第252話 新たな出会い?
作者_(:3)∠)_「更新ですよー!」
ヘルニー_:(´д`」∠):_「天気が安定しないから寒いー」
ヘイフィー(/・ω・)/「そんなアンニュイな気分を吹き飛ばすべく最新話投稿です!!」
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「仮入学する前に君達には試験を受けて貰う」
魔法学園に仮入学が決まったと思った僕達だったけれど、そこにゼンザール学園長からの待ったがかかった。
「試験? 入学しろと言ってきたのはそっちなのにですか?」
どういう事かとミナさんの眼差しが鋭くなる。
「ああ、そうは言ってもこれは入学する為の試験じゃない。所属するクラスを選ぶ為の試験だ」
「……ああ成る程、そういうことですか」
ゼンザール学園長の言葉にミナさんが納得する。
うん、これは前世でも似たような話を聞いた事から僕にも分かった。
「なぁオッサン、クラスを選ぶってどういう意味なんだよ?」
けれどジャイロくん達はよく分からなかったみたいで首をかしげていた。
「この学園には様々な生徒が魔法を覚える為に通っている。だが全ての生徒が同じ教室で同じように授業を受ける訳にはいかないんだ」
「なんでだよ? 纏めて教えた方がてっとり早いんじゃねぇか? 俺の村じゃ皆教会に集まって司祭の爺ちゃんに勉強習ってたぜ?」
へぇ、ジャイロ君達はそういう風に勉強を教わってたんだね。
「ああ、それで全員が同じペースで学ぶことが出来ればかまわないのだけれど、そうもいかないからね」
「ああ、そういう事ですか」
「納得した」
「言われてみればそうよね」
ゼンザール学園長の言葉にリリエラさん達も納得の声をあげる。
「??」
けれどジャイロ君はまだ分かっていないみたいで首を傾げたままだ。
これは助け船を出しておいた方がいいかな?
「ジャイロ君、剣を握った事もない人と毎日素振りをして剣の練習をしている人が同じ日に剣の達人の弟子になったら、どちらの方が先に強くなると思う?」
「そりゃ毎日剣の練習をしてる奴だろ? 最初から練習してた方が厳しい修行についていけるからな」
「うん、この試験もそれと同じなんじゃないかな。あらかじめ魔法の基礎を習ってきた人と初めて魔法の勉強をする人じゃ覚える速さに違いが出ちゃうよね。同じように学園長は僕達全員がどのくらいの魔法を理解しているのかを確認したいんだよ。そして実力が分かったら各々の実力に合った先生を紹介してくれるつもりなんだ」
「ああ、そういう事か! 分かったぜ兄貴!!」
僕の説明を理解してくれたジャイロ君が任せろと親指を立てる。
「つまりこれはアンタみたいなのを分ける為の試験って訳よね」
「んだと!? 俺がバカだってのかよ!?」
「あら違うの? だったらまた魔法理論のお勉強してみる?」
「……バカで良いです」
このまま喧嘩が始まるのかと思ったら、あっさりミナさんに軍配があがる。
というかそんなに魔法の勉強が嫌なのかジャイロ君……
「全く、そんな事をせんでも儂のミナならAクラス確定じゃろうに」
皆が納得した中で、ナギベルトさんが不満そうに声をあげる。
「そういう訳にはいきませんよ。貴方のお孫さんである事を考えれば、正式に試験をしたという事実は身を守る事にも繋がります」
試験を受ける事が身を守る事に繋がる?
それは一体どういう意味なんだろう?
「ではそういう事なのでさっそく試験会場に行こうか。なに試験と言っても魔法の腕前をみるだけですぐ終わるさ」
そう言うとゼンザール学園長は立ち上がり、僕達を試験会場に案内すると告げた。
「あの、試験ってそんなに簡単に終わるんですか?」
先を行くゼンザール学園長についていきながら、僕は疑問を投げかける。
「ああ、学園が用意した的に得意な魔法を当てるだけさ。その魔法の精度を見て生徒のクラス分けを行う」
え? それだけ?
