第329話 貫くは幼き棘
作者_(:3 」∠)_「うおおー、引っ越し作業の終わりが見えて来たぞー!」
ヘルニー_(┐「ε;)_「この間もそんな事言ってなかった?」
作者_(:3 」∠)_「今度こそ本気で終わりが見えて来たんだよー!」
ヘイフィ_:(´д`」∠):_「代わりに腰や背中がめっちゃ痛いです」
ヘルニー_(┐「ε;)_「日頃の運動不足が祟ったねー」
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◆マリエル◆
突然現れたハシュドという人によって、私達は見知らぬ場所に連れていかれたの。
その事にリリエラが反抗したのだけれど、彼が呼び出した不思議な銀色の蛇に捕まって動けなくされてしまったわ。
その後私達は客間と呼ばれる部屋に連れてこられたんだけど、そこは驚く程殺風景な部屋だったの。
イスとテーブル、それにベッドだけという、本当に寝る為だけの部屋って感じだわ。
窓はついているけれどそこから出る事は出来ないみたい。
そして部屋を出ようとすると……
「うーっ! はーなーせー」
ドアの前で門番のように丸まっていた銀色の蛇に捕まってしまうのよね。
幸い、私達を攻撃しようとはしてこないから、出るのを邪魔されるだけで済んでいるんだけれど。
幸い抵抗をしていなかった私は縛られなかったから、リリエラを助けようとしたんだけど、この銀色の蛇はまるで鉄のように硬くて、びくともしないの。
「このー! もっかいくらえー!」
リリエラは何度も魔法を使って脱出しようとしているんだけど、銀色の蛇は全く堪える様子が無いわ。
氷漬けにされたりバリバリ凄い音が鳴ったりしても全然痛がる様子も見せないなんて、凄い蛇よね……って、感心してる場合じゃなかったわ。
何とかリリエラを助け出さないと。
あのハシュドって人が居ない今がチャンスなんだから。
うちの子を勝手に子供にするような人だし、早く逃げないと。
「なんとか彼が戻って来る前にここから抜け出さないと」
でも銀色の蛇は私じゃどうしようもないし。リリエラの魔法でもびくともしない。
これじゃ逃げるどころじゃないわ。
「むー! むー!」
リリエラは完全に癇癪を起こしちゃってるけど、銀色の蛇はそんなの知った事じゃないとばかりに、再びとぐろを巻いて扉の前に立ちふさがってしまう。
本当に困ったわ。あの蛇を倒せないまでも、なんとか逃げれないかしら?
例えば私が囮になっている間にリリエラを逃すとか?
「何とかいけるかしら?」
よし、やってみましょう! 女は度胸よ!
「きゃあー!」
「おかあさーん!」
はい、駄目でした。
ええ、分かっていたわ。だって私は普通の主婦なんですもの。リリエラやレクスさん達みたいな冒険者じゃないものね。
「ふぅ、やっと解放されたわ」
本当に命の危険が無い事だけが救いね。
ともあれ、私が囮になるのも無理だった。
私が捕まっている間にリリエラを逃そうとしたんだけど、銀色の蛇は残った尻尾であっさりリリエラも捕まえてしまったの。
「何とかあの銀色の蛇の気を引くことが出来ればいいんだけど」
「よーし、もっかいいくよー!」
私が考えている間にも、リリエラが銀色の蛇に向かって突撃してゆく。
あの子は銀色の蛇を倒す為に氷の魔法だけじゃなく、炎の魔法や大きな岩をぶつける魔法、物凄い風で吹き飛ばす魔法と、まるで物語の魔法使いみたいに様々な魔法を使ってゆく。
「それにしても、ちょっと見ない間に凄い子に成長したものねぇ」
まぁ今は子供に戻ってるから、成長したというのはおかしな話なんだけれど、それでも我が子ながら凄いと思うわ。
私達の病気を治す為に、あの子はずっと頑張ってくれていたのよね。
本当に、自慢の娘だわ。何もできなかった事が申し訳ないくらい。
「駄目ね。すぐ感慨にふけっちゃう」
私もここから出る方法を探さないと!
私にはあんな凄い魔法は使えないから、せめて考えないと。
「でも、あんなに凄い魔法を使ったら、この部屋が壊れちゃいそうなんだけど……あっ」
そこで私は気づいた。
そうだわ。なにも馬鹿正直に銀色の蛇と戦う必要も、ドアから出る必要もなかったのよ。
「リリエラ、一度こっちに来て」
私が呼ぶと、銀色の蛇に捕まっていたリリエラが解放されると同時にやって来る。
「どうしたのお母さん?」
「あのね……」
念の為銀色の蛇に聞かれないように、私はリリエラの耳元で囁く。
「うひゃ、くすぐったーい」
「我慢してちょうだい。いい、リリエラ。あの蛇じゃなくて部屋の壁を壊せない?」
「え? なんで?」
蛇ではなく壁を壊せるかと聞かれ、首を傾げるリリエラ。
「壁を壊してそこから逃げれば、銀色の蛇から逃げれると思うの」
「あっ、そっか! すごい! さすがお母さん!」
リリエラは凄いと言いながら尊敬の眼差しで私を見つめてくる。
ふふ、ちょっと恥ずかしいけど、少しは親らしい事が出来たかしら?
