第309話 祭りの後の後始末
作者_:(´д`」∠):_「寝違えの痛みが4日越えたので整形外科行ってきました……」
ヘルニー(:3)レ∠)_「万が一ヤバいヤツだと怖いからね」
ヘイフィー_:(´д`」∠):_「寝違えって人によって数日続くこともあるんだね……車の運転に支障出るし、電気かけてもらって薬処方して貰いました」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
表彰式が始まった。
まずは町長からのシメの挨拶が始まるんだけど、お約束と言うかなんというか、話が長い。
次いで今度は運営委員の挨拶が始まるんだけど、こっちは意外と早く終わった。
町長の挨拶に合わせたのかな?
そして話が終わると、待ちに待った入賞者の表彰が始まった。
表彰式では上位入賞者以外にも、ユニークな料理や、見た目の楽しい料理を披露した人達にも特別賞が贈られていた。
そして三位、二位と表彰され、遂に優勝者の番がくる。
「それでは優勝者の表彰を行います! カロック選手&リレッタ選手、表彰台へ」
「「は、はい!」」
呼ばれたカロックさんとリレッタちゃんは僕達から見てもガチガチに固まりながら表彰台に上がってゆく。
そして祝いの言葉と共にトロフィーを受け取った二人は、観客に見える様にそれを天にかざした。
「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
万雷の拍手と共に、観客席から歓声があがる。
「絶対食いに行くからなー!」
「今から楽しみにしてるぞー!」
観客達は早くもカロックさん達の料理が食べたいと期待に満ちた歓声を上げていた。
「これにて、魔物料理大会を閉会いたします!! 皆様、ありがとうございました!!」
こうして、予想外に長きにわたった魔物料理大会は終わりを告げたのだった。
ところで、カロックさんの師匠が調理に使った巨大魚が試合会場に刺さったままなんだけど良いのかな?
◆
「おめでとうございますカロックさん、リレッタちゃん」
「おめでとう、二人共」
「キュウ!」
宿に戻った僕達は、大舞台を終えたカロックさん達を労う。
「ありがとうレクスさん、リリエラさん」
「ありがとうございます!」
祝われた二人は、疲れている体を起こして丁寧に頭を下げて感謝の言葉を返してくる。
「それにしても最後までトラブル続きだったわねぇ」
「全くだ。食材に仕込みをされた時はどうなる事かと焦ったぜ」
「でも凄かったよね、レクスさんの運んできたデッカいお魚! やっぱ悪い事は出来ないもんね!」
「「「「はははははっ!」」」」
和やかな笑い声が部屋の中に響き渡る。
長い戦いが終わって、カロックさん達はすっかりくつろいだ空気になっていた。
「ああ、それにこれでようやく借りを返す事が出来る。レクスさん」
そう言ってカロックさんがテーブルの上に大きな袋を乗せると、袋の中からドジャリと大量の金属が詰まっている音が鳴った。
「約束の報酬だ。優勝賞金全額受け取ってくれ」
それは大会の賞金が詰まった袋のようだった。
「いえ、遠慮します」
けれど僕はそれを辞退する。
「え? いいのレクスさん!?」
間髪入れて辞退した僕に、リリエラさんが本気かとビックリした顔になる。
「優勝したとはいえ、お店を開く為のお金は必要でしょう? だったらその賞金でお店を手に入れてください」
実際表彰式では優勝したカロックさんの料理を食べたいと言っていた観客は多かったからね。
「何言ってんだ! これまでの代金は全部報酬から支払うって話だったじゃないか! 受け取ってくれないと俺達の気が済まない!」
「そうよそうよ! 私達兄弟を見くびらないで頂戴!! お店を開く資金なんてお兄ちゃんの屋台で稼いでやるわ!」
「ああ、その通りだ!!」
興奮する二人に対し、僕は冷静に二人に語りかける。
「二人共、落ち着いて考えてみてください。その屋台では一日に何人のお客さんを満足させられるんですか?」
「「え?」」
