第254話 制服ファッションショ―と毛並みの不思議
作者_(:3)レ∠)_「1月最後の更新だよー!」
ヘルニー_(:3)レ∠)_「2月もよろしくねー!」
ヘイフィー_(:3)レ∠)_「なぜ年末みたいな話題の仕方を……」
作者_(:3)レ∠)_「さて、それでは歯医者に挑んでくるか……」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「皆ー、ちょっときてー」
ミナさんに呼ばれてリビングに集まると、テーブルの上にはいくつもの箱が置かれていた。
「何ですかこれは?」
「お爺様から送られてきたのよ。学園に通う為に必要な物を用意してくれたみたいで、皆の分もあるみたいよ」
なんと箱の正体はミナさんのお爺さんが用意してくれたものだった。
てっきり自分達で用意しないといけないと思っていたからありがたいなぁ。
「へぇ、意外に気が利くじゃねぇかミナの爺さん」
ジャイロ君がちょっと意外そうに驚いている。確か彼はミナさんのお爺さんに目を付けられてるんだっけ。昔何かあったのかな?
「向こうの都合で行かせるんだから気にしないで良いわよ。それじゃ開けるわね」
ミナさんが箱を開けると、中から出てきたのはノートやペン、それに鞄などの道具類だった。
「うわぁ、色々あるねぇ。こんなに準備してもらって申し訳ないなぁ」
しかもこのペンや紙は安物じゃないちゃんとしたヤツだ。
全員分揃えると結構な値段になるんじゃないかなコレ?
「こっちは何が入ってんだー?」
ジャイロ君がもう一つの箱をあけると、そこから出てきたのは何着もの服だった。
「これは服?」
「ああ、これは学園の制服ね」
ミナさんによれば、この服は魔法学園の制服のようだった。
「ああ、そう言えば学園の生徒達は皆この色の服を着ていましたね」
へぇ、仮入学の僕達でも制服を着ていいんだ。
前世じゃ師匠と一対一で教わっていたから、制服を着るなんてちょっと新鮮だね。
「ん、結構良い生地を使ってる」
メグリさんは制服のデザインよりも使っている布地に興味津々って感じだ。
ふむ、一見すると普通の布地だね。特別な素材を使っている感じは無しか。
となると……
「サイズが合わなかったらお爺様が贔屓にしている服屋で裾合わせをしてもらいなさいだって」
ミナさんは服と一緒に入っていたメモ書きを読みながら、あとで裾合わせをするように告げてくる。
てっきりその辺りは自分でするのかと思っていたけれど、そんなことにまで気遣いを見せてもらえるなんて本当に至れり尽くせりだなぁ。
「ふふーん、それじゃあさっそく着替えてみましょうか!」
「「おおー!」」
言うや否や、風の様な勢いで女性陣が自分達の部屋へ飛び込んで行った。
「「「お、おおー……」」」
そんな彼女達のテンションの高さの思わず僕達は気押されてしまう。
うーん、女の人のオシャレ魂は学園の制服でも燃え上がるんだなぁ……
「あー、んじゃ俺達も着替えに行こうぜ……」
「そ、そうだね」
「で、ですね」
リリエラさん達に遅れつつも、僕達はそれぞれ自分の部屋に戻って制服に着替える事にする。
と言っても普通に着替えるだけだから、すぐに終わってリビングへと戻る。
「おっ、来たな兄貴」
どうやら着替え一番乗りはジャイロ君のようだ。
でも急いで着替えてきた所為か、ジャイロ君の服装はグチャグチャだ。
こんな格好で学園に行ったら先生に怒られちゃうよ。
「ジャイロ君、襟が立ってるよ。それにタイも」
ささっとジャイロ君の服装を正してあげると、そこには何時もと違って小奇麗な格好になったジャイロ君の姿が。
「サンキュー兄貴!!」
ニカッと笑うその姿は、いかにも新入生って感じだね。
まぁ僕も学園に通った事はないから同じ新入生なんだけど。
「ところで皆は? リリエラさん達は僕達よりも先に着替えに行った筈だけど?」
するとジャイロ君はパタパタと手を振って呆れ顔になる。
「アイツ等の着替えが遅いのはいつもの事だって兄貴。どうせ今ごろ化粧でもしてんじゃねぇの? それかリボンがどうのアクセサリがどうのって言ってるんだぜ」
化粧? 制服の試着なのに!?