「よーし、やっちゃうぞー!」
さっそくリリエラが壁に向かって魔法を放つ。
その間私は蛇がリリエラの邪魔をしないか見張っていたのだけれど、ドアから出て行こうとしなければ問題ないのか、蛇は動く様子を見せなかった。
「えーい! こわれろー!」
「ど、どうかしら……」
けれどリリエラの魔法はだんだん小さくなっていき、最期には消えてしまった。
残されたのは、傷一つついていない壁。
「あー……」
魔法を使って疲れたのか、リリエラはへたり込んでしまう。
「困ったわ。これでも駄目じゃあ……」
「むー! モゾモゾがじゃまー!」
すると突然リリエラが不思議な事を叫び出したの。
「モゾモゾ?」
「魔法を思いっきり使おうとすると、なんだかモゾモゾしたのがじゃまするの!」
「モゾモゾねぇ……」
一体何の事かしら……てっ、もしかしてアレの事かしら!?
「リリエラ、ちょっと手を出してね」
「手?」
言われた通りに差し出されたリリエラの腕には、小さな腕輪がついていた。
魔封じのマジックアイテム。
それはリリエラが魔法を暴発させない為にレクスさんが作ってくれたマジックアイテム。
結局リリエラの魔法を封じる事が出来なかったんだけど、それでもある程度は魔法を弱めてくれる筈と言っていたので、付けさせていたのよね。
きっとリリエラの言うモゾモゾというのは、このマジックアイテムの事だと思うわ。
「ええと、確かここをこうして……」
私はいざと言う時の為にとレクスさんから教わっていたマジックアイテムを外す手順を行う。
このマジックアイテムは子供達が勝手に外せないようになっているらしいんだけど、親である私はこれを外せるそうなの。
なんでも私の固有魔力とかいうのがマジックアイテムに記録されていて、そのおかげでマジックアイテムを外す権限が与えられているって話だけど、固有魔力って一体何かしら?
そうこうしながらマジックアイテムを弄っていると、カチャンという音と共に腕輪が外れる。
「やったわ! リリエラ、もう一回思いっきり魔法を使ってごらんなさい」
「うん、わかった!」
私が手を放すと、リリエラはさっそく壁に向かって手を翳す。
「あっ、こんどはモゾモゾしない! いけそう!」
やっぱりマジックアイテムが邪魔していたみたいね。
「いっけー! ぶっこわれろー!」
リリエラが放ったのは、とても固そうで太い、丸太のような槍だった。
槍は物凄い音と共に壁にぶつかってゆく。
けれど、貫くことなくそのまま止まってしまったの。
「そんな、これでも駄目だったの?」
困ったわ。これじゃあもう何も手が無い。
「まだだよ!」
けれどリリエラは諦めていなかった。
リリエラは唸り声を上げながら、丸太槍を壁に押し付け続ける。
更に槍はグルグルと回り出し、先端から煙が出始める。
けれど部屋の金属は特別性なのか、全く壊れる気配が無い。
「やっぱり駄……」
ピシリッ
その時だった。丸太槍がぶつかる先端の壁に亀裂が走ったの。
「あっ!」
「もういっちょー!」
リリエラが叫ぶと、槍はギュオオオと凄い音で回り出した。
そして亀裂は更に広がり、小さな亀裂が新たにいくつも生まれてくる。
「シャー!」
すると流石にこれはマズいと思ったのか、銀色の蛇がリリエラに襲い掛かる。
「そうはさせないわ!」
こういう時こそ親の出番よ! 我が子の盾になることくらいできるんだから!
「お母さん!?」
「私はいいから壁を壊して!」
「っ!? ~っ、わかった!」
私の言葉に躊躇ったリリエラだったけれど、なんとか堪えて壁を壊すことに専念する。
うん、我が子ながら良い子に育ったわ。
「ん~っ、えぇーい!!」
そして、遂に槍が壁に突き刺さったの。
「割れた!」
そのままゴリゴリ言いながら掘り続けていた槍は遂に壁を突き抜けていったの。
その勢いもあってか、亀裂に沿って音を立てて壁が崩れだす。
「やったわ!」
やったわ、これであの穴から外に逃げれる筈!
私は捕まってるから逃げれないけれど、リリエラだけでも逃せば……
「ギャアァァァァァァ!!」
「「え!?」」
な、何かしら今の悲鳴?
もしかして隣の部屋に誰か居て、リリエラの魔法がその人に当たっちゃったの!?
「た、たたた大変! すぐに手当てしなきゃ!!」
私は慌てて壁に空いた穴から隣の部屋へと駆け出す。
あまりの驚きの所為で、自分の体を縛り付けていた銀色の蛇が居た事すら忘れて。
「だ、大丈夫ですか!? ……え?」
隣の部屋に入った私は、そこでとても奇妙な光景を見る事になったの。
マリエル(((( ;゜д゜)))「はわわ、壁を抜けるとスプラッタな光景が!?」
壁_:(´д`」∠):_「私がスプラッタだ」
蛇_(:3 」∠)_「いや、壁は業務内容に入ってなかったしね(目を逸らす)」
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