「二人は料理大会で優勝したんですよ? となればカロックさんの料理目当てに人が押し寄せる筈です。二人もその売り上げを見越して開業資金を用意できると考えているんですよね?」
「あ、ああ。そうだ」
「お兄ちゃんの料理ならあっという間よ!」
うん、それも手ではある。でも二人は大事なことに気付いていない。
「でもそんなに沢山お客さんが来たんじゃ、前日に仕込んだ分はあっという間に売り切れてしまうんじゃないですか? そして改めて追加分を作っている間、屋台の前には行列が出来る事になります。その間お客さんはずっと立ったまま待っているんですか? 大人の男性ならともかく、小さな子供連れの家族も立って並ぶことになります。それじゃあお客さんも大変だし、途中で諦めて別の店に行っちゃうんじゃないでしょうか?」
「それは……」
「そういった本来得る事の出来たお客さんを失う事を機会損失と言うんです。だからそうならないように、お客さんが座って待てるお店を用意するべきだと思いますよ」
それだけじゃない。それだけ長い行列が出来るという事は、行列が邪魔をして他のお店に迷惑をかけてしまう可能性だって高い。
そうなった場合、周りのお店からの評判が悪くなってしまうだろう。
同業者からの反発は悪評の元になるし、料理大会で受けた妨害を思えばカロックさん達が思う以上に危険だと、説得する。
「「……」」
僕の説明を聞いた二人は、自分達の目算の甘さに気付いたらしく黙ってしまう。
「それに元々の優勝賞金の使い道って、そういう問題を解決する為の準備金だったんだと思いますよ」
「「うう……」」
「なので報酬は要りません」
「「うぐぐ……」」
「や、やっぱり納得いかん! 俺達に都合が良すぎる! せめて9割は貰ってくれ!」
それでも感情では受け入れられないと、カロックさんが報酬の一部だけでも受け取って欲しいと言ってきた。
「いえ、いりません!」
というか9割ってほぼ全部じゃないか。
「じゃあ8割!」
「二割じゃ開業資金にもなりませんよ」
「それじゃあ7割!」
「安物のお店じゃ狭くて逆効果ですよ」
「じゃあ……!!」
そうしてカロックさんは僕に賞金を受け取らせようと金額を細かく刻んでゆき……
「……俺達が8割3分、そっちが1割7分だ!! これ以上はまからんぞ!!」
遂にカロックさん達の分が8割を超えた。
「何で支払う方が値引きを拒否してるのかしらね。立場が逆だと思うわ」
「キュウ」
カロックさんの言葉にリリエラさんとモフモフが呆れの声をあげる。
「……はぁ、分かりました」
とはいえ、ここまで金額を下げればもう十分だろう。
今まで提供した食材の価値と作ってもらった料理を考えれば適切か価格だと思う。
それにこれ以上受け取りを拒否すれば、カロックさんの気が変わってやっぱり全額支払うとか言い出しかねないからね。
「よっし! 受け取って貰えなかった残りの金は店の売り上げで支払うからな! その時は絶対受け取ってくれよ!!」
「ええ、そういう事なら」
とは言っても、開店当初は予定外の出費が頻発して、余計なことにお金を使えないだろうけどね。
数年か十数年後にばったりどこかで再会したら、ちょっとお高いご飯を奢って貰う事で貸しを返してもらったことにしよう。
そんな感じで報酬合戦が終わると思ったその時、部屋の扉がトントンと遠慮気味に叩かれたんだ。
「はーい」
「すみません、魔物料理大会の運営委員会の方がカロックさんにお会いしたいとの事です」
「魔物料理大会の運営委員会が?」
はて、何の用だろう?
不審に思いつつも、もう大会は終わった事もあって、僕達は運営委員会の人を部屋に入れる事にした。
「カロックさん、この度は優勝おめでとうございます」
「あ、ども」
運営委員会の人からお祝いの言葉を受けて、カロックさんが戸惑いつつも受け入れる。
「それで俺に何の用なんです? もう大会は終わったんですよね?」
「はい、実はその件で貴方にお願いがありまして」
「俺に?」
大会が終わった後で選手だったカロックさんに用件? 一体どんな用なんだろう?
