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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔法学園編

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第261話 実践訓練(草むしり)

作者_:(´д`」∠):_「さむぅい……」

ヘルニー_(:3 」∠)_「暖かくなってきたと思ったらまた寒くなってきたねぇ」

ヘイフィー_(┐「ε;)_「皆さんも寒暖差に気を付けてくださいねー」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「「「「「フレイムインフェルノ!!」」」」」


 生徒達の放った魔法が森を焼く。

 いや、正しくは魔物の森を焼いていた。


 ここは危険領域魔獣の森。

 森の植物全てが魔物と言う厄介な場所だ。

 その森を構成する魔物達を、生徒達は焼いていたんだ。


 目的はズバリ彼等の頭に転写した魔法知識を実戦で活用してもらう事。

 何しろ知識を与えたと言ってもそれは辞書を渡したに過ぎない。

 意識して使う事で与えられた知識を活用できるようになるんだ。

 と言う訳で彼等にも前々世の僕同様実戦で知識を馴染ませる事にしたって訳さ。


 とはいえ、彼等はあくまでも魔法学園の生徒。

 前々世の僕の時は、覚えた知識を最大限活用すればギリギリ生き残れるかな? 無理かな? ってレベルの相手が群れでいる場所に放り込まれたりしたもんだけど、今回は放課後勉強会レベルだからあんまり厳しい修行は出来ない。

