第330話 無限の真相
作者_:(´д`」∠):_「ちょっと更新時に変なエラーがあったみたいで、同じ内容の文章が入ってました。現在は削除済みです。ネット接続に失敗して再起動したのが原因かなぁ?」
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作者_(:3 」∠)_「はーい! 11月になりましたー! 引っ越し完了だぁー!」
ヘルニー_:(´д`」∠):_「何か新居でトラブル連発してるけどね」
ヘイフィー_(:3 」∠)_「やめろー! あ、そうそう連載中の『元魔王様の南国スローライフ』が今月11月15日に発売しますよー! 構成を結構変えて加筆と巻末書下ろしをしてるので、WEB版とは別の楽しみが出来ますよー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
際限なく現れるホムンクルスとゴーレムを相手に辟易していた僕達だったんだけど、戦いのさなか突然ハシュド達が苦しみだしたんだ。
しかも苦しんでいるのはホムンクルスのハシュドだけではなく、何故かゴーレム達も苦しそうに身悶えしていた。
「これは一体?」
想定外の事態に困惑してしまうけれど、このチャンスを逃す訳にはいかない。
僕とガンエイさんはすぐさま苦しんでいるハシュド達を攻撃すると、ハシュド達はあっさりと壊滅した。
「ゴーレム達の増援が来る様子はないの」
ガンエイさんの言う通り、敵の増援が来る様子も無い事から、ひとまずは危機を脱したかな?
けれど仲間達が全員小さな子供にされてしまった現状を考えると、楽観は出来ない。
「この隙にリリエラさん達の下の転移します! ガンエイさん、皆を一カ所に集めて!」
「うむ」
僕達は小さくなってしまった皆を抱えて一か所に集めると、すぐさまリリエラさんの反応がある場所へと転移を行った。
◆
「リリエラさん、マリエルさん、大丈夫ですか!?」
転移に成功した僕は、すぐさまリリエラさん達の安否を確認する。
「レクスさん!?」
するとすぐにリリエラさんとマリエルさんの姿が確認できた。
良かった、怪我もしてないみたいだ。
「すみません、助けに来るのが遅れました」
「いえ、助けに来てくれただけでもありがたいです。幸いあの人に私達を傷つけるつもりはなかったみたいですし」
そう言ってもらえるとありがたいよ。
ともあれ、これで人質は取り戻したし、後はハシュド達の戦力を生産する工場を破壊すれば……
『ぐぅぅぅぅ……』
そんな時だった。突然どこからともなくハシュドのうめき声が聞こえて来たんだ。
「っ!? ハシュドが居るんですか!?」
僕達はすぐさま周囲を見回して警戒するのだけれど、どこにもハシュドの姿は見当たらない。
あるのは部屋と一体化した何らかの巨大なマジックアイテムだけだ。
けれどそのマジックアイテムにはおかしな特徴があった。
それは巨大な破壊痕が空いていた事だ。
「これは……」
この傷痕を見るに、つい最近付けられたものみたいだけど……
「その、それはリリエラがやったものみたいなの……」
僕が破壊痕を観察していると、マリエルさんが申し訳なさそうに手を挙げる。
「リリエラさんが?」
「ええ。閉じ込められた部屋から逃げだそうとしてリリエラの魔法で壁を破壊してもらったんだけど、勢い余って部屋の向こうのアレを壊しちゃったみたいなの」
チラリとリリエラさんを見れば、えっへんと胸を張るリリエラさんの姿が。
成程、リリエラさんがやったのは間違いないみたいだね。
『ぐぅぅぅぅ……』
「そしたらこうやって、あの人の苦しそうな声だけが部屋に響くようになったのよ。一体どういう事なのかしら?」
リリエラさんがこのマジックアイテムを破壊した事で、ハシュドの苦しむ声が聞こえるようになった。
