第313話 被害者は音もなく
作者_(:3 」∠)_「じっとり暑くなったり寒かったりキツイ」
ヘルニー_(:3 」∠)_「あと3D酔いが辛い」
ヘイフィー_(┐「ε;)_「それは自業自得」
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「はぁ!? あのガラクタがそんな事に!?」
リリエラさんをマリエルさんに預けた僕は、再びガラクタ通りにやってきた。
目的はアレを売っていた店主に仕入れルートを核にしてもらう為だ。
「と言う訳で調査の為にもどこで手に入れた者なのか知りたいんです」
「成る程なぁ。とはいえ、アレは流れの商人から買ったもんだから、俺も詳しい事は知らないんだよ」
「……そうですか」
正直言えばこの答えはある程度予想はしていた。
何しろモノがガラクタだ。売る方も買う方もガラクタの詳しい情報を知ろうとは思わないだろうからね。
「だがアンタ等は俺達の恩人だ。出来うる限りの協力はさせてもらうぜ」
「良いんですか?」
「ああ、アレを仕入れたのは数日前だ。なら急いで探しに行けば、まだ近場にいる可能性は高い。見つけたら知らせを送るから、何処に連絡を走らせれば良い?」
「それなら、この連絡用のマジックアイテムを持っていてください。ここを押してもらえれば、僕の持ってる対のマジックアイテムに合図が届きますから」
そう言って僕は連絡用のマジックアイテムを渡す。
コイツは高度な通信機能はないけど、その分遠くまで、魔力信号が届くようになってるんだ。
「おいおい、マジのマジックアイテムかよ。分かった。情報が入ったらすぐにこれを使わせてもらうぜ」
「お願いします」
よし、とはいえ、僕もノンビリはしていられない。
「それと、その商人から買ったガラクタは他にもありますか? 同じ人物が作った物なら、解析の役にたつと思うので」
「しれっとマジックアイテムを解析とか言うなアンタ。待ってろ、持って来る」
その後、僕は件の商人が持ち込んだというマジックアイテムを買い取ると、一端リリエラさんの様子を見る為に村へと戻ることにしたんだ。
◆
転移マーカーを使って村に戻ってきた僕だったけれど、何やら村の様子がおかしい。
妙にざわついている。
「何かあったのかな?」
まさか魔物の襲撃? 魔物よけの結界が張ってある状況で襲撃してくる魔物となると、流石に放ってはおけない。
「あっ! レクス君! やっと帰ってきたんだね!」
そこに現れたのはリリエラさんの村の住人達だった。
彼等は随分と慌てた様子で僕の下に駆け寄って来る。
「リリエラが大変なんだ! 早く来てくれ!」
「リリエラさんが!?」
やっぱり魔物が村を襲ったのか!? それともあのマジックアイテムがまた何か起こしたんじゃ!?
僕は急ぎリリエラさんの家に向かうと、そこには……
「キャッキャッ」
「ウギュウゥ……」
半壊した家の中でご機嫌なリリエラさんと、グッタリしたモフモフの姿があったんだ。
「うわぁ……」
これは酷い。
一体何があったのかと思わずにはいられない惨状だ。
「レクス!」
するとこちらに気付いたのか、リリエラさん達から少し離れた所にいたエリシアさんとマリエルさんがこちらにやって来る。
「あっ、エリシアさん。これは一体何があったんですか?」
リリエラさんの家をこんなにしたという事は、大型の魔物の襲撃でもあったんだろうか……
「それが、リリエラが癇癪を起したんだよ……」
「リリエラさんが?」
え? リリエラさんが?
「まぁ子供ならよくある事なんだけど、問題はリリエラさ。見ての通り、壁を叩き壊したり、周りの物を凍らせたりととんでもないことになっちまった」
言われてみれば半壊した家だけじゃなく、周囲の木々が凍り付ていた。
「それ、村の人達は大丈夫だったんですか!?」
「ああ、幸い被害の大半はあの白いのが引き受けてくれたから、村の皆に被害はなかったよ」
「モフモフが……」
成程、だからモフモフがあんなにぐったりしてたのか。
僕が居ない間にリリエラさんの面倒を見てくれていたんだね。
きっとモフモフにとって、子供になったリリエラさんが妹のような存在に思えたんだろう。
「ありがとうモフモフ」
「ギュ……ギュウウ」
モフモフはよろよろと顔を上げると、ニヤリと笑みを浮かべる。
「……まぁ原因はあの白いのがリリエラにちょっかいかけたのが原因だったから自業自得と言えば自業自得なんだけどさ」
え? 今何か言いましたかエリシアさん?
