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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔物料理大会編

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298/355

第298話 新春SS モフモフの華麗な新年

作者_(:3 」∠)_「あけまして!」

ヘルニー_(:3 」∠)_「おめでとう!」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「ございます!」

作者_(:3 」∠)_「今年もよろしくお願いします!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!


※本エピソードはお正月特別SSなので登場人物達の言葉が種族の区別なく開示されます。

注:ただしお互いに意味は通じていません。


 ◆モフモフ◆


 我は全ての獣の支配者にして魔物の王。

 ぶっちゃけ腹が減った。

 と言う訳でご主人達が肉を美味くする場所に行く。

 ここで肉を何か良い感じにすると大変美味になるのだ。なんでそうなるのかは知らん。


プキュン


 なんかぶつかった。

 奥に進もうとするとまるで見えない壁があるかのように勧めなくなるのだ。

 一体これは何なのだ!?


 ジタバタジタバタ。


 くっ!本当に何なのだこれは!?

 良いだろう、この我に楯突くというのなら見えない何かであろうとも容赦はせん!


「ああ、何だモフモフか」


 と、そこで奥からご主人がやって来た。

 ご主人! 何か奥に行けないんですけど!?

 我は全身で不満を表明するとご主人がもぞりと体を振るわせる。


「駄目だよ。モフモフは前にせっかく作ったおせち料理を食べちゃったでしょ? だから年末年始は台所は入っちゃ駄目。結界を張っておいたから入れないよ」


 ご主人は何やら言うと、我を持ち上げて皆が集まるフカフカがある場所に我を運ぶ。

 くっ、何を言っているか分からんが、我を入れないつもりだな。

 しかしご主人が関わっているとなれば、我が入るのは無理だろう。

 あの小僧や小娘共なら何とでもなるのだがな。


 仕方ない、外に狩りに出るとするか。

 この巣の人間共は既に我の支配下。

 我を見るとすぐに供物として食糧を差し出してくるからな。

 ふはははははっ! いつまでもご主人に胃袋を支配されている訳ではないぞ!


 ◆


 一体どうした事か?

 何故か、今日に限って誰も我に食料を貢がないのだ。


 誰も彼もが慌ただしく動き回り、我に対して敬意を表する様子もない。

 一体何が起きている?

 我は縄張りを順に移動してゆくが、やはり誰も我に頭を下げて供物をささげてこない。


「あらーモフモフちゃん。ごめんねー、今日は年越しの準備で忙しいからおやつは無いのよー、ゴメンねー」


 たまに我に反応する者は居たが、やはり供物は無い。


 グー……


 むぅ、本格的に腹が減って来た。

 こうなったら人間共の巣を出て外の魔物を狩りに行くか?


「……っ!! ……か!!」」


 そう思った時だった。

 何やら近くに殺気立った気配を感じたのだ。

 ほう、我の縄張りで随分と剣呑な気配を振りまくものだ。

 まるでここは自分の縄張りとでも言わんばかりの態度だな。


 くくっ、これは身の程を弁えさせてやるとするか。

 丁度腹が減って機嫌が悪くなっていたところだ。

 我のストレス解消に付き合ってもらうとしよう。


「おうおう、そろそろ貸した金耳揃えて返してもらおうか!」


「だ、だから金が無くて……」


 声のしてきた方にやってくると、人間同士が諍いを起こしていた。

 若く体の大きい人間が大声をあげて威嚇している事から、縄張り争うのようだ。


「だったらテメェの娘に稼いでもらうとするか」


「いやぁ!」


「娘だけは! 娘だけはどうかご勘弁を!」


「うるせぇ!」


 と思ったら若いメスを奪い合っていた。

 どうやら求愛のダンス勝負をしている模様。


 そしてメスを勝ち取った若い人間のオスがメスを自分の巣に連れて行こうとする。

 うむ、弱肉強食、野生のルールだな。

 強い者が勝ち弱い者が負ける。当然の光景だ。


 だが他種族の話なので我には関係ない。とうっ!


「ぶげぁっ!」


 我の体当たりを受けて若いオスが吹っ飛び、近くの壁にぶつかって崩れ落ちた。

 ふっ、脆い脆い。


「う、うう、何だ一体……?」


 我は無様に地に倒れ伏した人間のオスを上から……サイズが違うのでほぼ変わらんな。

 よっと。

 我は倒れた人間のオスの上に乗ると、改めて見下す。


「な!? 何だこれ!? モフモフする!?」


 ふははははっ、悔しいかね?