「大会でカロック選手が捌いた巨大魚の事は覚えてらっしゃいますよね?」
「ええ、あのバカデカい魚ですよね?」
「はい、そうです」
「実はあの魚なのですが、我々のスタッフではあの魚を解体できなかったのです」
「ええ!? どういうことですか!?」
「あの巨大魚の鱗が固すぎて、鱗を剥がすだけでも一苦労なんです。しかも大きすぎるから周りに足場を作る必要があるんですが、モノが食材だけに、解体している最中にバランスを崩して倒れてくるかもしれないんです。ですからあれを解体したカロックさんの実力を見込んで解体を手伝ってほしいんですよ」
「はぁ……」
「大変お手数なのですが、どうにかお力をお貸し頂けませんか? 勿論解体費用は支払いますので」
「まぁ金が貰えるのなら俺は構いませんけど」
「おお、ありがとうございます! それとこれは追加でお願いしたいのですが、解体した魚を優勝記念として調理して欲しいんです」
「調理ですか?」
「ええ、大会の優勝記念に町の人々に優勝した店の料理を振る舞おうという新しい企画を今回から始める事になったんです。勿論こちらにも報酬は支払われます。優勝者直後は店も混雑しますから、中々店で食べれない客の為に、優勝者の料理を楽しんで貰おうという訳です。まぁ町にいる全員に配る関係で少量しか食べられませんが、そこはそれ、腹いっぱい食べたいなら、お金を払って食べに来てくれと言うヤツです」
ははぁ、なるほど。新商品の宣伝で配る試供品みたいなものって事だね。
「どうでしょうか?」
「そうですね……」
「分かりました。そっちも受けさせて貰います。ウチも店を開くまで多少時間がかかるでしょうし」
「ありがとうございます! それでは食材が痛みだす前に解体をお願いします!」
「分かりました」
「それじゃあレクスさん、色々世話になりました」
「本当にありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ美味しいご飯をありがとうございました」
「これから大変だと思うけど、頑張ってね」
「キュウ!」
こうして、カロックさん達は宿から去って行った。
カロックさん達が居なくなると、心なしか部屋が広くなった気が……いやしないな。
よく考えたらカロックさん達はずっと簡易厨房に籠っていたっけ。
まぁ気分気分。
「ところで、そろそろご飯にしない?」
「え?」
「ずっと大会でいい匂いを嗅いでいたから、お腹減って来ちゃった」
「キュウ!」
言われてみれば確かに……
しまった、最後にカロックさんの料理を食べさせて貰えばよかったな。
「そうですね。何か食べに行きましょうか」
と、外に出たは良かったんだけど、通りのお店はどこも大行列になっていた。
しまった、よく考えたら他の人達も大会を観戦してたんだもんね。
「迂闊だったわ。こうなる前に店に入るべきだったわね」
仕方ないので、僕達は会場から離れた街はずれの店を探すことにする。
「と言っても、この様子じゃどこも同じかもね」
うーん、これは我慢して時間をズラすべきかなぁ?
でも時間をズラしても同じことを考えた人達で行列になりそう。
いっそ食材を買って自分達でご飯を作るべきかと考えたその時だった。
ボンッという何かが爆ぜる音と共に鈍い衝撃襲ってきたんだ。
「何だ!?」
敵意はなく、衝撃も大したものじゃなかったから攻撃目的じゃなかったみたいだけど、街中であんな音がした理由は気になる。
僕はすぐに近所の家の屋根に飛び乗ると、震源地を探す。
煙のような物が上がっている気配は無し、建物が壊れている様子もない。
何だ? 何が起きたんだ?
「キュウ!!」
と、そこで僕を追って屋根に上がってきたモフモフが何かに反応するかのように鳴き声を上げたんだ。
その方向にあるものと言えば、料理大会の会場。そして……
「ねぇ、アレおかしくない?」
同じく屋根に上って来たリリエラさんが、モフモフと同じ方向を見て声をかけてくる。
「あの魚、お腹が破けているわよ」
その言葉に料理大会の会場を見れば、そこから伸びていた巨大魚の腹がパックリと割れているが見えたんだ。
◆カロック◆
「おいおい、どういう事だよこれは……?」
大会運営の依頼を受けて会場に突き刺さった巨大魚を解体に来た俺達だったが、気が付けば物陰から出てきた怪しい連中に囲まれていたのだった。
これが裏通りなら賞金目当てのゴロツキと思うところだが、ここは観客も帰った無人の料理会場だ。
金目当てのゴロツキが待ち構えている場所じゃないわな。