◆
「怪我人は無かったけど、あれじゃ村に置くのは無理だね」
あの後、魔法でリリエラさんの家を補修した僕達は改めて小さくなったリリエラさんの対応を相談することになった。
「一応家は補修するついでに強化しておいたので、ちょっとやそっとじゃ壊れなくなりましたけど」
「ああうん。まさか一刻と経たずに半壊した家が直るとは思わなかったよ」
「魔法って凄いのねぇ」
リリエラさんの家は、今後魔物が襲ってきた時の事を想定して補強しておいた。あといざと言う時はこの家が村の住人の避難場所になるように、地下室もセットで作っておいたので、今後は安心だろう。
「けどまたリリエラが暴れたら、村の連中が耐えられないよ」
と、エリシアさんは、村の住人に及ぶであろう被害を心配する。
成程、確かにリリエラさんの魔法が村に人達に向かったらちょっと
迷惑だもんね。
「って、あれ? リリエラさんって子供の頃から魔法を使えましたっけ?」
「いいえ、使えなかったわよ」
「って事は、今のリリエラさんが魔法を使えるのは……」
ふとそこで僕は恐ろしい想像に駆られる。
小さなリリエラさんは家を半壊させ、周囲も魔法で氷漬けにしてしまった。
それ自体は魔法の才能がある子供の家ならまぁ珍しい事じゃない。
問題は、本来は覚えていなかった魔法を使えるという状況だ。
「もしかして、大人のリリエラさんが学んだ技術が力を子供になった今も使えるって事?」
そうとしか考えられない。
元々リリエラさんに魔法や槍術を教えたのは僕だ。
それ以前のリリエラさんは村がヴェノムレックスに襲われた事もあって、正規の訓練を受けずに独学で冒険者として活動していたらしい。
つまり、今のリリエラさんは幼い子供の理性で大人の力を振るう小さな怪獣と言う訳で……
「キュウゥーッ!!」
「キャハハハッ!!」
成程、確かにあれじゃあ村で預かるには危険すぎる。
正直これは予想外だった。まさか若返っても鍛えた力はそのままだったなんて。
「せめてだれかリリエラさんが暴れても対処できる人がいないと……」
事情を理解してくれて、なおかつリリエラさんの力を受け止める事が出来る知り合い……
「って、ジャイロ君達が居るじゃないか!」
そうだ! ジャイロ君達に頼めば僕が村を離れている間もリリエラさんの事を頼めるぞ!
「すみません、リリエラさんの相手が出来る人達の当てが見つかったのですぐに呼んできます!」
「ホントかい!? すぐに頼むよ!!」
「いってらっしゃーい」
「キュウゥーーーッ!!」
これ以上モフモフに被害が出る前に、僕は急ぎ王都の屋敷へと転移する。
「皆居る!?」
屋敷に戻ると、丁度皆帰ってきたみたいで、全員揃っていた。
「おっ、兄貴おかえりー。魔物料理大会はどうだったー?」
「どうせレクスの事だから、また騒ぎに巻き込まれたんじゃないの?」
いやまぁその通りなんだけど、今はノンビリ土産話をしている場合じゃない。
モフモフの体力が尽きる前に村に戻らないと。
「実はリリエラさんがマジックアイテムの影響で大変な事になっちゃって。それで皆の力を借りたいんだ」
「リリエラが?」
「一体何があったんですか?」
僕はリリエラさんがマジックアイテムの暴走で子供になった事、更に小さくなっても鍛えた力はそのままだった事を伝える。
「レクスに鍛えられた力を持ったままで子供にねぇ……ヤバいんじゃないのソレ?」
「ですよねぇ。今のリリエラさんが感情のままに暴れた大変なことになりますよ」
「すぐに対処しないと取り返しのつかないことになる」
幸い、皆も今のリリエラさんを放置する危険を理解してくれた。
「でもレクスが子供にならなくて良かったわよねぇ」
「ん、レクスが子供になって力を暴走させたら、世界が滅びる」
「まぁ、兄貴が子供になって暴れまわる光景はちょっとヤベェよな」
「切実に世界の危機ですね」
「皆僕を何だと思ってるの!?」
「「「「……」」」」
まるで人を魔王か何かのように言うの止めてくれない!?
「よ、よーし、それじゃあリリエラの姉御をなんとかする為に行こうぜ!!」
ちょっとジャイロ君、勢いで話を逸らそうとしないでよ!
◆
ともあれ、僕達はリリエラさんの村に戻ってきた。
幸いリリエラさんは遊び疲れて眠っていたみたいで、更なる騒動は怒っていなかったのが幸いだ。
「へぇー、これが子供の頃のリリエラねぇ」
「うぉぉー、リリエラの姉御、マジで子供になってんだな」
「モフモフがペシャンコになった羊毛みたい」
「あのモフモフがこんなに……」
皆はモフモフを抱きかかえて眠っているリリエラさんの姿に驚いていた。
まぁ話に聞くよりも実物を見た方が実感がわくだろうしね。
「まぁまぁ、リリエラにこんなに沢山お友達が出来たのね」
「あの子もちったぁ子供らしい生活が出来てたんだねぇ」
対してマリエルさん達はリリエラさんの友達が増えた事に対し、感慨深げな表情を浮かべていた。
「皆が居ればリリエラさんがハシャいでも対応できますから安心してください」
「助かるわぁ」
うん、これで僕もマジックアイテムの解析に本腰を入れられるよ。
「それにしても、この髪飾りがそんな厄介なマジックアイテムだったなんてねぇ」
と、ミナさんがリリエラさんの髪飾りに触れたその時だった。
再びリリエラさんのマジックアイテムが輝きだしたんだ。
「えっ!? 何これ!?」
「まさか!?」
あの時を再現するかのように、眩い輝きが家の中を照らす。
この魔力の放射、間違いない! あの時と同じだ!!
「いけない、皆逃げて!!」
けれど警告を発するには少し遅かった。
「な、何だぁーっ!?」
「キャァァァァ!?」
「うわぁぁぁ!?」
「っ!?」
そして、光が収まった後に残されたのは……
「かーちゃ」
「かーしゃま」
小さくなったジャイロ君達の姿だったんだ……
モフモフ(´ཀ`」∠)_「ふ、増えた(絶望)……ガクッ」
母エラ_(┐「ε;)_「あらあらまぁまぁ」
エリシア ε=ε=ε=┌( ;゜д゜)┘「それじゃあアタシはこれで……(コソコソ)」
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