第281話 温泉魔人との戦い?
作者_(:3 」∠)「おはちょっと涼しくなってきた?」
ヘルニー٩(ˊᗜˋ*)و「日陰は少しはましになったかもね」
ヘイフィー〆(´Д`; )「でもまだまだ暑いので皆さん熱中症には気を付けてくださいねー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
毒の空気に満ちた温泉で、僕達は予想外の魔人との遭遇を果たしていた……んだけど。
「「「キャァァァァァァァァッ!!」」」
「って何で男共が悲鳴を上げとるんだ!?」
いやだって、女の人の裸ですよっ!? 魔人とはいえ女の人なんですよ!?
すると突然視界が黒く染まる。
「ちょ、ちょっと貴女! 早く服を着てよ! 目の毒でしょ!」
耳元にリリエラさんの声が響く。どうやら彼女の手で目が塞がれたみたいだ。
「そうよそうよ!」
「うぉっ!? 前が見えねぇ!」
どうやらジャイロ君も同じようにされているみたいだ……って言うかですね。
背中に、柔らかいものを感じるんですが!? 目隠しされているので猶更ハッキリと感じるんですけど!?
「あわわっ」
けれど僕の事情を察することなく話は進んでゆく。
「ちっ、まったくなんだと言うのだ。ほれ、これで良いのか?」
「えっ!? 一瞬で服が!?」
「ふん、ただの装着魔法だ。人間共はこんな事も出来んのか?」
「むぐぐっ」
「レクスさん、もう良いわよ」
「あっ、はい」
ようやく解放されると、先ほどまで裸だった魔人は服を纏っていた。
ふぅ、大変な目にあったよ。
「それで人間共が一体何の用だ? 私は湯治を楽しんでいたのだ。下らん理由なら殺すぞ」
魔人は不機嫌そうな顔で睨むと、その手に赤黒く棘の生えた球体を産み出す。
魔人の得意技黒魔針球だね
「「「「「っ!?」」」」」
皆が慌てて武器を構えるけれど、僕はそれを手で制す。
あれはただの脅しだ。その証拠に大した力が籠っていないからね。
「僕達は町の温泉が枯れた原因を調査しに来たんです」
「ふん、怯えも見せんか。だが温泉が枯れた? 何を言っている、温泉ならこの通りあるではないか」
と魔人は水路から流れ出る温泉に視線を向ける。
「確かにここには温泉のお湯が大量にありますが、下流では温泉が枯れてしまっているんですよ」
そう、ここには大量にあるんだよね。
最初はイーヴィルボアの仕業かと思ったけど、もしかしたらこの魔人が原因なのかもしれない。
「おい、お前がこの穴を開けたのか!?」
同じことを考えたのか、ジャイロ君が魔人に食って掛かる。
しかし魔人は余裕のある笑みを崩さない。
「ふっ、そうだと言ったらどうだと言うのだ?」
「ぶっ飛ばして元に戻すに決まってんだろ!」
ジャイロ君の放った殺気に魔人が口の端を上げる。
「人間ごときがよくも吼える。面白い、少し遊んでやろう」
魔人がもう片方の手にも黒魔針球を産み出す。
相変わらず込められた力は大したことないけど、今度は先ほどの比じゃない。
遊ぶと言っておきながら、僕達が死んでも別に構わないと思ってるのだろう。
「皆油断しないで!」
僕は皆に警戒を促す。
6対1でこの余裕だ。過去に戦った魔人達のように、何か奥の手を隠しもっている可能性も高い。
「……」
「「「「「……」」」」」
場の空気が緊迫したその時だった。
「あっ!」
突然メグリさんが大きな声をあげたんだ。
「皆、アレを見て!」
そのまま戦いが始まるかと感じた僕達だったのだけれど、彼女の言葉でその場の全員の意識が逸れる。
その先にあったのは水路から流れ出るお湯。ただしその量がおかしかった。
「お湯の流れが!?」
「少なくなっていく!?」
そうなんだ。ついさっきまでなみなみと外に流れ出ていたお湯の量がみるみる間に少なくなっていったんだ。
「な!? どういう事だ!?」
それに驚いたのは意外にも魔人の方だった。
「え?」
「お前がやったんじゃないのかよ?」
予想外の反応に僕達の方も困惑してしまう。
「私は何もしておらん! 単に任務でこの辺りを調査をしていたら偶々温泉が湧いていたから休憩がてら入ってただけだ!」
「え? じゃあ無関係だったんですか!?」
てっきり魔人が原因かと思っていたら違ったの!?
