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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔物料理大会編

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第294話 料理の町と路地裏

作者_:(´д`」∠):_「急に寒くなってきました」

ヘルニー(:3)レ∠)_「12月が来たって感じだわー」

ヘイフィー(┐「ε:)_「10月くらいの気温でお願いします」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「ここがパガオイラースの町だ」


 森での採取を終えた僕達は、無事パガオイラースの町へとやって来た。

 料理大会が開かれると言うだけあって人の数は多く、そこかしこで食材が売られている。

 そんな訳だから町中からおいしそうな匂いがしてきて、モフモフがどこかに行ってしまわないようにするのに大変だ。

 首輪とリードでも用意した方がいいかなぁ?


「無事着いて良かったー。てっきり森で襲われるかと思ってたのにね」


「確かにな」


「襲われないに越したことはありませんよ」


「それもそうか」


 森の中で襲われなかったと喜ぶカロックさんとリレッタさんを見て、ニッコリとほほ笑む僕とリリエラさん。

 うん、二人には食材採取に専念して欲しかったからね。安心して採取できたのなら何よりだよ。


「それじゃあ俺達は大会の受付に行くよ。二人には本当に世話になった。ありがとう」


「色々とお世話になりました! ありがとうございます!」


「頑張ってくださいねー」


「頑張ってね」


「ああ、最高の料理を作ってみせる!」


 カロックさんが任せろと拳を握る。


「あっ、そうだ。早く宿を取った方が良いですよ。大会の見物客ですぐに宿がいっぱいになりますから」


「なるほど、確かにお祭りの時は人が沢山来ますからね」


 以前天空大陸を探しに行った時もお祭りで泊まる場所が見つからなくて困ったもんなぁ。

 そうして二人と分かれた僕達はまず宿を探すことにした。

 確かにカロックさんが言った通り、宿はなかなか見つからなかったんだけど、ちょっとお高い宿に行ってみたら意外と簡単に部屋を取れたのは良かったよ。

 やっぱり皆お金は節約したいんだね。


「こんな高い宿に泊まれるようになったんだから、Aランクの恩恵様々だわ」


 Bランク冒険者だった頃との生活の違いに戸惑っているらしいリリエラさんはおっかなビックリしながら壁の装飾品を眺める。


「リリエラさんの場合は故郷への仕送りもあったから仕方ありませんよ」


「仕送りは今もしてるんだけど、それでも貯金が出来るだけの収入が出来たのよねぇ。まぁそれについてはAランクの恩恵と言うより……」


 何で僕の顔をじっと見つめているんですか?


「それでこれからどうするの? 料理大会は数日後みたいだけど」


 そうそう、宿の人に聞いたんだけど、料理大会はまず予選から始まって、本大会に出る選手を選出するんだって。

 とても多くの料理人が出るから、実力の足りない人達はここで纏めてふるい落とすんだそうだ。

 以前龍帝の儀で行った予選のバトルロイヤルみたいな感じだね。

 で、その予選が終わるまでまだ数日あるんだとか。


「冒険者ギルドで何か依頼でも受ける? カロックさん達の話を聞く限り、この時期は食材魔物の討伐ばかりだと思うけど」


「いえ、止めておきましょう。僕達が依頼を受けると、この町にSランクとAランクの冒険者が居るとバレてしまいます。そうなると僕達を利用しようとする商人達が殺到してきますから」


「あー、そう言えばそうだったわね。Sランク冒険者が面倒がって参加を拒否するレベルで勧誘が鬱陶しいんだっけ」


「なので本来の目的通り、素材探しに行こうと思います」


 ◆リリエラ◆


 町に繰り出した私達は、さっそく素材を売っている店にやってきたんだけど……


「うーん、イマイチだなぁ」


 どうやらこのお店にはレクスさんのお眼鏡にかなう品は無かったみたいね。


「おいおい兄ちゃん、ウチで取り扱ってるのは最高品質の品だぜ? これ以上の品は他じゃ手に入らねぇよ」


 とお店の人は言うけれど、正直私には素材の良し悪しはわかんないのよね。

 でもレクスさんがそう言うのだから実際この店の素材は良くないんでしょ。

 そんな訳で他の店を見に行く私達。


「ここはどうだったの?」


そうやって何軒もの店を入っては出てを繰りかえしたのだけど、レクスさんの満足できる素材は一つも見当たらなかった。


「駄目ですね。どこも似たり寄ったりです」


 うーん、この町はあまり素材の買取りに力を入れてないのかもしれないわね。

 商人の国って言うくらいだし、武具や素材の買取りに力を入れている町は別にあるんじゃないかしら?