うーん、僕にはよくわからないけど、女の子の着替えは大変って事みたいだね。
そうして暫く待っていると、ようやくリリエラさん達の足音が聞こえて来た。
「お待たせー」
「ったく、おせぇ……ぞ」
待ちくたびれたとジャイロ君が文句を言おうとしたんだけど、その言葉が途中で途切れる。
「どうしたのジャイロく……っ」
一体何事かと振り返るも、同じものを見た僕もまた固まってしまった。
「「「じゃーん!!」」」
そこに居たのは、いつもと違う装いの制服に身を包んだリリエラさん達の姿だった。
「どう……かしら?」
どうかと言えばとても似合う。
冒険者としての実用性本位の衣装と言うのは実は使っている布地も一部の高価な糸以外は無骨なものになってしまいがちなんだけど、これはそういうものとは違った作りになっているので、とてもオシャレな感じになっていた。
というか何故か皆見た目が違うんだけど?
メグリさんはスカートが膝より上に上がっていて、ミナさんは膝下、リリエラさんは丁度膝の高さだ。
それに袖もメグリさんの制服は短めになっていて……ああ、折って短くしているんだね。
リリエラさん達は袖はそのままだ。
代わりに袖にカフスを付けたりしてアクセントを入れている。
更に珍しく冒険に行く時には付けていなかったリボンや髪飾りも身に着けていた。
「……」
前世じゃお姫様や貴族のご令嬢と接する機会が多かった僕は、一流のメイド達によって整えられた彼女達の本気の装いを数多く見てきた。
蝶よ花よと育てられてきた彼女達は確かに綺麗ではあったのだけど、僕としては内から透けて見える見えるこちらを見定める目が気になって、ついつい警戒して彼女達を純粋に異性とは見れなかったんだよね。
でも目の前の彼女達からは、自分を褒め讃えろという貴族特有の威圧感も、相手を篭絡しようという敵意にすら似た視線が感じられない。
裏のないその言葉に、僕はどう答えたものかと戸惑ってしまう。
でもあえて言うなら……
「あの、レクスさん?」
「……っ!? あ、はい! とっても可愛いです!!」
しっかり熟考して適切な答えを返さないといけないと思っていたにも関わらず、呼びかけられた事でつい思ったままの言葉を口にしてしまった。
って、しまったぁーっ!!
「っ!? そ、そそそそう!? あ、ありがとう」
「い、いえ、どういたしまして」
そんな感じでうっかり口にしてしまった言葉だったのだけれど、以外にもリリエラさんの機嫌を損ねる事は無かったみたいだ。
あ、危なかったぁー……
「ふっふーん、どうよこの着こなし。完璧じゃない?」
「お、おう……」
気まずさから逃れるように視線を買えれば、見れば向こうでも似たような感じでジャイロ君がミナさんに問いかけられていた。
「んんー? それだけ?」
口ごもるジャイロ君の懐にミナさんが潜り込み、ちゃんと答えろと至近距離から彼を睨みつける。
うわぁ、あれは逃げづらい……
「ま、まぁ悪くないんじゃねぇの?」
進退窮まったジャイロ君がかろうじて吐き出したぶっきらぼうな答えにミナさんはため息を吐くものの、不思議と不機嫌な様子ではなかった。
「アンタねぇ……はぁ、まぁ良いわ。その態度が返事って事にしておいてあげる」
「ど、どういう意味だよ!?」
顔を赤くしたジャイロ君が食って掛かるも、ミナさんは飄々とした態度でそれを躱す。
「さぁ、どういう意味かしらね?」
そのままジャイ君とミナさんは室内で追っかけっこを始めるも、なんとなくどちらも照れ隠しをしているような微笑ましい光景に見えたんだ。
「あれ? ところでノルブは?」
と、そこでミナさんがノルブさんの姿がないと声を上げた。
言われて周囲を見回せば、確かにノルブさんの姿が見当たらない。
「あれっ、そう言えばいない」
「おーいノルブー、どうしたんだよー?」
僕達の会話を聞いて追いかけっこを止めたジャイロ君がノルブさんを呼ぶと、奥からノルブさんが躊躇うように顔だけを見せる。
「え、ええと、その……ですね……ちょっと服が……」
「なにやってんだよ。早くこっち来いよ」
「あっ、ちょっと待っ……」
ノルブさんの下へ向かったジャイロ君が彼の腕を引っ張ると、ノルブさんがバランスを崩して姿を見せる。
けれど、その姿に僕達は思わず目を点にしてしまった。
「「「「「えっ!?」」」」」
なんとノルブさんが来ていたのは僕達の着ている男性用の制服じゃなく、リリエラさん達の着ている女性用の制服だったんだ。
「み、見ないでくださーい!!」
「なんで女の子の制服を着てるの!?」
あまりにも予想外の姿にミナさんが何事かと声をあげる。
「ち、違うんです! 残っていた制服が女物だったんですよぉー!!」
すると、ノルブさんは自分の手に取った制服が女性用だったんだと悲鳴のような声を返してきた。
「いやだったら何で着たんだよ」
うん、まぁそうだよね。
気づいたなら途中で脱げばよかったのに。
「着た後に気付いたんですよ! まさか女物だとは思わなくて」
「いやいや、それにしたって着てる途中で気付くでしょうに……」
それもまぁ、そうだよね。
「司祭服は普通にローブ状のものも多いんですよ!! だから着る時は女性用だと気づかなかったんです!!」
「あー、まぁそう言われれば確かに……」
確かにそう言われてみれば教会関係者にはローブの人が多い。
魔法使いにもローブを着ている人は少なくないしね。
普段着た事のない制服が実は女性用だった事に気づかなかったと言うのも、確かに無い事はないの……かな?
