第283話 源泉に蠢く者
作者_(:3)レ∠)_「グッドゥマンディー(巻き舌)」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「全然グッドじゃねぇー、低気圧だるいー」
ヘイフィー(。・ω・。)ノ「台風の影響を受ける地域の方は雷や大雨に気を付けてくださいねー」
作者_(:3)レ∠)_「そしてジャスト一か月前は二度転生コミック6巻の発売日だよー」
ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「なんというパワーテクニック宣伝」
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「この中に水源があるみたいですね」
洞窟の中へと入った僕達は、探査用小型ゴーレムが最後に示した反応の場所へと向かっていた。
「水路と違ってこっちは結構広いのね。これなら戦闘になっても大丈夫かしら」
と、周囲を見回しながらミナさんが洞窟内で戦闘に入っても問題は無いと安堵する。
「……そういう訳でもないみたい」
けれどそれを否定したのはメグリさんだ。
「え?」
「天井を見ろ」
女魔人の言葉に皆が天井を見れば、パラパラと何かが降って来るのが見える。
「何か落ちてきてる?」
掌を翳して降って来たものを手のひらを受け止める。
「これは……土や石の欠片ですね」
どうやら天井から剥がれ落ちて来たもののようだね。
「これ、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。これは崩落するかも」
「その小娘の言う通りだ。これ以上進むのは危険だぞ」
ミナさんの懸念にメグリさんと女魔人が危険を指摘する。
そうだね、いつ崩落するか分からない洞窟をこのまま進むのは危険だ。
「魔法で洞窟の壁を補強しましょう。トンネルエクステンション!」
僕は魔法で天井と壁を補強する。
「ほう、器用なものだな」
「いえ、ただの鉱山魔法ですよ。大した魔法じゃないですよ」
女魔人が僕の魔法を褒めてくれるけど、本当に大した魔法じゃないんだよね。
元々山を貫通してトンネルを掘る際の一時的な補強につかう魔法だから、せいぜい数十年程度しか持たないんだ。
でもまぁ今回の目的は温泉の調査だからね。本格的な洞窟の補強は後回しだ。
僕達は洞窟の壁を補修しながら奥へと向かう。
「結構奥まで続いてるのね」
リリエラさんの言う通り、洞窟は意外と奥まで続いていた。
そして洞窟の壁は奥に進んでもまだ天井から土や石が降って来る。
「壁が脆いのは入り口だけじゃない事を考えると、温泉が枯れたのは源泉近くの天井が崩落したのが原因かもしれませんね」
ノルブさんは洞窟の壁の脆さが温泉が枯れた原因じゃないかと推測する。
確かにこの状況を見るとその可能性は高いね。
「だとすれば源泉周辺の壁を魔法で補強して、源泉に落ちた土砂を撤去すれば問題は解決ですね」
「だな!」
「うーん」
けれど僕らの発言にリリエラさんが首を傾げる。
「どうしたんですか?」
「いえね、温泉が枯れた理由はそれで説明できるかもしれないけど、それだとこの洞窟に疑問が残るのよね」
「疑問ですか?」
「そう、どうやって温泉の水路を繋げたかよ」
「それはどういう意味です?」
「温泉の水路を作る為にはまず源泉を発見しないといけないでしょ? でもそうなるとこのいつ崩落するか分かんない洞窟を通った筈なのよ。だとすれば何でこの洞窟を補強しなかったのかしら? 最悪水源にたどり着く前に崩落したかもしれないのよ?」
「言われてみれば……」
確かにその疑問も尤もだ。
この洞窟の壁に穴を開けてあれだけしっかりした水路を通したのに、水源のある洞窟はそのままだったとは考えづらい。
「そんなの考えても分かんねぇって。それにもしかしたら昔はこの洞窟ももっと頑丈だったのかもしれねぇだろ?」
「まぁそうなんだけど」
確かにジャイロ君の言う通り、昔はこの洞窟の壁もしっかりしていたという線もある。
長い年月の間にこの地に大きな地震でも起きて、その結果壁が脆くなったとも考えられる。
「分かんねぇ事は後で考えようぜ!」
「お気楽ねぇ」
「私もジャイロに賛成。あとこの先に何か居る」
