第296話 料理大会本戦開始!
作者_(:3 」∠)_「メリー原稿じゃー!」
ヘルニー_(:3 」∠)_「サンタ? 書籍化のオファーを寄こせぇー!」
ヘイフィー(;゛゜'ω゜'):「コミカライズとかアニメ化と言わないあたり謙虚(謙虚)」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「これより魔物料理大会本戦第一試合を開始しますっっっ!!」
湖の主を狩って数日後、予選が終わり遂に魔物料理大会の本戦が始まった。
カロックさん達が参加する事もあって、僕達も見学にやって来てた。
正直かなり混むと思っていたんだけど、僕達の泊まった宿は高いだけあって、宿の客が大会を見学する為に観客席の一部を纏めて予約していたんだ。
なんでも高い料金を取る宿は、大抵僕達が泊まった宿と同じように観客席の代金が料金に含まれているんだとか。
安くて良い宿を探すのが面倒だからと高い宿を取って良かったよ。
「第一試合はそう! 前回の大会で4位にランクインしたカロック&リレッタ兄妹だぁーっっっ!!」
会場にカロックさんとリレッタちゃんが出てくると、会場が歓声に包まれる。
「対するはソカバモ料理店の料理長シュジー!! 果たして前回の雪辱を果たすことが出来るのか!!」
解説役の人が対戦相手の事を紹介すると、シュジーと呼ばれた選手は両手に持ったフライパンをガンガンと鳴らして意欲を示す。
「それでは、第一試合開始!!」
遂に魔物料理大会の本戦の火ぶたが切って落とされたんだ。
「42対38でカロック&リレッタ兄妹の勝利!!」
勝負はあっさりとカロックさん達が勝利した。
試合は5人の審査員の評価で勝敗が付く。
選手の作った料理を食べた審査員達は、最大10ポイントの評価を選手の料理にくだす。
勿論数字が高い程評価は高い。
カロックさんの料理は⑦⑧⑧⑨⑩と高得点だ。
「いやー、前回よりも更に腕を上げてきましたね」
「それに食材の鮮度も素晴らしい。まるで大会に参加する直前に狩ってきたかのような新鮮さだ」
確かにカロックさん達の食材は町に来る前に狩ったものばかりだからね、そう言う意味ではギリギリの食材調達が功を奏したと言える。
「対してシュジー選手はあまりに成長が見られなかったな。歴史のある店の料理長ゆえに忙しいことは理解できるが、大会に参加する事を選んだ以上は自身の研鑽を怠ってはならん」
なかなか辛辣な判定だね。
参加者達の間ではかなり黒い工作が行われているみたいだけど、審査員達は純粋に料理を批評しているみたいだ。
これなら安心して大会を見学できそうだね。
「いいぞカロック兄妹ーっ!」
「美味そーっ!」
「俺も食いてぇー!」
圧勝したカロックさん達に対し、観客から割れんばかりの応援の声が溢れる。
美味しい料理を作るとは思っていたけど、歴史ある料理店の料理長に勝つのは本当に凄いよ。
これなら優勝も夢じゃないんじゃないかな?
◆
カロックさん達の試合が終わった翌日、今日は第二試合の日だ。
さっそくカロックさん達の応援に行こうと会場に向かっていると、何やら慌てた様子のカロックさん達の姿を見つけたんだ。
っていうかこんな時間にどうしたんだろう? もう会場に入って準備をしてる頃だと思ったんだけど?
「どうだった!?」
「駄目! どこのお店も野菜一つないよ!」
「くそっ、昨日はまだ残っていたのに! 手を回されたか!」
ふむ、何やらのっぴきならないトラブルが起きたみたいだね。
「カロックさん、リレッタちゃん。どうしたんですか?」
「「っ!? レクスさん!?」」
僕が後ろから声をかけると、二人がビクリと跳ねる様にこちらを振り返って言った。
話に夢中だったみたいだし、驚かせちゃったかな?
