相手にならないだと!? それもマジックアイテムを破壊してだと!? あり得ん! この魔物の体はマジックアイテムよりも堅いと言うのか!?」
はははははっ、人間共の驚愕の鳴き声は楽しいなぁ。
さーて、それでは我に挑んだ蛮勇の報いを受けて貰おうかな。
「ひっ!?」
我が一歩前に踏み出すと、人間のオスは怯えて後ずさる。
はっはっはっ、怯えろー、震えろー。
「なっ、くっ、ううっ、こ、こうなれば!!」
我への恐怖が最高潮に達したのか、人間のオスが奇声を上げる。
「エ、エネデルの巫女よ! これを使ってこの化け物を支配しろ!」
人間のオスが掲げたのは、何やら禍々しい気配のする石だった。
「白き災厄を従える為に用意した切り札だったがしかたあるまい。これならばいかに貴様と言えども逆らえぬぞ! さぁ、これを使って力の限りその魔物を支配するのだエネデルの巫女よ!」
「は、い……神獣様、私の使役獣になってくださ……うっ、あぁ」
またしても男から石を受け取ったオーリエが我に従えと言ってくる。
しかし今度のオーリエは何やら苦しそうだ。
ふむ、原因はあの石だな。あれに込められた強大な力がオーリエには耐えられないのだろう。
「ふははははっ! どうだ耐えられまい! これは魔物使いの力を劇的に高める支配アイテムだ! あまりに劇的に力を高める故、使用者の肉体が持たず、たった一度しか使えない程に身心を酷使してしまうがその分支配力はこれまでの比ではないぞ!」
ふーむ、これはいかんな。このままではオーリエは石の力で廃人になってしまうぞ。
うむ、いかんな。先ほどからふざけたことを何度も言っているが、オーリエは我に傅く見込みのある娘だ。
うむ、だからまぁ、仕方ない、仕方ないよなぁ。
オーリエが苦しむ原因であるその石は我が責任を以って喰らってやろう。
「パク」
「フハハハハハッ……は?」
お、おおーっ! 美味い! 立ち上る魔力から美味そうだなと思っていたが、やはり美味い!
魔人の羽やドラゴンの羽のスパイシーさとはまた違った美味さだ!
これはアレだな。ご主人の群れの人間のメス達がたまに食べている甘い石のようだ。
うーん、たまにはこういう甘いのも良いな!
「は? 食べ? は? 何で?」
「うっ」
更にふらりと、オーリエが膝をついて顔が近づいた時に我は気づいた。
お? このオーリエの首に付いた石も美味そうだな。
我はオーリエの首に付いた石の輪の中央に付いた石を爪でほじくり返すと、それをパクリと食べる。
うむ、こちらも悪くない。干した果物のような甘さだ!
「あ、ああ、神獣……様?」
我が甘い石に舌鼓を打っていると、目に光が戻ったオーリエが話しかけて来た。
「あ、ありがとうございます神獣様。操られていた私を助けてくださって……」
操る? 何の事だ?
ああそういう事か。 さてはこの娘、この甘い石に魅せられていたのか。
そうなのだ、美味い食べ物と言う奴はどんな生き物でも夢中になるものだが、弱い生き物が魔力などのたっぷり籠った食べ物に近づくと、逆に支配されて自分が食事にされてしまう事があるのだ。
ほら、エルダープラントとか動物を襲う樹もいる事だしな。
成程な、それでさっきから馬鹿な事を言っていた訳だ。
やれやれ、仕方のない奴だ。
「ち、違います! あの男にマジックアイテムで操られていたんです!」
あっ、そうなの。まあ我にはどうでも良い事だが。
「どうでもよくないですよー!」
ふぅ、美味かった。うむ、中々美味だったぞ人間のオスよ。褒めて遣わす。
「……と神獣様は仰っています」
「な、なな。な……っ!!」
オーリエの通訳を受けて我に褒められた人間のオスは、感動のあまりなーなーと鳴き声をあげる。
はっはっはっ、あまりに言葉にもならんか。
「な、何なんだお前は! 白き災厄を従える為のマジックアイテムが効かないなどありえないだろっ!」
ふむ、何を言っとるかさっぱり分からんが。
「これで分かったでしょう。白き災厄を従えるなど無理な事だったのです」
「なんだと!?」
「貴方が自信満々で用意したマジックアイテムは神獣様に全く効果を発揮しませんでした。白き災厄なら猶更でしょう。最初から無理な話だったのです」
「ぐっ」
オーリエは人間のオスをあやすかのように語り掛ける。
「もう諦めてください。白き災厄を従えるなど不可能です」
「だ、黙れ黙れ黙れ! 敗北者の一族の娘が私に指図するな! 今回は偶々役に立たない外れのマジックアイテムだっただけだ! 私の計画に失敗などない!」
うーん、この人間のオス、まだ諦めてないっぽいな。正直飽きて来た。
「こうなったら最後の手段だ! この禁断のマジックアイテムを使ってやる! 本来なら白き災厄が従わなかったときの緊急手段だったが、これを使えば貴様等など消し炭すら……」
「パクリ」
我は人間のオスが取り出したものをパクリと食べる。
「残さず……は?」
そしてお腹の中でボシュンと弾ける感覚。
なかなかの刺激感。もっとない?