「おのれ! せっかく煩い上司の目を盗んでのんびり温泉を楽しめるプライベートリゾートが出来たと思っていたのに!!」
しかもここに居た理由が微妙に世知辛いんだけど!?
「えっと、残念でしたね……?」
「おのれ折角の温泉が……はっ!?」
と、悔しがっていた魔人が何かに気付いたかのようにはっとなると僕達の方を見る。
まさかこの怒りを僕達にぶつけるつもり!?
「おいお前達! 温泉が枯れた原因を調べていたと言ったな! 何とかしろ!」
「「「「「「ええーっ」」」」」」
殺伐とした戦いが再開されるかと思っていたら、まさかの展開に僕達は困惑してしまう。
更に魔人は鷹揚とした態度で僕達に告げる。
「無論タダとは言わん。お前達が温泉を元に戻したら褒美として命は取らんでおいてやろう。そう、温泉の管理係としてな!」
う、うーん、これはどうしたものかな。
とりあえず皆で輪になって相談タイムに入る。
「……どうする?」
「とりあえず犯人じゃないっぽいわよね」
そうだね。本当にたまたま温泉を見つけて楽しんでいた感じだ。
それだけに本気で悔しがっているのが伝わってくる。
「でも魔人ですよ?」
ノルブさんの言いたい事もわかる。
魔人はこの世界に生きる者達の敵だからね。
「でも戦わずに済むならそれに越したことはないんじゃない? 温泉に入っている限り無害そうだし、温泉を守る為ならこの辺りで騒ぎを起こしたりはしないんじゃないかしら?」
「成る程、それはあるかもしれませんね」
リリエラさんの言う事も尤もだ。
魔人が敵であるのは確かだけど、向こうにその気がないのなら無理に戦う必要もない。
どのみち温泉の調査は最初からするつもりなんだしね。
「分かりました。ですが条件に追加をお願いします。水路の下流にある人間の町にも手を出さないでください」
「ほう、私に指図するつもりか?」
魔人が黒魔針球を浮かべた手をこちらに翳して脅してくる。
けれどそれがポーズなのはこちらも分かっている。
向こうもそれを知っていて面白がっているんだ。
僕は慎重に言葉を選ぶ。
「水路の下流にある人間の町の傍には、源泉から流れてくるお湯の泉質を調整し、温泉に心地よく入る為に作られた古代文明の施設があります」
「ほう、そのようなものが人族の町にあったのか」
それは初耳と魔人が片眉をあげる。
「その施設は水路を通して源泉にまでつながっています。だから人間の町を破壊すると施設の制御装置に異常がおき、源泉から流れてくる心地よく調整されたお湯が台無しになってしまうかもしれませんよ?」
ちなみにこれは半分嘘だ。
温泉秘塔は確かに町の傍にあるけれど、源泉の泉質はそのままだからね。
でも源泉にまで水路は繋がっているのは事実だから魔人がそれを確かめる事は出来ない。
大事なのは人間の町を破壊したら折角の温泉が台無しになってしまうかもしれないと思わせる事だ。
「……ふん、良いだろう。どのみち人間の町になど興味はないしな」
よし、交渉成功だ。
元々魔人にとっては温泉こそが重要な訳だし、自分にとって損にならない対価を求めれば簡単に受け入れてくれると思っていたよ。
向こうも山のふもとに人間の町がある事はとうに知っていただろうしね。
「ありがとうございます。それでは僕達は温泉の調査に戻りますね」
「うむ。任せたぞ」
「じゃあ奥に進もうか」
魔人との交渉を終えた僕達は、探索を再開する為水路へ向かう。
「……おい」
けれどそこに魔人が声をかけて来たんだ。
「はい?」
「やっぱり私も連れていけ」
「え?」
それは予想外の言葉だった。
魔人が僕達についてくる? 何で?