 有名な職人や特定の種類の品物を専門に売る大店がある町は、それにまつわる素材が自然と集まるようになるしね。

 代わりにこの町は料理大会をするくらいの町だから食材の買取りに力を入れているんじゃないかしら?

 まぁ単純にレクスさんの求める素材の水準が高すぎるだけの気もするけど……

「この町は余り武具関係の素材の需要が無い街なんじゃない? 近場の町に行って相場の違いを確認した方がいいかもよ。料理大会までまだ何日かある訳だし」


 これが徒歩や馬車なら移動時間を気にしないといけないけど、幸いにも私達には飛行魔法がある。

 あれホントズルいのよね。空を飛ぶから曲がりくねった道や地面の状態を気にしなくて良いし、大抵の魔物も無視して移動できるんだから。


「そうですね。他の町も調べて……」


「どうしたのレクスさん?」


 と、会話の途中でレクスさんが周囲をキョロキョロと見回す。

 何かあったのかしら?


「えっと、モフモフは?」


「え? あっ、いつの間に!?」


 気が付くとモフモフの姿が無かった。

 まさか逸れたの!?

 参ったわね。あの小さい体じゃ探すのは骨よ。

 なによりアイツの性格を考えるとどんな事件を起こすか分かったものじゃない。

 すぐに探そうとレクスさんを見ると、何故か彼は目を瞑って静かにたたずんでいた。


「あっちからモフモフの反応がします」


 どんな手品を使ったのか、レクスさんは迷いなくモフモフが居る方向を指差した。

 そして言われるままにその方向に向かうと、本当にモフモフの姿を発見する。


「良かった、無事だったね。全く心配したんだぞ?」


「キュ?」


 けれど当のモフモフは私達の心配など知った事ではないらしく、何々と興味深げに首をひねっていた。

 やれやれ、コイツは気楽なもんね。


「お前は貴重な未知の魔物の赤ちゃんなんだから、誘拐には気を付けないといけないんだぞ。タチの悪い魔物コレクターだっているんだからね」


「キュ?」


 いや、その場合心配するのはソイツじゃなくてソイツを攫った悪党の方だと思うわ。


「それはそれとして、ここも商店街なのかな? その割には人通りが微妙だけど……」


 見ればレクスさんの言う通り、露店が並んでいる割には人通りが微妙な通りだった。

 けれどその光景を見れば、人通りが少ない理由も明らかだった。

 道端には地面に布を敷いただけの粗末な露店が並んでいて、売り物も訳の分からないモノばかり。正直あまり真っ当なお店には見えない。


「へー、こっちは素材じゃくて加工品を売っているんだね」


 けれどレクスさんはそれらの怪しげな品の数々に興味を持ったみたい。

 正直まともな店には見えないんだけどなぁ。


「ちょっと見せて貰って良いですか?」


「ああ、好きに見て行きな。ウチは貴重なマジックアイテムの店だぜ」


 レクスさんが尋ねると、露天の主はニカリと胡散臭い笑みを浮かべて応じる。

 っていうかマジックアイテムって……

「マジックアイテムって、そんな貴重なモノをこんな地べたで売る訳がないでしょ。どうせガラクタよガラクタ」


 本物のマジックアイテムならこんな所で売らずにちゃんとしたお店で売るでしょ。

 間違いないわ。これは完璧にインチキ商品ね。

 

「はははっ、コイツは厳しい。だがこれは遺跡から発掘されたれっきとした本物だぜ」


 どうせ発掘した時から壊れていて使い物にならない本物とかでしょ。

 こんなの買うのはマジックアイテムの研究をしている学者や研究者の魔法使いくらいだけど、壊れているって体で適当に作ったガラクタを売る質の悪い連中もいるから、学者達もちゃんと正規のルートでしか買わないのよね。


 買っちゃうのはそういう事情を知らない田舎者の研究者だって、昔臨時パーティを組んだ魔法使いが言ってたっけ。

 とはいえ、そんなのレクスさんに通じる訳無いし、すぐにガラクタか偽物って見抜くで……


「ホントだ。良い品が沢山ありますね」


「えっ?」


 嘘!? まさか本物なの!?

