第301話 食を司りし者達
作者_:(´д`」∠):_「寒いぃぃぃぃ! 来週2/3は『錬金術? いいえ、アイテム合成です!』の発売日ですよー!」
ヘルニー(:3)レ∠)_「皆さん是非とも手に取ってみてくださいー!」
ヘイフィーヾ(⌒(_'ω')_「店舗特典SSもあるよー」
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◆パガライオース実行委員会会長◆
「面倒な事になったな。まさかあの若造がメロオーレを倒すとは」
我等はパガライオースの町の魔物料理大会実行委員会。
私はその会長を務めている。
この大会は世界的に食材が不足していた時代に、調理が困難で癖のある魔物食材をなんとか食べれるようにしようという理由で始まった大会だった。
まぁそれも昔の話。今は我が町に人を呼び込むための商売のタネでしかないのだがな。
それゆえ、大会で上位に入賞するのはわが町の料理人でなければならんのだ。
間違っても余所者の、それもまともな店も持たん若造を入賞させるわけにはいかん。
「だから裏で手を回せと言ってやったものを」
「まぁメロオーレはまだ若い。アイツには良い薬だろう」
アレは味さえよければ店は流行ると思っておる青二才だからな。
父親の経営手腕にはまだまだ遠く及ばん。
「とはいえいつまでも余所者に良い顔をさせる訳にもいかん」
大会委員は皆この町の有力料理店の店主だ。
だからこそ皆危機感を抱いていた。
前回はそれなりに腕の立つ流しの料理人程度で、組合せの幸運もあっての4位という感じだったが、今回の大会では明らかに腕を上げてきおった。
特にメロオーレとの試合は明らかにこれまでとは料理の完成度が違った。
「分かっている。だが道中に送った刺客は全て返り討ちに遭った。恐らくは連中と行動を共にしている冒険者が護衛しているんだろう」
カロックとかいう若造は前回は妹と二人で参加だったが、今回は大会にこそ出ないものの、二人の冒険者と行動を共にしている事が分かっている。
護衛を雇うとは小賢しい事をしてくれる。
「若い男女と聞いたが何者だ?」
「それが冒険者ギルドに顔を出さんらしく、ギルドカードで素性の確認をしたくても出来んらしい」
冒険者の情報は冒険者ギルドが秘匿しているが、この町のギルド長は我々と仲が良いため、多少礼をはずめば大抵の情報を提供してくれる。
ただ他国や別の町の冒険者の情報を確認しようとすると、その冒険者のギルドカードが必要になる。
大抵は冒険者ギルドで仕事を受ける際と依頼達成の報告をする際にカードを提出させ、そこから得た情報を流してもらうのだ。
しかしこの二人の冒険者は何故か冒険者ギルドに顔を出さないため、情報の確認が取れないらしい。
普通なら護衛でも魔物素材の買取りを頼むためにギルドに行くものなのだが……
「滞在中も護衛に専念させているからだろうな。食材が盗まれたにもかかわらず、新たに用意してきたことから、食材確保をする為の別働隊も雇っていそうだ」
「我々の妨害を予想していたと言う事か?」
むぅ、ずいぶんと用心深いな。
「いや、冒険者が腕利きならそちらの入れ知恵の可能性もあるな」
寧ろその方がありそうだな。冒険者なら色々とトラブルにも遭遇しているだろうし、万が一のための用心深さは人一倍だろう。
「それだけ腕が経つとなると面倒だな。数に明かせて襲撃するか?」
「いや、我々らしく金で寝返らせよう。所詮は食い詰め者の冒険者だ。十分な金を出せば容易に寝返るだろうさ」
そう、わざわざ自分の命を危険に晒してまで金を求める連中だ。相場以上の金を払えば寝返り工作は容易だろう。
「冒険者を寝返らせて痛い目を見せてやれ」
まぁ妹の方は勘弁してやろう。
と言っても、二度と大会に参加しようとは思わせないように、少々怖い思いはしてもらうかもしれんがな。
それでも逆らうようならその時は……
「くくくっ、この町の大会に余所者が入賞する余地など最初からないのだよ」
◆
さっそく冒険者の寝返り工作に向かわせた部下が還って来た。
「どうだ。連中の護衛は無事寝返ったか?」
「そ、それが、断られました」
しかし部下からの報告は予想外のものだった。
「何? ちゃんと報酬の値上げも提案したのだろう? 金貨を200枚もチラつかせれば冒険者など犬の様に媚を売ってくるだろうに」
それとももっと金を引き出せると欲をかいたか?
