第288話 蘇る温泉郷
作者_(:3)レ∠)_「ご報告ー! 二度転生9巻の発売日が決定いたしましたー!」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「お待たせ皆ー! 発売日は11/15だよー!」
ヘイフィー_(:3)レ∠)_「あと一か月ですよー」
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突如出現したソードディメドランによく似た魔物を討伐した僕達は、水源周りを再び修理する羽目になっていた。
というのもあの魔物が暴れまわった事で洞窟が崩壊寸前になってしまったからだ。
あらかじめ補強していたお陰で洞窟そのものは無事だったけど、補強してない部分は普通の山肌だったからね。
そう言う訳でこんどこそ崩落しないようにしっかり補修するついでに、洞窟に住んでいたソードディメドラン達の為にゲネルリクス草の群生地に栄養剤を撒いておいた。
更に水源の湯の花も食べれるように水源周りをちょっと弄っておく。
これで突然ゲネルリクス草が激減してもすぐには食事に困る事もなくなるだろう。
「これで水源がソードディメドラン達に独占される事も無くなったね」
「でも結局あの巨大な魔物は何だったのかしら?」
「うーん、たまたま眠っていた変異種だったんじゃないでしょうか? 今まではローエリクサーが地面に染み込んでいたお陰で栄養を補給できていたのが、水源の枯渇で餌を欲して目を覚ました……とか?」
確証も無いからあくまで予想だけどね。
「それにしてもアイツどこに行ったんだろうな?」
話題が切れで皆が無言になったところでジャイロ君がボソリと呟く。
アイツというのはあの女魔人の事だね。
僕も魔人と戦うことなく終わった事についてはちょっと驚いたよ。
あんなに話の分かる魔人は初めてだったからね。
現代の魔人には彼女のように話が通じる魔人が増えているのか、それとも彼女だけが特別な魔人だったのか。
出来ればもう少し話をしたかったね。今の魔人達の社会についてとか……いや、流石にそれは無理かな。
「どうせ見るのに飽きてどこかの温泉にでも入りに行ったんでしょ。随分と温泉の好きな魔人だったし」
ミナさんはそんな事よりも作業が終わったんだからさっさと帰りましょと荷物を纏める。
「そうですね。戦わずに終わったんだから、あの人も無事でしょう」
「だな」
「それじゃあ帰りは水路を補修しながら帰りましょうか」
「「「「「はーい」」」」」
◆
水路を補修しながら戻って来た僕達は、まず冒険者ギルドに依頼達成の報告に向かう。
ギルドに顔を出すと、やる気の無さそうな顔でぐったりしているマビナルさんの姿が目に入ってきた。
「すみませーん」
「はーい、まだレクス様達は戻って来てませんよ~……ってレクス様!? 無事だったんですか!?」
やる気の無さそうな態度だったマビナルさんだったけど、僕達の姿を見た途端、慌てて立ち上がる。
「はい、無事ですよ」
「よかったー! もう毎日のようにイノルエ様の使いの方がジャイロさんはまだ戻ってこないのか、危険はないのか大丈夫なのかって聞きに来てうんざりしてたんですよー! 冒険者なんだから危険に決まってるってーのですよ!」
どうやら僕達がいない間にマビナルさんも苦労していたと見える。
「それで、水源はどうだったんですか!? 直ったんですか!?」
マビナルさんはそんな事よりも温泉は直ったのかと尋ねてくる。
「ええ、水源を占拠していた魔物を退治して水路も補修したので少ししたら水源から流れてきたお湯が町の温泉に戻ってきますよ」
あとは温泉からの報告を待つだけと言おうとした時だった。町中がどよめきに包まれたんだ。
「どうやら温泉の方も問題ないみたいですね」
きっと温泉秘湯からのお湯が届いたんだろうと確信した所で外から温泉が蘇ったという歓喜の声が届く。
「すみません、ちょっと確認してきますので待っててください!」
そう言うやマビナルさんはギルドから飛び出してゆく。
そしてしばらくすると息を切らしたマビナルさんが戻って来た。
「確認してきました! お、温泉が戻ってきましたよーっ!」
心底嬉しそうな様子でマビナルさんが万歳を繰り返す。
「これでまた仕事終わりに温泉に入りながら美味い酒を飲めますよーっ!! あーっ、早く仕事を終わらせて帰りたーい!」
もうすっかり温泉に入りたくてたまらないとマビナルさんは依頼達成の書類を凄い勢いで書き始める。
「はい、依頼達成を受理しました! 報酬はこちらとなります! では今日は仕事を上がりますので別の仕事を受けたいなら明日また来てください!」