「やぁ、待っていたよカロック君」
リレッタを庇いながらそいつ等を警戒していた俺達に、聞き覚えのある声がかけられる。
「アンタは……!」
そこに現れたのは、大会で顔を見せた運営委員長だった。
「コイツはどういう事だい? 俺達はこのバカデカい魚の解体を頼まれただけなんだがな。それともコイツ等が解体を手伝ってくれるのか?」
「いいや、違うとも。彼等が解体してくれるのは、あの巨大魚ではなく、君達の方だよ」
ちっ、まさかと思ったが本当にそうとはな。
目的は優勝した俺達への報復ってところか。
「君達はやり過ぎたんだ。本選参加くらいで満足しておけばよかったもの、よりにもよって優勝してしまった。それでは困るのだよ。この町で営業している訳でもないよそ者に勝たれてはね」
「そんな事言って、この町で営業してる参加者にも妨害してたんだろ? みんな知ってるぜ」
「さて、何の事だろうね」
ちっ、とぼけやがって。
「それで、俺達をどうするつもりだ?」
「君達には失踪して貰う予定だ。試合で勝利してしまった以上、下手に罪をでっち上げて君の優勝を取り消せば、我々の不正を疑われてしまう」
「疑われるまでもなく散々してきたじゃねぇか」
「証拠はあるのかね?」
だが運営委員長はしらばっくれる。
「それでだ、君達はこの町から離れた遠い土地に旅立ってもらう事にした。そうなれば君と言う優勝者はこの町から居なくなり、我々を越える料理人は存在しなくなる訳だからね」
「それなら俺達が別の町で店を開くように誘導すればいいだけの話じゃないか」
「それは困るんだよ。この町の大会の優勝者が別の町にいては、客が他の町に獲られてしまうじゃないか。あくまでも大会の優勝者はこの町の店でないといけないのだよ。町全体の利益の為にもね!」
成程な、俺達の優勝を素直に認めたのは、諦めたからじゃなく、裏で始末すれば良いと考えたからかよ。まったく碌でもない野郎だぜ。
「ちっ、手前ぇ等の都合をさも町の連中全員の為とか言うんじゃねぇよ胸糞悪ぃ!」
「はっはっはっ、せめて優勝の栄誉だけは君に送ろう。栄誉だけはね」
ふざけんな! 死んだら栄養もクソもねぇだろうが!
「やれ!」
運営委員長が命令すると、ゴロツキ連中が一斉に俺達を殺そうと飛び掛かって来る。
「お兄ちゃん!」
「絶対俺から離れるなリレッタ!」
俺はリレッタを庇うように前に立つと、解体用の包丁を構える。
ちっ、包丁は喧嘩の道具じゃねぇんだぞ!
「来るんじゃねぇ!!」
「盾持ちで囲め! 一斉に飛び掛かって妹を人質に取れ!」
厄介なことにこの連中、荒事に慣れてやがる。
俺がただの料理人だからと油断せず、ガッチリ盾でこっちの反撃をいなすつもりだ。
「ちくしょうっ!!」
このままじゃリレッタが捕まっちまう、そう思った時だった。
ボンッという凄まじい音が鳴り響いたんだ。
音はビリビリと体のそこまで響くような振動を起こし、それに驚いた連中が姿勢を崩して尻もちをつく。
「なんだか分からねぇがチャンスだ! リレッタ逃げるぞ!!」
リレッタの手を掴んで逃げようとした俺達だったが、敵もただのゴロツキじゃなかったらしく、すぐに態勢を立て直して俺達の前に回り込……いや何だこれ!?
「魚……?」
ゴロツキが回り込んできたと思ったと思った俺だったが、良く見ればその姿は人ほどもあるデカイ魚だった。
何だ? 何でこんな所に魚が?
しかも魚はビチビチと跳ねて生きている。
「な、何だこの魚は!?」
てっきり運営の連中が何か仕掛けてきたのかと思ったが、向こうも困惑しているようだった。あいつ等の仕業じゃないのか?
「まぁ良い。今のうちに……っ!」
魚を避けて逃げようとした俺だったが、その時魔物料理人としての勘が働いたのか、嫌な予感を感じて半ば無意識にリレッタを庇って地面に伏せる。
すると後頭部の髪の毛にチリッという何かがスレる感覚を感じた直後、会場に悲鳴があがった。
「ギャァァァァァァァッ!!」
「な、何だ……っ!? 見るなリレッタ!」
顔を上げた俺は、その光景を見て慌ててリレッタの目を覆う。
「なんだこりゃあ……」
なんという事だろう。突如現れた魚は、運営の雇ったゴロツキに襲い掛かっていたんだ。
いや、運営の連中だけじゃない。咄嗟に避けなかったら、俺達もやられていた筈だ。
「ひ、ひぃ!? 何だコイツは!?」
「魔物!? 何でこんな街中に!?」
突如魚の魔物に襲われた事で、ゴロツキ達に動揺が走る。
チャンスだ、逃げるなら今しかない!
