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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
マジックアイテム編

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第336話 邪悪なる獣の民

作者_(:3 」∠)_「桜が散り少しずつ熱くなってきましたが、まだまだ花粉がつらい時期です」

ヘイフィー(ง ´͈౪`͈)ว「まだまだ絶好調!」

ヘルニー_:(´д`」∠):_「ほんと止めれ」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ◆オーリエ◆


 私の名はオーリエ。

 辺境に住まう名も無き村の巫女です。

 そう、私達に名などありません。罪深き私達には。


 私達はただひっそりと、誰にも知られぬように隠れ住んできました。

 人から隠れ、魔物から隠れて。

 そんなある日、私達の村が襲われました。


 盗賊かと思った彼等は、しかし村の備蓄を奪うでもなく人を探して回りました。

 彼等の狙いが巫女である私だと分かった時、村の皆は私を逃しました。

 私の罪深い力が利用されないようにと。


 襲撃者から逃げ延びた私でしたが、運悪く魔物に襲われてしまいました。

 この辺りの魔物は獰猛な魔物が多く、私の足では到底逃げきれません。

 何より、怪我をした私の血の匂いを彼等が見失うはずもありません。


 ですがこれでよかったのでしょう。

 この呪われた力を使って生き延びるよりも、魔物の餌となって生を終えた方が、誰の迷惑にもならずに済むのですから。


 そう覚悟した時、あのお方は現れました。

 純白の美しい毛並み。

 全てを見通すかのような黒曜石の瞳。

 愛らしい楽器のような旋律を奏でる鳴き声。

 そして太陽のように美しい丸みと雲の如き柔らかさを帯びた御姿。


 天よりの使者と言うほかないそのお方は、魔物達を追い払い、慈しみを込めた振る舞いで私の傷口を舐めとってくださいました。


 そう、このお方こそ、一族に代々伝わる伝説の神獣様に違いありません。

 村の危機を察し、巫女である私にその神々しいお姿を見せてくださったのです。


 ああ、罪深き我等に対し、何と慈悲深い。

 神獣様は瞬く間に襲撃者を打ち倒すと、更には村の周辺を徘徊する魔物達を間引いてくださいました。


 村の周囲には魔物避けがしてあったのですが、土地に眠る私達一族の亡骸と血の匂いに惹かれ、魔物達はどこからともなくやって来て私達の生活を脅かしていたのです。

 けれど私達はそれも一族の業、先祖達の罪の清算をするべき時が着たと諦めていたのですが、神獣様はその諦めを些事とばかりに平和を取り戻してくださったのです。


 ああ、神々は私達の罪をお許し下ったのでしょうか?

 ですが、それはただの勘違いだとすぐに気付かされました。

 神獣様の留守中に、再び村が襲われたのです。


 その結果、村の皆の抵抗もむなしく私は襲撃者によって攫われ、彼等のアジトと思しき場所へと連れてこられました。

 そして、洞窟を改装して作られた施設の奥へと進むと、明らかに豪勢な装飾が施された部屋に、その男は居ました。


「ようこそ麗しい巫女の少女よ。漸く君に会えて私は嬉しいよ」


 男は私を連行してきた襲撃者に比べると仕立ての良い服を着ており、地位の高い人物だと分かります。


「……何故村を襲ったのですか?」 


 私が問うと、男はくくと小さく笑い声を漏らします。


「それは勿論、君がエネデルの民だからだよ」


「っ!」


 まさかとは思っていましたが、やはりそうでしたか……


「……なんの事ですか?」


「しらばっくれるのは止めたまえ。君達がエネデルの民の末裔である事は既に調べがついている。それに我々は勝手に君を利用させてもらう予定だからごまかしなど無駄な労力だよ」


