第284話 熱波の激闘
作者_(:3)レ∠)_「すこしずつ涼しくなってきましたねぇ」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「秋が近づいてきたんだなぁ」
ヘイフィー(。・ω・。)ノ「外に出やすい季節になってまいりました」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「アー……ン、フキュッ」
カプッという音と共にソードディメドランのヒレに噛み付いたんだ。
「ギャオォォォォォォォォォッ!?」
そして響き渡るソードディメドランの悲鳴。
「「「「「「「や、やらかしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」
突然の痛みに起き上がったソードディメドランのヒレ剣が一瞬で立ち上がり、勢いよく洞窟の天井に叩きつける。
その結果……
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
洞窟全体に鈍い振動が響き始めたんだ。
「いけない! トンネルエクステンション!!」
洞窟が崩落する前に僕は急ぎ鉱山魔法を使って洞窟を補強する。
「すみません! 僕は補強に専念するのでソードディメドランの相手はお願いします!」
「任せろ兄貴!!」
「ノルブ、私達も補強を手伝うわよ!」
「は、はい!」
ジャイロ君が飛び出して行き、ミナさんとノルブさんが鉱山魔法を使って補強作業のサポートに入る。
「ならば我らも行かねばな!」
「全くとんでもないことしてくれたわ、あの白いのは」
「ん、あとでお仕置き」
女魔人がジャイロ君を追うように駆け出し、それに遅れまいとリリエラさんとメグリさんがため息を吐きながら飛び出す。
うん、あの四人ならソードディメドランを任せても問題ないね。
その間に僕達は洞窟の補強だ!
「いっくぜぇー!」
ジャイロ君が炎を推進力にした飛行魔法を発動させてソードディメドランの懐に潜りこまんと疾走する。
「手前ぇの最大の武器は溶岩なんだろ!? けどここにはそんなモンは無いぜ!」
ジャイロ君の言う通り、ソードディメドラン最大の武器が無い事でヤツと火山帯で遭遇した時よりも脅威度は低い。
けれど、ソードディメドランもまたじっとしていた訳じゃなかった。
奴は源泉にその巨体を沈ませると、ブブブと音を鳴らしながら背中の剣ヒレを高速で振動させ始めたんだ。
「皆で仲良くお風呂に入ろうってか!?」
答えはすぐに出た。
ボコボコボコという音と共に突然源泉が沸騰を始めたんだ。
しかも沸騰した源泉のお湯がボンッと弾け、ジャイロ君に向かって飛んできたんだ。
これはヒレ剣の高速振動で超音波を発生させてお湯の沸騰と破裂を行ったのか!?
「なぁ!?」
予想外の事態にジャイロ君が慌てて足を止める。
けれど吹き飛ばされたお湯は狭い洞窟の通路の全面に広がり、このままだと避けようがない。
「フリーズウォール!!」
間一髪、リリエラさんがジャイロ君の前に出ると、魔法で氷の壁を生み出した。
次の瞬間、ジュワァァァという音と共に氷の壁が溶けだす。
けれど溶ける端からリリエラさんが氷の壁を再生させる事で柱が溶けきる事はない。
「うわっちゃぁぁぁぁぁー!?」
僕達もまたリリエラさん達の横を通り抜けたお湯の壁をそれぞれの魔法で防御する。
なんか女魔人の悲鳴が聞こえたけど、まぁ魔人だし大丈夫かな?
ちなみにメグリさんはちゃっかり岩陰に逃げ込んで無事みたいだ。
「助かったぜ姐さん!! よくもやってくれやがったな!!」
礼を言いながらジャイロ君が氷の壁から姿を現し、ソードディメドランに向かっての突撃を再開する。
ソードディメドランもまた再びお湯を吹き飛ばそうとヒレ剣を動かし始めたのだけれど、少し遅かった。
「おらぁーメルトソードッ!」
ジャイロ君の放った青く輝く炎を纏った高熱の剣がソードディメドランのヒレ剣を切り裂く。
「グギャオォォォォォォォ!!」
僕の知っているソードディメドランなら、今の炎属性の攻撃の効果は薄かった筈だ。
だけどジャイロ君の攻撃はしっかりと効果を発揮した。
という事はやっぱりアイツは普通のソードディメドランじゃないみたいだ。
もしかしたら変異種なのかもしれないね。
「グゥオォォォォゥ……」
体温を調節するためのヒレが失われた事で、ソードディメドランが慌てて源泉から飛び出す。
自分で沸騰させたお湯にたえられなくなったみたいだ。
「ぐるるるぅ」
ソードディメドランの目に怒りの炎が灯る。
よくも俺の体に傷をつけてくれたなと言わんばかりの眼差しだ。
けれどその怒りが行動に反映する事はなかった。なぜなら……
「よくもやってくれたなこのトカゲ風情がぁー!」
怒りに燃える女魔人の一撃がその眉間に叩きこまれたからだ。
「ゴベッ!?」
「この私の珠の肌に熱湯をぶっかけるとはいい度胸だ! 身の程知らずなその魂に真の恐怖というものを刻み付けてくれるわっっっ!!」
「ギュ、ギュォォォォォォ!?」
後ははい、大変残酷な光景が展開されました、とだけ言っておこうかな……
◆
「ふぅ、まぁこんなもので許してやろう」
「…………」
そう言いながらすっきりした顔でソードディメドランから離れる女魔人。
うん、許すも許さないも無い姿になってるね。合掌。
「おう、お疲れさん! 源泉が枯れた原因もぶっ倒したし、これで事件は解決したも同然だな!」
「そうだね。今回の事件の原因は温泉ごと湯の花を食べていたソードディメドランが原因みたいだし、それを倒した以上後は水路のメンテナンスをするくらいかな」
他に魔物の姿も見えない事もあって、まったりした空気になっていたその時だった。
「グギュルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
突然洞窟内に怒りに満ちた唸り声が響いたんだ。
「っ!? まさかソードディメドランの仲間!?」
僕達は即座に武器を構えると周囲を見回す。
けれど新たなソードディメドランの姿どころか他の魔物の姿も見当たらない。
「グギュルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
けれど恨みに満ちた怒りの声は洞窟内に響く。
どこだ? 一体どこに隠れているんだ!?