 折角勝負に勝ってメスを手に入れたと思ったのに、赤の他獣によってそれを台無しにされる気分は?

 貴様が無様に倒れている間に、この人間のメスはそっちの弱いオスのものになるのだ!


「お父さん!」


「ミーナ! ああ、良かった。本当に良かった」


 どうやら若いオスが求愛行動を中断した事で弱いオスの勝利となったようだな。

 はーっはっはっはっ、愉快愉快。

 これぞ圧倒的な力による蹂躙よ!


「ありがとう、本当にありがとう、何だかよく分からない生き物」


「ええ、本当にありがとうモフモフの良く分かんない動物さん」


 新たな番となった人間達が我に感謝を述べてくる。

 人間の言葉は分からんが、雰囲気で我に対して畏敬の念を抱いているのが分かる。

 ふははははっ、そうだ、畏れ、敬え!


「あの、大したお礼は出来ないけど、良かったらこれをどうぞ」


 そう言って人間のメスが差し出してきたのは、小さな食糧だった。

 知っているぞ! たまにご主人達が食べている甘いヤツだ!


「私が働いている宿の女将さんがくれたものだけど、貴方にあげるわ」


 はっはっはっ、良いぞ良いぞ。

 我の庇護が欲しければ供物を捧げるのだ。

 気が向いたら助けてやらんでもない。我は心が広いからな。


「それにしてもこの子なんて動物かしら? 犬や猫じゃないわよね?」


「こんなに丸々と太った犬猫なんて見たことないぞ」


「そうよね。こんなに太ってたらコロコロ転がってまともに暮らせないわよね。あっ、もしかしてこの子、雪の精なんじゃない?」


「雪の精?」


「絶対そうよ! こんなに丸々と太ってるのに借金取りを一撃でノシちゃったんだもん!」


「成る程、確かにそれなら……」


 ふふふっ、人間共が我に向ける畏敬の念の気分が良い事よ。

 さて、供物も食べ終えた事だし、我は去るか。


 ◆


 その後も我は人間達の巣を渡り歩いた。

 何故か今日に限ってやたらと人間のオス達が争っているので、恐らくこの時期は人間達の発情期なのだろう。


「ああ、ありがとうありがとう。お陰で娘を誘拐されずにすんだよ」


「助かったよ。お陰でひったくりに奪われた店の売り上げを取り戻すことが出来た」


「い、生きてる、犯行現場を見た口封じに殺されるかと思ったのに……」


 まぁ中にはメスが居ないのに喧嘩をしていたので縄張り争いもしていたのかもしれん。

 もしくは序列をつける為の戦いをしていたか?


「「「お礼にこれを」」」


 人間達が我に供物を差し出してくる。

 ふははははっ、美味美味。

 さーて、次はどこに行くかな。


「ところでアレなんて生き物なんだ?」


「新種の豚か?」


「それとも太った羊か?」


「「「分からん」」」


 我は争いの気配のする人族巣の奥へと向かってゆく。

 それは薄暗いが闇の気配ではなく殺伐とした争いの気配だ。

 みればそこかしこに腹をすかせた者、殺意を漲らせた者達を感じられる。

 隠れている者、堂々と姿を見せている者、今にも誰かに襲い掛からんとしている者と様々だ。


 普段ご主人と共に行く猛者達の居る場所と比べても空気が荒んでいる。

 しかしこちらの空気の方が我の性に合うのも事実。

 何しろここでなら敵には困らんだろうからな。


「おい、暴れてる魔物ってのは本当にこっちに居るんだな?」


「へい、そりゃあもうとんでもない暴れっぷりなんでさぁ! あ、アイツです! アイツが急に現れて大暴れし出した魔物です!」


 ほうら、さっそく身の程知らず共がやって来たぞ。

 ふむ、少々物足りない数だが、すぐに次がやって来るだろう。


「なんだありゃ? アレがヤバイ魔物? どう見ても白い毛玉じゃねぇか。手前ぇらあんなのにやられたってのか?」


「いや見た目はあんなですがマジでやばいんですよアイツ!」


 何やら言い争いをしているな?

 あれか、我の強さに気付いた者と我を前にして未だにその力を見極める事の出来ぬ愚か者とで意見が割れているのだろう。


「まぁ良い。ガキ受けしそうな見た目だしな。それなりに強いのなら躾けて金持ちの家に売れるだろ」


 おっと、話が済んだようだな。そうだ、どちらにせよお前達は我と戦うしかないのだ。

 さぁ、真の恐怖と圧倒的な暴力というものを教えてやるとするかっ!