私の浅知恵など何の意味もないと、男は笑います。


「かつて強大な魔獣の群れを従え、世界に覇を唱えた魔獣使いの一族エネデルの民。君はその末裔だ」


 ああ、本当に知っていたのですね。

 私達が罪深き一族だと。


「そんな大昔の呼び名をご存じとは、貴方はとても博識なのですね。それで私にどんな御用なのですか? 学者さんのように昔の話を調べにきたのですか?」


「はははっ、勿論違うとも。我々の目的は、エネデルの民の力。幾頭もの強力な魔獣を無条件に従える類まれなる魔物使い、いや魔獣使いとしての力を求めてだよ!」


 やはりそうでしたか。

 この男も私達の呪われた力を求めているのですね。


「君達一族は特別な才能を持つ一族だ。その血は魔物を引き寄せ、並の魔物なら契約を結ばずとも従える事が出来る。そして普通の魔物使いでは到底従える事の出来ない強大な魔獣ですら従えたとも。炎の災害と恐れられたボルカニックタートル、深森の支配者エンシェントプラント、海の破壊者メガロホエール、天空の暗殺者カイザーホーク。いずれ劣らぬ魔物魔獣達を従え、大国を畏れさせた国持たぬ軍勢。それが君達エネデルの民だ」


 男は物語を謳うように楽しげに忌わしき歴史を語ります。


「惜しくも君達一族の野望は阻止されてしまったが、私は君達の魔獣使いとしての能力を高く評価している」


「それは光栄ですね。ですが貴方の言う通り、私達の一族は戦いに敗れ、今となっては人も立ち寄らない僻地で細々と生きるのみです」


 そう、私達の先祖は負けたのです。

 分不相応な野望を持って争いを始めた結果、悪しき者として討伐され、今では末裔たる私達が先祖の業を背負い緩やかな滅亡に向かっているのですから。

 

「ふん、つまらん嘘をつくな。あのような魔獣を隠しておきながら」


 だというのに、この男とは奇妙な事を言って私の言葉を否定しました。


「魔獣?」


「しらを切るな。あの白い毛玉のような魔物の子供だ」


「っ! ち、違います! あのお方は魔物などではありません!」


 何という勘違いでしょう。この男は神獣様を魔獣などと勘違いしていたのです。

 あの神々しい御姿をしたお方を、あの溢れんばかりの神気を魔獣と間違えるなどありえません!


「あの幼さでありながら私の部下を打ち払い、周辺に生息する幾多の魔物をも容易く屠るあの力。中には魔獣と呼ぶにふさわしい力を持つ魔物達も居たというのに、あの魔獣は意にも介さず狩りをしていた。貴様等はあの魔物を育てる為に息を潜めて来たのだろう? 再び、自分達が世界に覇を唱える為に」


 開いた口がふさがりませんでした。

 この男は私達が神獣様の力で再び罪を犯そうとしているのだと勘違いしていたのです。


「いい加減にしてください! あのお方は本当にそのような浅ましい考えでお傍にいるのではありません!」


「分かる、分かるぞ。あれ程の魔獣だ。成体になればさぞや強力な戦力になるだろうからな」


 ですが勘違いを正そうにも、この男は私の言葉に対し、一切の効く耳を持たないのです。

 ああもう、本当に何なんですかこの人は!


「だが、我等が従えようとしている魔獣に比べれば、見た目通りの子供よ」


「え?」


 それはどういうことですか? 神獣様を子供? あれ程の力を前にして?


「お前も古の知識を受け継ぐ魔物使いならば知っていよう。歴史の闇に消えた、いや、語り継ぐ事すら禁じられた破滅の魔獣の名を」


「破滅の……っ!? まさか貴方達は!」


 その言葉に私は背筋が冷えるのを感じました。

 まさかこの男が言っている魔獣というのは……!


「そうだ。我々は見つけたのだ。伝説の魔獣、白き災厄の眠る地をな!!」


「っっっっ!?」


 白き災厄。

 聞くも恐ろしいその名は、魔物使いにとって禁忌の名。

 文字通り、世界を滅ぼした、存在したという事実すら抹消された魔獣の名。


「あ、ありえません! あの大魔獣は何人でもあっても制御など不可能です! 古の時代、あまたの力持つ魔物使い達がその力を制御しようとして破滅してきました! 何十人もの魔物使い達が命を賭しても鎮める事すら出来なかった理外の存在なのですよ!」


 ですが、その伝説を今もなお語り継いできた者達は知っている。

 かの大魔獣が本当に世界を滅ぼした事を……


 かの魔獣は世界を好きなままに蹂躙し、寿命を迎えるその時までついぞ討伐される事はなかったと聞きます。


 まるで尾ひれに尾ひれがついたおとぎ話の如き、けれど実在したとされる存在。

 どこからきて何処へ消えたのか、誰も知らない存在。

 そもそも本当に死んだのかすらはっきりとはしていないのですから。

 その白き災厄が眠る地を見つけたと?


