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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔法学園編

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第266話 危険な賭けに挑む者

作者_(:3)レ∠)_「宣伝でーす!」

ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「作者が執筆を担当した『NG騎士ラムネ&40FX 下巻』が4/27日に発売ですよー!」

ヘイフィー(。・ω・。)ノ「紙媒体の本は予約限定ですが、電子書籍は各種電子書籍サイトで購入できます!」

作者_(:3)レ∠)_「俺は今! モーレツに熱血してるーっ!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

◆トライトン◆


「試験で勝つのは止めろ? 何を言っているんだ!?」


 ミナ=カークス達の下に送り込んだ生徒が突然馬鹿な事を言い出した為、僕は思わず声を上げてしまった。


「彼女、いや彼に勝つのは無理です。諦めた方が良い」


「馬鹿を言うんじゃない。中途入学してきた連中に僕達Aクラスのエリートが負ける訳がないだろう! それに僕には……」


 僕にはこの奥の手が……


「貴方が手に入れた奥の手『魔導収束装置』を使っても駄目だと言ったんです」


「な、何でそれの事を!?」


 馬鹿な、僕は奥の手が何なのかを教えた事はないぞ!?

 何故コイツがその事を知っているんだ!?


「攻撃魔法の威力が劇的に高まるマジックアイテム魔導収束装置、そんなものが運良く試験の直前で手に入るなんて話が美味すぎると思わなかったんですか?」


「ま、まさか……」


 このマジックアイテムを流したのは……


「ええ、そうです。それが手に入る様に仕向けたのは僕ですよ」


「な、何の為に!? 何故自分で使わずに僕が手に入れるように仕向けた!?」


 何故そんな無意味な事をする!?

 そんな事をしても何の得もないだろう!?


「僕の家は爵位が低いですからね。あまり派手に活躍しても上の方々から目を付けられるからですよ。だから上に行ける才能と地位を持つ人に取り入る事にしたんです」


「な、成る程。そうなのか……まぁ悪い考えじゃないな」


 確かに地位の低い者が分不相応に目立てばそれを快く思わないものによって叩き潰されるのはよくある事だ。

 敵対する者を退ける事が出来てこそ真の貴族。潰される程度の者は所詮下級貴族だからね。


「ですがそのマジックアイテムで高める事が出来る威力には限度があります。具体的には本人の実力からあまりに乖離した威力は発揮できないんですよ」


「僕が劣っていると言うのか!?」


 侮辱だ! 僕の魔力がミナ=カークスに大きく劣っているだと!?


「逆です、彼が異常すぎるんですよ」


「彼だと? 僕のライバルはミナ=カークスだぞ!」


 何だ? コイツは何を言っている?

 Aクラスの生徒で僕の敵になる者はいない。モルテーナ=チョロイントは優れているが僕には劣る。

 僕と対等に戦える可能性があるのはカークス前学園長の孫娘であり本人も魔法の才能に溢れたミナ=カークスだけだ。


「いいえ、本当に恐ろしいのはミナ=カークスじゃありません。本当に恐ろしいのは、彼女の傍に居る男、レクスです!」


「レクスだと!?」


 誰だそれは? 確かにミナ=カークスの傍には何人か男が居たと思うが……一番傍に居たのは確か赤い髪の……


「あの男か!」


 僕はいつもミナ=カークスに馴れ馴れしくしている頭の悪そうな赤毛の男を思い出す。

 あんな軽薄そうな男が僕よりも優れているだと!? 馬鹿にするにも程がある!


「今回の試験では仮入学の生徒が参加します。それはミナ=カークスだけでなく彼も参加すると言う事です。彼が参加すれば、Aクラスの、いえ学園の教師ですら敵わない」


「ありえない! この学園はわが国で最も優れた魔法の使い手が集まるエリート中のエリートの学び舎だぞ! それに彼女達の使う魔法の情報は君が僕達に流しているじゃないか! 同じ条件なら僕達が勝つに決まっている!」


 そうだ。彼女達が使う魔法は彼を介して僕達にも伝わっている。

 全員ではないが多くの生徒がそれらの魔法を使いこなせるようになってきた。

 ならばより魔法への造詣が深い僕達の方が高い精度で魔法を扱う事が出来るに決まっている。


「いいえ、彼が我々に開示した魔法は彼が持つ知識の極々一部です。事実チョロイント家の令嬢との決闘では信じられないような規模の魔法を発動させたのですから」


「何だそれは!? 僕は聞いていないぞ!」


 どういう事だ? モルテーナ=チョロイントが決闘で負けた事は聞いているが、そんな魔法の報告は受けていないぞ!