「温泉が枯れた以上、入浴施設として整備していないこの場所では溜まっているお湯もそう時間がかからずに地面に染みて無くなってしまうだろう。そうなると暇だ。よって特別に私も手伝ってやろう」
「お、おう?」
まさかの暇つぶし発言に思わず皆戸惑ってしまう。
「ど、どうするの?」
「魔人と一緒にあの狭い水路を進むんですか?」
「後ろから攻撃されない?」
皆の不安は魔人が突然態度を豹変させて襲ってこないかだ。
まぁこれまで戦った魔人達を思いだすとその気持ちも分からないでもない。
ただ僕はそれはないんじゃないかなと思っていた。
「んー。悪意は感じませんし、本当に暇つぶしなんじゃないでしょうか? 向こうは僕達をなんとでも出来ると思っているみたいですし、強者として自分の力に自信があるのなら不意打ちをするような真似もしないでしょう」
こちらの事を虫けらとしか思っていない魔人は割と平気で不意打ちとかしてくるけれど、前世で戦った武人肌の魔人とかは割と正々堂々とした戦いを好んだんだよね。まぁ中にはあえて真正面から戦って実力差を思い知らせる事で絶望させる事を楽しむ性悪な魔人も居たけど
「「「「うーん……」」」」
「おいどうした? 行かんのか?」
皆がどうしたものかと頭を悩ませていると、魔人が苛立ったような声をあげて僕達を急かす。
「おっし! 分かった! 一緒に行こうぜ!」
それに対して声を上げたのはジャイロ君だった。
「ちょっ!? ジャイロ!?」
「どうせ悩んだって勝手についてくるんだろ? だったらそれで良いじゃねぇか。ビビっても意味ねぇぜ!」
「あんたねぇ」
ジャイロ君の竹を割ったような発言にミナさんが呆れた声を上げる。
「ははっ、中々肝の据わった小僧ではないか。気に入ったぞ。私の部下にならんか?」
しかし魔人の方はそんなジャイロ君が気に入ったらしく、まさかの勧誘まで始めたんだ。
「へっ、おあいにく様だな。俺は兄貴の弟子だからよ。他の誰かの下に就く気なんてねぇぜ!」
おおっと、これは嬉しい事を言ってくれるね!
「ふっ、不遜な小僧め。だがますます気に入ったぞ」
「あ”あ”ん?」
そんな魔人の態度にミナさんがドスの効いた声をあげる。
「ミナ、落ち着いて! 女の子がしちゃいけない顔してる!」
「そ、そうよ! ちょっとジャンルの違う人みたいな顔になってるから気を付けて!」
「え? そ、そんな顔してた!?」
「「……」」
慌てたミナさんが僕達の方を見るけれど、僕とノルブさんはそっと目を逸らす。
これに答えたらいけない気がしたんだよね。
「おっし! それじゃあ皆行こうぜ!」
「「「「お、おおー」」」」
「うむ!」
空気を読まずに出発を告げたジャイロ君に、僕達はこれ幸いと追従する。
「ちょっ!? ねぇどうだったの!?」
はいはい、先を急ぎましょうねー。
「フ~、キュフン」
そんな僕達を、モフモフだけがヤレヤレと言いたげな顔で肩を竦めていたのだった。
ジャイロ_(:3 」∠)「いっくぞー!」
女魔人(๑¯ω¯๑)「むふん」
ミナ(´◉ᾥ◉`)「またこの男は妙なフラグを~!」
魔物達 (´;ω;`)「僕達の憩いの場でチューズデー不安劇場しないで……」
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