第308話 エイプリルフール番外編:獣の王と神の獣、交差す
作者(:3)レ∠)_「今日はエイプリルフールなので別連載『錬金術? いいえ、アイテム合成です!』とのセルフコラボ回です」
ヘルニー(:3)レ∠)_「エイプリルフールだから世界観の繋がりはないよー」
ヘイフィー_:(´д`」∠):_「それはそれとして盛大に寝違えて首が痛い」
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◆モフモフ◆
我は全ての獣の王。
あらゆる生物は我のしもべにして我の食事である。
という訳で我は森へとやって来た。
だってご主人のご飯、量が足りないんだもん!
我も成長期ぞ。あの程度の食事量で満足できるわけがないだろうが!
さーて、食いでのある食事はいないかなー?
すると丁度良い場所に力ある獲物の気配を察知した。
ふむふむ、なかなかの力を持っている。これなら我も楽しめそうだ。
我は獲物を決めると、一直線に向かう。
脚に魔力を漲らせ、地面を蹴って矢のように突き進んで行く。
見えた! 獲物だ!
獲物は真っ白な体をした猫科の動物だ。
くっくっくっ、油断しきっているのか、アホ面を見せておるわ。
まずは挨拶代わりだ!
我は足の裏に炎の魔力を収束させると、それを破裂させて更なる加速を生み出す。
さぁ、耐えられるかな?
「っ!? ニャンだ!?」
だが白き獲物はすんでの所で我の突撃を回避した。
ほほう、なかなかやるではないか。
「おニャーニャに者だニャ!?」
くくく、獣の戦いに問答など無用! 大人しく我の食事となるが良い!
さぁ、戦いだ!!
「どうやらタチの悪い野良魔物の様だニャ。だがニャーを相手にしてタダで済むと思うニャよ。逆に返り討ちにしてニャーの飯にしてくれるニャ!」
ふははははっ、良い度胸だ!!
我は木々を足場にして縦横無尽に森の中を跳ねまわる事で白き獲物を翻弄すると、両の前足の爪で切り裂いた。
「甘いニャ! ニャーに攻撃してくると知っていれば、おのずと攻撃が来る方向は予測できるのニャ!!」
驚いたことに白き獲物は我の攻撃を防いだ。
どうやら周囲の木々の位置と己の死角から、我の飛び込んでくる方向を察したらしい。
なかなかどうして、遊びがいのある獲物よ!
「今度はこっちの番だニャ!!」
白き獲物は木々を駆ける様に登る、そのまま天高く跳躍する。
そして上空から我目掛けてダイブをしてきた。
甘いわ! その程度の攻撃回避は容易い!!
「それはどうかニャ?」
すると突然白き獲物が空中で角度を変えて飛び込んできた。
むぅ!? これは魔法か!?
我は反射的に体をひねって攻撃を回避する。
「ほほう、ニャーの空中跳躍を回避したのニャ。ただの魔物じゃニャいようだニャ」
やはり魔法か。さては空中に魔力で足場を作ったのか。
だがそのような足場は見えなかった事から、恐らくは小さな魔力塊を物理的な圧力を持つまでに凝縮させる事で、視認が困難な程小さな足場をつくったのだろう。
ただの獣ではないと思っていたが、魔法を使うと言う事は、ドラゴンなどの高位の魔物に匹敵する存在と言う事か。
これは益々以て面白い。
これ程の相手とはなかなか遭えるものではない。
いいぞ! もっと楽しませろ!!
「ニャフフ、ニャーについてこれるとは、面白いのニャ!!」
我と白き獲物は両の前足で高速の連打を放ち、全身をバネにして後ろ足で蹴りを叩きこむ。
反動でお互いの体が離れた瞬間、我が炎の魔法を放つと、白き獣は氷の魔法を放ってきた。
白き獣が風の刃を放つと、我は魔力を帯びた岩の牙を大地から生やして迎撃する。
「……ニャア」
お互いの口元に笑みが浮かぶ。
双方未だに有効打は無し。されどお互いにまだ本気は出していない。
くくくっ、そろそろ準備運動は終わりで良いだろう?
ここからが本ば……っ!!
「ニャットー、ご飯出来たよーっ!!」
その時だった。
やたらと幼い声が我等の戦いに割って入ってきたのだ。
「ちょっと待つのニャー」
そしてその声を聞いた白き獲物が、戦闘態勢を解く。
「一時休戦ニャ。飯の時間だニャ」
休戦だと? 何を気の抜けた事を……
「おニャーも一緒に食うかニャ?」
む? 我もだと?
「カコの飯は美味いニャ。冷める前に食うのニャ」
ふむ、まぁ良いだろう。よく考えたら我ご飯を食べる為に森に来たのだった。
戦いが楽しくてついつい本来の目的を忘れていたわ。
よかろう、食べてやろうではないか。
白き獲物についてゆくと、小さな人族のメスの姿があった。
ふむ、この人族のメスが我に差し出す食事か? 子供のようだが食いでがないのではないか?
「違うニャ。カコの作る飯だニャ」
「あれ? なにその子!? 超可愛い!! ニャットの友達!?」
「違うニャ。ちょっとそこで戦ってたのニャ」
「戦う? この子と……?」
白き獲物と人族のメスは何やら話をしている。
ふむ、我には人族の言葉は分からぬが、こやつには分かるらしい。
なかなか多芸な奴よ。
「おっけー、ニャットの友達なら一緒に食べてきなよ」
「だから友達じゃニャいニャ」
「ほーら、君もどうぞー」
人族のメスは細長い爪を器用に使うと、黒い鉄の塊の中から肉の塊を取り出す。
そして御主人達が使うのと同じ白く薄い石にその肉を乗せると、我の前に差し出してきた。
うむ、弱き者として強き者に大人しく得物を差し出すその姿勢はよいぞ。
「それじゃあ食べるのニャ!」
我等は我先にと肉の塊にかぶりついた。
……むぉ!? こ、これは……
美味ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
な、なんだこれは!? こんな美味な肉は初めて食べたぞ!?
