第328話 無限の敵
作者_(:3 」∠)_「宣伝です! 合成スキル2巻が好評発売中ですよー!」
ヘルニー_:(´д`」∠):_「そして引っ越し作業が進まない……」
ヘイフィ_(┐「ε;)_「荷物が、荷物が多い……あと天気がめっちゃ不安定で搬入に困る」
作者_(:3 」∠)_「今月いっぱいは引っ越しのあれこれとお仕事の原稿で更新が不安定になりそうです。ごめんね」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「「「「グラトニスアーム」」」」
ハシュド達の足元から、無数の魔力の触腕が沸き上がり、僕達を串刺しにしようと突き立ててくる。
全員が同じ魔法を放ってくるから、無数の触手の槍が迫って来る光景は圧巻だ。
「ブレイズフィン!!」
それを振動破砕魔法でハシュド達ごと打ち砕く。
「「「「お、おのれ!! だが我等は無限に現れるぞ!!」」」」
うん、これは良くないね。
ハシュド達は倒しても倒しても次々に復活していた。
一体どれだけの数が居るんだろう?
「おーい、早く助けてくれーっ!」
そこにラミーズさんの助けを求める声が響く。
いけない、ラミーズさんがハシュドの蛇に捕まったままだったよ。
「あの人は僕が助けます。レクスさんは敵を倒すのに専念してください!」
そう言って動いたのは、ノルブさんだ。
彼は僕にハシュドの迎撃を任せると、防御魔法を全身に張り巡らせてラミーズさんを捕らえている蛇を引き剥がしにかかる。
「シャァァァ!!」
蛇達はノルブさんに噛み付こうとするけれど、彼の防御魔法を貫く事は出来ず、次々に引き剥がされてゆく。
「助かった。バーストフレア!!」
助け出されたラミーズさんはすぐさま杖を構えて銀色の蛇達を焼き尽くす。
「よくもやってくれたな! 喰らえ、ロックピアース!!」
ラミーズさんは杖の宝石を交換すると、ハシュド達を床から生えた巨大な棘で串刺しにする。
「無駄だ無駄だ! この程度で私は倒しきれんぞ!!」
けれどハシュドのホムンクルス達は更に現れて僕達に攻撃を加えてくる。
一体一体は大したことないけど、とにかく数が多い。
「ほんとなんて数なのよ!!」
「増援を止めたくとも、相手は転移で送られてきておる。入り口を封鎖するなどして時間を稼ぐ事が出来んのが痛いな」
うん、このままだと魔力か集中力が切れて押し切られる可能性が高い。
「皆さん! パルスブレイク!!」
100体のハシュド達に衝撃波を叩き込み、内部から粉砕する。
「魔力の温存に気を付けて! アシッドスフィア!!」
50体のハシュド達を酸の球体に閉じ込めて溶かし消す。
「それに転移位置の死角を無くすために二人一組で背中合わせに! ハウンドダスト!!」
塵状の極小魔力弾が増援で現れた200体のハシュド達の全身を貫き消し飛ばす。
「油断しないように気を付けてください!」
「そう言いながら機械的に殲滅しないでくれるかな!! あ、いや、ふ、ふはははは、無駄だ無駄だ! 無限の戦力にすり潰されたくなければ早くこ、降参するんだな!!」
「いやあれ、めっちゃ顔が青くなってるし、そのうち在庫切れになるんじゃない?」
「儂もそんな気がしてきた。出てくる数よりも攻撃の手の方が多くないか?」
いや、それは相手を侮り過ぎだよ。
わざわざホムンクルスなんて作るのに手間がかかる人造生物を大量に投入してきたと言う事は、向こうはそれを高速量産する技術があるとみるべきだ。
となれば、あれは僕達の油断を誘う演技だろう。
圧倒的有利な状況にも関わらず、冷徹にこちらのミスを誘おうとしている。
これは厄介な敵だよ。
それに僕達は未だに高度な知性を持ったホムンクルス達が一つの目的に向かって一糸乱れず向かっている理由を解明できていない。
例え作られた命といえど、高度な知性を持ったなら立派な個の生命だ。
そこには自分の感情が生まれる。
当然オリジナルハシュドの目的を否定して離反したり、別の方法を模索する個体が出てくるはずなのにだ。
けれどこのハシュド達にはそういった生き物特有の揺らぎが無い。
全員がオリジナルハシュドの目的に向かって真っすぐ進み、あまつさえ今のように命すら投げ出している。
