第300話 驚異の肉汁合戦
作者(:3)∠)_「祝! 300話たっせーい!!」
ヘルニー(:3)∠)_「ドンドンヒューヒューパフパフ!!(古典的表現)」
ヘイフィー(:3)∠)_「記念すべき300回がこんなトンチキ回とは……」
作者(:3)∠)_「本当は元旦にやりたかったけど間に合わなかったなり……」
ヘルニー(:3)∠)_「ちな今回も妹視点です。ほら、トンチキ回には驚き役が必須だから……」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆リレッタ◆
「それでは試食に入ります! まずはメロオーレ選手のフレイムポーク料理です!」
審査員達の前に並べられた料理皿の蓋が外されると、会場中にフレイムポークの香りが広がる。
蓋を外してあふれ出した香ばしい匂いは、私達の鼻をくすぐり、自然と口の中に唾が溜まる。
「うぉぉ、滅茶苦茶良い匂いがする……」
「俺達も食いてぇ……」
「では試食を始める」
審査員達がフレイムポークの肉を切ると、切り口から肉汁があふれ出す。
そして先ほどまでとはまた違う香りが漂ってくる。
「おお、肉の中の香りも違うのか!」
「流石料理の香水と呼ばれるだけの事はある。この香りだけでパンが何個でも食べられそうだ!」
まだ食べてもいないのに対戦相手の料理は大絶賛。
でも料理は味が一番大事なんだよ! 匂いだけ良くても味が悪かったら意味がないんだから!
「……美味い! 匂いだけではない。これは味も一級品の料理だ!」
けれど審査員達の反応はとてもよかった。
「素晴らしい。フレイムポークの売りは脂の濃さだが、弱点もまた脂の濃さだ。薄いスライスなら全体の脂が均一に流れ出るが、この分厚さの塊だと中心部分の脂が残り、外側の脂だけが流れ出てしまう。更に中心の脂を程よい濃さにしようとすれば、今度は逆に外側の脂が出過ぎてパサパサになってしまう」
「だが、このフレイムポークはずっしりとした肉の量がありながら、良い意味で脂の濃さを感じない、よほど上手く火を通したのでしょう」
審査員が対戦相手にチラリと視線を送ろと向こうも満足げに頷く。
「その通りです。当料理店に代々続く調理用に調整された火魔法を使って外側の熱は低く、内側に十分な熱が届くようにしたのです」
「「「「おおー!」」」」
料理用に調整された火魔法!? そんなの初めて聞いたよ!?
「おお、聞いたことがある。古き古代魔法文明時代には料理の為に調整された専用の魔法があったのだとか。そしてそれを代々受け継いできた料理店がごくわずかに存在している事も。まさか彼の店がそうだったとは」
「当店でも長らく術を修める事の出来る者がおらず幻の魔法となっていましたが、私の代で遂に術の習得に成功したのです」
「素晴らしい! 正直これ程あっさりした脂のフレイムポークを食べたのは初めてだ。見事な調理技術tと言わざるを得ない!」
あわわわっ、大絶賛だよぉー!?
「だ、大丈夫なの? お兄ちゃん?」
不安に駆られた私は縋る様にお兄ちゃんに尋ねる。
「……カットした食材には隠し包丁で切り込みを入れる……切り込みは同じ食材でも個体、そして部位によって微妙に違う……調味液に刃を入れ、液体中の極小の素材をカットして味を調整……」
……駄目っぽいです。
一応料理は完成したみたいだけど、お兄ちゃんがコレじゃまともな料理が出来たとは思えないよぉーっ!!
「では次いでカロック選手の料理の試食に入ります」
「あわわわ……」
「むぅ、一見するとメロオーレ選手の料理と似ているが……」
「残り時間からここまでのものを作り上げた事は見事だが、果たして味は、いや中身は大丈夫なのか……」
厳しい言葉を口にしながら審査員達は皿に盛られたお兄ちゃんの料理をナイフで切ろうとしたところでピタリと手が止まる。
え? どうしたの!?
「これは、もう切ってあるのか?」
どうやらお兄ちゃんの料理はナイフを入れる前に切ってあったみたい。
「あれ? 珍しいね。いつもならあらかじめ切ったりしないのに。」
「むぅ……」
何が気に入らなかったのか、審査員達は難しい顔になる。
「これは期待外れですかなぁ」
まだ食べてもいないのに、審査員達は失望の顔を見せていた。
え? 何で食べてないのにそんな反応になるの?
「とはいえこれも仕事。審査はしなければな」
仕方なしとばかりに審査員達はお兄ちゃんの料理を口に運んだその時……審査員の口が爆発した。
「「「「……え?」」」」
何が起きたのか分からなかった。
けれど確かに私達の目の前で審査員の口が爆発したの。
「な、なんだゴボッごれわぁーっ!?」
違った! 口が爆発したんじゃない。口から何かを吹きだしてる!?