 教えた知識も基礎の基礎だしね。


「す、凄い!! 俺達が魔法の大家と言われたあのチョロイント家の秘術を使ってる!!」


「こんなに複雑な魔法操作を俺が行えるなんて!!」


 彼等は自分が思い通りに攻撃魔法を使えることにとても興奮していた。

 まるで世界が変わったと言わんばかりの喜びようだ。

 けど僕が教えたのはあくまで基礎の基礎だ。

 なのに彼等は魔法が自在に使えるようになったと喜んでいる。

 それはつまり、彼等が基礎をマスターしていなかったと言う事に他ならなかった。


「す、凄いですわ! これが本当の魔法の効率的な使い方なんですのね! 今までの自分の魔法がどれだけ非効率的な使い方をしていたのか思い知らされますわ!」


 モルテーナさんもまたブラッシュアップされた自分の魔法に興奮の声を上げる。

効率をよくする方法というのは応用の一種だ。

 そして応用は基礎が出来ていないと上手くいかない。

 つまり彼等が攻撃魔法を苦手とする原因は、基礎が出来ていなかった事も一因にあったんだと僕は考えていた。

 苦手意識もあって習得が不完全だった彼等の知識は、正に未完成のパズルと言っても過言じゃなかった。

そんな状態だから、彼等は自分が埋めるべきピースも分からない状態ときたもんだ。

 必要な情報が欠けていると言う事は、行使する魔法も不完全な魔法と言う事。

 これじゃあ効率も何もあったもんじゃない。


 だから僕は転写知識という形で彼等に不足しているピースを渡したんだ。

 そして今、魔物達相手に覚えた知識を使って魔法を使わせる事で、どのピースがどこに嵌るのかを感覚で覚えて貰っている訳さ。


「そうですわ。森を外周から焼くのなら、縦長よりも横長に魔法を放った方が効率的ですわね!! フレイムインフェルノ!!」


そして基礎を修める事で間違っていた部分が矯正されて自然と効率が上がり、こんな風に応用を考えるだけの心の余裕が出来る。


「うっ!」


 ただ、応用の仕方が悪いと魔力や集中力が予想以上に失われ、モルテーナさんのように魔力不足でふらついてしまう人もいた。

 こうなるのはまだ覚えた知識を完全に自分の物に出来ていない証だね。


「魔力切れを起こした人はマナポーションを飲んで魔力を回復させてください! 具合が悪くなった人は言ってください。すぐに治癒魔法で回復しますから!」


「「「「「はーい!!」」」」」


「うぉぉー! 森をブチ抜け! 俺のフレイムインフェルノッ!!」


 ジャイロ君の放ったフレイムインフェルノが森の奥深くまで貫くように焼き払う。

 なるほど、魔力を集中させて貫通力と射程を伸ばしたのか。

遠距離攻撃が苦手なジャイロ君だけど、ああやって槍のような長物の延長として魔法を構築するのは炎属性が得意な彼らしいね。

 ただ……


「お、おおぉ~~~~!?」


 集束と射程の向上で魔力を消費してしまったらしく彼もまたふらついてしまう。

 あとプラント系の魔物は生命力が高く首や心臓のような分かりやすい弱点を持たないタイプの魔物だ。

 それゆえ突きに相当する魔法の使い方だとちょっと効率が悪い。


「ジャイロ君、プラントタイプにその使い方をするなら、槍のように突くんじゃなくて剣のように薙いだ方が良いよ。こんな風に、フレイムインフェルノ!!」


 僕はフレイムインフェルノを糸のように収束させると、腕を斜め横に振る。

 すると射程に収まっていたプラント系の魔物達がズズズと音を立てて地面に転がった。


「「「「「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」


「な、何をしたんだ一体!? 魔法を放っていないのに魔物が……切れた?」


「使ったのはフレイムインフェルノ……なんだよな?」


 魔法を放ったところを見ていなかったのか、生徒達が何をやったんだと首を傾げる。


「今のはフレイムインフェルノを糸のように収束させて射程を伸ばしたのよ」


「い、糸?」


 ミナさんの説明に生徒達が目を白黒させる。


「そうよ、巨大な炎の柱を放って敵を焼き尽くすフレイムインフェルノの魔力を糸の細さまで凝縮したの。やった事はレクスがモルテーナの魔法をフレイムアローで貫いたアレと同じね」


「はひゅっっっ!!」


 ミナさんの説明を聞いたモルテーナさんが奇妙な声を上げる。

 なんだか震えてるけど大丈夫かな? ああ、具合が悪くなったのに無理して魔法を使い続けたんだね。

訓練の最中にやせ我慢する子は前々世や前世でもいたからすぐに分かった。

これ以上無理を続けて悪化する前に回復魔法をかけてあげないと。


「うぉぉー! 流石兄貴! スゲェぜ!! どこまで切ったか全然見えねぇよ!!」


 モルテーナさんに回復魔法と精神の沈静化魔法をかけていると、ジャイロ君が僕の放った魔法の痕跡を見て興奮の声をあげる。


「成る程なー。巧く収束させるともっと射程が伸びるんだな。これ、俺のメルトソードにもつかえんなー」


 ジャイロ君はただ興奮するだけでなく、自分の得意技を更に昇華させるべくイメージを固めてゆく。


「くっ、俺達も負けていられないぞ!」


「ああ、俺達はAクラスなんだ! ポッとでの新入りに先を越されてたまるかよ!」


 ジャイロ君の姿に刺激を受けたのか、生徒達が気合を入れ直す。


 うんうん、こうやって若者が自分の意思で成長していく光景って良いよね。

 前々世でも生徒が壁を越えようと試行錯誤する瞬間を見るのはとても嬉しく思っていたんだ。


 時間が経つにつれ生徒達の魔法の効率はどんどん上がっていく。

 その光景にもう一人喜びの声を上げる人の姿があった。


「ああ、素晴らしい。魔獣の森がどんどん焼き払われていきます」


 そう、ヘキジの町の冒険者ギルド副ギルド長であるミリシャさんだ。

 僕は生徒達の訓練を行う為、ヘキジの町の冒険者ギルドに相談をしにいったんだ。

 すると……


「その要請はこちらとしてもありがたい話です。魔獣の森の主であるエンシェントプラントは討伐されましたが、森自体は眷属である他のプラント系の魔物が広げていますからね」


 こんな感じで二つ返事で許可を貰う事が出来たんだよね。


「幸い、森の主が倒された事で森の拡大速度は遅くなっていますが、それでも伐採依頼はあまりお金にならない事もあって不人気のままなんですよ。ですので魔法学園の修行名目で森の伐採を行って頂けるのはこちらとしても願ったりかなったりなんです」