「僕も最初はマジックアイテムか何かを使った詐欺だろうから報告する必要はないと思っていたんです。ですが冷静になって考えるとあれ程の魔法が使えるようなマジックアイテムはそう何度も使えるものではありません。それほど貴重なマジックアイテムを学生同士のそれも非公式な決闘で使うなどありえません。事実彼が教えてくれる魔法の知識は僕達がAクラスで学んだどんな授業よりも高度なものでした。つまり、あの魔法は彼が実力で発動した魔法と言う事です。魔法の知識、精度、魔力量、どれをとっても超一級品。とてもじゃありませんが彼に勝てる気はしません」


「何を……馬鹿な……」


 コイツは何を言っているんだ? そんな異常な人間いる訳が無いだろう……


「疑うのでしたら実際に見に行ってみると良いですよ。彼の授業を」


「い、良いだろう。見てやろうじゃないか! そして化けの皮を剥がしてやる!」


 ふん、どうせ何かのトリックに違いない。

 コイツはそれを見抜けず騙されているんだ!


 ◆


「う、嘘だ……」


 ありえない光景を見た僕は、自分でも気付かぬ内に崩れ落ちていた。

 あの後、彼は自分がレクスに頼んで訓練場で魔法を使うよう頼むから、隠れて見てくれと言ってきた。

 ミナ=カークス達に気付かれないよう物陰に隠れていたので、彼女達の姿こそ見えなかったが、それでも奴の放った巨大な魔法の姿だけは見えた。


 ありえない程の濃密な魔力、それを僅かも揺らがせる事のない精度、そしておぞましい程の破壊力。


「何だったんだアレは!」


 訓練用の結界の外からでも感じる程のあの圧倒的な力は何だ!? 的どころか地面が溶けて消えたぞ!?


「どうやらご理解戴けたようですね。あれが彼の実力ですよ。しかもあれだけの魔法を使ったのに全く疲れた様子も見せない」


「バ、バケモノか……!?」


 ありえない! あんな大魔法を一人で使ったら魔力の枯渇で意識不明になってもおかしくないんだぞ!


「分かったでしょう? 彼に勝とうなんて間違っているんです。そもそも挑むのが間違いなんです」


 だから諦めましょうと、僕を労わる様な声音で囁いてくる。

 

「だ、駄目だ駄目だ駄目だ! それじゃあ僕の優秀さを示せないじゃないか!」


 僕は負ける訳にはいかないんだ! 今度こそ! 今度こそ彼女に勝つんだ!

 僕の方が優秀だと彼女に知らしめるんだ!


「……手はない事もありません」


「……なに?」


 つい先ほどまで諦めるべきだと僕を説得していた彼が急に発言を翻した。


「先ほど貴方は彼の事をバケモノと言いましたよね?」


「そ、それが何だと言うんだ?」


 アレは化け物だ! まともな人間じゃない!


「それが答えですよ。バケモノを越えるには貴方もバケモノになるんです」


「僕が、バケモノに……?」


 何だそれは? 何が言いたいんだ?

 彼は懐から一本の薬瓶を取り出す。

 

「これはとある遺跡から魔力集積装置と共に発見された特別なポーションです」


 特別なポーション? この状況で出すと言う事は魔力回復ポーションの類か?


「このポーションは使用者に人を遥かに越えた力を与えてくれる稀有な力を持った薬です」


「そ、そんなものが!?」


 人をはるかに超えた力を与えるポーションだって!?

 そんなものが実在するのか!?


「ただし」


 と、彼は掌を突きだして僕を制止する。


「これを使えば貴方は大切なモノを失う事になるでしょう」


「大切な物? それはなんだ?」


 強烈な副作用や命を失いかねない猛毒というならともかく、大切なモノ?


「分かりません。ただこれが発見された時に一緒に箱に入っていたメモにそう書かれていたそうです。ただ詳細な内容は文字が滲んでいて読めなかったそうです。しかし何かしらの代償が発生するのは間違いないでしょう。……もしかしたら、人を越えた反動で人ではないナニカになってしまうのかもしれませんね」


「そ、そんな怪しいモノ使えるか!」


 バカバカしい! 本物の化け物になってまで使う訳が無いだろう!