 ◆


「ど、どうぞ」


 やって来た連中の中にこの辺りの人間のボスが混じっていたらしく、全員叩きのめしたらすっかりおとなしくなった。

 少々物足りなかったが、群れの人間達が我の機嫌を取るため肉の山を差し出してきたので良しとしよう。


 くははははっ、部下を引き連れてきた時は随分と自信満々だったが、我の力を知ったらこの有様か。

 うむ、運動したあとの肉は美味い!


「うう、まさかこんなヤバイ魔物が王都に潜りこんでいたなんて……おい、衛兵隊には連絡したんだろうな?」


「しやした。けどアイツ等俺達の言葉なんてハナから信じようともしなくて……」


「それじゃあコイツが本格的に暴れ出すまで誰にも気づけないって事かよ!?」


 ふふふふっ、我に怯える弱者の姿は最高のスパイスよなぁ!


「も、もうこの国は終わりだぁ……」


 ふはははははっ、それじゃあ気分も良いし、別の群れも我の支配下に置いちゃおうかな……っ!?

 な、なんだこの悪寒は!?

 突然我の背筋におぞましい感覚が走る。


「なんだ? 急にどうしたんだコイツ?」


「まるで何かにビビッてるみたいにキョロキョロしだしましたよ?」


「バカ言え、この化け物がビビるような化け物が居る訳……」


 違う、コイツ等ではない。ではどこから……


「あっ、見つけたよモフモフ」


 その声は真上から聞こえてきた。

 というかこの声はぁぁぁぁぁ!?


「もう、こんな時間まで何してたんだい? もうすぐ年が明けちゃうよ」


 御主人だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 ヤ、ヤバイ、他の人間の群れを襲いに行こうとした事を知られたか!?

 っていうかここで戦ってた事がバレ……


「あれ? 皆さん随分と汚れてらっしゃいますけど、もしかしてウチのモフモフと遊んでくださってたんですか?」


「え? あ、遊ぶ? コイツと?」


「人が飛んで……る?」


 御主人と人間達がこちらを見ながら何かを話している。

 あああああああああっ、間違いなくバレタァァァァァ!!


「まだまだ遊びたい盛りの子供なもんですみません」


「あ、いや」


「さ、帰るよモフモフ」


 御主人が我の頭を掴む。

 あ、これ死んだわ。

 チョロロロロロッ。

 我は漏らした。 


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。それでは僕達はこれで失礼しますね。あっ、明けましておめでとうございます」


「あ、ああ……」


 ◆とある王都の悪党◆


 リンゴーン、と、新年を知らせる教会の鐘の音が鳴る。

 こうして王都の危機は名も知らぬ小僧によって救われ新たな年を迎える事が出来た。というか……


「あの化け物が怯えた子供みたいに震えてやがった」


 何処にでもいるような新人冒険者の小僧を相手にあの化け物は心底怯えていた。

 つまりそれはあの小僧はあの化け物以上の化け物って事で……


「俺、田舎に帰るわ」


 うん、あの化け物があんな有様になるような町で悪い事なんて出来る気がしねぇよ。


「俺も」


「俺は自首する。牢屋の中ならアイツ等もこねぇ筈」


 同じことを思ったのか部下達も、いやこの裏町で悪事を働いていた連中も同じように頷いた。

 こうして王都から大量の悪党が姿を消し、何も知らない次の悪党達が来るまでの間平和になったのだとか……ってあんな連中がいる町が平和な訳ねーだろ!

裏社会のボス(;゛゜'ω゜'):「帰りゅー! おうち帰りゅー!」

部下_:(´д`」∠):_「ボスが恐怖ですっかり幼児退行起こしてる……」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。_(:3 」∠)_

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― 新着の感想 ―
[一言] あのティオン国の王都でレクスの飛行を目撃した人は、そろそろ結構増えてそうだな。 それでも元々あの世界全体では自力で空を飛べる人間が依然として数えるほどしかいないから、モフモフに叩きのめされた…
[良い点] 赤の他獣ww モフモフの外見が酷いことになってるw だからダイエット考えられてたのかww モフモフそのうち祀られそうだな
[一言] あけましておめでとうございます。 モフモフ…正月明けは(一部読者と共に)ダイエットかな?なにせ町のみんなの認識が『丸々と太った』だから「これは冬毛だ」なんて言い逃れはできないよね? レクス…
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