第293話 実食、野菜魔物料理!
作者_:(´д`」∠):_「もうすぐ11月が終わるだと……馬鹿な!?」
ヘルニー_(:3 」∠)_「おかしい、バイトに明け暮れて箱を開けていただけなのに」
ヘイフィー_(┐「ε:)_「それが駄目だったんじゃないかな?」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「それじゃあさっそく下ごしらえをするか」
十分な野菜魔物を採取した事で、カロックさん達が野菜魔物料理を披露してくれることになったんだ。
「でもモフモフがあそこまで嫌がっていたモノが食べられるの?」
ついさっき片っ端から野菜魔物を食べようとして酷い目に遭っていたモフモフの姿を思い出したリリエラさんが不安そうな眼差しを調理中の野菜魔物に向ける。
「そう言うと思っていたよ。試しにこれを食べてみるといい」
そう言ってカロックさんは調理中だった野菜魔物の切れ端を差し出す。
「え? このままだと凄く不味いんじゃないの?」
「騙されたと思って食べてみな」
「……じゃあちょっとだけ」
自信満々なカロックさんの笑みに押されてリリエラさんが野菜の切れ端を受け取り口にする。すると……
「っっっっ!?」
物凄い顔になったリリエラさんが口を押えて森の奥に駆けて行った。
そして暫くするとゲッソリとした顔で戻って来たリリエラさんは一言。
「騙された」
……駄目じゃん。
「はははははっ、すまんすまん。試して貰った通り、野菜魔物はそのままだとえぐみがかなり強いんだ」
「それ、口で言うだけで良かったんじゃないの?」
恨みがましい眼差しでリリエラさんがカロックさんを睨む。
「まぁな。だがそのエグ味のお陰で、強い魔物も野菜魔物を食べようとしないんだ」
「ああ。毒を持った魔物と同じなんですね」
そう考えると野菜魔物達が過剰にエグ味を持っている理由も分かるってものだよね。
「他にもっと美味い魔物が居るのにわざわざ不味い魔物を食べるヤツも居ないからな」
「キュウキュウ」
モフモフも全く以ってその通りとばかりに頷いている。
「だから野菜魔物の調理はエグ味を取る事が最も重要なんだよ! お兄ちゃんが調理に専念している間に私が野菜のエグ味を取る為の下処理をしているの!」
とはリレッタちゃんの言葉だ。
「野菜魔物はエグ味を取る為に複数の工程を必要とするんだ。しかもその工程の中には鮮度の関係で調理の最中に行わないといけないものもある。一人で野菜魔物を調理するのは至難の業なんだよ」
「成る程、だから野菜魔物を調理する人もお店も少ないんですね」
単純に調理をする人間の数が増えるから従業員の多い料理店ならともかく、一般の家庭で魔物料理を調理するのは難しいだろうね。
そしてそれは普通の料理屋も同じだ。
同じ人数分の料理を作るにしても、普通の食材で作った方が一度に作れる量も多く手間が少なく済むからね。
必然的に取り扱うのは一部の高級料理店か魔物料理専門店という事になるんだろう。
それが野菜魔物料理が流行らない理由でもあるんだろね。
「この食材はトラッププラントを燃やして出来た灰を溶かした汁に浸して、こっちの食材は塩2:魔物肉の肉汁3:水2の割合で混ぜたタレに浸して、こっちの食材は石の上にさかさまに立てて……」
リレッタちゃんは淀みない手つきで食材のアク取りを次々に進めていく。なんか一部奇妙な工程があったけど気にしないことにしよう。
「リレッタ、走りドラゴラのアク抜きは終わったか!?」
「うん、大丈夫!」
そしてカロックさんの呼びかけに応じてリレッタちゃんがアク抜きを終えた食材をカロックさんに差し出す。
するとカロックさんは猛烈な勢いで受け取った走りドラゴラを輪切りにしてゆく。
そしてわずかに沸騰を始めたお湯の中にそれらを入れてゆく。
そうやって調理を進めて行くと、次第に美味しそうな匂いが周囲に漂ってくる。
「良い匂い。あの野菜魔物だったものからしてくるとは思えない香りだわ」
ちょっと複雑そうな顔をしながらもそう言わざるを得なかったリリエラさんの気持ちも分かる。それ程までに美味しそうな匂いが周囲に満ちていたんだから。
「よし出来た!」
そして遂にカロックさん達の野菜魔物料理が出来上がる。
「さぁ、暖かいうちに召し上がれ!」
簡易テーブルの上には所狭しと野菜魔物の料理が並べられていた。
「うむむ……」
「キュキュウ……」
