第290話 料理の祭典
作者_(:3 」∠)_「ハロウィン短編でも書こうかと思ったけどやめた」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「何故やめたし」
作者ヾ(⌒(_'ω')_「思いついたのが31日の夜で更新予定が1日の朝だったから」
ヘイフィー(∩´∀`)∩「と言う訳で新章『魔物料理大会編』です」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
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「あっ、レクスさん」
依頼を受ける為、冒険者ギルドにやって来た僕に受付のお姉さんが丁度良かったと声をかけて来た。
「どうかしたんですか?」
「実はレクスさん宛てに指名依頼が出ているんですが、お話を聞いていただけませんか?」
そう言って受付のお姉さんはちょっとだけ困ったような表情を見せる。
「もしかして急ぎの依頼ですか?」
「いえ、そういう依頼じゃないんです。ええと、詳しい事情を説明するのでこちらに」
と言って受付のお姉さんは僕をロビーの端っこのテーブルに案内する。
秘密の話をする為の応接室に行かないって事は、本当に重要性の高い依頼じゃないのかな?
「それで指名依頼の内容は?」
「まず依頼人ですが、傭商国家バルクオムガに所属するパガオイラースの町の大会委員会です」
「傭商国家バルクオムガ?」
聞き覚えのない名前の国が出てきたので、はてどこの国だろうと首を傾げてしまう。
「バルクオムガは傭兵と商売が国の主な収益になっている国家です。この国は強い魔物が出る土地が多く、大規模な農業や牧畜には向きません。代わりに各国に通じる大きな街道沿いの町には沢山の商人が住んでいます。またそうした立地なので腕自慢も多く、傭兵や冒険者を生業にする者が多いんですよ」
成る程、特産が無い代わりに物量の流れを活かした商売と、戦力を売りにしている訳だね。
「そしてレクスさんへの依頼内容は魔物料理大会への参加です」
「魔物料理大会?」
これまた商売とも傭兵とも関係ない内容の依頼に首を傾げる。
「はい。魔物食材のみを使った料理大会です」
「へぇ、変わった大会ですね」
魔物食材縛りとは面白い事を考えるなぁ。
「元々は国に巣喰う魔物退治を皆が率先して行うようにと始めた大会みたいですね。だから上位に入賞した料理人には賞金が出るんですよ」
なるほど、強い魔物が多い国なら、それを狩る事に力を入れるのは当然だもんね。
なかなか上手いやり方だと思うよ。
「魔物食材以外で使って良いのは水と塩のみ。野菜や調味料も魔物素材でないといけないそうです」
それは本格的だなぁ。ちょっと興味出て来たかも。
「でも何で僕を? 僕は料理人じゃないですけど?」
そこはちょっと気になったんだよね。
料理大会に誘う為にわざわざ指名依頼なんてするかな? それも雇うのに大金が必要なSランク冒険者を。
「それは……レクスさんがSランク冒険者だからです」
「僕がSランク冒険者だから?」
「バルクオムガの人間は何でも商売に絡めて考える悪癖があるんです。ですからSランク冒険者であるレクスさんが参加すれば、大会の良い客寄せになると思っているのでしょう」
ああ成る程。確かに有名人が出るとなれば皆気になって観に来るだろうからね。
でも見世物に利用されるのは嫌だなぁ。
「他のSランク冒険者の皆さんは出るんですか?」
僕が誘われたという事はロディさん達他のSランク冒険者も呼ばれている可能性が高い。
「我が国周辺で活動されているSランク冒険者は出ませんね。それとバルクオムガのSランク冒険者は本人が大会に参加するか、既に現地の商人や料理人に雇われている筈です」
だからよその国のSランク冒険者に依頼を出したのか。
「ロディさん達は受けなかったんですね」
僕がそう言うと、受付のお姉さんは苦笑いしながら理由を教えてくれた。
「こう言ってはなんですが、バルクオムガ側は先ほど言った通りSランク冒険者のネームバリュー目当てで呼ぶので、それ目当てで近づいてくる人が多いんですよ。中にはSランク冒険者が手に入れたお宝をしつこく売って貰おうと付け回した商人も多いらしく、大会参加の依頼が終わるまで沢山の商人に詰めかけられて酷い目に遭った人もいたそうです。中にはお宝を偽物とすり替えて奪おうとした悪質な商人もいたとか」
うわぁ、それは酷い。
「結果料理大会の依頼を受けるSランク冒険者はいなくなったそうです。正直Sランク冒険者ならこの依頼の報酬よりも遥かに稼げますからね」
確かに、大会に参加するだけで金貨100枚って書いてあるけど、以前に受けた鉱山内部の依頼はもっと報酬が高かったもんね。それに途中で討伐した魔物素材もボーナスになるし、わざわざ受けるメリットはないか。
「そう言った事情があるので、断って頂いても構いません」
うーん、以前龍帝の儀で使ったディランの変装が使えたなら良かったんだけど、Sランク冒険者である事だけを求められているのならそれも使えそうにないね。
何より仕方なく目立つのならそれはそれで仕方ないけど、他人の利益の為に悪目立ちするのは避けたい。
それは僕が最も避けたい事だしね。
「そうですね。ちょっと遠慮したいところです。ただ断った事で何か問題があったりはしませんか?」
大剣士ライガードの冒険でも貴族の依頼を断った所為で目を付けられて厄介なことになったエピソードもあるし、町の運営に関わる人物からの依頼となればそうした危険も考えた方が良いだろう。
「それは大丈夫です。今回の依頼は町の安全に関わるような防衛上重要な強制依頼ではありませんので。それに過去に強引な真似をした商人が居た所為で上位冒険者がこの依頼を忌避している事は向こうも承知しています。上位冒険者を敵に回せば他の上位冒険者も町に寄り付かなくなりますからね。そこまでする度胸はないですよ」
そっか、それなら安心だ。
「わかりました。それじゃあその依頼はお断りします」
「承知しました。先方にはそう答えておきますね」
こうして僕は指名依頼を断ることにした。
「けど傭商国家か。大会はどうでもいいけど、商人が多いというのは気になるね」
沢山の国から様々な品が流れてくるという事は、珍しい素材を沢山取り扱っている可能性が高い。そうなれば今まで作る事が出来なかった強力な装備や便利なマジックアイテムを作る事が出来るだろう。
そう考えるとバルクオムガへの興味がムクムクと湧き上がってくる。
「よし、バルクオムガに行ってみよう!」
こうして僕はバルクオムガに行くことを決めたのだった。
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「魔物とバルクオムガ逃げてー!」
メグリ٩(*´꒳`*)۶「だがレクスからは(物理的に)逃げられない」
ノルブ└(┐Lε:)┘「町ですからねぇ」
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