第272話 王との謁見?
作者_:(´д`」∠):_「後学の為に乗馬をしてみたい」
ヘルニー_(:3)∠)_「また唐突な」
ヘルフィー_(:3)∠)_「探すと意外に体験乗馬出来るところあるね」
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「どうやら地上の騒ぎは収まったみたいだね」
地下から戻って来たゼンザール学園長は、地上の騒ぎが収まった事に安堵の溜息を吐く。
「生徒達の被害は?」
「負傷者は居ますが死者は居ません。Aクラスの生徒達が頑張ってくれた結界のお陰です」
ゼンザール学園長に問われた教師が報告を行う。
「素晴らしい、生徒達が力を合わせて力なき人々を救う。これこそ、魔法学園に求められたもう一つの理想の体現だ」
もう一つか。本来の役割は地下に封じられていた邪龍の封印の維持である事を考えると、その理想の本来の意味は、いつか復活した邪龍を皆で協力して倒してほしいってところかな?
「ありがとうレクス君。君達がこの学園に来てくれたお陰で、生徒達は成績争いなどという狭い世界での勝利で悦に浸っていた事から成長できたよ」
生徒達の成長に感動していたゼンザール学園長は、僕に視線を戻してそんな事を言ってきた。
「いえ、僕は大した事はしていませんよ。皆が元々持っていた資質のお陰です」
「ははっ、謙虚だな。だが真の英雄とはそう言うものなのかもしれない」
いやいや、本当に僕は大した事なんてしていない。
僕がした事と言えば基礎の基礎を教えただけだ。
それも皆がいずれ学ぶ筈だった事をだ。
「いえ、僕は英雄なんかじゃないですよ」
「はははっ、魔人を倒した邪龍ファブルシードを下した者とは思えない言葉だな。だが、だからこそ国王陛下と謁見するに相応しい」
「いや僕は国王陛下に謁見するような人間じゃ……今何て?」
「国王陛下に謁見だ。今回の件は国王陛下に報告する必要がある重大事。何よりそれをたった一人で解決した英雄が居るのだ。事情を説明する意味でも国王陛下に謁見して貰わないとな」
「え、え、えぇーっ!?」
国王陛下と謁見んんーーーっっ!?
どうしてそんな話になるのさ!!
「そうと決まったらすぐに報告書を作成しないと! 君、王城に行って国王陛下に謁見の要請を頼む!」
「ええっ!? 私がですかぁ!?」
突然城に向かえと言われた教師が困惑の声を上げているけどそれは僕も同じだ。
まさか国王に謁見なんて話になるなんて。
「私は謁見の許可が出るまでに簡易報告書を用意する。それまでは君達も休んでいると良い。ああ君も現場を見ていたから共に謁見に来てもらうよ!」
「ええ!? 私も!?」
ゼンザール学園長はリリエラさんにも一緒に行くよう告げると、本人は報告書を書く為に足早に校舎へと去って行った。
「……ヤ、ヤバい事になった」
不味いぞ、このままじゃ今世でも貴族達と関わった所為で面倒事に巻き込まれてしまう!
何とかしないと!
「こ、国王陛下に謁見って大丈夫かしら? 私今回何もしてないのよ!? どうしようレクスさん!!」
考えろ、考えるんだ僕!
「ね、ねぇ、レクスさん、聞いてる? ねぇってば!」
何か、何か良い考えはないのか!
「……そうだ!」
「きゃっ!?」
いいアイデアが閃いた僕は、すぐに行動を開始するべく動く。
「ちょっと僕出かけてきます!」
「え!? でも謁見が!!」
「すぐに戻ってきますから!」
よし、まずは故郷の村からだ!