高度な知性を持ちながら、けれど揺らぐことのない鋼鉄の意思を備えたホムンクルスを大量生産するなんて、一体どんな凄い技術を使っているんだろう。
「うおおーっ! 何体現れても全部たおせばいいんだぜー!」
「ん、皆殺しは基本」
「キューッ!!」
そんな中、ジャイロ君とメグリさん、そしてモフモフだけは元気いっぱいに大暴れしていた。
そうだね。どのみち向こうはそれぞれが個々に行動できるホムンクルスなんだ。
全部倒さないと、また態勢を立て直して同じ事を繰り返す。
ここで倒しきらないといけない。
「うん、流石はジャイロ君だよ。小さくなっても本質を忘れていない」
「いや、あれは単に何も分かってないから勢いで言ってるだけだと思うわよ」
「皆、僕はホムンクルスを高速量産する工場を破壊する為に奴の転移波長を調べる事に専念します! 皆さんにはその間の時間稼ぎをお願いします!」
「分かった、こちらは任せておけ」
「そういう事なら気合を入れないとね!!」
「グ、グランドフィールド!! 皆さん、この中に」
ノルブさんが僕達を結界の中に包み込み守りを固める。
「その程度の結界など、すぐに破壊してくれる!!」
「ひ、ひいぃ」
ハシュドの猛攻にノルブさんが悲鳴を上げるけれど、彼の結界はいささかも揺らがない。
「ちっ、何て結界だ。だがそんな強度の結界が長持ちするものか!」
「その前にアンタを倒せばいいのよ! ライドサンダー!」
ミナさんの放った二重に重なった雷撃がハシュド達を焼き貫いてゆく。
「うぉぉーっ! ジャイロバーニングアターック!!」
そして炎を纏ったジャイロ君がハシュド達の群れに飛び込み、彼等を焼き尽くしてゆく。
「な、なんだこの無茶苦茶な魔法を使うガキは!? もっと魔力を理論的に使えんのか! うちのリリシェーラとは大違いだ!!」
ジャイロ君に悪態をつきながら、ハシュドは増援のホムンクルスを転移させてくる。
「今だ!!」
ハシュドの転移波長を探知した僕は、転移先のホムンクルスの工場の座標を探り出す。
「ディメンジョンインパルス!!」
僕の放った魔法は、出現したホムンクルスを貫き、更にその奥に見えていた転移の残滓からその先の空間にまで魔法を届かせる。
瞬間、転移先の空間から感じる手ごたえ。
同時に、ホムンクルスの増援が止まる。
「な、何!? 増援が止まった!?」
「よし! 反撃開始だ!!」
あとは残ったハシュド達を倒せばリリエラさん達の捜索に行けるぞ。
増援の途切れたハシュド達はどんどん追いつめられてゆく。
「と思ったか! こい、ゴーレム達!!」
あと一息、と僕達が思ったその時、ハシュドはゴーレムと銀色の蛇を大量に転移させてきたんだ。
しかもゴーレム達は、僕達とハシュドの間、丁度壁になるように立ちはだかる。
「まだ戦力があったのか!」
成程、万が一ホムンクルスの製造工場を破壊された時の為に、ゴーレムや銀色の蛇は別の生産ラインで製造しているって事か。
「これはゴーレム達の工場を潰してもさらに別の工場から敵が湧きだしてきそうだね」
「はははっ、戦力はまだまだあるぞ!」
「ふん、ホムンクルスが種切れになったからゴーレムなんて出してきたんでしょ。こっちにはレクスがいるんだから、ゴーレムの工場だってぶっ壊して援軍を送れない様にしてやるわよ!」
「やるぜー!」
「やるー」
「キュウ!」
ミナさんの啖呵にジャイロ君達が乗っかりながらゴーレムに向かってゆく。
「確かにな。だがそれなら反撃できなくしてやればいい!」
先頭のゴーレムが何かを僕達に向けてかざす。
「あれは!?」
それは、宝石の付いた髪飾りだった。
ゴーレムが髪飾り? と思うだろうけど、その奇妙さ以上に僕はその髪飾りに見覚えがあった。
「まさか!?」
「そのまさかだ! お前達も子供になれ!!」
ゴーレムのかざした髪飾りが輝きだす。
「ふははははっ! コイツは今まで市場に流してきた若返りのマジックアイテムとは別物だ! これまでのマジックアイテムは精神が大人になり切れていない者でないと効果を発揮しない事と、魔力の高い者には通じにくい欠点があった。しかしコイツはこれまでのマジックアイテムから得たデータを元に改良した最新型! 成熟した大人であろうと魔力が髙かろうと、問答無用で子供にしてしまうのだ!!」
な、何だってーっ!?