「何か慌てているみたいですけど、何があったんですか?」
僕が尋ねると、二人は言って良いものかと逡巡する様子を見せる。
けれどすぐにリレッタちゃんが意を決した目となって事情を説明してくれた。
「実は私達の食材が盗まれたんです!」
「盗まれた!?」
これはまた厄介なトラブルが起きたみたいだね。
「実は大会用の食材を宿の食材庫に預けておいたんですけど、今朝になって食材が盗まれていた事が分かったんです」
「ねぇ、食材って宿に預けるものなの?」
「ああ、遠方の町から来る料理人は食材の保存方法が限られるからな。大抵は宿が所有する食材庫に預けるんだ。この町の食材庫は氷魔法使いと契約しているから、大きな氷で食材の鮮度を保ってくれて便利なんだ。それに料理大会中のトラブル対策の為に頑丈な鍵で食材を守り、食材を取りだす際は犯罪が行われない様にしっかり宿の人間が現場に立ち会うんだ」
この町での持ち込み食材の扱いを知らない僕達に、カロックさんが詳しく教えてくれた。
「でもおかしいんですよ! 他の料理人の食材はなんともなっていなかったのに、私達の食材だけがひとつ残らず無くなっていたんです!」
よほど悔しかったのか、リレッタちゃんは人目もはばからずに声を荒げる。
「完全に貴方達だけを狙っていたって訳ね」
そうなると怪しいのは次の対戦相手かな? いや、カロックさんは前回の大会で4位に入賞した実力者だ。他の参加者が関わっている可能性も十分にある。早計は禁物だ。
「だから慌てて食材を探し回っていたんだが、昨日まで食材を売っていた筈なのに、どの店も急に売り切れになっちまったんだ」
「普段なら売れ残ってるような食材まで根こそぎよ! 絶対私達に食材を手に入れさせない為の嫌がらせよ!」
それはかなり徹底してるね。
こうなると衝動的な単独犯の行動とは思えない。
よほどカロックさん達の腕が目障りだとみえる。
「だが食材が無いんじゃもうどうしようもない。今から食材を狩りに行く時間もありゃしないしな」
とカロックさんは力なく肩を落とす。
確かに試合開始時間はもうすぐだ。
今からじゃ素材を狩りにいく為の移動時間すら確保できないだろう。
「あの、レクスさん!」
と、そこでリレッタちゃんが僕の目をじっと見つめてくる。
「図々しいお願いだとは分かっています。でも他に方法がないんです! お願いします! レクスさんの持っている魔物食材を私達に譲ってください!」
「お、おいリレッタ!?」
慌ててリレッタちゃんを止めようとしたカロックさんだったけど、逆にリレッタちゃんの手に制される。
「お兄ちゃんだって分かってるんでしょ? もうこれしか手が無いって。レクスさん、今は私達の手元にお金は殆どありません。でもお兄ちゃんの実力なら絶対に賞金が手に入るところまで食い込めます! だから賞金の後払いで食材を売ってください! 万が一賞金が手に入らなかった場合は働いてお返しします!」
「いいですよ」
「図々しいお願いなのは重々承知です。でもこんな卑怯な方法で負けるなんて絶対諦めきれな……え?」
「食材、お譲りしますよ」
「ええーっ!? ホントに良いのぉーっ!?」
「ほ、ホントに良いのか!? 俺達はほぼ文無しなんだぞ!?」
リレッタちゃんだけでなく、カロックさんも本当に信じて良いのかと目を丸くしている。
「はい、どのみち売るか自分達で消費するかのつもりでしたから構いませんよ。その売る先がカロックさん達に変わっただけです。ただ……」
「「ただ……?」」
僕の焦らしに二人がごくりと息を飲む。
「僕が用意した食材を使って大会中の料理を作ってくれるのなら、雇用料として何割か安くお譲りしてもいいと考えています」
と、身構えた二人が考えていた事とは真逆の提案をしてみる。
「「え、ええ!?」」
いやだって、せっかく腕のいい料理人と知り合ったんだから、その腕を堪能したいじゃない。それにいくら料理で有名な町とはいえ、これだけ沢山の店があったらハズれのお店の一つや二つあってもおかしくない。だったら味の保証されている料理人の料理を食べた方がいいよね?