「お前の言う通りだ。かの大魔獣を支配する事は誰にもできなかった。幾多の強大な魔獣を従えた魔物使い、そして賢者達ですらな。だが我々は見つけた、手に入れたのだ。奴を従えうる唯一の方法をな!」


「そんな方法が……本当に、あるというのですか?」


 喉が渇くのを感じます。

 いえ、落ち着きなさい。白き災厄を従える方法を見つけたといってもそれが成功した訳ではありません。

 だって、もし成功したのなら、私を攫う意味など無いからです。

 ならば彼の考えている白き災厄を従える方法とは、魔獣使いと呼ばれた私達エネデルの民の力を利用すること。


「無意味ですよ」


 私は確信をもって告げます。


「私達エネデルの民の血をもってしても白き災厄を従える事など出来ません。何故なら、私達の先祖もまた、白き災厄を従えようとして失敗したのですから」


 そう、争いに敗れた先祖達は、白き災厄の力に魅了されました。

 あの力を利用すれば、今度こそ自分達が世界を制する事が出来ると確信して。

 けれどそれは愚かな試みでした。


 白き災厄は私達の手に負える存在ではなく、逆に一族の強力な術者達を全て食い殺してしまったのです。

 そんな愚かな結末を目にした先祖達は、今度こそ分不相応な野望を捨てる事を決意したのだと聞いています。


「確かに、君達の先祖の力をもってしても白き災厄を従える事は出来なかった。それは事実だ」


 分かっているのなら、何故私達を襲ったというのでしょう。


「だが君も魔物使いの端くれなら知っている筈だ。魔物の成体を従える事は難しい事を。同時にその逆も」


 その逆、この言葉を聞いた私は、彼の意図を察しました。


「まさか……」


「そう、我々は手に入れたのだ。歴史から消された伝説の大魔獣『白き災厄』の……卵をな!」


「白き災厄の卵!?」


「そうだ。世界中の伝承をもとに白き災厄が最期を迎えた土地を我等は発見した。そこで見たこともない巨大な魔獣の化石と、その化石に抱えられるように鎮座する卵を発見したのだ。


「まさか……そんなものが本当に……」


 到底信じられませんでした。

 白き災厄の卵を見つけただなんて、それは魔物使いにとって神、いえ邪神と遭遇するにも等しい出来事なのですから。


「くくくっ、白き災厄といえど生物。ならば子孫を残していても何らおかしくはあるまい」


「それは……」


 確かにそれはそうですが、そんな恐ろしい物が実在するだなんて……


「白き災厄を従える事は出来なかった。だが、生まれたばかりの幼体ならばどうだ? 私はかなり勝算が高いと思っているのだよ」


 確かに、生まれたばかりの白き災厄の幼体なら、可能性はあるかもしれません。

 ですが、私にはその目論見自体が危険極まりない行いとしか思えませんでした。


「危険すぎます。万が一従える事が出来なかったら、どんな惨事を招くか! それよりもその卵を破壊するべきです!」


「馬鹿を言わないでくれ。世界に一つしかない貴重な卵なんだぞ」


 駄目です。この男は白き災厄を利用する事しか考えていません。

 万が一の事態が起きる事を考えても居ません。


「……」


 こうなったら、隙を見て白き災厄の卵を破壊するしか……


「ああそうそう。先に言っておくが、白き災厄の卵を破壊するのは不可能だよ。先走った研究者が卵を調べようと表面を削ろうとしたのだが、白き災厄の卵の殻には傷一つ付けられなかったそうだ。だから君の細腕で地面に叩きつけた程度では、白き災厄の卵を破壊する事は出来ないよ」


