第258話 学園生徒の弟子入り志願
作者_:(´ཀ`」∠):_ ...「うにゅにゅ……具合が悪くて執筆ペースがぁ……」
ヘルニー_(:З)∠)_「ヤツの時期だもんねぇ……」
ヘイフィー ( °ロ°)ノミ「いやー、酷い奴も居たもんです(バッサバッサ)」
作者 \( 'ω')/「止めろぉぉぉぉぉぉ!!」
ヘルニー_(:З)∠)_「あっ、今週は更新が遅れたので次の更新はちょっと早めで3/4(金)だよー」
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「僕に頼みたい事がある、ですか?」
「ですって」
決闘の後、リリエラさんに通訳されながら、後ろから顔を出したモルテーナさんがそんな事を言ってきたんだ。
何故かモルテーナさんの声はさっきまでとは打って変わって小さくなってしまい、壁にされているリリエラさんを介さないと聞こえないんくらいなんだよね。
「ひゃう!?」
けれど僕に話しかけられたモルテーナさんは小さく悲鳴を上げるとリリエラさんの陰に隠れてしまう。
うーん、さっきの決闘の後からずっとこんな感じなんだよねぇ。
これじゃあ話を聞くのも一苦労だよ。
「こーら、貴女からレクスさんにお願いしているんだから、そんな態度じゃダメでしょ? ちゃんと自分の言葉で伝えなさい」
「お、おねえしゃま……」
「お姉様じゃないし」
リリエラさんに窘められた彼女は後ろでオロオロとした気配を感じさせる。
「て、にぎっていてくれましゅか……?」
「……はぁ、分かったわよ」
リリエラさんがそっと振り返って手を差し出すと、その手を握ったモルテーナさんがおどおどとした様子で姿を現す。
うーん、さっきの自信満々のモルテーナさんとは別人みたいだよ。
これは一体どういう……ああ、もしかしたら彼女はこっちが素なのかもしれないね。
本当は気弱な性格なんだけど、貴族として決闘を挑むからにはと必死でさっきのような強気の態度をとっていたんだろう。
「モルテーナ様、恐怖ですっかり幼児退行してしまわれて……」
「うう、おいたわしや……」
モルテーナさんの傍に居る生徒が彼女を見つめながら何かを呟いているけれど、何を話しているんだろう?
「おねがいがありましゅ……どうかわたしに……あなたのまほうをおしえてはいただけましぇんか……?」
「魔法をですか?」
「っ!?」
僕の言葉にビクリと身を堅くするモルテーナさんだったけど、今度はリリエラさんの陰に隠れる事は無かった。
「わ、わたくしはまほうでくにをまもるまほうきぞくのいちぞくでしゅ。でしゅからわたしはいちぞくのほこりにかけても、ゆうしゅうなまほうつかいにならないといけないのでしゅ……」
プルプルと震えながら、モルテーナさんは僕に魔法を学びたい理由を告げる。
ふむ、魔法を使った活躍で功を成した貴族ならそれもわからないでもない。
「でもそれは決闘で僕に勝ったらの話じゃありませんでしたか?」
「お、おっしゃるとおりでしゅ……」
僕の指摘にモルテーナさんはすっかりショボンと肩を落とす。
「けっとうのたいかであるまほうしょはおわたししましゅ。ですがそれとはべつにあらためてレクシュしゃまのまほうをおしえてほしいのでしゅ」
敗北の対価はちゃんと支払うから、改めて魔法を教えてほしいとモルテーナさんは頼んできた。
「わたくしはみらいのきゅうていまじゅつしとして、おうけにつかえないといけましぇん。でしゅがいちぞくのひじゅつをもっていどんだにもかかわらじゅ、レクシュしゃまのまほうにはいぼくしましゅた。でしゅがちからなきまほうきぞくなど、あってはならないことなのでしゅ!」
成る程、確かに学生の身とはいえいずれ国防を担う者が軽々しく負けたら、この国の魔法使い全体の実力が疑われるのは間違いないだろう。
だからこそ、自分に勝った者に教えを請いたいと。
その理屈は分かったんだけど、それでもやっぱり僕に頼むのはどうにも腑に落ちないんだよねぇ。
普通に先生達に学んだ方が良いと思うんだけど。
何せ先生達は人に物を教える専門家だからね。
「……ねぇ、その話僕も加わらせてくれないかい?」
その時だった。なんとスデン君まで僕に魔法を教えて欲しいと言ってきたんだ。
「スデン君!?」
「さっきの決闘を見て本当に驚いたんだ。こんな凄い魔法を使う人が学園の外に居るなんてって……学園こそが魔法研究の最先端だと僕は思っていたのにだ」
彼の言葉に周囲の生徒もウンウンと頷いている。
「君の戦いを見た僕は心が震えたよ。僕達とそう年も変わらないのに君は何故これほどまでに魔法を自在に操れるんだろうって」
いや、僕は別にそんな大した人間じゃないんだけど……
