第285話 解き明かされた壁
作者_(:3)レ∠)_「ハーッピーバースデートゥ-ミー」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「そうか、今日がコイツが世に解き放たれた日なのか……」
ヘイフィー_(:3)レ∠)_「お祝いは著作を買ってくださると嬉しいなーと申しております」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「ファンレターを出版社に送るのも喜ぶよ!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
水源を占拠していたソードディメドランを倒した僕達は、水源の補修を行っていた。
「結構劣化してるなぁ」
水源周りは塔を管理していた魔法使いが整備していたみたいなんだけど、それも水路と同じようにだいぶ劣化していたんだ。
「かなり古い施設みたいだものね」
「それもありますが、かけられていた保存魔法の精度があまり良くないみたいです。建設費用をケチったのかも」
「世知辛いわねぇ」
こうなると下手に古いものを利用するより、新しく作り直した方が良いんだよね。
幸い元の水路も特別な素材を使っていたわけじゃないので、山の土や岩に含まれる素材を利用して水源周りを改装することにしたんだ。
戦闘に使うものじゃないし、保存魔法さえちゃんとかければ結構な年月持つはずだ。
「レクスさん、洞窟の天井と壁の補強終わりました」
と、そこに洞窟の補修をやってくれていたノルブさんが戻って来る。
「お疲れ様です。僕の方ももうすぐ終わるので、先に休憩しててください」
「分かりました」
「ご飯出来た。手の空いた人から食べて」
丁度タイミングよく、メグリさん達が作っていた昼食も完成したみたいだ。
「ふぅ、これで水源周りの水路は完成ですね。あとは帰り道で水路の壁を補修すれば完成です」
僕の方も作業が一段落したので休憩する事にする。
「お疲れ様……って言うかもう全然別物になったわね」
先に食事をしていたリリエラさんが、改装した水源周りを見て苦笑する。
いやぁ、せっかく一から作り直す事になったもんだから、ついつい気合入れて作り直しちゃったんだよね。
「ノルブが補修した洞窟の方もダンジョンみたいになってる」
「いやー、せっかく直すのならむき出しの岩肌よりもしっかりした形にした方が良いかなって」
あはは、ノルブさんも同じ事言ってるや。
「ノルブもレクスに似て来たわねぇ」
「ええっっ!?」
そしたら何故かノルブさんが物凄くショックを受けたような顔をする。
何で今の評価でそんなに愕然とした顔になるの!?
「普通はこんな風に洞窟の内装をものの数時間で丸ごと改装する事なんて出来ないわよ」
「でもレクスが弄った部分に比べると少し雑」
「うぐっ……魔力が足りなくて……」
ああ、分かるよ。拘りたいときに限って何かしら足りないよね。
「まぁ師匠の方が腕が上なのは仕方ないわよ。それよりもお昼ご飯にしましょ」
「「「「「はーい」」」」」
リリエラさんのフォローを受けて食事が再開される。
「肉くれ肉!」
「肉だけじゃなくて野菜も食べなさいよ!」
「うっせぇな、お前は俺の母ちゃんかよ」
「だ、誰がアンタの母ちゃんよ!」
ジャイロ君達は相変わらずにぎやかだなぁ。
「ふむ、人族の食事と言うのも悪くないな。食べ慣れた肉でも味わいが違うのは人族の調味料が原因か?」
女魔族は人族の食事を珍しがりながらも美味しそうに食べている。
そういえば魔族と一緒に何かをするなんて前世ぶりだなぁ。
あの時は人族と魔族が発動させた巨大な殲滅マジックアイテムが予想外の相乗効果を引き起こして、あやうくお互いの世界を滅ぼしかけたんだよね。
本当に事件が解決して良かったよ。
メグリさん達が用意した昼食を食べつつ、僕は探査魔法で洞窟内の強度のチェックを行う。
万が一補強し忘れたところがあったら大変だからね。
そうしたら、洞窟の傍に奇妙なものを発見したんだ。
「あれ?」
「どうしたのレクスさん? もしかして不味かった?」
僕が食事中にそぐわない声を上げた事で皆が注目してくる。
「ああいえ、ご飯は美味しいです。ただ、水源の奥に不自然な空洞があるみたいで」
「不自然な空洞?」
そう、不自然な空洞なんだ。
「ええ、この洞窟の幅よりも広い空間ですね。でも周りと繋がってる訳じゃなく、まるで水の中に沸いた泡みたいに独立していて……あれ? その奥にも空間が開いてるぞ?」
まるでとぎれとぎれの線みたいな感じになってる。
「へぇ、そんな場所があるんだ」
「崩落して洞窟の方に影響が出ても危ないですから、ちょっと調べてみましょうか」
食事を早めに終えた僕は、水源のそばの壁に魔法で穴を開ける。
そしてその中に入って行くと、そこには驚くべきものが眠っていたんだ。
「これは……!?」
そこには無数の植物の園があったんだ。
しかもその植物はただの草じゃなかった。
「なにこれ? いっぱい生えてるけど薬草かなにか?」
「見たこともない草だわ。この辺りの固有種なのかしら?」
皆が知らないのも無理はない。これは……
「これはゲネルリクス草ですね」
「ゲネルリクス草?」
「ええ、今となってはかなり珍しい薬草です」
「「「「「かなり珍しい薬草!?」」」」」
僕の言葉に皆が驚きの声をあげる。
そうだろうね。ゲネルリクス草と言えば……
「嘘! レクスから見ても珍しいの!?」
「ヤバいわよ! きっととんでもなく貴重な草よ!」
待って、なんで僕が言ったらとんでもないモノ扱いになるの?