◆
転移で村に戻って来た僕は、ガンエイさんと邪龍、いや今はもうただのファブルシードだね、を探す。
幸いファブルシードの体の大きさもあって、二人はすぐに見つかった。
「さて、お主はどこに住まわせるかのぅ。あの小僧が連れて来たと言えば村の者達は文句を言わんじゃろうが、この巨体じゃしのう。とりあえず村はずれにお主用の牧場を作るとするかの。あとは土魔法で巣をつくっておけばええか。この巨体じゃと結構な大喰らいじゃろうが、食用キメラの研究をしておるお陰で慌てずに済むのは不幸中の幸いじゃったの」
「ギャオッ!」
「はははっ、お主もあの小僧には酷い目に遭わされたか? 安心せぇ。あの小僧は滅多にここには帰ってこんからの」
「ギャウ!」
ガンエイさんに管理を放り投げてしまったけど、幸いにも二人はすぐに打ち解けたみたいで仲良く談笑していた。
うん、二人が仲良くなれて良かったよ。
「ガンエイさん!!」
「うぉう!?」
「ギャオゥ!?」
僕が話しかけると二人は飛び跳ねんばかりに驚きの声をあげる。
「こ、ここここ小僧!? ど、どうした!? なんぞ忘れ物か!?」
「ギャギャギャギャオウ!?」
いけない、ちょっと驚かせちゃったみたいだね。
でも今は時間が無いから仕方ない。
「はい! ちょっとファブルシードの鱗を削らせてもらいたくて!」
「は?」
「ギャウ!?」
僕の言葉を聞いた二人はどういう事? と首を傾げる。
「そんなにたくさんは要らないからちょっと削らせてね」
「う、むぅ?」
「ギャ、ギャオウ」
よし、本人(龍)の許可を貰えたしさっそく作業に入ろう。
「それじゃあいくよ!」
僕は加工用の短剣を取り出すとファブルシードの鱗を削り始める。
削り過ぎないように、でも薄くなり過ぎないように厚みを気をつけてっと。
あと角の表面もなるべく途切れないように削っていく。
「お、おぉう!? ドラゴンの鱗を絶妙な刃捌きで削っておる! いやこれは削ると言うより薄く切っておるのか!? 元の鱗を丁度半分の厚みになるように削っておる! なんという手捌き! 魔物ブリーダーの手捌きに匹敵、いやそれ以上じゃ!」
「よし、こんなものでいいかな。この鱗の削りカスは貰って行きますね! それじゃあ僕はこれで!」
十分な量の鱗と角を確保し、それらを魔法の袋に収納したらすぐに転移魔法の準備を始める。
そしたらガンエイさんから待ったがかかったんだ。
「待て待て! コヤツも持っていけ!」
ガンエイさんは牧場に放し飼いにしているキメラと思しき魔物達の中から、白い毛玉を僕に向けて放り投げて来た。
それを受け取ると、毛玉がモゾモゾと動く。
「キュウ?」
「あれ? モフモフ、村に残ってたんだ?」
「キュウ!」
なんとガンエイさんが投げてきたのはモフモフだったんだ。
そう言えばさっきからモフモフの姿を見てなかったっけ。村に残ってたんだね。
「じゃあいくよ!」
「キュウ!?」
モフモフを抱え直した僕は再び王都へと転移した。
◆
学園に戻って来た僕は、再び地下のファブルシードが封印されていた場所へと戻って来た。
「さて、それじゃあゼンザール学園長が戻ってくる前に急いで作業を終わらせようか!」
僕は魔法の袋から必要な素材を取り出していく。
「まず核の部分は以前狩ったエメラルドドラゴンの魔石でいいかな。宝石系のドラゴンの魔石はマジックアイテムの核として使うのに適しているし。こいつにこれとこれを加工して……よし、心臓部が出来た!」
一番大事な心臓部を完成させると、次は体を支える為の骨格を作る。
「骨格はブラックドラゴンのものを使おう。これに強化魔法をかけて全体の魔力強度を偽装。次はこっちの薬草と魔物の体液と魔法液を混ぜて接着剤にしたら骨に残りもののドラゴンの肉を張り付けて肉付けっと。内臓はモツ鍋用に狩っておいた魔物のモツで再現しておこう。後はさっき削ってきた鱗と角を表面に接着していって……」
全体が組みあがった所で加工魔法をかけてバランスを整えたら、保存魔法をかけて肉やモツの腐敗を防ぐ。
そうして出来上がったのは邪龍ファブルシードにそっくりのドラゴンだった。見た目だけ。
「よし! 偽邪龍完成!! これで偽装工作は完璧だ!」
よーし、いい出来だ。これなら簡単にはバレないぞ!
