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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔法学園編

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第259話 レクス先生の魔法教室入門編

作者_:(´ཀ`」∠):_ ...「今週二本目の更新ですよぉ……」

ヘルニー_(:З)∠)_「まだまだ天気が不安定だからどうにも調子が戻らないねぇ」

ヘイフィー ( °ロ°)ノミ「いやー、花粉的にいい天気ですねぇ!(バッサバッサ)」

作者 \( 'ω')/「だから止めろぉぉぉぉぉぉ!!」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さまの声援が作者の励みとなっております!

「では本日の授業はこれまで」


 クワントロー先生の授業が終わり放課後になると僕達は魔法の修行をする為に訓練場に集まった。

 ここに集まったのはモルテーナさん、そして彼女との決闘を見ていた生徒達で決闘を見に来なかった生徒達はクワントロー先生の後を追うように真っ先に帰っている。

 僕は皆の前に立つと、鍛錬に参加する生徒達を見回す。


「「「……」」」


 皆からは返ってくるのは期待半分、不安半分の眼差し。


「ではこれから魔法の訓練を始めますが、その前に皆さんに覚えて欲しい事があります」


「覚えて欲しい事?」


 生徒達は一体何を言うんだろうと興味深げに僕の言葉を待つ。


「と言ってもこれは言葉で教えるより、実際に見てもらった方が分かりやすいと思います。モルテーナさん、手伝ってもらえますか?」


「わ、わたしでしゅか!?」


 ミナさんの後ろから顔を覗かせながら話を聞いていたモルテーナさんがビクリと体を震わせる。


「ええ。モルテーナさん、貴女の使える魔法の中で一番威力の高い魔法を僕に向かって放ってください」


「わ、わかりまし……ふぇっ!?」


 僕の指示を受けたモルテーナさんが魔法を放つべく魔法の発動体である小さなワンドを構えるも、その途中で変な声をあげて目を丸くする。


「こ、こうげきまほうって、いいんでしゅか!?」


「はい、やってください」


「……わ、わかりました……」


 人に攻撃魔法を向けろと言われ最初は躊躇っていたモルテーナさんだったけど、意を決したのか再びワンドを構える。


「まばゆきもの! うちくだくもの! やきつくすものよ! あらゆるものをびょうどうにやきつくすじひぶかきごくえんよ! かのものにひとしきやすらぎをあたえよ! はなて!! フレイムインフェルノ!!」


 モルテーナさんが放ったのは草刈り魔法であるフレイムインフェルノだった。

 最も強い魔法を使うようにと言って選んだのがこの魔法と言う事は、やっぱりモルテーナさん達が攻撃魔法を苦手としているのは間違いなさそうだ。


 僕は目に魔力を込め、迫り来る魔法を解析する。

 込められた魔力量、魔力の偏り、魔法の制御といったものを確認し、どの程度の魔法を使うべきかを選択すると、こちらも魔法を放った。


「ファイアアロー!」


「「「「「なっ!?」」」」」


 僕が放ったのは攻撃魔法を学ぶ上での基礎中の基礎であるアロー系の攻撃魔法だった。

 ただ火属性の魔力を射出するだけのシンプルな魔法。

 それがモルテーナさんの放った炎の濁流に飛び込んでゆく。

 普通ならこれで終わり。

 大河の中に投げ込まれた小さな矢は、圧倒的な力によって飲み込まれてしまうはずだった。


 けれどそうはならなかった。

 炎の濁流にのみ込まれた炎の矢はそのまま濁流の一部になることなく内部を突き進んでゆく。

 そして遂にその中心にある魔法の核にたどり着き、貫いた。

 瞬間、炎の濁流は魔力の制御を失い、霧散。

 残ったのは僕の放った炎の矢のみ。


「「「「「はぁっ!?」」」」」


「嘘だろ!? 初級魔法でモルテーナさんの魔法を破壊した!?」


「ありえない! チョロイント家の秘術だぞ!?」


 周囲の生徒達から驚きの声があがる。

 そんな中、炎の矢は何事もなかったかのように、モルテーナさんの懐へ飛び込む。


「ひっ!?」


 目の前に迫った炎の矢にモルテーナさんが悲鳴を上げる。

 けれど大丈夫。炎の矢は彼女の喉元ギリギリまで迫った所で霧散した。


「はふっ……」


 魔法が当たらなかった事で力が抜けたのか、モルテーナさんはヘナヘナと地面に崩れ落ちる。


「モルテーナ様、大丈夫ですか!?」


 即座に近くにいた生徒達がモルテーナさんに駆け寄って体を支える。

 うんうん、いざという時に心配してくれる仲間がいるのって良いね!