「けど……」
それはそれとして、僕達は女性用の制服を着たノルブさんをじっと見つめる。
「「「「似合うなぁ」」」」
うん、とてもよく似合っていた。
「や、止めてくださいよぉーっ!!」
ノルブさんが恥ずかしいと自分の部屋に駆け戻ってゆく。
「もうそのまま女の子として通っても良いんじゃないのー?」
「絶対嫌ですよーっ!」
ま、まぁ嫌だよね。
「冗談はともかく、お爺様に連絡して男物の制服をもう一着用意してもらわないといけないわね」
それ、最初に言ってあげるべきだったんじゃないかな?
「可能な限り最速でお願いします!!」
そんな感じのトラブルはあったものの、僕達は受け取った荷物のチェックを終え魔法学園の初登校に備え……
「……ねぇ」
と、そこでずっと黙っていたメグリさんが声を上げた。
その声に何かまだ忘れてた事があったかなと思って振り返えれば、そこにはぷくーっと頬を膨らませたメグリさんの姿があった。
「何で私の衣装は誰も褒めてくれないの?」
「「「「「……あっ」」」」」
しまった! ノルブさんの制服騒動のせいで忘れてた!!
「「「「「ご、ごめんなさい……」」」」」
「ぶー」
僕達はすぐにメグリさんに謝罪したものの、彼女の機嫌は収まらず。僕達はメグリさんが機嫌を直すまで沢山彼女を褒めまくる事になったのだった……
◆
「あれ? まだ何か残ってる?」
メグリさんが何とか機嫌を直してくれた事でようやく荷物のチェックを終えた僕達は、箱の底に何かが残っている事に気付いたんだ。
「これは……首輪?」
残っていたのはちょっと大きめの首輪だ。
でも何で首輪が? と首を傾げていると、ミナさんが箱の底に残っていたメモを拾いあげる。
「ああ、これモフモフ用みたいね。ちゃんと生徒のペットだと分かるようにって事みたいよ」
モフモフ用の首輪!? 何でまた?
「えっと、ペットが魔法を使うのは前代未聞だから研究の必要ありと判断し、特例として学園に連れてくるのを許可する、だって」
あー、昨日の試験でモフモフも魔法を使ったからか。
でも魔物が魔法を使うのが前代未聞? 魔法を使う魔物は結構いる筈だけど……?
ああでも、モフモフは僕も見た事ない魔物の赤ちゃんだし、学術的な研究価値があると判断されたって事かな? という事はモフモフって意外とレアな魔物だったりするんだろうか?
「でもこれはありがたいですね。僕達が居ないとモフモフが一人で留守番をしないといけないから、寂しがりそうだったし」
うん、流石に魔物とはいえ赤ちゃんを一人ぼっちで留守番させるのは可哀そうだ。
「「「「「いやいや、絶対コイツはそんなタマじゃない」」」」」
けれど何故か皆はそんな事ないと力強く否定してきた。
「キュッキュウ」
モフモフも僕大丈夫だよ! と言いたげに前足を上げるけれど、その震える眼差しを見れば一人を寂しがっているのはバレバレだ。
「大丈夫だよ。モフモフを独りぼっちにさせたりしないから」
「キュフン!?」
普段は僕一人前ですって顔してるけど、こういう時には本音が見えちゃうあたり、まだまだ子供だね。
「キュキュキュキュウ!!」
本音を気付かれたのが恥ずかしいのか、モフモフがパタパタを慌てふためく。
あはは、可愛いなぁ。
「じゃあありがたく使わせてもらおうかな」
そんな訳でさっそくモフモフに首輪を装着する事にする。
「けどこれ、モフモフに付けれるの?」
「え?」
付けれるのかって、それは一体どういう意味だろう?