「訳が分からんが、とにかく逃げるぞリレッタ!」
リレッタが後ろを見ない様に肩に手を添えると、俺達は再び出口に向かって駆けだす。
だが、俺達を逃さんとばかりに、新たな魚が空から降ってきた。
って、魚が空から!?
「お、お兄ちゃん! 上! 上に!」
「上?」
リレッタの言葉に空を見れば、青い空から次々に振って来る魚の群れ。
「何だありゃあ!?」
幾らなんでも魚が空から降って来るなんて無茶苦茶だろ!?
「お兄ちゃん! あそこから出てきてる!!」
リレッタが指さした場所を見れば、決勝で俺達が調理し、同様に運営から解体を頼まれた巨大魚の腹から無数の魚の顔がのぞいていた。
「まさか、コイツ等……」
あの巨大魚の子供、稚魚って事か!?
「っ!?」
再び危険を感じた俺は、リレッタを抱えて横に飛ぶと、新たに降ってきた魚達が俺達を食おうと飛び掛かってきた。
「くっ! 上に下にと逃げるにも一苦労だな!」
どうやらコイツ等、俺達を餌だと思っているみたいだな。
「とにかく建物の中に逃げないと!」
幸い選手入場口はまだ開いている!
あそこに逃げ込めば、空から降ってくる奴からは身を守れる。
なんとか外に逃げて、衛兵隊に助けを求めないと!!
「いかん! お前等、小僧共を逃がすな!」
「そんな事言ってる場合じゃありませんぜ!」
ははっ、魚達が連中を上手く足止めしてくれたのは感謝だな。
俺はリレッタを抱えて魚の群れの中を駆け抜ける。
「お兄ちゃん、上から来る! 避けて!」
「おう!」
抱えているリレッタが上からくる魚を警告してくれるお陰で、俺は地面を飛び跳ねる魚に集中できるが、それでも数が多い。っていうか多すぎる!
「このままだと逃げ切る前に会場中があの稚魚で埋め尽くされちまうぞ!」
そしたら逃げ道が無くなっちまう!
「お兄ちゃん、避けて!」
「おう!」
追加で上から降ってきた魚を避けた俺は前から飛び掛かって来る魚を避ける。
だが注意が足りなかった。
避けたその先に居た魚が飛び掛かってきたんだ。
「しまった!」
マズイ! 空中じゃ避ける事が出来ない!
体を捻っても避けきれない! リレッタを抱えているから包丁で迎撃も出来ない!
「お兄ちゃん!」
妹の声を聞いた瞬間、俺はリレッタの体を放り投げた。
「お前だけでも逃げろリレッタ!」
「お兄ちゃん!?」
リレッタが信じられないモノを見る顔で俺を見つめてくる。
済まねぇなリレッタ。お前が大人になるまで一緒にいてやれなかった。
だがまぁ、衛兵隊がコイツ等を倒してくれりゃあ、賞金は回収できるだろ。
あの金があれば、リレッタが最低限自力で金を稼げるようになるまでは生きていけるはずだ。
いや、リレッタは俺なんかよりもよっぽど賢い。
賞金を元手に上手いこと金を稼ぐだろうさ。
そう考えれば、大会に優勝できただけでも上等って奴だ。
じゃあな、後は頑張れよリレッタ……
「……」
って、なんか遅いな? あれか? 人間死ぬ時は昔の事を思い出すとかいう走馬灯って奴か?
なかなか魚の食われない俺は、はてと視線をリレッタから飛び掛かって来た魚に戻す。
するとそこにあったのは、魚の巨大な口……ではなく、真っ二つに切られた魚の断面だった。
「へ?」
どういうこった? もしかして衛兵隊が来てくれたのか!?
けれどそこにいたのは衛兵隊じゃなく、剣を持った寸詰まりの黒い鎧の姿だった。
「ゴーレムちゃん!!」
そう、そこにいたのは、レクスさんが俺達の護衛として用意してくれたミニゴーレムだった。
っていうか付いて来てたのかコイツ!?