いけない、このままじゃ僕達も……
そして、マジックアイテムの光がひと際眩く輝き、光が収まった結果……
「あぶぅ」
大変な事になっていた。
「……ふぇ」
「ぱーぱー」
「キャッキャッ」
皆赤ん坊になっていたんだ。
「うわぁぁぁぁっ!? ミナさん!? ノルブさん!? ジャイロ君!? メグリさん!? ラミーズさん!?」
「ポキュウ?」
モフモフも小さくなってるーっ!!
「た、大変な事になってしもうたの」
「ど、どうしましょう。僕赤ん坊の世話なんてした事ないですよ!?」
「儂だってないわい!」
「キメラの面倒を見てるから子育てもいけませんか!?」
「いけるか! 人間の赤ん坊とキメラを一緒にするでない!!」
うわぁーっ! どうしよう!?
「って、何平然としておるんだお前達!!」
「「え?」」
「お前達は問答無用に子供になるマジックアイテムを喰らったんだぞ! なのに何故子供になってないんだ!」
「いや、儂本当はアンデッドじゃし。今更若返ったりは出来んじゃろ」
成程、アンデッドは生きていないから成長する事はない。変化をしないという事だから、逆説的に若返りの効果も影響を受けなかったのか。
「そ、そうだったのか? いやしかし、そっちの小僧はどうしてなんだ!? 何で子供にならんのだ!? まさかそいつもアンデッドなのか!?」
「いえ、僕は人間ですよ」
「じゃあ猶更おかしいだろうがー! どうなっているんだお前は!!」
「えっと、何ででしょうねぇ?」
「私に聞くなーっ!!」
理由は分からないけれど、どうやらあの若返りのマジックアイテムは僕に効かないみたいだ。
「儂は赤子達を保護する。お主は奴をなんとかせい」
「分かりました」
こうなると僕達がやるべきは、敵の本体を叩く事だろう。
ハシュドはホムンクルスに自分の記憶を植え付ける事で、無尽蔵の戦力を産み出す事が出来る。
けれど、さっき僕がハシュド達を全滅させた時、即座に増援が送られてきた。
全滅したなら援軍を呼び寄せる事なんて出来ない筈なのに。
それはつまり、この戦いをどこかから監視しているハシュドが居る筈だ。
そしてそのハシュドが次々に援軍を送りつけているんだろう。
「なら、そこまで離れた場所にはいない筈。どこにいるんだ?」
探査魔法でこの建物の内部を調べるも、僕達以外にはリリエラさんとマリエルさんの反応と思しき生命反応しか反応しない。
そう、ハシュドの反応が無いんだ。
「となると、別の場所から監視装置で見ている?」
こうなると戦闘をしながら魔力の波長を探ってこちらを監視しているマジックアイテムを見つけて、逆探知するしかないね。
そう思った時だった。
「「「「ぐわぁぁあぁあぁっ!!」」」」
突然生き残っていたハシュド達が苦しみだしたんだ。
「これは……一体?」
モフモフΣ(:3 」∠)_「で、本当にご主人の攻撃で増援が止まったの?」
ハシュド(・ω・`)彡「……ぷいっ(もう弾切れ寸前だったとは言えない)」
ガンエイ_(┐「ε;)_「結局何で小僧にはマジックアイテムが効かなかったんじゃろうな? まぁ小僧だからと言われたらそれまで何じゃが? お主知っとる?」
ゴーレム┐(´∀`)┌「(自分に聞かれましても……)」
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