何せただ見た目を偽装しただけじゃない。エメラルドドラゴンの魔石を核としたマジックアイテムを内部に搭載する事で、あたかも生きているかのようにドラゴン特有の強い魔力の波を動かしているのだ。
さぁ戻ろうと思った僕だったけど、足元に転がっていた金属の残骸に気付く。
「あっ、いっけない。宝剣ラーヴェレインもなんとかしなきゃ。でもここまで壊れてたら直すのは面倒だなぁ。手持ちの素材を加工魔法で加工してそれっぽく作っておくかな」
危うくもう一つの証拠を忘れる所だったよ。
僕は魔法の袋から手持ちのミスリルや魔物素材を取り出すと、それらに加工魔法をかけて刀身や装飾を作り上げる。
「刀身の見た目はこんな感じか。あとは封印魔法の効果と……そうそう魔剣としての単純な強さもある程度あった方がいいよね。シンプルに切れ味をあげておこう。あと鍔の部分には防御魔法を付与して、握り手部分には体力回復効果、柄頭の部分には錆止めと切れ味維持の魔法を込めておこう」
念の為付与魔法で剣全体の性能を底上げしたら仮組みを行い、付与した魔法同士の反発が無い事を確認したらしっかりと本組み立てを行う。
「よし! 宝剣ラーヴェレインも完成! あとはこの偽宝剣を偽邪龍に突き刺してっと……よし、これで元通り!!」
封印の間はすっかり戦闘が起きる前の光景に戻っていた。
違うのは正体を現したスデン君がいない事くらいだね。
「そうそう、もとの宝剣の残骸は魔法の袋に回収しておこっと」
これはもう使い物にならないからね。
「ああそうだ。試験で使う的から地下へ魔力を伝える為の魔術回路の断線も直しておかないとね!」
よし、これで全ての準備は完了だ!
◆
「おお、こんな所に居たのかね! 謁見の許可が下りた! すぐに国王陛下に謁見に行くぞ!」
全ての準備が終わって皆の居る試験場まで戻ってくると、僕を探していたらしいゼンザール学園長がやって来る。
危ない、ギリギリ間に合ったよ。ちょっと偽宝剣の製作に時間をかけ過ぎちゃったな。
さて、それじゃあここからが本番だ。
僕はさも何のこととばかりに首を傾げる。
「はい? 謁見ってなんのことですか?」
「さっき言っただろう。国王陛下に謁見するのだよ!」
けれどゼンザール学園長は僕の様子を訝しむ事なく国王に謁見する為だと返してくる。
だけど僕は更にとぼけた。
「国王陛下に謁見? 何の話ですか?」
そこでようやく何かおかしいと思ったのか、ゼンザール学園長は眉を顰める。
「何を言っているんだ、さっき言っただろう? 魔人と邪龍の件で国王陛下に謁見すると」
「魔人と邪龍? 何のことですか?」
さらに僕はゼンザール学園長の言葉にとぼける。
ゼンザール学園長の後ろを見ると、リリエラさんも僕が何でとぼけているのかと首を傾げていた。
「何って地下の封印の間の話だよ!」
「地下の封印の間? 学園の地下にそんな物があるんですか?」
なおも僕がとぼけると、ゼンザール学園長は僕では話にならないと思ったのかリリエラさんの方に向き直る。
「地下の邪龍と魔人は君も見ただろう!?」
ゼンザール学園長の視線から逃れた僕は、彼の後ろからリリエラさんに向かってしーっと口元で指を立てて話を合せてとジェスチャーを送る。
「え、えーっと……なんの事ですか?」
リリエラさんもそれで僕の言いたい事を理解したらしく、ちょっとだけこちらにじっとりした目を向けたもののゼンザール学園長の質問にとぼけた。
「は?」
僕だけでなく一緒に地下での戦いを見ていた筈のリリエラさんにまで知らないと言われて、ゼンザール学園長が困惑する。