「まさか伝説のエリクサーの材料になるとか?」
「はははっ、お前達大げさだぞ、エリクサーと言えば我等魔族にとっても伝説の薬だぞ?」
「まぁ確かにエリクサーは作れますけど」
「だよなぁ……って、え!?」
「「「「「「ホントに作れるの!?」」」」」」
「え? 嘘、ホントにこれがエリクサーになるの!?」
ミナさんが信じられないとばかりにゲネルリクス草を見つめる。
その目はお宝を前にしたメグリさんのようだ。って言うか今まさにメグリさんがそんな目をしていた。
「はい、と言っても下位のローエリクサーですけどね」
「「「「「「かいのろーえりくさー?」」」」」」
そう、このゲネルリクス草はローエリクサーの主な材料として使われる薬草なんだ。
「ええ、皆さんも知っての通り、エリクサーには一般に知られているエリクサーのほかに、効果を下げた下位のエリクサーがあります」
「「「「「「いや知らないし」」」」」」
「キュウ」
この辺り、結構面倒な話なんだよね。
「エリクサーはどんな怪我や病気にも効きますけど、その分必要とする素材は貴重なものが多く、また調薬の際は高度な技術が必要になります。結果エリクサーは一部の権力者や大国の騎士団が独占する形になっているのが現状です」
「というかエリクサーに下位なんてあったんだ……」
「そもそもエリクサー自体がもう伝説……」
「で、それを憂えた時の王が、もっと簡単に安く作れるエリクサーの製造を賢者に依頼した事で生まれたのがローエリクサーなんです」
「「「「「「へー」」」」」」
「民思いの王様も居たものねぇ」
「私としてはその賢者の方が気になるけどね」
あれは本当に酷い無茶振りだったよ。
低コストで簡単に作れる最高品質の薬を考えろとか言われたんだから。
「モキュモキュ」
そして前々世の僕の苦労話なんてどうでもいいとばかりにモフモフはゲネルリクス草を齧っている。
話を戻そうか。
その結果なんだけど、勿論最高品質なんて出来なかったよ。
だって低い技術と低品質の素材で最高品質の薬なんて作れるわけがないんだから。
前提からして無理があったんだよね。
だから僕はあえて質の低い物を作る事にしたんだ。
「ローエリクサーは本来のエリクサーのようにどんな怪我にも病気にも効く薬として完成したんだけど、材料の質と技術力を下げた代償として症状の重い怪我や病気には効果が薄くなってしまったんです。そうですね、僕が以前作った下級万能毒消しみたいに、どんな毒にも効くけど代わりに効果が薄い感じの薬です」
「万能毒消しって時点で程度じゃないと思う」
「「「「思う」」」」
「程度ですよ。でもその程度で良かったんです」
「え? なんで性能が落ちるのに良かったなんてなるの?」
意味が分からないとリリエラさんが首を傾げる。
「分かった」
逆にメグリさんは僕の言いたい事が分かったみたいだ。
「普通の人達にギリギリ支払える金額になったのと、ローエリクサーはその程度で十分だったから」
「正解です」
さすがメグリさん。前世の僕の意図をしっかり読み取ってくれたよ。
「どんな病気にでも効くのなら、まずそれを飲ませる。それで完治しなかったら、その時は専門の治療薬を飲ませればいい。多分ローエリクサーは完治しなくても症状を和らげる事は出来る薬。そうでしょ?」
どうだ、とメグリさんは笑みを浮かべる。
「ええ、その通りです。ローエリクサーは完治こそできませんが、専門の薬を用意するまでの時間稼ぎに使えたんです。そして何でも治るとても高い薬を使わなくても、手ごろな価格で手に入って確実に治る専門薬を併用して飲んだ方が総合的には安く済むという訳です。言うなればローエリクサーと専門薬でエリクサーと同等の効果を生み出したんですね」
そう、どうあがいても安くて簡単に作れる高性能な薬を作る事が無理なら、いっそ複数の薬を使って同じ結果にすればいいと思ったんだ。