 前世の僕の周りには頼りになる人も居たけど、それ以上に役目を終えたら僕を殺して手柄だけ奪おうとする人も多かったからなぁ。


「と、まぁこんな感じです」


 一連のやり取りを見ていた生徒達の方に向き直りながらそう言うと、皆はポカーンとした顔でこちらを見つめている。

 そして次の瞬間。


「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」


 訓練場全体に響くような大きな声が響きわたったんだ。


「何だ今の!? 何をやったんだ!?」


「馬鹿な!? 炎魔法を最も得意とする熱華のモルテーナさんの魔法があんなにあっさり破られるだと!?」


「イカサマか!?」


「いやいや、あんなのどうやってイカサマするんだよ!?」


「でも何の仕掛けもなしにモルテーナさんの魔法があんな風になったりしないだろ!?」


 おっと、今の生徒が良い事を言ったね。


「はい、今の魔法には仕掛けがしてありました」


「「「「「えっ!?」」」」」


 僕の言葉に皆が直ぐに静まる。


「まず最初に、今の魔法は間違いなく初級魔法であるファイアアローです」


「だ、だが何をしたらモルテーナさんの上級魔法を破壊する事が出来るんだ!?」


 モルテーナさんが使ったのはただの草狩り魔法だから上級魔法じゃないんだけど……ああ、ファイアアローよりは上級って意味かな? だとすれば間違っていないか。


「簡単な事ですよ。魔力密度を上げたんです」


「「「「「魔力密度?」」」」」


 僕の答えに皆がそろって首を傾げる。


「ええ、魔法を発動するには魔力が必要になります。発動の為の魔力、そして発動した魔法を維持する為の魔力です」


「ああ、それなら授業で習った事がある。確か魔力の少ない者が魔法を使えないのはそれが原因なんだよな」


「厳密にはちょっと違います。一般に流通している魔法の呪文は不特定多数の人が魔法を使う為の術式は平均的な作りとなるべく少ない魔力消費で済むようになっています。でもその術式を自分専用にカスタマイズすれば、本来なら使えない魔法でも使えるようになったり、魔法の威力を上げることが出来るようになるんです」


「魔法をカスタマイズ!? そんな事できるのか!?」


「嘘でしょ!? 魔法は威力も効果も固定されている筈よ!? だから沢山の種類の呪文があるんだし!」


「それはちょっと違いますね。本当に呪文で全てが固定されるのなら、魔法の威力も完全に同じはずです。でも僕とモルテーナさんの決闘では同じ魔法なのに威力が違いましたよね? つまりあれも魔法のカスタマイズになるんです」


「「「「「あっ」」」」」


 僕の言葉に皆がハッとなる。


「確かに言われてみれば同じ魔法になるのなら威力も同じでないとおかしいよな」


「そうね、呪文で全てが決まるなら、僅かな威力の違いでも別の魔法になるのが道理よね」


 うん、こういう勘違いって呪文に頼る初心者ほど陥りがちなんだよね。

 でも実際の魔法はもっと自由なものなんだ。

 でなければ無詠唱魔法の存在が破綻しちゃうからね。


「呪文は簡単に術の構成を組む事が出来る事が利点です。でも魔法を極める為にはその先に行く必要があります」


「その先……」


「ファイアアローなら僕がやったように魔力密度を上げて他の魔法を貫けるような頑丈な矢にしたり、逆に密度を薄くする事で魔力消費を抑えたフェイントにしたり、わざと魔法の構成を甘くして途中で破裂させて威嚇に使ったりも出来ます」


「そんな事が出来たんだ……」


「また派生の魔法として矢の数が増えたり、標的をどこまでも追い続けたり、矢の形を大きくしたりできます。これらは別の魔法名で呼ばれますが、実際にはファイアアローがカスタマイズされた魔法ですね」


「へぇ、違う魔法だと思ってた」


「でも今の話を聞くと確かに元の魔法から派生した魔法と分かるな」


 生徒達は僕の言葉に納得の頷きを返しあう。


「元の魔法とそこまで変わらない魔法なら無意識にカスタマイズできますが、魔法の在り方が大きく変わる場合は慣れてないと集中が必要になります。呪文はそうしたイメージを補佐する為のものなんです」


「「「「「へぇー」」」」」


「通常、魔法はより高位の魔法、そして相性の良い属性の魔法で対処するものです。例えば火の魔法には水、水の魔法には木、木の魔法には火と言った具合に」


「魔法同士の属性相性ね」


 と、ミナさんが相槌を返す。


「ええ、相性に合わせて魔法を使う方が魔力消費を抑える事が出来て便利です。でも室内で炎の魔法を使う訳にはいかないように、属性の相性を活用できない場面もあります」


「それはあるかもしれないな。宮廷魔術師や貴族の護衛に選ばれる魔法使いは火属性よりも他の属性が得意な魔法使いの方が多いし」


「逆に軍属の魔法使いは火属性の魔法が得意な魔法使いが多いな」


「ええ、そして状況によっては有利な属性の魔法を使えない時でも、魔力密度を上げるなどのカスタマイズを施せば不利な魔法で対抗でき、また下位の魔法であっても上位の魔法に打ち勝つ事が出来るようになります」