 と言う訳で双方の利益がかみ合った結果、僕達は学園の課外授業の名目で魔獣の森の伐採訓練をしていたんだ。

 ちなみに生徒達を学園の外に出す事は学園長の許可を取ってある。

 最初は難色を示されたんだけど、僕とリリエラさんがAランク以上の冒険者だと知ると凄く驚いた後で許可をくれたんだ。


 唯一の問題は王都からヘキジの町まで遠い事だったのだけれど、それも以前作った魔獣の森を突っ切る街道を作った事でそれも解決していた。

 というのも本来ヘキジの町から王都に向かうには大きく迂回する必要があったんだけど、この街道が出来てからはその辺りの事情がかなり変わったらしい。


 利に聡い商人達はこれまで以上に早く王都に行けるようになるこの街道をこぞって利用する様になって、主要街道のルートは大きく変わったんだとか。

 その恩恵を真っ先に受けたのがこれまで街道から離れていた為に過疎っていた村や町だった。

 これらの町や村は森を抜ける街道を利用するようになった商人達によってにぎわう事になったんだ。


 旅人が増えた事で宿が増え、商機を見出した商人が店を立てて商売を始める。

 そうなると護衛の冒険者が装備を整える為に武具やポーションを売るお店も繁盛する。

 結果この村は王都側から魔獣の森に最も近い冒険者達の拠点になっていったんだ。


 そしてこの村なら、王都へ一日あればたどり着けるので、ギリギリ学園の許可を取れたんだ。

 これが馬車の中で一泊するような旅程だと許可がおりなかったらしい。

 皆貴族の子弟だから、そこはしょうがないね。


 そして本来Bランク冒険者しか入れない魔獣の森での活動許可も、街道を突っ切ってやって来たミリシャさんが特別に監督役を買ってくれたお陰で森の外からなら伐採をして良いと許可が貰えたんだ。 


「ああ、予算ゼロで魔物が減っていくのは良い光景ですねぇ。森の外周は皆がこぞって素材を採取するから間違って素材を焼いてしまう心配もありませんし」


 低予算で森の開拓が出来る事にミリシャさんはご満悦みたいだ。


「レクスさんが拠点を移してから伐採速度が落ちて今の規模を維持するので精いっぱいだったんですけど、今後も魔法学園が訓練の為に来てくれるのなら安全な規模で森を維持できるようになりますね」


 あはは、ミリシャさんは大げさに言うなぁ。

 まぁ雑草とはいえ森は広いから、処分する為の予算が浮くと考えると嬉しいんだろうなぁ。

 冒険者さん達に草むしりの為に安い給料で一日を費やしてくださいとは言いづらいもんね。場所によっては遠出する所もあるし。

 それに植物系の魔物はいくらでも増えるから、皆が魔法の練習台にしても全滅させる心配もないしね。


「レクスさんから貴重な耐火のマジックアイテムを提供して貰えたのも助かります。あれのお陰で万が一にも冒険者が焼かれる心配がなくなりましたから」


「いえいえ、大したものじゃありませんよ」


 ミリシャさんのいう耐火のマジックアイテムは、ギルド側から出た森で活動している冒険者が巻き込まれたら大変だという懸念を解決する為に提供した品だ。

 人間だから、気をつけていてもうっかりミスをする可能性はある。

 そう考えると万が一の為の対策は考えておくべきと言うギルドの意見はもっともだった。


 幸い、耐火のマジックアイテムは簡単に作れたから、ヘキジの町で活動するBランク冒険者が余裕をもって使えるだけの数を提供することにしたんだ。

 ただここで予想外の収入が発生したんだよね。

 僕は魔法の練習をさせて貰うお礼として提供したんだけど、ギルドは貴重な品をタダで貰う訳にはいかない、是非買い取らせてほしいって言ってきたんだ。


「えっと、僕としてはタダで提供するつもりだったんですけど」


「タッッッッ!? っ~~~~~いえっっっ!! そういう訳にはいきません!!  貴重な品ですから!! 万が一悪質な冒険者にお預かりした物を持ち逃げされては大変ですからっっ!!」


 ああ成る程、万が一寄付した備品を盗まれたりしたら、ギルドとしては外聞が悪いか。

 確かにそれなら買い取った方がもめ事にならないよね。


「成る程分かりました」


「ではこちらの品ですが……そうですね、レクスさんの話ではパーティの一人が持っていれば近くにいるメンバー全員に効果があるそうですし、一つあたり金貨300枚といったところでしょうか」


「300枚!?」


 ええーっ!? それはいくら何でも高すぎるよ!?

 草刈り魔法の火を防ぐ程度のアイテムだし、こんなのせいぜい銀貨1枚程度だよ!?