「学園長、僕達は学園に魔物が現れたのでそれを倒しながら逃げ遅れた人がいないか探して回っていたんです。そしたら向こうの銅像のあるあたりで学園長が倒れているのを見つけたんですよ。僕達は地下の封印の間なんて見てませんよ」
「な、なんだって!? そんな筈は!!」
混乱が頂点に達したのか、ゼンザール学園長は試験場を飛び出して地下への入り口があった広場へと向かった。
そして入り口が隠されていた銅像の前に立つと愕然とした顔になる。
「と、扉が開いてない!? ちゃんと魔法鍵が閉じられている!?」
ふふ、勿論封印はかけ直してあるよ。
そこが開いていたら疑われちゃうからね。
混乱しきったゼンザール学園長は、地下の封印の間を確認するべく魔法鍵を解除すると、慌てて地下へと駆け下りて行った。
そしてしばらく待っていると、呆然とした顔のゼンザール学園長がとぼとぼと戻って来たのだった。
「じゃ、邪龍の封印が戻っていた……宝剣ラーヴェレインも壊れていない。魔人の死体も無かった……どういう事だ?」
「夢でも見ていたんじゃないですか?」
「夢? あれが夢?」
「ええ、詳しい事は分かりませんが、何も問題なかったんでしょう?」
「あ、ああ……それは、確かにそうだったんだが……」
よし! 上手く誤魔化せたぞ!
これぞ僕の国王謁見対策!『偽邪龍封印』だ!!
偽装した邪龍と偽装した宝剣を地下に設置する事で、封印は解かれなかったと偽装する会心の策だよ!!
ポイントは本物の邪龍の素材を使っている事だね。
これのおかげでゼンザール学園長も邪龍が偽物とは気づけなかったみたいだ。
ゼンザール学園長も邪龍の封印を維持する事を重視しているから、封印された邪龍を調査しようとは考えないだろうし。
そして肝心の偽邪龍は保存魔法をかけてあるからそう簡単に壊れたりもしない。
完璧な作戦だね!
「いや、だがしかし……」
けれどなおも納得できないのかゼンザール学園長はうーんと唸っている。
そんな時だった。
急に試験場の方がざわつき始めたんだ。
「何かあったのかな?」
何だろうと思って試験場に向かうと、そこには見知らぬ人達の姿があったんだ。
その人達は魔法使いではあるみたいだけど妙に豪華な衣装を着ている事から学園の教師ではないっぽいね。
「諸君静粛に!」
と、その人達の傍に居た人が声を上げる。
あっ、あれAクラスの担任のクワントロー先生だ。
「この方々はわが国が誇る宮廷魔術師の方々です」
「宮廷魔術師!?」
「マジかよ!?」
まさかの宮廷魔術師登場に生徒達がざわめき出す。
でも何で宮廷魔術師が? ……もしかして邪龍騒動を解決する為に派遣されたとか!?
そんな! 国の動きにしては速すぎない!?
普通国が動く程の事件があったら、責任者の決定や出動する騎士団や関係者の選出でかなりの時間がかかる筈。具体的には責任の押し付け合いや手柄の奪い合い的な意味で。
だけど次にクワントロー先生が発した言葉は僕達の予想とは大きく外れたものだった。
「なんと宮廷魔術師の皆様は光栄にも君達の試験を視察しに来てくださったのです!」
「「「「……え?」」」」
試験の視察? この状況で?
エメラルドドラゴン(;´Д`)「久々の出番です(魔石のみ)」
邪龍(;´Д`)「通り魔に遭いました」
モフモフ_Σ(:3)∠)_「貴族に会いたくないからって圧倒的技術力の暴力で学園長を煙に巻くとかエゲツなくない?」
学園長(;◎Д◎)「あれは……夢?」
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