「それが、逆だと言われまして」
「逆? 何がだ?」
「ええと、カロック兄弟が彼等を雇っているのではなく彼等がカロック兄弟を料理人として雇っているそうです」
「……は?」
部下の報告に唖然となる私。
冒険者の方があの兄弟を雇っていた? どういう意味だ?
「何でも面白い魔物料理を作るのを気に入って暫く雇っているのだとか」
「なんだそれは!? それでお前はおめおめと戻ってきたのか!?」
「はぁ、買収する筈だった相手は雇い主では買収しようがありませんので……」
「ばかもーん! そこは臨機応変に対応せんか!! もっと美味い魔物料理を出す店を紹介するとか言って手を引かせればよかろうに!」
「はいっ、申し訳ありません!」
ええい役に立たん奴め。
「こうなっては仕方ない。強引な手に出るとするか」
「と、申されますと?」
「護衛を利用できんのなら、我々が直接ヤツの妹を攫えばよいのだ。裏の連中を雇って妹の方を攫って来い!」
「か、かしこまりました!」
冒険者の寝返りに失敗したのは残念だが、この町には裏の仕事をする連中が何人もいる。
それも金の為ならどんな手段でも使うような悪質な連中がな。
変に相手の心を折ろうと搦め手を使ったのがいけなかった。いつも通りあいつらを使えば良かったのだ。
「ふっ、若造は若造らしく身の丈に合った振る舞いをすればよいのだ」
◆
「大変です旦那様! 送り出した裏の者達が全身に噛み跡を付けて逃げ帰ってきました!」
「なんだと!?」
馬鹿な!? 連中は護衛に守られた対象が相手でも仕事を完遂するプロだぞ!?
「どういう事だ? 町に居る護衛は二人だけなのだろう?」
「それが、なにやら厨房で毛玉に襲われたと呟くばかりで要点を得ないのです。よほど恐ろしい目に合ったのでしょう」
くっ、まさかこそまでの護衛を雇っていたという事か。
一体どうやってそんな凄腕を雇う事が出来たのだ!?
「こうなったら別の方法を探さねば……」
おのれ、この私を二度も手間取らせるとは、只で済むと思うなよ小僧!!
必ずや貴様を恐怖のどん底に突き落としてくれるわ!
◆リリエラ◆
「うああああああああっ!!」
次の試合に向けて、厨房に立ったカロックさんが絶叫しながら物凄い勢いで料理を作っている。
ただしその顔は必死で何かから逃げようとするかの如き壮絶な形相で。
「ねぇレクスさん、一体何をしたらこんな事になった訳?」
私はこの惨状の元凶に理由を問いただす。
「はい、カロックさんに修行を頼まれたのは良かったんですけど、流石に時間が無さ過ぎまして。それでちょっと荒療治をする事にしました」
「ちょっと?」
「具体的には魔法で体感時間を数千倍に引きあげつつ強化魔法で身体能力を強化させ、魔物から逃げながら同時に料理を作らせたんです」
おっと予想外の地獄でしたよ。
「他にも料理をしながら魔物を狩らせたり、どんな時でも調理が出来るように日常の動作と調理動作を融合させる体裁きを覚えてもらいました」
「どうやって?」
「カロックさんが動くたびに僕が高速でカロックさんの体を動かして矯正しました」
それは強制の間違いじゃないかなー……
「教える為の時間も惜しかったですから、とにかく全ての動きを料理と連動するようにしたんですよ」
「じゃあさっきからずっと何かをブツブツ呟いてるのは?」
「超圧縮発音でカロックさんに調理技術の座学を教えたからです。ちゃんと数千倍に引き伸ばされた体感で全部聞こえていますから大丈夫ですよ」
その超圧縮発音って何? と聞きそうになったけど、聞いたら絶対巻き添えをくらうと察した私はそっとスルーする事に決めた。
「お兄ちゃん、元に戻ってーっ!」
ごめんねリレッタちゃん。私には無理だわ。
多分数日もすれば多少正気に戻ると思うからそれまで我慢して。
でも完全に正気に戻らないかもしれないけど、そうなったらごめんね。
モフモフΣ(:3)∠)_「陥れたい相手がとっくに地獄に堕ちている件」
リリエラ( ノД`)「助けられなくてごめんね……(巻き込まれたくないし)」
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