「とおっしゃっています……」
「あるわけあるかー! それは正真正銘最後の手段だったんだぞ! 一度発動すれば周囲一帯が草一本残らない更地になる最悪のマジックアイテムなんだぞ!」
「な、なんてものを使うんですか! 貴方自分も死ぬつもりだったんですか!?」
「わ、私は転移アイテムで逃げるつもりだったんだ!」
ふむ、もうお代わりはないのか。じゃあもう用済みだな。
「ひっ、く、くるな」
そーれ! どーん!
「グワアァァァ!」
憐れ人間のオスは我の一撃でエルダープラント共々吹っ飛んだのだった。
「神獣様」
食後の運動を終えてすっきりした我に、オーリエが跪いてくる。
「この度は攫われた私を助けてくださってありがとうございます。更に操られていたとはいえ、許されざる無礼を働いた私を正気に戻してくださり、どれほどお礼を言っても足りません」
ははははは、うむうむ、敬うが良い。
「しかし何も出来ないからと甘える事などとてもできません。何か私に出来る事はありませんか?」
ふむ、オーリエに出来る事ねぇ。
どうやらオーリエは我にお礼がしたくてしかたないらしい。
となると……やっぱり血かなぁ。
オーリエの血は非常に美味だった。
いや、いっそ腕の一本くらい貰ってもいいかもしれない。
それならオーリエも生きていくのにそこまで不自由はすまいて。
うむうむ、オーリエがここまで言うのだからな。
その強い思いに相応しい礼をさせてやろう。
決めたぞオーリエ! 我はお前の、
「見つけた!」
腕を食べたいぞ、と言おうとしたその時、我の全身に悪寒が走った。
……え? 今の声、もしかして……
い、いやそんな筈は、我は自由になったんだぞ。あれだけ流れに流れて行方が分からなくなっていたのだ。
我がここに居るなんて分かる筈がない。
「よかったー、依頼を終えてすぐに探しに来たんだよ。そしたらまさか魔獣の森に居たなんてね。やっぱり帰巣本能が働いたのかなぁ?」
げぇーっご主人っっっっ!?
聞き間違いでも幻聴でもなかった! この圧倒的な力! 威圧感! 間違いなくご主人んんんんっ!
や、やばい! 今の会話聞かれてた!? 我がオーリエの腕を食べたいって言ったの聞こえてた!? い、いや、言ってないよね。食べたいまではまだ言ってなかったよね!
言ってなかったと言ってさっきの我ぇーっ!
「さぁ、帰ろうかモフモフ」
ガシリと掴まれる我。
あっ、終わった。
チョロロロロッ
久しぶりの温かい感覚に我、死を覚悟しました。
「あ、あの……」
と、オーリエがご主人に話しかける。
おお! オーリエ! 丁度いい! 我を助けてーっ!
「あれ? 君は?」
「わ、私はその、あの人達に誘拐されて、それを神獣様に助けて頂いたんです」
「神獣……えっと、モフモフが君を誘拐犯から助けたの?」
「はい、神獣様に助けて頂きました!」
「……んー、神獣ってのは何かの勘違いだと思うけど……よくやったねモフモフ。お手柄だよ」
と、何を言っているか分からないがご主人が我の頭を撫でる。
た、助かったー! でかしたオーリエ! 大金星! 永世非常食じゃない非常食に任命するぞ!
「じゃあ近くの町まで送るから、衛兵隊に頼んで君の村に連絡してもらおう」
「は、はい。ありがとうございます!」
こうして、再びご主人に囚われてしまった我だったが、何とか命だけは助かったのだった。
くそーっ! 次こそは自由の身になってやるぞー!
◆オーリエ◆
「じゃあ、気を付けてね」
「は、はい! ありがとうございました!」
レクスさんと名乗った冒険者の方は、私を近くの町まで連れて行ってくれたあと、神獣様を伴って去って行きました。
そして私は迎えに来た村長達と共に故郷に帰る事が出来たのです。
あと私を攫った男達ですが、周囲全てが植物の魔物である魔獣の森で意識を失っていた所為で、全滅していたとの事です。
ただ魔物が食べなかった遺留品から彼等は昔から様々な騒ぎを起こしていた犯罪集団だった事が判明し、私の事も邪教の儀式の生贄として攫われた運の悪い子供だったと判断された事で村の事はバレずに済みました。
「でも驚きました」
神獣様と初めて出会った時には気付きませんでしたが、今なら、あの人に出会った後なら分かります。
「神獣様、とっくにあの人に使役されていたんですね」
そりゃあ使役出来ない訳です。
それにしても世の中には、神獣様のような凄まじい存在すら使役してしまうようなとんでもない人が居るんですね。
「あの人なら、案外白き災厄でも従えてしまうかもですね」
ヴィザンド(;ω;)「結局何だったんだあの白いの……」
エルダープラント_:(´д`」∠):_「あの、僕達とばっちりなんですけど……」
今回出番のなかったジャイロ(`・∀・)ノ「次回から新章だぜ!」
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