 しかし男は私の目論見は無意味だと嗤います。

 卵の破壊すら不可能……そして彼等は白き災厄の復活を諦めるつもりもない。

 どうあがいても私に白き災厄の使役をさせようという事ですか。

 恐らく私が断れば、一族の者達を人質として使うつもりなのでしょうね。

 ならば……一人でも被害を減らす為には白き災厄を従えるよりほかないでしょう。


「分かりました。協力します」


「ほう、素直だな。もっと強情に拒絶すると思っていたが」


「勘違いしないでください。私が断って中途半端な魔物使いに白き災厄の支配を試みさせても碌な事にならないと思ったからです。その代わり、村の皆に手を出さないでください」


「成る程、仲間の為に従うか。良いだろう。君の村の人間達には手を出さないと約束しよう」


 少なくともこれで村の皆に危険はなくなりました。

どこまで信用できるか分かりませんが。


 そして彼は甘く見ています。

私達一族の覚悟を。

であれば村の皆が人質として有効と信じさせて従う振りをして、そして……


「では君には私達の仲間となった証にプレゼントを差し上げよう」


「プレゼント?」


 どうせ碌な物ではないでしょうが、ここで断るのも不自然でしょう。一応は受け取る振りをするべきですか。


「これだ」


 男がテーブルの上に置いたのは、無骨な首輪でした。


「首輪?」


どういう事でしょう? 従えた白き災厄に取り付けろということですか?」


「これは隷従の首輪。これを付けられた者は取り付けた物に逆らえなくなる強力なマジックアイテムだ」


「マジックアイテム!?」


 聞いたことがあります。遺跡から発見される貴重な品の事ですよね。

 ただ、その効果はあまり気分の良いものではありませんね。


「これを使って白き災厄を従えろという事ですか?」


 確かに強力なマジックアイテムの補助があれば白き災厄の支配は容易になるかもしれません。

 成程、プレゼントとは名ばかりの、白き災厄支配の為の道具を見せつける事が目的ですか。


「いいや、違うね。これを身につけるのは、君だよ」


「……は?」


 何を言っているのか、と問おうとした私の両腕が掴まれました。


「なっ!? 何を!」


 気が付けば私の背後には男達が忍び寄っており、私はその男達によって身動きが出来ない様にされてしまったのです。


「白き災厄を従えた君が我々に反旗を翻すつもりなのは承知の上だよ。だから君が逆らえない様に、この首輪で君を従えるんだ。そう、白き災厄を従える方法は、白き災厄を従えた君を従えるという事だよ!」


「っっっ!!」


「古代文明の技術で作られたマジックアイテムだ。逆らう事など出来ぬと知れ!! ふ、ふはははははははっ!!」


 男が首輪を開いて私の首に近づけてきます。


「や、やめっ……!!」


 私は必死で体を動かして逃げようとするも、男達によって体が押さえつけられて身じろぎすらできませんでした。

 そして、おぞましい冷ややかな感触が私の首に触れると、固い音と共に体と頭が痺れてゆくのを感じました。


「はははははははっ、さぁ、私の為に白き災厄を支配してくれたまえっっっっっ!」


 ああ、神獣様、どうか、どうか私を…………

男_(:3 」∠)_「はっはっはー! ところでまだ私の名前出てきてないんですけど?」

オーリエ_:(´д`」∠):_「だってまだ名乗られてないし」

男_(:3 」∠)_「聞いてくれてもいいのよ?」

オーリエ_:(´д`」∠):_「呪いのマジックアイテムの初使用がそれでええのん?」


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― 新着の感想 ―
[一言] なかなかにシリアルな展開ですね。 …ん、シリアスでは? うん、そうとも言うんですね(笑)。 今回はモフモフさん成長の一幕と御一族(恋人?)との出会い。といったところでしょうか。 次回が楽し…
[一言] 白き災厄の卵って事はモフモフと同じ種族か…孵化したらモフモフの弟か妹と言えるのかな? いや、将来モフモフと交尾させて子孫ができるよう仕向けるための相手が、あの卵から生まれるのかな? そうだ…
[一言] この話単体で初めて読んだら割と絶望的なシチュエーションですが、この男もモフモフ(かモフモフを探しに来たレクス)にボロボロにされちゃうんだろうなぁ。としか思えないのが悲しいような、安心するよう…
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