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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔物料理大会編

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第295話 必要とするもの

作者_(:3 」∠)_「ご報告ですー! 書籍化が決定した『錬金術? いいえ、アイテム合成です!」出版社さんの公開許可がおりましたー! こちらはKADOKAWAさんからの出版となります! 」

ヘルニー_(┐「ε:)_「既に別作品の更新の時に聞いた人達も居ると思うけど、まぁ情報の周知の為という事で一つよろしく」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「近々発売日やレーベルなどの情報も公開されますので追加で公開許可が下り次第順次ご報告いたしますね!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 裏通りで良質なパーツが残っていたジャンク品を買い漁った僕は、さっそく宿に戻ると新装備の構想を行う事にした。


「私に出来る事もなさそうだし。魔物でも狩ってくるわ」


 僕が新しい装備を作る間、リリエラさんは単独行動する事にしたらしい。


「ギルドで依頼を受けるんですか?」


「ううん、王都に帰った時に素材を売るつもりよ。幸いレクスさんの魔法の袋のお陰で腐ったりしないからね」


 そういって腰の魔法の袋をパンと叩くリリエラさん。

 成程、別の町で買い取りしてもらうのなら、Aランク冒険者ってバレないもんね。


 ちなみにリリエラさんをはじめ皆に渡した魔法の袋は持ち主にしか中身を取り出せないだけでなく、組み紐を切って盗まれないようにミスリルとゴールデンドラゴンの鱗を混ぜた金属糸を使用しているから、普通の盗人ならまず切られる心配はない。


「冒険者としては目立った方がランクアップや割の良い仕事の斡旋を増やすチャンスなんだけど、面倒な連中に目を付けられるのは勘弁してほしいものね」


 うん、大剣士ライガードの冒険でもライガードの名が売れて来た事で悪い事を考える金持ちや貴族がライガートにちょっかいをかけてくるエピソードがあったもんね。

 尤もその金持ちや貴族はライガードの反撃で皆手痛いしっぺ返しを喰らうんだけどね。


「キュウ!」


「あら、貴方も来るの?」


「キュ!」


 どうやらモフモフもリリエラさんと一緒に行くみたいだ。

 リリエラさんの手伝いをしてくれるなら運動不足解消に丁度良いけど、つまみ食いし過ぎないといいなぁ。

 あんまり太るようなら魔物野菜を使ったダイエットを本格的に考えないと。


「キュッ!?」


 突然モフモフが青い顔になって周囲をキョロキョロと見回し出す。

 はて、どうかしたのかな?

 ともあれ、リリエラさん達が出かけたので僕は部屋の床に素材を並べて何を作るか考える。


「と言っても、手に入れたのはマジックアイテムの内部に使う素材ばかりで刀身なんかの本体素材は無いんだよね」


 となると本格的な武具の製造には向かない。

 でもせっかく良いパーツが手に入ったんだから、日常品なんかのありきたりな物を作るのもちょっと違う。


「何を作るか迷った時は、今欲しいものを作るべきだって言ってたなぁ」


 僕は前世や前々世の知り合いの鍛冶師やマジックアイテム技師達の言葉を思いだす。

 コレを作りたい! ってものが無い時は、不便を感じている事の為に作ると良いものが出来やすいって言われたんだよね。


「今欲しいもの、不便を感じているものか……」


 今の僕は異国に来ている。

 この町では魔物食材を使った料理大会が開催されている。


「魔物食材か……」


 そこで僕は、ふとある不足に気付く。


「なる程、確かにこれなら作るもののイメージが明確になるね」


 作りたいものが決まった僕はすぐに構想を練り始める。

 そして図面が形になったところで作業を開始した。


「メインの素材になる物は見つからなかったから……あっ、そうだ! この間手に入れたソードディメドランの変異種の剣ヒレを使おう!」


 丁度良い素材があった事を思い出した僕は、さっそくソレを取り出してメインの素材として使う事にする。


「連結部は龍峰で手に入れたゴールデンドラゴンの素材を軸にして……ああそうだ。東国で手に入れたボルカニックタートルの甲羅を砕いて混ぜよう」


 一流の素材ではないものの、加工次第ではそれなりに使えそうな素材を混ぜたり、表面を焼きつけたりして加工をしてゆく。


 そこにジャンク品のマジックアイテムから取り出した魔法石や術式回路などを組み直して取り付ける。

 劣化している部分は他のジャンク品の無事な部品を移植して、壊れて使い物にならない部品は解体して素材として抽出し、無事な部品を補修して新品同様にメンテナンスをした。



「よし、完成!!」


 うん、なかなか良い出来だね!