「「「「「っ!?」」」」」
メグリさんの言葉に皆が反応する。
……うん、確かに何か居るね。探査魔法に反応がある。
「魔物?」
「多分」
「だとしたら源泉の近くで戦闘するのは崩落の危険もあって危険ね。洞窟の壁を補強した所まで魔物をおびき寄せてから戦う?」
「それが良いと思う。魔物に気付かれないために魔法の補強はここまでで止めた方がいい」
「ですね」
メグリさんの言う通り、勘の良い魔物は魔法の気配に敏感だ。
もしかしたら既に気付かれている可能性もあるけれど、見つかっていないならわざわざ気付かれるようなことをする必要もない。
「念のため崩落に巻き込まれてもいいように防御魔法と呼吸補助の魔法をかけておきましょう」
僕は全員に崩落対策の魔法をかけておく。
「お前、さっきから魔法を使い続けているが魔力は大丈夫なのか?」
と、女魔人が魔法を使い続けていた僕を気遣うような事を言ってきた。
「ええ、魔力を節約する方法には慣れてるので大丈夫ですよ」
「ふむ、そうか。ならば問題ない」
へぇ、意外だ。本来なら敵である僕を案じるなんて。
これまで出会った魔人達なら、この問題が解決された直後に僕達を始末したいから、もっと魔力を消費して欲しいと考えると思っていたんだけど。
まぁ単に魔物との戦闘以外で魔力を使い過ぎたら困ると思ってるだけなのかもしれないけどねえ。
「このすぐ先に居る」
洞窟を進んでいくと、メグリさんが皆を制止する。
すぐさま物陰に隠れて洞窟の奥を見ると、何か巨大な者が動いているのが分かった。
「大きいわね。四つ足の魔物だけどアースドラゴン系かしら?」
リリエラさんの言う通り、相手は大きな四つ足の魔物だった。
ちなみにアースドラゴンというのはドラゴンじゃなく、巨大なトカゲ系の魔物の事だ。
基本ドラゴンは羽が生えていて空を飛べる存在で、対してアースドラゴンは羽が生えていない。
ただそれでも巨大な生き物と言うだけで普通の人達には十分危険なので、アースドラゴンと呼ばれているんだ。
大体馬車くらいの大きさになるとアースドラゴンと呼ばれるようになり、それ以下はオオトカゲだね。
「かなりデカいなアイツ」
「何アレ? 背中に魚のヒレみたいなのが付いてる」
ミナさんの言う通り、魔物の背中には剣の様な大きなヒレがいくつも付いていた。
うん? あのヒレ見覚えがあるような……
「あっ、ソードディメドランだ」
「ソードディメドラン?」
「ええ、アースドラゴンの一種で見た目通りあの剣の様なヒレを武器にする魔物です」
そう、ソードディメドランは爪の代わりにあのヒレ剣を自在に動かし武器にする魔物だ。
「ただ、厄介な狩りの仕方をする奴なんですよね」
「どう厄介なの?」
「アイツは狩りをする時に火山を噴火させるんですよ」
「「「「「「何で!?」」」」」」
うん、その気持ちは分かるよ。
「火山の噴火で近隣の生き物を無差別に殺し、冷えて固まった溶岩に閉じ込められた犠牲者を天然の保存食として食べるんです。鳥が巣をつくる為に植物を材料に使うように、ソードディメドランも狩りの為に溶岩を使うんです」。
「道具のスケールがデカすぎない!?」
「えげつないなこの世界の魔物!?」
女魔人がソードディメドランの狩りの仕方を聞いて顔色を青くする。
うん、温泉へ湯治する為に火山帯に行ったら、飢えたソードディメドランが火山を爆発させて湯治どころじゃなくなったとか前世ではよく聞いた話だからね。
「って言うかヒレは武器じゃなかったの!?」
「キュウキュウ!」
リリエラさんとモフモフが興奮しながらヒレ剣の説明に意味はあったのかと聞いてくる。
「元々あのヒレ剣は高温地帯での体温調節の為のものなんです。武器としても使えるというだけで本来の使い方とは言い難いですね。あの巨体だけでも十分獲物を威嚇する事ができますから」
「どっちにしろ危険かぁ」
「キュキュウ」
「それとあのヒレ剣は溶岩地帯の熱を集中させる事で、炎の魔法剣のような高熱の刃になるので気を付けてください」
「天然の魔法剣の使い手って訳か。厄介ね」
うん、魔力を消費しない魔法剣は実質マジックアイテムを所持しているのと同じだ。
「あのヒレ、天井まで届いてますね。それにあのヒレが動くたびに天井から土が降って来てますよ」