魔法の腕だって実戦の中で学ぶ命がけの修行だったから強くなるしかなかった訳だし……
うん、思い出すとホント酷い師匠達だよ……
「だからお願いだ。僕にも君の魔法を教えて欲しい。勿論それに相応しい対価は僕も別に支払うよ」
僕の内心などどこ吹く風、スデン君は真っすぐに僕を見つめながら頼み込んできたんだ。
「な、なぁ、俺も、俺も教えてくれないか!? ちゃんと金は支払うからさ!」
しかも話はスデン君だけでは終わらなかった。
彼の言葉を聞いた生徒達が、我も我もと僕に教えを求めてきたんだ。
「わ、私にも教えて! あんな凄い魔法初めて見たわ! ウチの領地はお金があまりないから、代わりに特産品を出すわ!!」
「ぼ、僕にも教えてください! あんな魔法を使えるようになりたい!!」
「ちょっ、だから僕は……」
冒険者仲間であるジャイロ君達ならともかく、専門家に習っている生徒達に魔法を教えるというのはやっぱり問題があると思うし……
「俺にも!」
「私にもっ!」
「僕にも!!」
「「「魔法を教えて!!」」」
皆のギラギラとした目が僕を真っすぐに見つめる。
う、うーん、皆の凄まじい熱意に僕は思わず気圧されてしまう。
そのやる気は評価するんだけど、何で攻撃魔法の最先端学府である魔法学園の生徒がわざわざ中途編入の僕なんかから魔法を学ぼうとしているのかが分からない。
僕が発動させたメテオサンフォールは威力こそそれなりではあったけど、戦場においてはそこまで珍しい魔法じゃない。
いずれ学園の先生達や、皆の実家の親や家庭教師から学ぶような魔法だ……
「……まさか」
そんな時、ふと僕はある可能性に気付いた。
僕は物凄い勘違いをしていたんじゃないのか?
いままでこの学園は攻撃魔法を専門に教える攻撃魔法のエリート学校だと思っていた。
でも実は逆だったんじゃないだろうか?
そう、つまりここは、攻撃魔法が苦手な人に攻撃魔法を教える為の学園だったんじゃないだろうか!!
そう考えるとクワントロー先生が基礎の基礎である魔法を教えていたのも頷ける。
本来なら回復魔法や支援魔法の方が適性が高かったり、性格的に攻撃魔法を扱うのに向かない子供だっている。
でも貴族の子弟である以上、家の事情や時勢によっては適性が無かろうとも攻撃魔法を覚えなければいけない事もある。
特に武門の子や、敵国との国境や強力な魔物の領域が近くにある領地の子は攻撃魔法が使えるかどうかが命を守る事に直結する。
成る程、貴族なら苦手だからと逃げる訳にもいかない。
意地でも覚えなければいけないからこそ、彼等は学園で必死になって苦手な魔法を学んでいるんだろう。
だからこそ、平民である僕に頭を下げてまで攻撃魔法を学ぼうとしているって訳か。
「成る程、そう言う事だったんだね」
ああ、彼等は貴族の責務に正面から向かい合っているんだね。
前世や前々世の貴族達は一部の本当にどうしようもない事情の人以外は、そうした貴族の責務から逃げる者が本当に多かった。
悲しいかな、僕は金と権力で貴族の責務を捻じ曲げる者を嫌と言うほど見せられてきたんだ。
けれどここに居る彼等は違う。
自分達の未熟と苦手を知りながら、それでも困難から目を背けたりしない。
素晴らしい貴族精神だ!
正にノブレスオブリージュ! 高貴なる者の使命!
そんな彼等の決意を無下にできるわけがない。
むしろ学ぶ意欲に燃えている今の彼等のやる気を削いでしまう方が問題だ。
ならばまずは僕に教えられる範囲で魔法の事を教え、折を見て専門家の先生達に任せるのが良いだろう。
「分かりました! 僕でよければ協力させて貰います!」
「「「おおーっ!!」」」
「あ、ありがとうございましゅ、レクシュしゃま!!」
僕が引き受けると応えると、モルテーナさん達が心から嬉しそうな顔でお礼を告げてくる。
「あわわわっ……」
「た、大変な事に……」
「消える、この国から貴族が消えるぞ……」
「終わった。色々な意味で終わった」
「神よ、どうか彼等の魂に安息を……」
だけど何故か、僕の背後でリリエラさん達の慌てる声が聞こえてきたんだよね。
皆、何でこの世の終わりが来たみたいな反応になるのさ?
ノルブ_(:З)∠)_「生徒の皆さんの(精神の)ご冥福をお祈りします」
ミナ_(┐「ε:)_「死因は地獄の魔法修行死かぁー」
ジャイロ_(:З)∠)_「今のうちに墓穴掘っておくか?(善意)」
モフモフ_Σ(:З)∠)_「やめてさしあげろ」
メグリ_(┐「ε:)_「金目の物は外しておかないとね(善意ではない)」
モフモフ_Σ(:З)∠)_「だからやめてさしあげろ(情け)」
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