 でもどうみてもヘコんでるのとかモゲてるのとかあるんだけど!?


「これ、お幾らなんですか?」


 しかも買う気なの!?


「ええと、あー、ここら辺は金貨5枚だな!」


「はぁっ!? んな訳ないでしょ! これとかどう見ても壊れて……」


「安っ! 全部買います!」


「「はぁっ!?」」


「ちょっ!? 本気で言ってるのレクスさん!?」


「マジかよ兄ちゃん!? ホントに全部買ってくれるのかよ!?」


 っていうか何でアンタまで驚いてるのよ!?


「はい。全部買うのですこしおまけしてください」


「あー……。それじゃあ二つタダにしてやるよ」


「二つも!? ありがとうございます!」


 嬉しそうにそう言うと、レクスさんは金貨を取り出して店主に渡す。

 本気でコレを買うの……!?


「マジで買っちまった……」


 だから何でアンタが驚いてんのよ。

 困惑している私達に反し、レクスさんは予想外に良い買い物が出来たとばかりにホクホクとした顔で荷物を魔法の袋に収納している。


「ねぇレクスさん、こんなモノ買ってどうするの? どう見ても……」


 ガラクタじゃないと言い切る事は出来なかった。


「なぁ兄ちゃん! ウチの品も見てかないか! 良い品があるぜ!」


「俺の店の商品も見てってくれよ! たくさん買ってくれたらまけてやるからさ!」


 まるでレクスさんが荷物を仕舞い終えるのを待っていたとばかりのタイミングで他の露天の主達が殺到してきたから。


「本当ですか? じゃあちょっと見せて貰いますね」


 そしてレクスさんはホイホイと他の露天に付いていく。


「わぁ、本当に良い品だ! ここからここまで全部下さい!」


「「「おおおおっっ!?」」」


 そしてレクスさんのまとめ買い発言が飛ぶ度に通りに歓声が上がる。


「兄ちゃんウチの品も見てってくれよ!」


「ええと、コレとコレだけください。他はいいです」


「なんだよ、向こうの奴は全部買ったじゃねぇか」


 買ってもらえるだけでも御の字でしょうに図々しい爺さんね。

 これなんかもう完全に真っ二つになってるじゃない。

 見た感じ鉄って感じでもないし、鉄屑として鋳溶かすこともできないでしょ。


「他の商品は欲しい品じゃなかったので」


 さすがに何でも買う訳じゃなくてちょっとだけ安心したわ。


「ちっ、まぁ良いや。一つ金貨20枚だ」


 は、はぁぁぁぁ!? これを金貨20枚!? 頭おかしいんじゃないの!? レクスさんが何でも買うからって調子に乗ってんでしょ!


「バ、バカにしてんの!? そんな金払う訳……」


「うわ安い! ありがとうおじさん!!」


「「はぁー!?」」


 にも拘わらず、レクスさんは金貨20枚で安いと言い出した。

 本当に何を考えてるのよーっ!?