「流石にそれは多すぎですよ! もっと安くて構いませんから!」


 ビックリしたぁ。流石に金貨300枚は多すぎだよ。


「いえ、マジックアイテムの譲渡なのですから、そう言う訳にはいきません。でないと冒険者ギルドがSランク冒険者から不当に買いたたいたと悪評が立ってしまいます」


「うーん、それにしたって金貨300枚は……」


「それだけではありません。先ほども言いましたがレクスさんが拠点を移した事で魔獣の森の伐採速度が落ちているんです。その問題の解決もしてくださったのですから、正当な評価として正しく代金を支払わないといけないんです」


 正当な評価って……ん? あれ? もしかして…… そうか! そういう事か!

 ミリシャさんのいう対価は耐火のマジックアイテムの事じゃなかったんだね!

 彼女が本当に言いたかったのは、モルテーナさん達魔法学園の生徒達の事だったんだ!


 魔獣の森の伐採依頼は下位のプラント系の魔物がお金にならないわりに苦労が大きい所為でなかなかやりたがる人はいない。

 そんな訳だからこの案件はギルドとしても頭の痛い問題だった。


 更に魔獣の森は内部に貴重な薬草が採取出来る事もあって完全に伐採し尽くしてもいけない。

 だから安い仕事だけど、森の規模が規模だから予算がかさむ問題があった。


 だけどここで魔法学園が課外授業の一環として魔獣の森の伐採を引き受けてくれるようになれば、冒険者ギルドは貴重なBランク冒険者を安くて拘束時間の長い伐採依頼に割り振らなくて良くなるし、予算の心配もいらなくなる。


 つまりこの報酬は魔法学園が今後も継続的に魔獣の伐採をしてくれるように交渉して欲しいと言う裏の意味があったんだ。


「成る程、こういう依頼の出し方もあるんだね……」


 冒険者ギルドとしても国から管理を任されている危険領域の対処を貴族の子弟が多い学園にタダでやってくださいとは言えないもんね。

 でも学園に訓練をする為の場所を提供するって名目なら、逆に魔法学園側が借りを作る形に出来る。


 うーん、恐るべしミリシャさん、僕の提案を聞いた時点でここまでの絵図を構想していたのか。

 流石副ギルド長だなぁ。


「分かりました。そういう事なら遠慮なく戴きます」


「ええ、そう言ってくれるとこちらとしても助かります」


 こうして僕は耐火のマジックアイテムを一個金貨300枚という破格の値段で売却する事に成功したのだった。


「あの~、レクス様?」


 ミリシャさんとのやり取りを思い出していた僕の意識が、モルテーナさんの声で浮上する。


「何ですかモルテーナさん?」


「ええと、そろそろ休憩いたしませんか? 朝から魔法を使い続けていた所為で皆疲れてきましたし」


「ああ、分かりました」


「では……」


「はい、体力回復ポーションです」


 僕は体力回復ポーションの瓶が入った木箱を取り出して地面に置く。


「「「「「……え?」」」」」


「これを飲めば体力が回復しますから、練習を続けましょうか」


「え? あの、休憩は?」


「魔力も体力も魔法とポーションで回復しますから。ああ、集中力が切れたのならそっちは魔法で回復させますね」


「「「「「……はひゅ」」」」」


 何しろ時間は有限だからね。魔獣の森まで片道一日かかるから、皆にはギリギリまで修行に専念して貰いたいし。

 なーに、帰りは転移ゲートで一瞬だから今日は門限ギリギリまで頑張ってもらうよ!

生徒達_:(´д`」∠):_「死、死ぬ! 心が死ぬぅーっ!!」

リリ/ドラ_:(´д`」∠):_「ふふふ、ようこそ地獄へ……」

ミリシャ((( ;゜Д゜)))「ところでで知らない間に私の株がストップ高なんですけど……」

モフモフ_Σ(:3 」∠)_「(今回は本人の気持ちを無視して株が爆上がりする人間が多いなぁ)」


面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださると、作者がとても喜びます。

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魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?
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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヘキシの町がヘキジになってるな、
[良い点] いよいよレクスの教育によるクラス内順位の崩壊が始まりましたね。 [気になる点] 今回は休日を利用しての課外授業だけどレクスが学園を離れた後も続けるのかな?
[気になる点] 体力と魔力はポーションで回復するでしょう でもね 心はね・・・ [一言] レクス教官のブートキャンプ はっじまっるっよ~(心乾燥)
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