 ソードディメドランの変異種の剣ヒレも意外と良い素材だったよ。


「余った素材でおまけもいくつか作れたし、後は実践かな」


 と思ったんだけど、製作に時間をかけ過ぎた所為でもう夕方か。

 実験は明日にした方が良さそうだね。


「ただいまー」


「キュウー!」


 そんな事を考えていたら、リリエラさん達が帰って来た。


「お帰りなさい。どうでしたか?」


「大量だったわ。王都の方では手に入らない魔物の素材が沢山手に入ったわよ」


「キュキュウ!!」


 リリエラさんもモフモフも満足気なので、良い感じに素材を確保できたみたいだね。


「レクスさんの方はどうだったの? 何か作るって言ってたけど」


「ええ、ついさっき完成したので、明日は試しに使ってみるつもりです。ああそうだ、リリエラさんどこか大きい魔物が出る場所を知りませんか?」


 折角なので、魔物狩りをしてきたリリエラさんに尋ねてみる事にする。

 あてずっぽうで探すよりも実際に現地に行った人に聞いた方が早いからね。


「そうねぇ、それなりの大物はいたけれど、レクスさんが望むような大きい魔物はいなかったわ。でもソレが居るかもしれない場所の情報は冒険者ギルドで聞いたわ。そこでよければ案内するわよ」


「ええ、ぜひお願いします!」


 ◆


「着いたわ、ここよ」


 翌朝、リリエラさんとやって来たのは大きな湖だった。

 

「大きい湖ですね」


 以前行った内大海とまではいかないものの、それでも結構な大きさの湖だ。


「この湖は沢山の食材魔物が住んでいるんですって。で、その底には主と呼ばれる巨大な魔物が住んでいるらしいわ。多分ソイツならレクスさんのご希望の大きさだと思うわよ」


 へぇ、湖の主か。どんなヤツが居るんだろう?


「よーし、それじゃあさっそく主釣りだ!」


「キュウ!!」


 僕は湖全体に探査魔法を放ち、一番大きな反応を探す。


「居た! ここから南東に2キロの位置! 意外と近いぞ!」


「え!? もう居場所が分かったの!?」


「ええ、後は釣り上げるだけです!」


「そういえば釣るってどうやって? 魔物の主って言うからには相当に大きいと思うんだけど、釣竿で釣れるの?」


「いえ、釣竿は使いません」


 前世の知り合いなら特注の釣竿と糸で釣っていただろうけどね。

 飛行魔法で目的の魔物が居る位置の上空近くにやって来た僕は、湖に向けて魔法を放つ。


「メイルシュトロームバースト!!」


「ええっ!?」


 すると湖の一角がグルグルと回りだし、巨大な大渦巻きが出来上がる。

 そして渦巻の一番底に巨大な生き物の背びれが見えた。


「居た! 弾き飛ばせ!!」


 次の瞬間、ドポォーンという音と共に渦巻の底に居た生き物が天高く飛びあがった。


「と、飛んだぁーっ!?」


 これぞ渦流射出魔法メイルシュトロームバースト。

 水面に巨大な渦巻きを生み出し、渦の内側に捕えた獲物を空高く射出して引きずりだし、かつ身動きを取れなくする魔法だ。


「よし、試し切りだ!」


 僕は魔法の袋から新しく作ったアイテムを取り出す。


「え? 何? 剣?」


 そう、僕が取り出したのは一本の刃だった。

 ただしその刃には鍔が無く、シンプルに刀身のみだ。

 刀身の中央には細長い六角形の宝石が取り付けられていて、そこを中心に金のラインが放射状に延びていた。

 でもそれはただの飾りじゃない。


「出ろ! スクワイヤエッジ!!」


 僕の呼びかけに応じるように刀身の中央の宝石が赤く輝くと、剣の周囲に何本もの刃が姿を現した。


「え!? 剣が増えた」


 増えた刃は形状こそ違うものの、僕の構えた刃と同じく鍔がない。

 そして中央に緑の宝石が埋め込まれ、やはり金のラインが放射状に延びていた。


「いけ! スクワイヤエッジ!!」


 僕の命令を受け、スクワイヤエッジが宙に飛びあがったままの主魔物に向かってゆく。

 そして刀身の角度を変え、一斉に主魔物の表面に取りつくと、その鱗を滑るように削り取り始めた。


「え?」


 背ビレ、胸ビレ、腹ビレ、尻ビレの鱗が削れて水面に落ちてゆく。

 

 よし、次だ!