「お前が助けてくれたのか?」
恐る恐る尋ねると、ミニゴーレムは拳を握るとグッ! 親指を開いて見せてくる。
「は、はは、助かったぜ」
更に援軍はコイツだけじゃなった。
「スラッシュスライサー!!」
その声が会場に響き渡ると共に、会場にひしめいていた魚達が真っ二つに割れる。
「フリーザーフォール!!」
更に痛みすら感じる猛烈に寒い風が残った魚達を氷漬けの冷凍魚へと変える。
「大丈夫ですかカロックさん、リレッタちゃん!」
「レクスさん! リリエラさん!」
そう、空から現れたのは、レクスさんとリリエラさんの二人だったんだ。
「キュウ!!」
そしてモフモフが氷漬けになった魚に噛み付く。
「モグシャリモグ」
いや、そいつはもう凍ってるから攻撃する意味なくないか?
ともあれ、二人は会場中の魚を退治すると、今も巨大魚の腹で蠢いている残りの魚も一掃してくれたのだった。
「た、助かったぜ二人共」
「いえ、こちらこそまさかこの巨大魚が子持ち巨大魚だったとは思わなくて。すみませんでした」
「いやそんな子持ちシシャモみたいに言われても……」
レクスさんが申し訳なさそうに頭を下げてくるが、そもそも助けられたのはこっちだしな。
「それに魔物食材を扱う人間なら、予想外のトラブルは覚悟の上さ」
まぁ、流石に巨大魚の中から稚魚が出てきて人間を襲うのは予想外にも程があったけどな。
ともあれ、魔物料理人なら何かあっても自己責任なのは常識だ。
命があっただけでも儲けもんってな。
「これは一体何事だ!!」
更にこの騒ぎを聞きつけたのか、衛兵隊が会場になだれ込んできた。
おいおい、今更遅いっての。
とはいえ、元々衛兵隊に保護して貰おうとしてた事もあって、その姿を見た俺はホッと体の力を抜く。
あれ? 何か忘れてるような……
「良い所に来た! そいつ等を捕まえてくれ!!」
その空気を読まない声に、俺は誰を忘れていたのかを思い出した。
しまった、運営委員長達を忘れていた!!
「運営委員長……」
町の権力者の言葉に衛兵隊が反応する。
「そいつ等はこの町に危険な魔物を持ち込んだ犯罪者だ! 見ろ、会場中に広がる魔物の姿を! 私の護衛も被害を受けてしまったぞ!」
って、コイツ! 俺達を犯人に仕立て上げる気かよ!
「ふざけんな! 手前が俺達を殺そうとしたんじゃねえか!」
「ふん、何をおかしなことを言っている? 私達は大会運営として試合の結果を受け止め、優勝を認めたじゃないか。だが貴様等はこの様な危険な魔物の群れを生きたまま町に運び込んだ。何か邪悪な企みがあっての事だろう!」
滅茶苦茶だ! 魔物料理人なら魔物食材に危険がつきものなのは知ってるだろ!
「さぁ、早く捕まえろ!!」
「……」
その言葉に衛兵隊の隊長が手をかざすと、衛兵達がぶきを構えて俺達を囲むべく前に出てくる。
ちっくしょう! 一難去ってまた一難かよ!
逃げるには反撃しなきゃ無理だが、衛兵隊に手を出したら完全に犯罪者になっちまう。
レクスさん達を巻き込む訳にもいかねぇ。せめてリレッタだけでも見逃して貰うように交渉するか……っ!?
「今度は逃げないからね」
俺の考えを呼んだのか、リレッタはギュウッと俺にしがみ付く。
馬鹿野郎、もっと自分の事を考えがやれ……
こうなったら犯罪者になってでも逃げてやる!
覚悟を決めた俺は包丁を握りしめて衛兵達を睨みつける。
「……」
だが、何故か衛兵達は俺達を素通りしていく。
「あれ?」
そして運営委員長を囲むとこう叫んだのだった。
「リストランテプルーメ店主、カルブティーノ! 貴様を魔物料理大会の不正容疑で逮捕する!!」
おいおい、こりゃ一体どうなってるんだ!?
カラミティフィッシュの稚魚ヾ(⌒(_'ω')_「お腹すいたバブー」
チンピラ(´ཀ`)「ギャーッ!!(かろうじて生きています)」
モフモフΣ(:3)∠)_「ちなみに水が無いのでそのうちお亡くなりになる」
カラミティフィッシュ(故魚)ヾ(⌒(_'ω')_「親が居たら水を呼んで町を水没させてたんですけどねー」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




