第333話 大いなる獣の王、大地に立つ
作者_(:3 」∠)_「あけましておめでとうございます。新年初更新です」
ヘルニー_:(´д`」∠):_「遅すぎる!(二重の意味で)ともあれ遂に333話です! ゾロ目って良いよね」
ヘイフィー_(:3 」∠)_「ゲーマー的というか、古のネット民ならキリ番記念とかしてるね」
作者_:(´д`」∠):_「時の流れを感じるような発言はやめるのだ」
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◆モフモフ◆
それは偶然の出来事だった。
とある理由で我はご主人の手から落ちて、川に流されてしまったのだ。
何、何時もの事だろうだと?
今回は違うのだ。
川に流された我は、間の悪いことに偶々傍にいた巨大な魚の魔物に丸のみにされてしまったのだ。
と思ったらその魔物も何かに飲み込まれ、気が付けば我は見知らぬ場所へとたどり着いていた。
いやホント何処だここ?
周囲の景色は先ほどまでいた土地とは全く異質だ。
あの短時間でこれほど離れた土地にまで来るものか?
あの巨大魚に飲み込まれた後、我は巨大魚を中から食い破って外に出た。
そしたら見知らぬ生き物の中だったので、とりあえず巨大魚を全部食べ、一服してから巨大魚を飲み込んだ巨大魚を内から喰らい、外に出たらまた別の巨大魚の中でを繰り返して……うん、結構長居してたわ。
ともあれそんなこんなで気が付けば我は見知らぬ砂浜に打ち上げられていた。
いやー、まさか最後の生き物を食い破って外に出たら、嵐の真っ最中で、大荒れした海に巻き込まれて流されるとは思ってもいなかった。
まぁ魔物の体が塩味になって美味しかったが。
さて、これからどうしたものか。
周囲の景色がこれでは、我の巣がある人間達の巣がどこにあるのかも分からん。
……さて困……困らんな。
寧ろこれ、ご主人から逃げられたという事では?
いかにご主人でも、何匹もの巨大な生き物に飲み込まれたあげく未知の土地に流されたとは思うまい。
しかも最後は嵐に流された故、何かを考えてここにやってきたわけではない。
進みやすさや安全、近道など一切へておらんから、ご主人も我のいる場所を予測する事など不可能であろう!
ふ、ふはは、自由だ! 我は自由だぁー!
なんか毎回言ってるような気がするが、今度こそ自由を手に入れたぞぉー!
◆
自由を手に入れた我は、未知の土地を当てもなく歩いていた。
とりあえずの目的は巣作りだな。拠点は必要だ。
ふむ、やはり拠点にするなら木の多い森が良い。
なんというか落ち着くのだ。
という訳で我は近くに見える森へと向かう。
森に近づくと、肌に突き刺さる様な敵意を感じる。
くくく、分かるぞ。よそ者を拒んでいるのだな。
ここは自分達の縄張りだと。
素晴らしい、ここには強者の匂いがする!
血に飢えた魔物達が群れ成す魔の森だ!
ふははははっ! よい! よいぞ! 此処こそは我に相応しき血の獄よ!
我は躊躇うことなく森へと飛び込む。
その途端、敵意が濃密な殺意へと変わるのを感じる。
一度入った以上、生かしては帰さんと言いたいようだ。
だが、生かして帰さんのは我の方よ!
「グルォォォォ!!」
我は飛び掛かってきた魔物を回避する事すらなく正面より吹きとばす。
「グォボ……ッ」
「「「「っ!?」」」」
吹き飛ばした魔物が近くの大木に叩きつけられ、そのままズルズルと地面に崩れ落ちてゆく光景に、周囲の殺意が騒めく。
そしていくつもの気配が我から隠れる様に消えてゆく。
ふ、力の差を理解して逃げたか。
だがいくつかの気配はまだ消えていない。
寧ろより強く殺意を漲らせているではないか。
素晴らしい、この程度の争い、ものの数ではないと言いたいのだな!
良かろう! ならば掛かって来るが良い!