「重なれ! グランドリッパー!!」


 僕の命令を受けたスクワイヤエッジが手にした刃に連結し、巨大な一本の刃となった。


「一つになった!?」


「行くぞ! オープンスライサー!!」


 刃に魔力を込めると、全ての刃に埋め込まれた宝石が輝き、その光が刀身を飾る金のラインへと流れ込む。

 そして全ての刃の宝石と金のラインが光で繋がると、一つに連結していた刀身が再び分離する。

 ただし刀身と刀身の間は薄い魔力の膜で連結されており、分離していながら一つの塊のようでもあった。


 僕は刀身を構えると、主魔物のお腹に浅く切っ先を突き込み、内臓を傷つけないように刃を滑らせる。


「ハイドロプレッシャー!」


 そして高圧水撃魔法を切り口に流し込んで内臓を外に吹き飛ばす。


「ハァッ!!」


 更に両方のエラに刃を差し込んで頭部を切断。

 残るは丸々と太った巨大な胴体のみ。


「これで最後だ! トライスライサー!!」


 巨大な刃全体を使って肉を頭側から尻尾側まで滑るように切ってゆく。

 その際中の骨に刃をぶつけないように注意だ。

 刃は骨ギリギリまで肉を削ぎ落とし、肉、骨、肉の三つの塊が完成した。


「よし! 解体完了!!」


 最後は解体した主魔物の骨と肉を魔法の袋に収納して完了だ。


「ふぅ、やっぱり大きな刀身だと解体が楽だなぁ」


「かい……たい?」


 リリエラさんが首を傾げながらオウム返しに尋ねてくる。


「ええ。解体包丁です」


「え……っと、もしかしてその剣の事?」


「剣じゃないですよ。これは包丁です」


 どうやらリリエラさんはこれを剣と勘違いしていたみたいだ。

 でもそうじゃない。これは包丁なんだよ。


「これは巨大な魔物を解体するために作った連結連動大包丁グランドナイフです」


「れんけつれんどうだいほうちょうグランドナイフ……」


 そう、巨大な魔物の解体をするのに普通の刃物って不便なんだよね。

 だって人間が使う解体ナイフに対して、魔物の大きさが合わないんだから。

 今までは魔力を纏った魔力刃で大雑把に解体してから小さく切ったものを改めて解体していたけれど、魔力刃の切り口ってやっぱり微妙なんだよね。


「このグランドナイフは、補助ナイフであるスクワイヤエッジを操作する事で複数の作業を同時に行えます。更に連結する事で巨大解体包丁グランドリッパーになって大きな肉を綺麗に切る事ができるんです」


 そう、分離合体する事で獲物の大きさに合わせたサイズの刃に出来るんだ。

 これで必要に応じて大きな魔物を解体する事が出来るようになったのさ。


「刃は様々な連結が出来るので、大きく切れる細長い刃から横に連結して分厚くする事で固い物を切る事も出来るんですよ」」


 僕はグランドナイフを様々な形態で連結させて見せる。

 ちなみにメインのグランドナイフには魔法の袋と同じ機能が内蔵されていて、スクワイヤエッジはその中に収納されているんだ。


「そして魔力膜を展開して大きく広げた超巨大包丁形態がこのオープンスライサーです。この状態だと魔力刃を薄く薄く展開できるので、魔力刃特有の切り口の粗さを解消できるんです!」


「へ、へぇ、そうなんだ……っていうか包丁ってそういうものだっけ?」


 うん、なかなか良い物が出来たと自分でも思うよ。


「あとはもっと良い鉱石があれば更に切れ味が良くなるんですけど、まぁ手持ちじゃこれが限界ですね」


「まだ強くなるんだソレ……」


 切り口が悪いと食材の味が落ちるからね。

 カロックさん達の野菜魔物料理を食べて改めて食材の下準備の大切さを思い出したよ!

主魔物_:(´д`」∠):_「名前すら知られずに三枚に下ろされました」

モフモフ_Σ(:3 」∠)_「モグモグ、ヒレ美味しい」

主魔物_:(´д`」∠):_「食べないで!」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや解体するのは良いけど誰が料理するのかな? これは料理大会に参加する兄弟の主材料になるのかな?
[良い点] うん、単純な最強武器とかは作らないと思ってましたが随分愉快なアルティメット便利道具ができましたねぇ(・∀・;) ギミックの見た目的にジャイロ君が欲しがりそう!
[気になる点] 今回の冒険は料理大会がメインなだけに 某美食屋的な展開になりそうですね…
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