「どこに居やがる! 出てきやがれ!!」
しびれを切らしたジャイロ君が声を上げる。
「ギュルゥゥゥゥゥゥゥン!!」
「皆、声はソードディメドランからよ!!」
「ええ!?」
まさかまだ生きてたのか!? いやもしかしてソードディメドランはわざとやられたふりをしていたのか!?
何のために!? まさか僕達の戦力を見極める為か!?
「だとしたらこいつは相当に……」
倒したはずのソードディメドランに僕達の視線が集まる。
けれどソードディメドランは地面に突っ伏したままで、その顔はとてもさっきから聞こえる怨嗟の唸り声をあげているようには見えない。
「ギュルゥゥゥゥゥゥゥ!!」
「いや違う! ソードディメドランじゃない! 音の主はそこだ!!」
そしてようやく気付いた。
ソードディメドランの背に何かが乗っているのだ。
ドラゴンに見まがうほどの巨大なトカゲの背に立つのは、奇妙な物体だった。
全身が白く、そして丸い。けれどその丸はちょうど上面が真っ平らだったんだ。
そして両側面からは細長い耳と螺旋くれた角……ってあれ? あの白いのどこかで見た覚えが……っていうか毎日のように見てるような気が……
「ってモフモフ!?」
そこでようやく僕はそれがモフモフである事に気付いたんだ。
でも何ですぐにモフモフと気付けなかったんだろう?
モフモフを見間違える事なんてある訳……あっ
「モフモフの頭の毛が、切れてる?」
そうなんだ。ちょうどモフモフの上部の毛が切れて、平らになっていたんだ。
そして切断面はチリチリと焦げていた。
「あれってもしかして、ジャイロの攻撃に巻き込まれたんじゃ……」
「えっ?」
確かによくよく思い出してみると、さっきモフモフはソードディメドランのヒレにかじりついてからどうなったか誰も確認してないんだよね。
「つまり、ずっとヒレの根元に噛みついていたモフモフの頭の毛をうっかりジャイロ君がヒレごと切っちゃったって事?」
「……マジ?」
何とも気まずそうな顔で、ジャイロ君がモフモフに尋ねる。
そしてモフモフもまたその質問に答える。
「グギュァァァァァァ!!」
ジャイロ君の頭に飛びかかるという形で。
「あいたたたたたっ! 馬鹿、噛みつくな! 髪の毛引っ張るな!!」
「ギュルアァァァァッ!!」
「やめろっていってんだろぉー!」
そしてジャイロ君とモフモフによる取っ組み合いの喧嘩が始まった。
「……とりあえず問題は解決したって事でいいのかしらね」
その光景を見ていたミナさんがボソリと呟く。
「ん、原因は倒した。後は源泉周りと水路を修理すればいい」
「そうですね。怪我人らしい怪我人も出なかったですしね。毛が無くなった人は居ますけど……ぷふっ」
ノルブさんが自分で言って自分でウケてる……
「さっ、それじゃあ私達は源泉と水路の修理といきましょう」
「あ、はい、そうですね」
リリエラさんに腕を引かれ、僕は水源の確認に向かう。
「フギュアァァァァ!!」
「いい加減にしやがれぇぇぇっ!!」
そして背後からは、ジャイロ君とモフモフの喧嘩する声が聞こえ続けたのだった。
……平和だなぁ。
モフモフ(# ゜Д゜)「絶許ーーーーーー!」
ジャイロ (゜Д゜メ) 「もとはと言えば手前ぇが噛みついたからだろうが!」
ソードディメドラン (´・ω・`)「寧ろ自分はとばっちり受けてるだけでは?」
女魔人(#^ω^)「ほう?」
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