「そうした経緯もあってローエリクサーは爆発的に広まり、ゲネルリクス草はローエリクサーの材料として大人気になったんです。けれどそのせいでゲネルリクス草は乱獲されてしまい、結果素材が枯渇してローエリクサーは幻の薬になってしまったんです」
これこそがゲネルリクス草が貴重な薬草と呼ばれるようになった理由なんだ。
「知らなかったわ。昔はエリクサーに種類があったのね」
まぁエリクサーの事、というか薬に興味がない人達にとってはどっちも同じようなものだと思われてたみたいだしね。
「でも悲しいものね。皆が簡単に作れるようにって生み出されたローエリクサーが、当の本人達が薬草を乱獲したせいで作れなくなってしまうなんて。しかもその薬草を絶滅させちゃうなんて……」
「昔は薬草の採取量制限がなかったんですね……」
「むぅ、我々魔族にとっても他人事では……」
「いえ、絶滅はしてないですよ」
「「「「「「え?」」」」」」
「単にローエリクサーよりも効果の高い薬がゲネルリクス草無しで作れるようになったので、ゲネルリクス草の生息数を回復させる必要が無くなっただけです」
「「「「「「はぁー!?」」」」」」」
うん、実はそれが世界樹を材料にして作られるようになったエリクサーなんだよね。
あとゲネルリクス草は単に乱獲で数が減っただけだし。
「でもこれで温泉の効能の疑問が解けましたね」
「え? 何? どういう事?」
「見てください。ここにはゲネルリクス草だけでなく他の薬草もあります。これらの薬草を調合すると、丁度ローエリクサーになるんですよ」
「そうなの!?」
そう、ここにあるのはゲネルリクス草だけじゃなかった。
よく見ればローエリクサーの材料として使える薬草がいくつも生えていたんだ。
「おそらくここの薬草の成分が水源に混ざってローエリクサーに近い効果を産み出していたんですよ。見てください。そこに水源と繋がっていると思しきお湯だまりがあります」
空洞内部を良く見れば、薬草の生えている陸地と、水源と繋がっているらしきお湯で出来た水場に分かれていたんだ。
薬草の群生地に意識を取られて気付かなかったよ。
「でもそんな事ってあるの!? 薬の調合には絶妙な配合が必要なんでしょ? それが偶然出来るなんて……」
「偶然が重なったんでしょうね。ただ自然が生み出した偶然なので、ミナさんが疑問を抱いたように薬効が強すぎるものになってしまったみたいです」
僕はゲネルリクス草近くに流れている温泉水を分析魔法で調べてみる。
すると空洞の中に溜まっていた温泉水は、水路で発見した温泉水に比べて非常に濃いものだという結果が出たんだ。
ここで出来上がった高濃度のエリクサーもどきが、水源から溢れる温泉水で希釈されていき、更に下流の温泉秘塔で更に希釈される事でようやく人が入れる濃度になるんだろうね。
これで効能の多すぎる温泉の疑問は解けたよ。ただ、新しい疑問がまだ残っているんだけどね。
「問題はこの奥ですね」
僕は空洞の奥を見つめる。
「奥?」
「ええ、見てください。奥の壁を」
僕が空洞の奥を指差すと、薬草に気を取られていた皆もそれに気付く。
「えっ、あれって壁じゃなくて……」
「土砂が崩れてる?」
そう、そこにあったのは洞窟の壁ではなく、崩れおちた土砂だったんだ。
「どうやらこの空洞は元々奥の空間に繋がっていたみたいですね。そして……」
「この奥に何かが居ます」
僕の探査魔法は、壁の奥に無数の何かが居ると告げていたんだ。
薬草だった者達 (´;ω;`)「ふふっ、所詮オイラ達は質の低い薬の材料さ。もっといい薬が見つかればポイよ」
モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「まぁそうクサるな、草だけに。モグモグ」
薬草だった者達(つД`)・゜「下手なシャレを言いながら食べないでー!」
モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「たまには草も美味い」
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