「肉汁がボッ!? 切った肉の中から肉汁が溢れてくるだとゴボォーッ!?」
え? な、何!? どういう何が起きてるの!?
「し、信じられん!? 口の中で肉を噛んだら肉汁が溢れて来た!? ありえない!?」
「ど、どういうことですか!?」
同じ疑問を思ったのか、司会の人が審査員達に尋ねる。
私だけじゃない。周囲の観客達も何を当たり前の事を言ってるのかとさっぱりの様子。
すると、口の中のお肉を飲み込んだらしい審査員の一人が荒い息を吐きながら話し始めた。
「ステーキなどの肉料理は、ナイフで切った所から肉汁が溢れるものだ」
うん、それは分かる。勿論調理の仕方によっては肉汁が出ない料理もあるけど。
「我々も多くの料理を食べて来た事から、大抵の料理を見ればどのような料理かはおおよその検討が付く。そしてこの料理はメロオーレ選手の料理と似ている事もあって、間違いなく切れば肉汁が溢れる料理である筈だった」
だったら肉汁が出ても不思議に思う事はないと思うんだけど……?
「では何故驚いたのですか?」
「それは既にこの料理がカロック選手によって切られていたからだよ」
やっぱり意味が分からない。
「いいかね? メロオーレ選手の料理は切った瞬間に肉汁が溢れて来たのだ。しかしあらかじめ切ってあったカロック選手の更には肉汁がこぼれていなかった。つまり肉汁は捨てられたと言う事だ。しかし肉料理にとって肉汁とは旨味の塊だ。最高級の魔物肉ステーキの肉汁はそれ自体がスープと言っても過言ではない程の旨味を持つ。溢れる肉汁が演出になるレベルのものであれば、その重要性は計り知れない」
な、成る程、確かに私もお肉から溢れる肉汁はスープみたいで大好きだもんね。
「だからこそ我等は失望したのだ。この調理法で最も重要な肉汁を捨てる愚かさに……だというのに、だと言うのにだ! この料理からは肉汁が溢れたのだ! 絶対に出るはずのない肉汁が!」
「絶対に出るはずのない、ですか?」
審査員はまだ食べていない肉を指差す。
「この料理をよく見たまえ、切断面が表面の焼いた面のように茶色くない。赤みを帯びていて明らかに色が違うだろう? つまり肉を切った断面と言う事だ」
「そうですね。これは私にもわかります」
観客席からもまぁ普通そうだよなと、何故審査員がそんな事を言うのか分からないと首を傾げる。私も傾げる。
「しかしだ、調理する前にあらかじめ肉をカットしていたのであれば、この切断面の赤身は見えず、表面と同じように茶色く焼けている筈だ」
「それも分かります。分かりますが……」
「分からないかね? 我々が食べた料理からは肉汁が吹きだしたのだ。大量の肉汁が! しかしだ、あれ程の肉汁を吹きだすほどの料理なら、カロック選手が調理中に肉を切った時点で肉汁があふれ出た筈だ。そして我々が口に入れた肉を噛み切ってもあれ程の肉汁が出てくることは無かったことになる!」
「「「「あっ」」」」
言われてやっと気付く。
確かにそうだ。肉を切ったら肉汁が出る。口の中で噛んだだけであんなに肉汁が吹きだすなら、お兄ちゃんが切った時点で肉汁が溢れるのは当然。
あまりにも当たり前すぎて逆に気付けなかった。
「カロック選手、教えて欲しい。これはそういう特性を持った魔物肉なのか!? 恥ずかしながら私の記憶ではこのように大量の肉汁を溢れさせる魔物肉など食べたことどころか聞いた事もない」
本当に分からなかったらしく、審査員がお兄ちゃんに答えを尋ねる。
「……その料理に使っているのはローグラプラーのモモ肉だ」
「ローグラプター? 魔物肉としちゃありふれたヤツだぞ!?」
うん、ローグラプターは私も知ってる。見た目は怖いけど、臆病な魔物だから私達でも罠を掛ければ狩れるんだよね。ただ数が多いから、周囲に仲間が居ないか気をつけないといけないんだけど。
でもローグラプターってそんなに脂は多くなかったと思うんだけどな。
「馬鹿な! ローグラプターの肉はここまで脂が出ない! それとも変異種の肉なのか!?」
「いや、普通のローグラプターだ。調理法に四手間ほどかけたくらいだ」
「なっ!? 普通のローグラプラーで!? し、しかしこの肉汁はどういう事だ!? どうやって肉汁を溢れさせずに切ったんだ!?」
「肉の細胞壁を潰さないように切っただけだ。それでも無駄、無駄な、無駄駄駄な肉汁を出しちまったががが……」
審査員の質問に答えるお兄ちゃんだったんだけど、なんか途中から言葉遣いがおかしな感じになってきたんだけど大丈夫コレ? ホントに私のお兄ちゃんだよね!?