そう言ってマビナルさんはてきぱきとギルドの窓を閉めていき、カウンターの奥から本日は営業終了ですと書かれた看板を持ってくる。
「手際良いなぁ」
「っていうか勝手に閉めて良いのかしら? ギルド長に怒られない?」
「大丈夫ですよ! ギルド長ならとっくの昔に酒瓶抱えて温泉に向かってるはずですから!」
「この町の冒険者ギルド駄目過ぎない?」
「僻地の冒険者ギルドなんてそんなもんですよ! さぁさぁ帰った帰った。皆さんも今日は疲れを癒す為にゆっくり温泉に浸かればいいじゃないですか!」
依頼達成のついでに討伐したソードディメドランとその近縁種の素材を買い取って欲しかったんだけど、これは無理そうだなぁ。
っていうか今頼んだら末代まで祟られそうな気がするから止めておこう。
「じゃあそうしよっか」
流されるままに冒険者ギルドを出た僕達だったけど、温泉が復活した事を喜ぶ町の人達が始めた町ぐるみの大宴会の場に遭遇してしまう。
「おお! レクス君達じゃないか! 聞いたぞ! 君達が温泉を直してくれたんだってな!」
「町の救世主のお出ましだな! ホラホラ飲んで飲んで!」
「食いモンも山ほどあるぞ! 好きなだけ食ってくれ!」
「わははははははっ!!」
そしてなし崩しに夜通し食って飲んでのどんちゃん騒ぎに巻き込まれてしまった僕達は、温泉を楽しむどころじゃなくなっちゃったんだよね。
やれやれ、全然体が休まらないや。これなら山岳地帯の露天風呂を改修して簡単な温泉を作っておけばよかったね。
◆
翌朝、ようやく宴会騒ぎが収まったおかげで僕達はノンビリ朝温泉を楽しんでいた。
「はー、体に染みるねぇ」
「兄貴の家の風呂も良いけど、温泉ってのもいいなぁ」
「ええ、これなら傷の治療に人が来るのも納得ですよ」
昨夜の宴会騒動で他のお客さんは皆飲み潰れているみたいで、温泉は貸し切り状態だ。
「夜通し騒いじゃったし、温泉から出たら少し寝ておいた方が良いねぇ」
「ですねぇ」
「だなぁ……ぐぅ」
「ジャイロ君お風呂で寝ちゃ駄目だよ!」
ジャイロ君が危うくお風呂の中で寝そうになったので、僕達は慌てて湯船から引きずり出す。
ジャイロ君は昨晩一番はしゃいでいたからなぁ。
「ふぁっ、それじゃあ僕達も休ませて貰いますね」
ノルブさんがジャイロ君を引きずって部屋へ入ろうとしたその時だった。
「おはようございますジャイロ様っ!」
元気のいい挨拶と共にやって来たのはイノルエ様だった。
「ききましたわ! ジャイロ様が温泉を取り戻してくださったんで……あら? どうなさったのですかジャイロ様!?」
ノルブさんに引きずられていたジャイロ君の姿に気付いたイノルエ様の顔が青くなる。
「ええと、ジャイロ君は昨夜の宴会で……」
「まさか! わた、町の為にこんなになるまで頑張ってくださったのですか!?」
「「え?」」
突然奇妙な事を言い出したイノルエ様に僕とノルブさんが思わず声をあげてしまう。
「分かりましたわ! こんなになるまで頑張ってくださったジャイロ様を放っておいては当家の恥。ジャイロ様はわたくしが責任をもって看病いたします! 貴方達!」
「かしこまりましたお嬢様」
イノルエ様のお付きの人達が前に出ると、ノルブさんからジャイロ君を奪い取って担ぎ上げる。
「ご安心を、当家の誇りに賭けてジャイロ様は元気にして見せますわ。それではお二人共御機嫌よう」
とだけ言い残してあっと言う間に帰って行ったんだ。
「ええと、どうしましょう?」
うっかりジャイロ君が連れ去られてしまうのを見送ってしまったのをどうしようかとノルブさんに相談する。
「……まぁ良いんじゃないですか? 僕もそろそろ限界ですし。じゃあお休みなさい」
そう言ってノルブさんは部屋に入ってしまった。
「……うーん、まぁノルブさんが良いっていうんだから、大丈夫なのかな?」
まぁ依頼主であって敵って訳でもないしね。
ジャイロ君も寝不足で寝落ちしちゃっただけだし、起きたら自分で戻って来るよね。
そう納得した僕も部屋に戻るとベッドに潜り込む。
「お休みなさーい」
温泉の効能のおかげか、僕はあっという間に眠りに落ちるのだった。
ジャイロ(´;ω;`)「あ、あれ? 誰も助けてくれねぇの?」
ノルブ (つД`)・゜「眠いので起きてからで良いですよね~」
イノルエ (‘ω’)ノ「ふふふ、眠っているジャイロ様も愛らしいですわー」
モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「おっと色々な意味で人生のピンチ」
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