「ええ、そうでしょうね。ですので無理に勧めはしません。今回は彼、いえミナ=カークスに負ける事を受け入れて、いつか実力で彼女達に勝てる日を夢見て地道に鍛錬を積む方が良いでしょう」


 僕が拒否する事が分かっていたのか、彼はあっさりと僕の言葉を受け入れた。


「では僕は偵察に戻りますね。ああ、使わないとは思いますが、一応この薬は置いていきますね」


 そう言って彼は何事もなかったかのように去って行った。

 残されたのは彼が置いていった怪しげな薬のみ。


「人を越えた力を得る代わりに化け物になるかもしれない薬だと……?」


 僕は怪しげなポーションを手に取る。

 どう見てもどこにでもありそうなポーションだ。人を越えた力を与えるような特別な魔力なんて欠片も感じない。


「ふん、だれがそんな物!!」


 ポーションを地面に叩きつけようとしたその瞬間、脳裏にあの魔法が放たれた光景が思い出された。


「っ……!!」


 人間が使うとは思えないあの異常な威力の魔法を。


「本当に奴は、人間じゃない……のか」


◆???◆


「くそっ、見通しが甘かった!! 本当に何なんだあの化け物は!」


 あの魔法を間近で見た僕は、訓練場を離れた今でも思い出すだけで背筋が震える思いだった。

 以前モルテーナ=チョロイントとの決闘で見た魔法も異常だったが、実際に威力を確認したあの魔法の力は、僕の認識が激しく甘かった事を思い知らされた。


「あんなのが居るんじゃ迂闊に動くことが出来ないじゃないか」


 くそっ! まだアレの在処は分かっていないと言うのに!


「まさかアイツはアレを守る為に学園長が呼んだ護衛なのか?」


 いや、それはない筈だ。

 アレの調査は慎重に慎重を期して行っている。

 学園側を刺激するような行動には移っていない。

 あくまで生徒達が自主的に問題を起こすように噂話の体で一部の素行の悪い生徒を唆し、プライドの高い生徒にもめ事を起こすようにそれとなく促しているだけだ。


「生徒達に流した噂も未だ有益な情報を得るに至っていない。やはり生徒が入れる場所にはアレはないか」


これほど探しても見つからないとなると、学園にはないのか?

 いや、アレは学園の中にある筈だ。

 過去の王族からようやく手に入れた僅かな情報から学園にアレがあるのは確定なのだから。


「もう少しあの王族から話を聞きだせればよかったのだがな。まさかあそこまで王家が本気で口封じをしてくるとは」


 かつてこの学園にアレに関する重要な秘密があると漏らした王族は、数日と立たずに不慮の事故で死んだ。

 そして情報を引き出した僕もまた王家の暗部に狙われた。


 返り討ちにする事は容易だったが、それでは王家を警戒させるだけだ。

 ダミーを使って死を偽装した僕は新たな姿を作って再び国に潜り込んだ。


「以前の地位が使えればもっと早く情報を集める事ができたのにな」


 だが一から地位を築くのには時間がかかる。

 勿論僕達の寿命から言えばそこまで長い時間ではないが。


「こうなると彼には頑張って貰わないとな。あの歪んだプライドの高さだ。間違いなくアレを飲むだろう」


 このタイミングでアレの封印の情報を持っているであろう元学園長の孫とそれに対して歪んだ感情を持っている高位貴族のガキが揃ったのは僥倖だった。

 これを利用して学園に揺さぶりをかける。


 そうすれば学園は混乱に包まれる。

 その時に学園の教師達が最優先に考えるのは生徒の安全ではなくアレの封印なのは間違いない。

 所詮生徒などアレの重要性に比べれば大した問題ではない。

 家の跡継ぎならともかく、大半の生徒は卒業後の働き口を求めてやってきた次男以下の連中だ。

 

「学園長を始めとした幹部教師への監視を強めろ!」



 僕は隠密に長けた使い魔に命じて監視を強化する。

 ここで活動する為に力を抑えているせいで碌な使い魔が作れなかった。

 隠密性を重視した為に戦闘能力は著しく低い。


だがそれでも校舎内では学園が設置した警戒用の結界に引っかかるだろう。

 敷地内を動き回るのも察知される危険が高い。

 その為使い魔達には動くことなくただ見張る事だけを命じていた。

 

 あとはあの不確定要素だが、こちらから動かない限り気付かれる心配はないだろう。

 何しろ僕には絶対バレないトリックがあるからだ。

 その所為でこちらからも手を出す事は出来ないが、アレの封印を解く事が出来れば奴を警戒する必要もなくなる。


「ふふふ、誰にも邪魔はさせない。アレの封印を解き、この国を滅ぼすのは僕だ!」

モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「やめろー! 命を大事にしろー!」

訓練場の地面(・ω・(「しどい……」


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― 新着の感想 ―
[一言] アレの正体を知ったときのぼくが哀れで哀れで(笑)
[良い点] 今回は魔人関連の事件が起こらないと思っていたが、不穏当な事を考えてるヤツがいましたねー。 どんな展開になるのか、楽しみです。
[気になる点] 「絶対バレないトリック」…この表現だけで、密偵または使い魔の正体がレクスにバレてそうな予感。 それにより、第264話「生徒達の噂」にて「アレ」に興味を持ったレクスが「アレ」に通じる入口…
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