けれどつい先ほど生の野菜魔物に酷い目に遭ったリリエラさんとモフモフは美味しそうな匂いがするにもかかわらず料理に手を付けようとはしなかった。
まぁ警戒しちゃう気持ちは分かるよ。
なのでまずは僕から料理を食べる事にした。
「いっただっきまーす」
パクリと僕は野菜魔物料理を口の中に放り込む。すると……
「……っっっっ!?」
一瞬で口の中に野菜魔物の味が広がり、僕は言葉を詰まらせる。
「大丈夫レクスさん!?」
「ギュフッ、キュウ~ン?」
リリエラさんとモフモフが心配そうに僕を見つめてくる。
けれど僕はそれどころじゃなかった。というのも……
「う、美味ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっっ!!」
そう、久々の野菜魔物料理の美味さに夢中になっていたからだ。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「ウュゥゥゥゥゥウゥぅ!?」
そして口の中の料理を喉の奥に流し込んだことでようやくリリエラさんとモフモフが驚愕の言葉を発した事に気付く。
「どうだ俺の料理は?」
「はい! とても美味しいです!」
僕も昔の知り合いに野菜魔物料理の調理法を仕込まれた事があったけど、やっぱり一人だとアク抜きのタイミングがシビアな食材の調理は難しいんだよね。
そこを行くと二人は流石兄弟。タイミングバッチリで難しい野菜魔物の調理をこなしている。
プロの料理人って凄いなぁ。
「はははっ、そう言って貰えてうれしいぜ!」
「ほ、ホントにコレが美味しいの?」
「キュウ~ン?」
リリエラさんとモフモフはよほどさっきの事がショックだったのか、未だに料理に手を付けようとしていなかった。
「本当に美味しいですよ。リリエラさんが食べないなら僕が全部食べちゃいますよ?」
「うぐ……た、食べるわよ! 食べればいいんでしょ!!」
目の前で美味しそうに食べる姿に我慢が出来なかったのか、遂にリリエラさんが料理に手を付けた。
「あ~…………」
「リリエラさん?」
「わ、分かってるわよ! くっ……え、ええーい!!」
観念したリリエラさんが目をつぶって料理を口に運ぶ。
「…………っっっっ!?」
そして次の瞬間目をカッと見開いた。
「美味し~~いっっ!!」
叫び声を上げたリリエラさんは夢中でテーブルの上の料理を食べだす。
「嘘!? 本当にこれがあの魔物の料理なの!? 完全に別物じゃない!!」
相当に気に入ったのか、リリエラさんはテーブルの料理を喰い尽くさんばかりの勢いだ。
あとは……
「キュ……キュウ」
アイツマジかよって顔をして呆然としているモフモフの背後に近づいた僕は、その体をひょいと持ち上げる。
「キュウ!?」
そして驚いたモフモフの口にカロックさんの野菜魔物料理を強引に放り込んだんだ。
「キュウゥゥゥゥゥッ!?」
「お前もちゃんとご飯食べないとね」
さて、モフモフはどうかな?
「ッッッッッッ!?」
口の中に野菜魔物料理を放り込まれたモフモフは目を丸くして体を痙攣させる。そして……
「キュウゥゥゥゥゥゥゥン!!」
その声が驚きから喜びのトーンへと変化したんだ。
「キュウンキュウン!!」
モフモフは口の中に突っ込まれた料理をすぐさま食べ終えると、リリエラさんから奪わんばかりの勢いでテーブルの上に特攻してゆく。
「ギュウン!」
「あっ! こら! これは私のよ!!」
手にした料理を奪われない様に庇うリリエラさんに対し、お前はもう十分食べただろとばかりに奪い取ろうとするモフモフ。
「キュキュウーン!!」
モフモフもすっかりカロックさんの野菜料理が気に入ったみたいだね。
あの様子なら種族的に野菜が食べられない訳じゃないみたいで良かったよ。
これなら今後は野菜料理を提供しても大丈夫そうだ。
うん、今後モフモフをダイエットさせる時には野菜魔物料理が使えるね。
それにわざとエグ味を残した物を作れば食事量の調整もできるかもだ。
「ギュフン!?」
そんな風にモフモフの今後のダイエット計画を考えていたら、何故かモフモフが悲鳴を上げて顔を上げる。
「あれ? エグ味を抜くの失敗しちゃった? ごめんねモフモフちゃん」
ありゃりゃ、プロでも失敗する事ってあるんだね。
モフモフ_:(´д`」∠):_「突然の悪寒!?」
野菜魔物_(:3 」∠)_「カモーン、寧ろ我々がお前のお口の中にカモーン」
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