そしておそらくはほぼ同時に僕達を襲っていたハシュド達が苦しみだした。
それはつまり……
「成る程、そういう事ですか」
「何か分かったのか?」
「ええ。どうやらアレがハシュドの正体のようです」
僕はリリエラさんの開けた破壊孔に魔法を放つ。
『ぐわぁぁぁぁっ!!』
すると僕の予想通り、ハシュドの悲鳴が上がったんだ。
「これはまさか……」
「ええ、コイツはハシュドの意識を移植された思考型マジックアイテムです!」
思考型マジックアイテム、それは文字通り意思を持ったマジックアイテムの事だ。
ただし魔法式の塊であるマジックアイテムに自我を持たせるのは僕の時代でも実現不可能な夢物語扱いだった。
けれど、それを唯一可能にするものが、人の意識をマジックアイテムにコピーするというものだったんだ。
「思考型マジックアイテム、まさか実在していたとは……」
思考型マジックアイテムを初めて見たらしいガンエイさんは、その実在に驚いているようだ。
僕の生きていた頃には実験段階とはいえ存在していたんだけど、やっぱり問題が解決できなくてガンエイさんの時代では研究は下火になってたのかな。
「僕達が戦っていたホムンクルスは自我を持った存在じゃなく、この巨大なマジックアイテムによって操られていた木偶人形だったみたいですね」
そう考えると、ホムンクルス達が個性を持たずにハシュドと同じ思考と方向性を持てた理由が分かるよ。
『う、うう……リリシェーラを、マリュエルを渡しはせんぞぉ……』
おっと、今の攻撃でハシュドが多少なりとも正気に返ったみたいだ。
このままだとまたゴーレム達を呼ばれるから、まずはコイツを止めないとね。
「マナオブストラクション!!」
『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!!』
僕の放った魔力阻害魔法がハシュドの意識の宿ったマジックアイテムの正常な動作を阻害し、苦しみの声を上げる。
けれど、マジックアイテムが機能不全に陥ると共に、ハシュドの悲鳴も小さくなってゆく。
『リリシ……マリ……ェ……今度こそ共に……』
とぎれとぎれの言葉で家族の名を呼びながら停止するハシュド。
「もう手遅れなんだよハシュド……」
そう、もう遅いんだ。君では理解できないんだろうけれど……
「……ハシュドは死んだのか?」
「いえ、その質問は正しくありません。ハシュドはとっくの昔に死んでいますよ。コレはハシュドの意識のコピーです」
「コピー?」
「ええ。思考型マジックアイテムに人の意識を移す実験は過去に何度も行われましたが、基本的に本体の意識をコピーするだけで、オリジナルの意識は肉体に残ったままだったんですよ」
「ほう、そうなのか」
「だからオリジナルのハシュドはとっくに死んでいると思います。アンデッドに成らなかったのか、それとも成れなかったかはわかりませんが」
長寿を望むなら、アンデッドになるのは割とメジャーな方法だ。
けれど、体質や体調によってはアンデッドに成れない場合もある。
「恐らくハシュドはアンデッドに成れなかった為に、研究を続ける方法として自分の全ての研究成果と意識をマジックアイテムに移す事を選んだんでしょうね」
ともあれ、これは好都合だよ。
「マジックアイテムからハシュドの研究のデータを読み取ります。ホムンクルスから直接聞きだすよりも楽ですから、ちょっと待っててくださいね。よし、防壁解除」
良かった、どうやらハシュドは他人に見られる事をあまり想定していなかったのか、情報を保護する魔術防壁に力を入れていなかったらしい。
まぁここはハシュドの個人的な隠れ家みたいだしね。
「いや、普通は他人のマジックアイテムの解析って数か月、最悪何年も時間がかかるものなんじゃけど……」
ガンエイさんはキメラとか生物系が専門だから苦手意識があるのかな?