「魔法でも食材でもなく、包丁の技術でこれを成し遂げたというのか……っ!?」
審査員達は口を爆発させながらお兄ちゃんの料理を食べ続ける。
その顔は口が爆発しているにも関わらず、幸せそうで、とても美味しそうだった。爆発してたけど。
「それでは審査員の皆様、勝敗をお願いします!」
審査員の人達は神妙な顔で選手の名前が書かれた札を上げる。
ここに書かれた名前が多い方が勝ちになるんだけど……
「カロック選手5、メロオーレ選手0でカロック選手の圧勝でーっす!!」
「「「「おおおおおおおおおっ!!」」」」
まさかの逆転大勝利。しかも圧勝!!
「あわわわわっ、私達の圧勝だよお兄ちゃん!? それも今までの試合よりも高成績だよ!?」
今までの試合は3対2とか4対1とかで相手選手にも票が入っていたのに、今回は全部私達への票だけだった。
「は、反則だ! こんなの反則に決まってる!」
そんな中、対戦相手のえっと……メロオー……レ? だっけ、その人が反則だと騒ぎ出した。
「な、何言ってるのよ! お兄ちゃんが反則する筈ないじゃない!」
とんでもない言い掛かりに思わず私は言い返してしまう。
「したに決まっているだろう! そんな凄い料理をあの短時間で作れる訳がない! 手が消えるとか道具や食材が宙に浮くとかはイカサマを隠す為の目くらましだ!」
違う! と言いたい私だったけど、お兄ちゃんの調理技術をずっと見てきた私にも、正直あの短時間であれだけの料理を作れたのかと聞かれると疑問に思ってしまう。
でもお兄ちゃんがイカサマなんかしない事だけは分かってる! だって私はお兄ちゃんが美味しい料理を作る為に頑張ってるところを毎日見てきたんだから!
「イカサマか……」
と、そこに審査員の一人が立ち上がった。
「しかしだメロオーレ選手、食材の事前調理は試合規定で許可されている。下処理に数日かかる食材や会場の施設では調理出来ない食材もあるからね」
「さらに言えば会場で下処理をする選手が多いのは魔物食材には普通の食材以上に鮮度が重要な食材、包丁を入れて中身が空気に触れた瞬間から痛み始める食材が少なくないからだ」
うん、それは私もお兄ちゃんから聞いたことがある。
あらかじめ下処理しておきたくても出来ない食材が多いのが魔物食材の面倒なところだって。
でも、だからこそ面白いって言いながらお兄ちゃんは笑っていたっけ。
「何より、この味をイカサマで出せると思うかね?」
そう言いながらメロオーレに料理の乗った皿を差し出す審査員。
すっごく嫌そうな顔だけど。
「一つだけ食べてみたまえ。一つだけだ」
しっかり念を押されつつお兄ちゃんのりょうりを手に取ると、恐る恐る口に運ぶメロオーレ。
次の瞬間、やっぱり口が爆発した。
「っっっっ!?」
口を爆発させながらメロオーレが何かを叫んだ気がした。
そして爆発が収まると同時に、ゆっくりと地面に突っ伏したの。
「俺の……負けだ」
あまりにもあっさりとした敗北宣言。
「この味はイカサマなんかじゃ出せない……イカサマしようがない」
恍惚とした顔で、でもすこしだけ眉を顰めてそう言うと、ゆっくりと立ち上がってお兄ちゃんの前にやって来る。
「完敗だ。遅れて来たお前を侮った事を謝罪する。やはりお前の料理は本物だった。前回の大会でも真っ向から戦えたら良かったんだが」
そして妙に吹っ切れた顔で右手を差し出してきた。
あ、あれ? なんかさっきと違って妙に素直な感じ。もしかしてこの人そんなに悪い人じゃない?
私はどうするの? とお兄ちゃんを見て……我ながら渋い顔になってしまった。
だってお兄ちゃんってば……
「食材が落ちる前に切り終える。切断面から汁を溢れさせるな。真逆の味を活用しろ。毒は旨味……」
またおかしくなってたんだもん! さっきはまともに戻ったとおもったのにー!
「もう!」
私は強引にお兄ちゃんの手をメロオーレ選手の手に合わせると、無理やり握手させる。
「おおっ、積年のライバルに対し兄妹そろっての返礼です! これは美しい光景だぁー!」
「「「「おおおおーっ!!」」」」
私の気も知らずに、解説の人と観客達は楽しそうに声を上げたのだった……
「野菜は飲み物」
早く元に戻ってお兄ちゃぁーんっ!!
モフモフΣ(:3)∠)_「久々登場のローグラプターさん(食材)」
ローグラプター(´;ω;`)「28話以来の久々の出番がトンチキ料理の食材という悲しみ」
モフモフΣ(:3)∠)_「ちなみの本編登場の大抵の魔物はご主人の調理技術の対象である(モグモグ)」
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