御主人達も肉を焼いたり草と一緒にお湯に放り込んだり、味を付けたりして美味くするが、これは純粋に肉が美味い!
肉だけではない、肉に付ける味も凄まじく美味い!
「ニャフフ、相変わらずカコの飯は美味いのニャ」
だが白き獲物はこの驚きを当たり前のように受け止めていた。
ば、馬鹿な!? この肉を味わって何ら衝撃を受けていないだと!?
「ふっ、驚いたニャ? これがカコの力ニャ」
何だと!? まさかこの娘がこの肉を美味くしたというのか!?
「その通りニャ。この肉が食えるからニャーはカコの護衛をしているのニャ」
白き獲物が人族のメスの子供の護衛だと!?
だが確かにこの肉を食えるというのなら、そんな回りくどい真似をする理由も分からんでもない。
どんな種族も子供は簡単に死ぬからな。我以外は。
「どう? 美味しい?」
うむ、何を言ってるか分からんが、美味だぞ人間のメスの子供よ!
褒めてやろう!!
「気に入ったみたいニャ」
「えへへ、喜んでもらえて良かったよ」
我は夢中で残りの肉を平らげる。
いかん、もう食べきってしまった。おい、人族のメスの子供、おかわりはないのか!?
「なぁに? おかわりが欲しいの? はいどーぞ」
すると人族のメスの子供は我の意図を察して肉を白く薄い石の上に乗せる。
うむうむ良いぞ。我は新たな肉の塊にかぶりつく。
「カコ、ニャーにも肉のおかわりニャ!」
「はーい」
むむっ、さてはこやつ、我の肉を食い尽くすつもりか!? そうはさせんぞ!
「それはこっちのセリフにゃ! カコ! おかわりだニャ!」
人族のメスの子供! 我にもだ!
「はいはーい。たーんとお食べー」
我と白き獲物は相手に食べ尽くされまいと肉を食い続ける。
うむむ、見事な肉だ! どれだけ食べても食べ飽きることが無い極上の肉だ!
もっともってこーい!!
◆
ふー、食った食った。
それにしても見事な肉だった。誉めてやろう。
「ニャフ、満腹だニャー」
白き獲物もこの極上の肉に満足しているようだ。
さて、それでは我もデザートを頂くとするか。
「デザート? ニャにか果物でもあるのかニャ?」
ふっ、果物? そんなチンケな物ではない。
我の獲物に相応しいモノがそこにあるではないか。
「ニャに?」
そう、我の得物はそこの人族のメスの子供だ!
「カコだと? おニャー、どういうつもりニャ?」
我の言葉に白き獲物が剣呑な気配を放つ。
どういうつもりだと? 決まっている。
先ほどの極上の肉の秘密がこの人族のメスの子供にあるというのなら、王である我に差し出すは当然の事!
明日からの我の食事の為に、貰ってゆくぞ!!
「そうはさせんニャ! カコはニャーの料理人だニャ!!」
「え? 何? 何話してるの?」
我と白き獲物の間に緊迫感が漂う。
だが白き獲物からは、先ほどまでとは比べ物にならぬほどの殺気が放たれていた。
くくくっ、極上の肉を奪われまいと本気になったか。
そうでなくてはな!!
さぁ、ここからが本当の戦……っ!!
「おーい、モフモフーッ」
…………なんか聞こえた。
「どこだーいモフモフー」
居ませんよ。我ここに居ませんよ?
待って、居ないと言ってるのに何で一直点にこっちに近づいてくるの?
「あっ、居た居た」
げぇーっ!? 分かっていたけどご主人ーーーっ!?
「こんな所に居たのか。心配したんだぞ」
ひぃーっ! 何言ってるか分からんけど怒ってらっしゃいますかー!?
「えっと、その子のご主人様ですか?」
「あれ? もしかして君がモフモフを保護してくれたの?」
「あ、いえ。ウチのニャットが」
「わぁ、大きな猫さんだね。ウチのモフモフを助けてくれてありがとう」
「ニャフ」
うわぁーっ!? なんか人族のメスの子供とご主人が話してるぅーっ!!
い、いかん! 我が奪おうとしていたのがバレてしまう! っていうかバレたぁーっ!!
「さぁ、帰ろうかモフモフ」
御主人の手が我に迫る。
あばばばばばっ……
そしてガシリと我の頭を掴んで持ち上げた。
チョロロロロロ……
我、久しぶりに漏らした。
「あらら、お漏らししちゃいましたね。よっぽど心細かったんですね」
「モフモフはまだ赤ちゃんだからね。でも好奇心旺盛だからすぐにどこか行っちゃうんだよ」
「あはは、分かります。ちっちゃい子って人間でも動物でもそうですよね」
我知ってる。今後の我の処遇を話し合ってるんだコレ。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「じゃあねー、モフモフちゃーん」
こうして我の美食計画は一瞬で水泡に帰したのだった……
「あれ? モフモフなんだか重くなってない? またダイエットしないとだね」
何か嫌な予感がぁーっ!!
白き獲物ーっ!! 我と替われーっ!!
我もそっちの方がいいーっ!!
モフモフ_:(´д`」∠):_「チェンジミー!」
ニャット(ヾノ・∀・`)「謹んでお断りするのニャ」
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