魔術式の構造を見た感じだと、そう大した魔術防壁でもなかったんだけど。
「ああ、やっぱり。この思考型マジックアイテムはハシュドが独力で作ったもののようです」
「これを独力で!? うぅむ、ハシュドは優れたマジックアイテム技師と聞いておったが、まさかこんなものまで自力で作りだすとは……」
ガンエイさんが唸るのも無理はない。
普通研究者は専門外の知識にはそこまで詳しくないものだからね。
マジックアイテム技師でも、武器専門、生活用品専門と分かれるのが普通だし、中には武器の中から更に剣専門と集中して極める人達も居る程だ。
そう考えるとハシュドの実力はかなりのものだと思う。
「ただ、ここまで大型になったのは、予算を確保できなかったのが理由みたいですね。どうも国や商会の援助を得られなかったみたいです」
「じゃろうな。いくらハシュドが優秀でも、専門外の研究を始めたいから大金をくれと言われては誰でも二の足を踏むじゃろう」
まぁそういう事だね。本来人の意識をマジックアイテムに移したりする研究はかなり専門性が高く、予算もかなり必要になるんだ。
「でも、そのせいで思考型マジックアイテムの欠陥を解決する事は出来なかったみたいなんですよね」
「思考型マジックアイテムの欠陥?」
「ええ、思考型マジックアイテムは成長できないという致命的な欠陥があったんです」
「成長できない? しかしこのハシュドは研究を完成させたのだから、成長していると言えるのではないか?」
そう、前々世でも最初はそう思われていたんだよね。
「確かに思考型マジックアイテムは多くの研究に対して一定の効果を発揮してきました。しかしそれが盲点だったんです。思考型マジックアイテムのやり方は、自分の持っている知識を越える事ができなかったんですよ」
「自分の持っている知識を越える事が出来ない?」
「ええ、意識を移植した時に得た知識から先に行けないんです。その時の思考に固執してしまって、発想の転換が出来なかったんですよ。4桁の数字を組み合わせる鍵があった場合、相手の性格や誕生日と言った関連する数字を先に入力して時間の短縮を考えたりせず、愚直に1~9999までを順番に試すのが思考型マジックアイテムのやり方なんです」
「成る程、応用が出来ないという事か?」
「ええ、今持っているデータを使って時間を気にせず延々と数字や素材を入れ替えて何かをさせるのには向いているんですけどね」
「成る程、それは研究者としては致命的じゃな」
その事実が判明した時、なら総当たりでの研究に利用すれば良いんじゃないかという意見が出たんだけど、それなら自我の無い計算機にやらせた方が安く済むだろうと言う事で結論が出たんだよね。
「その関係か、思考型マジックアイテムには時間の概念が理解できなかったんですよ」
「時間の概念?」
「ええ、日数や時間を数字としては理解できているんですが、このハシュドのように既に何百年も経っているのなら、家族はとっくの昔に天に召されているだろうという、寿命の事を理解できなかったんです」
「確かに! 言われてみればハシュドの家族が生身なら、当の昔に死んでいる筈じゃからな。奴に感じた違和感の正体はそれか!」
「なんだかよく分からないけれど、可哀そうな人だったのねぇ」
技術的な内容が理解できなかった為に黙っていたマリエルさんだったけど、このハシュドが可哀そうな存在だった事は理解したらしく、彼であるマジックアイテムを悲しそうに見つめていた。
「ありました。若返りのマジックアイテムのデータです」
「おお、見つかったか!」
話をしながら調べていたら、漸くマジックアイテムのデータが見つかる。
「ん~、これは……意外と……」
魔術式の解析をしていくと、マジックアイテムの詳細な仕様が見えてくる……んだけど。
「これ、予想以上に単純な作りだなぁ」
「そうなのか?」
「ええ、若返りに使われている技術はそこまで複雑じゃありません。予想以上にシンプルです。それとトラップの可能性があった無駄な部分ですが、完全なダミーですね。罠は一切ありませんでした。代わりに必要な部分と紐づいている所が多くて、しっかり構造を理解しておかないと、簡略化する際にうっかり必要な部分まで削っちゃいそうで厄介ですね」
とにかく相手を混乱させる事には終始しているけれど、危険なものは仕込んでいないあたり、子供になった相手が万が一にも傷つかないようにとの配慮だったのかもしれない。
「それで、どのくらいで解除用のマジックアイテムを作る事が出来るんじゃ?」
「それはすぐに作れますよ。このマジックアイテム、実際には本当に若返っている訳じゃないですから」
「あら、そうなの?」
「はい。このマジックアイテムのキモは、記憶の方にあったんですよ」
「「記憶?」」
うん、これには僕も意外だったんだよね。
「実はこのマジックアイテム、対象の肉体を若返らせるんじゃなく、変身魔法で子供に変身させていたんですよ」
「「変身?」」