「だってモフモフの体って……」
とリリエラさんはモフモフの丸い体を指さす。
「そう言えばこの子、どこまでが毛なのかしら? 触ってみるとかなりフワフワだから、首輪が毛の中に沈んじゃうかも」
むむ、言われてみればミナさんの言う通りかもしれない。
「そんなん触りゃわかんだろ!」
そう言ってジャイロ君がモフモフの体を鷲掴みにすると、彼の両手が毛の中に入っていく。
「キュフ!?」
「ん? おー、おー、意外と毛深いな。コイツの体めっちゃ細いぞ」
そうこう言ってる間にジャイロ君の手はズッポリと沈み込み、手首まで毛に埋まっていた。
「ええ!? そうだったの!?」
「意外ね」
確かに、モフモフって見た目が丸いから体も丸いと思っていたよ。
「とりあえず一回付けてみましょうか。完全に埋まっちゃうようなら別の方法を相談してみましょう」
「そうですね」
そう言ってミナさんがモフモフの体に首輪を装着する。
「あっ、ピッタリだわ」
「ほんとだ。体のラインにあわせてピッタリだ」
意外にも首輪は毛に埋まることなく、体の外周にピッタリ沿う形で装着出来たんだ。
「へぇ。ちゃんと付けれるものねぇ……」
そうだね、てっきり毛の中に埋まって見えなくなると思っ……
「「「「「「何で!?」」」」」」
あ、あれ!? 何でピッタリなの!?
「ちょっとジャイロ! 本体は細いんじゃなかったの!? 中身肉で詰まってたわよ!?」
話が違うとミナさんがジャイロ君に声をあげる。
「い、いや俺が触ったらスカスカだったんだよ! マジで!!」
ジャイロ君は本当だと慌てながら弁解するものの、実際に首輪がピッタリ装着出来たと言う事は中身がスカスカというのはあり得ないわけで……
「でも首輪は表面に沿うみたいにピッタリと……あれ? 手が沈む?」
ジャイロ君の反論を否定しようとミナさんがモフモフの毛に手を鎮めると、その手がどんどん沈んでいく。
「手が……沈んでるわね」
不思議なことにミナさんの手はさっきのジャイロ君と同じように手首まで沈んでいった。
「え? え? え? 何で?」
「首輪がズリ落ちる様子もない……」
「どうなってるの!?」
手はちゃんと沈むのに、首輪は滑り落ちる様子が全く見られない。
「あっ、もしかして筋肉に力を込めたり、息を吸って膨らませたりしてるとか?」
モフモフがわざと体を膨らませてるんじゃないかと推測してたリリエラさんがモフモフの体に触れてみる。
「うーん、力を入れてるような硬さは感じないわね」
僕もさわってみるけど……うん、プニプニだ。
「息は……」
「スゥー、キュフゥー、スゥー、キュフゥー」
「普通にしてるわね」
息を吸いこんで体を膨らませている感じもしない。
と言うかわざと膨らませていたのなら、ミナさんが手を突っ込んだ時は体が細くなって首輪が落ちていた筈だもんね。
「って言うかコイツ、手を突っ込むたびに中身の大きさが変わってねぇ!?」
「「「「「え?」」」」」
流石にそれはないんじゃないかと思いつつも、僕達はモフモフの毛に何度も手を入れてみる。
すると今度はモフモフの毛に殆ど沈む前にその体に手が触れる。
「あ、あれ? 今度は全然沈まない?」
そう思ったら次に手を突っ込んだら手が半分くらい沈んだところで止まった。
「今度は途中で止まった。
「「「「「「……」」」」」」
僕達はモフモフの体に手を突っ込みながら互いの顔を見合わせ、その視線をモフモフへと移してこういった。
「「「「「「一体何なのお前!?」」」」」」
「キュフンッ」
僕達の心からの疑問を受けながら、モフモフは愉快そうな鳴き声をあげたのだった……っていうかホントにお前って何者なの!?
うわぁ、まさかこんな事で改めてモフモフの素性が気になるなんて思ってもいなかったよ!
レクス(:3)レ∠)_「いやホントいったいどういう構造してるの?」
モフモフ_Σ(:3)レ∠)_「クククッ、我の毛並みはこの世界の七不思議よ……」
ジャイロ(:3)レ∠)_「七不思議っつーか怪異そのものじゃん……」
ノルブ_:(´д`」∠):_「僕の制服ちゃんと届くのかな……」
メグリ(:3)レ∠)_「ホントはただの小ネタだったのにガッツリモフモフのエピソードを入れてしまった……(文字数的に)」
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