「マジかよ。子供でも騙せねぇようなゴーツクの爺さんのガラクタを買いやがったぜ」


「しかも二つも買うとか正気かよ……金貨40枚だぞ? 夢でも見てんのか俺達?」


 その信じられない光景を見た露店の店主達がゴクリと喉を鳴らす。

 その眼差しはたったひと欠片の餌を見つけた飢えた獣のようだった。


「「「俺達の店の商品も見てってくれ!!」」」


「いやー、良い買い物をしました」


 結局、通りの露天の店で売っていた品物の大半を購入して満面の笑みを浮かべるレクスさんと私は宿へ向かっていた。


「……ねぇレクスさん」


 どうにも納得できない思いが残っていた私は、思い切ってレクスさんに尋ねる。


「はい、何ですか?」


「本気で良い買い物をしたと思ってるの?」


 レクスさんの事だから何か意味があって買ったんだとは思うけど、それでもどう見てもガラクタとしか思えない品の山は疑わずにはいられない。

 例えば売り物が折れた魔剣とかだったら貴重な金属を使っている可能性もあるから分からないでもない。

 もしかしたら中に貴重なモノが入っているのかもしれない。


 でもそれらのガラクタは外側しか見えないから、中身の確認もできない。

 表面は金属とは思えない素材を使っている品も多く、素材として利用できるようにも思えなかった。

 一体レクスさんは何を考えてこれらの品が良い物だと思ったの!?


「ええ、掘り出し物の山でしたよ!」


 にも拘わらず、レクスさんは確信をもってそう答えた。


「っ! でもどう見てもガラク……」


「ほら、これを見てくださいよ!」


 ガラクタじゃない、そう言おうとした私の目の前で、レクスさんは取り出したガラクタをバキリと壊す……って壊したぁーっ!?


「はぁぁぁぁぁっ!?」


 ええっ!? いきなり何してるの!? 使えると思ったから買ったんでしょ!?


「これ! 貴重な配線用の魔法金属が劣化せずに残ってるんです!」


「……え?」


 レクスさんは壊したマジックアイテムの中身を嬉しそうに見せながら語る。


「それにこっちも。魔術加工された宝石や状態保存の魔法が強くかけられていて殆ど劣化してない魔法基板も!」


「えっと、もしかしなくても……中身が欲しくて買ったの?」


「はい! あの露天の商品は再利用可能な素材で溢れた掘り出し物の山でしたよ!!」


ホントに中身が欲しかったの? でも中なんて見えなかったでしょ?

それとも中身が使える可能性を考えて買ったの? そんなバクチで金貨何十枚も支払ったの!?


「いやー、露店売りだから透過魔法を使った中身の確認防止をされていなくて良かったですよ。お店だと売り物のマジックアイテムを買いもせずに構造解析をされない様に対策が練られていますからね。おかげで中身の状態の良いマジックアイテムを大量に仕入れる事が出来ましたよ!」


「へぇ、中身を見る魔法があるんだぁ……」


 ああ、だから全部買った訳じゃないのね。

 ちゃんと見極めていたんだぁ……


「いやぁ、どれも壊れてはいたものの、壊れているのは一部の消耗品ばかりで、ちょっと手を加えれば直るモノや流用できる希少部品の多くが無事で良かったです。とくにこれなんてまともに素材として購入したらこの100倍じゃ利かないような素材もありましたから! 希少素材保護の為にかけられた状態保存魔法様々様ですね!」


 あー、それさっきゴーツクって呼ばれてた爺さんの露天で売ってた真っ二つのガラクタだわー。

 へぇー、これがお値段100倍かー。それは超お得よねー。


「……ははっ、そういう事」


 うん、納得した。納得したけどね……


「次からはちゃんと事情を説明してぇーっ!!」

リリエラ_:(´д`」∠):_「事前説明……求む……」

モフモフΣ(:3)レ∠)_「ひさびさのヒロインの絶叫頂きました」

ゴーツク(┐「ε:)_「ヒュー儲かったぁー!」

露天の店主達|^・ω・)/「おっしゃ、またガラクタ仕入れるぞー!」

モフモフΣ(:3)レ∠)_「そしてお前たちはその金でガラクタ以外を仕入れるという考えには至らんのか……」


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― 新着の感想 ―
[一言] 怪しい露天もレクスにかかれば アキバのジャンクショップか…。
[気になる点] リリエラがいつまで仕送りが〜と言ってるのですか? ドラゴンの素材を10体以上売りましたよね? 金貨一万枚有れば一生遊んで暮らせると有りましたがそれ以上稼いでいますよね? 今回のレクスが…
[良い点] 今までレクス君は「ろくな素材が無い」って言いながらトンデモアイテム量産してましたが、満足するような素材を手に入れて、これから何をこさえるんでしょうねぇ(・∀・`)
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