「はい。でも重要なのは変身魔法の方じゃなく、対象の記憶を操作する事だったんです」
「変身魔法、記憶……もしや!」
流石ガンエイさん、もう気付いたみたいだね。
「ええ、あのマジックアイテムは、対象の記憶の大部分を封印し、幼少時の記憶を呼び起こすものだったんです」
「やはりか」
恐らく生前のハシュドは若返りのマジックアイテムの開発が難航した事で、実質的な若返りと言える肉体の変化と記憶の封印で代替しようとしたんだろう。
でも子供の頃の記憶だけを残す微調整に時間がかかり、完成前に寿命が来てしまったんだろうね。もしかしたら何らかの病にかかったのかもしれない。
だからハシュドは自分のコピーを作り、どれだけ時間がかかろうとも調整を完了させようとしたんだろう。
その結果、彼の予想以上に時間がかかってしまったみたいだけど。
「馬鹿正直に若返りを解除しようとしていたら、リリエラさん達を元に戻すにはそれこそ数年かかっていたかもしれませんね」
でもカラクリさえ分かればこっちのものだ。
元のマジックアイテムの術式を書き換えて、変身魔法と記憶の封印を解除するものにすればいいだけだ。
「いや、想定を完全に外れていた技術を解析するのは、流石に数年どころでは済まなかったのではないかのう……」
「よし、出来た!」
解除用マジックアイテムが完成したので、さっそくリリエラさんに装備してもらう事にする。
「はい、リリエラさん。これを付けて見てください」
「これ?」
よし、後はマジックアイテムを起動させるだけだ。
「……んー、何か忘れてるような気がするんじゃが……」
「え? 何か問題がありましたか?」
「いや、気の所為かもしれんな」
ガンエイさんの言葉は気になるけれど、ずっと子供になった皆をそのままにしておくわけにもいかない。
「じゃ起動させます!」
僕は解除用マジックアイテムを起動させ、リリエラさん達にかけられた変身魔法と記憶の封印の解除を試みる。
「キャッ!」
すると、リリエラさんが身に着けた解除用マジックアイテムがうっすらと輝きはじめ、皆の体を包み込んでゆく。
そしてゆっくりと皆の姿がぼやけ、大きくなってゆく。
よし、上手くいってるぞ!
「……あっ」
と、その時、ガンエイさんが何かに気付いたように声を上げた。
「いかん、このまま元に戻ると!!」
その言葉に何か問題があるのかと尋ねようとしたその時だった。
ビリッ!!
盛大に何かが破れるような音が鳴ったんだ。
「え?」
振り返ったその時、目の前に居たリリエラさんの服が文字通り弾け飛んだんだ。
「え?」
思わずもう一度同じ言葉が出る。
「……あ、あれ? ここはどこ?」
そして目の前のリリエラさんが、不思議そうな顔をして周囲をキョロキョロと見回す。
当然その間もリリエラさんの服は弾け飛んだままな訳で。
「あ、ああ……」
「レクスさんどうしたの? そんな顔を真っ赤にして?」
いや、だって……
「リリエラ、そろそろ隠した方がいいわよ」
「え? お母さん!? 何でここに? っていうか隠すって何を?」
マリエルさんが胸元にあげた指を下におろして下を見ろとジェスチャーを送る。
「下?」
言われるままに下を見るリリエラさん。
「…………え?」
当然のように、リリエラさんの動きが止まる。
うん、だって今のリリエラさんははだ……
「っっ! きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」
その瞬間、視界が肌色に覆われたと思ったと同時に左頬に激痛が走る。
そして宙を舞う僕の体。
うーん、流れる様に見事な身体強化の一撃。
「……変身魔法が解けたのなら、当然着ていた子供服は破れるんじゃよなぁ」
はい、その通りですね。完全に忘れてました。
「な、何でぇーっっ!!」
地面をバウンドしながら吹っ飛んでいると、顔を真っ赤にしてしゃがみ込むリリエラさんの姿が視界に入る。
「う、うぉぉぉ!? 何だこりゃ!?」
「ひゃわー! ナニコレー!? み、見るな……って、ウキャァァァァーッ!」
「ウボアァァァァッ!」
そしてその後ろでは、同じく服が破れて全裸になったジャイロ君と、元の年齢に戻ってサイズが合わずに服がギチギチになったミナさん達の姿が……あっ、ジャイロ君も吹っ飛ばされた。
「あらあらまぁまぁ、大変」
全然大変そうにも思えない口調で困ったように呟くマリエルさんの声を聴きながら、僕は意識を失うのだった……うーん、ナイスパンチ。
モフモフΣ(゜∀゜)「お約束展開キター!」
ハシュド(コピー)(((( ;゜д゜)))「嘘っ、私が苦戦した相手をぶっ飛ばした!?」
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「いやー、シリーズ最大の快挙ですね。二重の意味で(解説者風)」
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