◆
モッチモッチ、我は倒した魔物達を美味しく戴いていた。
いやー、この森の魔物は中々に美味いな。我満足。
さて、食事を終えた後は、デザートが欲しい所だな。
甘ーい血の魔物はいないものか。
我は腹ごなしとデザート探しを兼ねて森の中を散策する。
すると気付いたのだが、この森、意外と広いな。
植物というものは、己に適した場所に生息するものだ。
その条件は葉に光を受けやすい場所、水気の多い場所、栄養のある土と様々だが、魔物が多い土地はそれだけではない。
より強い魔物の血を吸える場所もその条件に含まれるのだ。
ただし、普通の植物に強き魔物の血など毒にしかならん。強き魔物の血を求めるのは、当然それ自体が魔物である木だ。
メキメキと音をたて、周囲の木が我に枝を、葉を、根を近づけてくる。
ふん、馬鹿め。貴様ら程度で我を喰らえるものかよ。
逆に我は近づいて来た枝を爪で切り裂き、尖った部分で歯の間にこびり付いていた肉をとる。
とはいえ、このような魔物が居るという事は、森の奥地は強い魔物が居ると見える。
それはすなわち、より強い魔物が居るという証だ。
そんな時だった。
我の鼻にとても魅惑的な甘い香りが漂ってきたのだ。
何だこれは!? 素晴らしく抗いがたい果物の様な香り。
いや、これは果物などではない。もっと濃密で、もっと甘い、肉の香りだ。
我は駆け出した。この匂いに誘われるように。
早く、速く、疾く、はやく
風よりも速く駆け抜け、我はそれを見た。
「ギィォォォォォォォ……」
そこには、巨大な魔物が居た。
あらゆる命をかみ砕き、飲み干し、引き裂いて胃の腑に納める為に生まれて来たかのような存在。
しかし我が求めたのはこの魔物ではない。
我の目は、その魔物の足元で手を組んで跪く、一人の人間のメスであった。
人間のメスはその手から赤い血を流している。
そしてそこから、抗いがたい程に凄まじく甘い匂いが漂ってくるのを感じ取る。
アレ! あの人間の匂いだ!
我はあの人間の血を求めて駆け出す。
「ギィオォォォォォ!!」
そんな我に気付いた魔物が、自らが捕らえた獲物に近づく我に殺意を込めた雄叫びを放ってくる。
食事の邪魔をするなら殺す、と。
が、知った事ではない。
我は魔物の振り下ろした手を文字通りねじ切って吹き飛ばすと、跳躍し顔面に後ろ足で蹴りをくれてやる。
「ギィオッ!?」
邪魔だ。貴様の血の匂いなど雑味にしかならん。
我は口内に魔力を込めると、咆哮と共に一気に放出した。
「ギィアァァァァァッッッッ!???」
我の魔力咆哮を至近距離で受けた魔物は、塵一つ残さずに消え去った。
ふっ、所詮は雑魚か。
「※※ ※※※※※※※……」
邪魔者を消し飛ばして振り返ると、人間のメスが怯えた声をあげる。
くふふ、怖いか?
これから血を啜られ、肉を噛みちぎられるのが怖いか?
「キュウ~ン」
我は人間のメスの恐怖心を煽る為、わざと猫なで声で怖くないよと話しかけると、ゆっくりと近づいてゆく。
「※※※※」
人間のメスの手に触れると、怯えているのだろう、震えているのを感じる。
さて、それではまず味見からだな。
この量だ、一気に全部食べてしまうよりも、少しずつ味わって食べるべきだろう。
我は人間のメスの手から溢れる血を舐めとる。
まずはスープから……って、美味っ! 何これ美味! 人間のメスの血すっごい美味!!
我は信じられなかった。
まさか人間のメスの血がここまで美味だとは。
いや違う、我が暮らしていた人間の巣でも、そこかしこから人間の血の匂いはしていた。
だが、ここまで甘く芳醇な香りを放つ美味な血の匂いを感じた事など無い。
我は夢中で人間のメスの手を舐める。
美味い! 凄く美味い! 本当に美味い!
何かに例える事すらおこがましいと言える美味な味わいに、我は恍惚となる。
そして思った。もっとこの血を舐めていたいと。
しかし同時に早く肉を食べたいとも思った。
けれどこれ程美味な血だ。きっと肉はもっと美味いだろうに違いない。
とすれば、この人間のメスを食べ切ったら、御代わりが無くなってしまう。
それはあまりにも惜しい。
「よし!」
そこで我は決めた。
この人間の巣に行って、他の人間の血を味わおうと。
巣の人間全部とは言わずとも親兄弟ならこの人間のメスに近い味を楽しめるだろう。
「人間のメスよ! 我をお前達の巣へ連れて行くのだ!」
「……は、はい! わかりました神獣様!!」
うむうむ、従順でよろしい。
「……んん?」
はて、今何かおかしな事が起きたような気が?
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「ついに我が主役の章キタ! これはスピンオフ待ったなし!」
魔物1_(:3 」∠)_「とかいってどうせいつものオチなんでしょ? 知ってる」
魔物2ε- (´∀`*)「自信満々で挑んで敗北するまでがルーチンなんですよね」
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「貴様等ぁーっ!!」
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