「は、はぁぁー、ビックリしたぁ。もっととんでもない要求をされるかと思ってた」
「お、俺も……ああいや何でもない」
そんな無茶な要求はしないよ。
「でもよかったぁー。いざとなったら私を担保にしてでも売って貰おうと思ってたから……あっ」
「お、お前そんな事考えてたのか!?」
気が緩んだからか、リレッタちゃんがとんでもない事を口にし、その内容にカロックさんが目を白黒させる。
「だって私に出来る事はお手伝いくらいなんだもん。このくらいしないとお兄ちゃんの足手まといになっちゃうから……」
「馬鹿な事を言うな! 俺はお前を犠牲にする事なんて望んでいない!」
ホント、そんな事になる前に僕達が通りがかってよかったよ。
「まったくお前って奴は。世の中この人達みたいな善人ばかりじゃないんだぞ。父さん達みたいな目に遭ったらどうするんだ」
「それは……」
ご両親の名前が出た途端、リレッタちゃんの顔が曇る。
いやいや、僕達もそんな良い人なんかじゃないですよ?
それにしても何かご両親の件で不幸があったのかな……?
僕達が首を傾げていると、カロックさんがハッとなってあわてて誤魔化しだす。
「ああすまない。こっちの話だ。気にしないでくれ」
この慌てよう。どうやらかなりナーバスな話題のようだね。これは他人が気軽に踏み込んでいい内容じゃないみたいだ。
「ええっと……そうそう、丁度面白い食材が手に入ったんで、是非カロックさんに調理して貰いたいなとも思ってたんですよ。僕達だと大した料理に出来ませんし、またカロックさんに頼めそうで良かったです」
「へぇ、そこまで言うとは興味深いな。一体何を手に入れたんだ?」
僕が話題を振ると、カロックさんもこれ幸いと話に乗っかって来る。
「い、言っておくけど、お兄ちゃんを驚かすには生半可な食材じゃ力不足よ。何せお兄ちゃんは色んな魔物食材を調理してきたんだから。ま、お陰でいつまでたってもお店を持てないんだけどね」
そしてリレッタちゃんも気を取り直したのか、僕達の会話に加わって来た。
ただその姿は不安定になった自分の心を誤魔化す為の虚勢である事が透けて見える。
それでも虚勢を張れるだけマシってものかな。
しかしうーん、この流れで実は単なる湖の主でーすって言うのはハードルが高くなっちゃったな。
「あんまり期待しないでください。ただの湖の主ですから」
「ほう、湖のぬ……主? まさか町の傍にある湖の主……か?」
「やだなぁお兄ちゃん、パガライ湖の主って言ったら町の教会よりもでかいって有名じゃない。いくらなんでもそんなの釣れないって」
「そ、そうだよな。ははっ、つい身近な湖の事かと……」
「あ、はい。そこの湖の主を釣りあげたんです」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
「え!? 嘘!? あの主を!? ホントに!?」
しまった、これは僕の予想以上にショボイものだったのかもしれない。
ここは何か他の話題でお茶を濁そう。
「そうそう、薬の調合用に採取しておいた走りドラゴラも提供しますよ」
「いやそうじゃなくて、いやありがたいんだけど今はそうじゃない!」
「「主ってどういうことーっ!?」」
妹(‘ω’)ノ「お兄ちゃんの魔物食材の調理歴はそんじょそこらの料理人とはわけが違うよ! 何せお金が入った傍から食材に換えていったからね!」
リリエラ_(:3 」∠)_「じゃあドラゴ……」
妹_:(´д`」∠):_「すんません、ドラゴン素材は無しでひとつ」
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