「「「「「おおーっ!!」」」」」


「今回の場合は魔力密度を上げる事で魔法を固くして、本来なら自分よりも固い魔法を貫いたと思ってください」


「で、でも炎の渦を貫いたとしても魔法が霧散した理由が分からないよ!」


 と、生徒からフレイムインフェルノが霧散した理由が分からないと質問がくる。

 うん、そうやって疑問を持つ事は魔法を学ぶ上でとても大事なんだよね。


「魔法にはそれを構成する為の核となる魔力の偏りがあります。人間で言えば胴体だと思ってください。僕はそれを貫いて魔法を維持できなくしたんです。胴体が無ければ手足は人の形を保てませんからね。同様に核を貫かれた魔法も自分の形を維持できなくなって魔力が霧散してしまうんです」


「魔力を多く籠める事で初級魔法に上級魔法に匹敵する威力を持たせ、狙いどころによっては破壊する事が出来るのか……」


「す……」


 と、その時だった。

ずっと無言でいたモルテーナさんが声を上げたんだ。


「素晴らしいですわ!」


 モルテーナさんは立ち上がると僕の下にやってきて両手をがっしりと掴む。


「初級魔法で当家の秘術を打ち破るなんて! レクス様はただ強い魔法が使えると言うだけではありませんでしたのね!!」


「ええ、どんな魔法も使い様です。強力な魔法を覚える事にだけ拘ると、今回の様に下位の魔法を極めた相手に不覚を取ってしまいます。これは戦場ではよくある話なんです。だから皆さんにはまずその事を理解してほしかったんです」


「分かりましたわレクス様!! このモルテーナ、レクス様の教えを深く胸に刻みますわ!!」


 うん、ちゃんと理解してくれたようで何よりだよ。

 実際モルテーナさんの使った魔法は制御にかなりムラがあったからね。

 あれをしっかりと制御出来るようになれば、モルテーナさんは今以上の使い手になれるだろう。


 フレイムインフェルノは草刈り用の魔法だけど、使い方次第ではそれなりの強さの魔物とも渡り合える魔法だ。

 きっとモルテーナさんのご両親は彼女に簡単な魔法を極める事から頑張ってほしいと思ってあの魔法を教えたんだろう。


 だとしたら僕がする事はご両親の意図を汲んで魔法の完璧な制御を極めて貰う事だね。

 それに強い魔法は高度な魔力制御が必要となる。

 制御が甘い状態で覚えたら、あっという間に暴走して大惨事になっちゃうからね。


「「モ、モルテーナ様……」」


 そんな事を考えていたら、モルテーナさんを支えていた二人の生徒が何やら潤んだ眼差しでモルテーナさんを見つめていたんだ。


「モ、モルテーナ様が元に戻られた……」


「さっきまで幼児退行をしていたのに……」


「「モルテーナ様ぁぁぁぁ!!」」


 そして二人は感極まった様子でモルテーナさんに抱きつく。


「きゃっ!? 何ですのお二人共!?」


 当のモルテーナさんは何が起こっているのか分からず困惑している。

 と言うか僕にもよく分からないんだけど。


「……そ、そうか! 二度の命の危機で幼児退行していた精神が元に戻ったんだ!」


「な、何だってぇー!? っていうか心の傷ってそれで元に戻るもんなのか?」


「寧ろ心の傷を尊敬とか崇拝で誤魔化しているだけなのでは?」


 え? 幼児退行? 心の傷? 一体何の話?


「「モルテーナ様ぁーっ!!」」


「だから何なのですのーっ!?」


 ま、まぁ、良い事が起きたみたいだし……ま、いっか。

モルテーナ_(:З)∠)_「私は正気に戻りましたわ!」

リリエラ_(┐「ε:)_「大丈夫? また壊れない?」

モルテーナ_:(´ཀ`」∠):_ ...「……しぬかとおもいました(人生二度目ですわ)」

モフモフ_Σ(:З)∠)_「駄目だ治り切ってない」


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公って魔法大好きなんやなと
[一言] 上級魔法を初級魔法で打ち破る「今のはメラゾーマではない…メラだ」型の場面は元々かなり昔から定番の一つだが、(欲を出して)そこを下手に避けようとするあまり話が却って歪になるよりは、今回くらいの…
[気になる点] >「厳密にはちょっと違います。一般に流通している魔法の呪文は不特定多数の人が魔法を使う為の術式は・・・」 を 「厳密にはちょっと違います。みんなが今まで教えられてきた魔法の呪文は不特定…
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