ソードディメドランを観察していたノルブさんが、ヒレ剣によって天井が傷つけられていると指摘する。
「もしかして天井から土が降ってくるのはあのヒレが原因だった?」
「っぽい」
皆の言う通り、巨大なヒレ剣はユラユラと動きながら天井を引っ搔いている。
「キュウウ!」
「こら、おとなしくしなさいモフモフ」
するとヒレ剣の動きに誘われたのか、モフモフが飛び出しそうになったのでリリエラさんが慌てて捕まえる。
その光景を見ながら、僕はその先に居るソードディメドランを見つめる。
「けど、おかしいなぁ」
「何がおかしいの?」
僕が首を傾げていると、モフモフを抱えたリリエラさんが何を悩んでいるのかと尋ねてくる。
「ソードディメドランの生息地はさっきも言った通り、溶岩地帯なんですよ。あいつ等の狩りの仕方が火山の噴火な事もあって、基本的に生息地から出てくることはないんです」
「そう言えばそうね。それにここは多少蒸し暑いけど、溶岩地帯程熱くないからあのヒレも魔法剣代わりにはならないわよね」
うん、そこは僕達に有利な状況だね。
「む? 何をしている?」
と、そこでソードディメドランを見ていた女魔人が怪訝そうな声を上げる。
「どうしたの?」
「アイツ、何か食べているぞ」
「え?」
その言葉にソードディメドランに目を向ければ、確かに頭を水面まで下げて口を動かしていた。
「あっ、本当だ。何かバリバリ食べてる」
ソードディメドランは湯気を立てる源泉らしき水場に口を突っ込むと、その縁の土ごと白い花の様な何かを食べている。
「あれは……そうか、結晶化した湯の花を食べてるんだ!」
「「「「「「湯の花を!?」」」」」」
そう、ソードディメドランが食べていたのは湯の花だったんだ。
「湯の花ってそんなものが栄養になるの?」
「うーん、よくよく考えると湯の花は温泉の成分が結晶化したものですし、もしかしたら一部の魔物にとっては栄養になるのかもしれませんね。ただソードディメドランが湯の花を食べると言う話は聞いたことが無いのが気になる所なんですけど」
そうなんだ。僕の知っているソードディメドランならならもっと栄養価が多い物を狙うはずなんだよね。
「難しい話はアイツを倒した後でいいだろ? さっさと倒しちまおうぜ」
魔物の生態についての考察に夢中になっていた僕達をジャイロ君が諫める。
いけないいけない、ついつい脱線しちゃってたよ。
「でもどうやって壁を補強したところまでおびき寄せる? 下手に近づくのも危険よ?」
「となると魔法で遠くから攻撃して怒らせるか」
「それが無難かしらね」
方針を決めた僕達はソードディメドランに軽く魔法を当てておびき寄せる事にした。
大きなダメージを与えず、あくまでこっちに注意を引かせる程度に刺激を与えるのは大変そうだ。
けど頑張ってやらないとね。
「それじゃあ……って、あれ? モフモフ?」
と、そこで僕達はててててっと歩いていくモフモフのお尻を見つける。
モフモフはそのままソードディメドランの下までたどり着くと、尻尾を伝って背中に登って行く。
「って何してんのあの子!?」
「な、何か嫌な予感がするんだけど」
ミナさんが声を固くしながら頬をヒクつかせる。
「奇遇。私もそんな予感が」
それに同意するのはメグリさんだ。
「お、おいモフモフ、早く戻ってこい!」
ジャイロ君が大声を出さないように手招きしながら小声でモフモフを呼び戻そうとするけれど、当然そんな小声がモフモフに届くはずもなかった。
こちらの声が聞こえないモフモフは大きく口を開けると……
「アー……ン、フキュッ」
カプッという音と共にソードディメドランのヒレに噛み付いたんだ。
「ギャオォォォォォォォォォッ!?」
そして響き渡るソードディメドランの悲鳴。
「「「「「「「や、やらかしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」
はい、大変な事になりました。
モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「そこにおいしそうなヒラヒラがあれば噛みつくのは自然の摂理」
リリ/ドラ/魔(# ゜Д゜)「状況を考えろぉぉぉぉぉ!!」
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