「攻撃魔法だけなんですか? 回復魔法や防御魔法、それに研究に特化した魔法の人はどうやって判断するんですか? それに魔法の知識量を図る筆記試験はないんですか?」
「いや、回復魔法は教会の専門だからウチには来ないよ。それに学園にとって重要なのは戦闘が出来る魔法使いだからね。防御魔法は重要視されないんだ」
「防御魔法が重視されない、ですか?」
それはまた随分と偏った教育方針だなぁ。
普通の魔法教育機関って、攻撃も防御もバランスよく使えるようにする筈なんだけど。
前世で一時行動を共にする事になった魔法学園の生徒達も、特化した能力を持たずバランスよく育てられていたんだよね。
学園はまず生徒の適性を確認する意味も込めて全ての種類の魔法を学ばせる。
そして得手不得手を確認すると生徒と相談して長所を伸ばすか短所を埋めるかの方針を決めるんだ。
ただ進級と卒業の為には苦手な魔法でも最低限の水準はクリアしないといけない。
そういう教育方針だから、卒業した生徒はどんな魔法でもある程度の技量はもっているんだ。
そしてより自分の才能を伸ばしたいと思った生徒達が自分の適性に合った魔法技術を教える専門魔法学校に通うようになる。
けれどこの学園ではそんなバランス教育を行わず、最初から特化型の生徒を育てる方針のようだった。
僕が死んでいる間に世の中の教育方針が変わったのかな?
「あっ、そうか」
わかったぞ。ゼンザール学園長の言う試験って、まさにこの時代の教育方針そのものなんだ。
つまりこの学園は攻撃魔法だけを若い頃から集中して教える学園で、攻撃魔法以外を学びたい生徒は他の魔法を専門に教える学園に行けという事なんだろうね。
おそらく今の時代の学園は全てが特化型の教育を行う専門学校だけなんだろう。
そしてこの学園が攻撃魔法特化型の教育を行う様に、他の学園ではそれぞれの属性の魔法のみを専門で教えるんだろうね。
「苦手分野は最初から切り捨てて、適性の高い技術だけを徹底して学ぶかぁ。割り切ったスタイルの時代になったもんだなぁ」
◆
ゼンザール学園長に案内されてやってきた試験会場は、大勢の人でごった返していた。
「うわっ、すっごい人」
「どういう事? 私達試験を受けに来たんじゃないの? 何でこんなに人が集まってるのかしら?」
うん、僕もビックリした。
何で試験を受けに来たのにこんなに人が居るんだろう?
あっ、もしかしてこの学園では大勢の人の前で試験を受けるのが習わしなのかな?
どんな状況でも冷静に魔法が使えるようにって。
「なんだ? これはどういう事だ!? 何故試験会場に生徒達が集まっているのだ!?」
と思ったら僕達を連れてきたゼンザール学園長も、この光景に驚きの声を上げていた。
あれ? ゼンザール学園長がこの人達を集めたんじゃないの?
「学園長、これは一体どういう事ですか? 私達はここで試験を受けるんですよね?」
試験を受けに来たはずなのに、何故かその会場は大勢の人でごった返していた。
この事に困惑しミナさんは一体どういう事なのかとゼンザール学園長に詰め寄る。
「い、いやそれが私にも何が何やら……」
けれど状況が分かっていないのはゼンザール学園長も同様らしくで、しどろもどろになるばかりだった。
「やぁ、久しぶりだねミナくん」
「「「「「「「!?」」」」」」」
そんな時だった、人でごった返した試験会場に若い男の人の声が響き渡ったんだ。
あっ、これ風魔法で声を通りやすくしてるね。
そして人ごみの中から一人の男の人がやって来る。
いや、年齢的には僕達とそんなに変わらない感じだ。
仕立ての良い服を着た彼は、成人こそしたものの、まだ少年らしさが抜けていない青年という感じだ。
そんな彼の眼は僕達……ではなくミナさんに向いていた。
「貴方は……」
「ふふ、珍しい季節外れの入学試験があると聞いて来てみれば、まさか君だったとはね」
どうやら彼はミナさんの知り合いだったらしく、彼女に親しげに話しかける。
「それにしても、まさか君が今更学園にやって来るとは思っても居なかったよ。てっきりボクに負けるのが怖くて試験から逃げだしたものとばかり思っていたよ」
ミナさんが逃げた? それは一体どういう意味だろう?
僕の知っている負けん気の強いミナさんのイメージとはちょっと違うんだけど……
「……」
「なぁおいミナ、お前の知り合いか?」
近くに居たジャイロ君がミナさんに話しかけるけれど、彼女は何かを考え込んでいるみたいで質問に答えない、というか気づいていない?
「いったい今まで何をしていたんだい? ああそうか、貴女は前学園長のお孫さんでしたね。お屋敷に籠って優秀な魔法使いの先生から勉強を教わっていたというところかな? そして試験に合格できるだけの実力を手に入れ意気揚々と試験を受けに来たというところだろう? おやおや、既に僕達が入学して一年も過ぎたこの時期にかい!?」
彼の言葉に周囲に居た生徒達からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「まぁ私達と同年代でしょうに、今頃入学ですって」
「おやおや、そんな出来の悪さで学園の授業についてこれるのかな?」
「そう言ってやるなよ。試験を受けに来たと言う事は、最低限の魔力は持っているってことだろ?」
「だがそれで最低ランクのクラスに編入なんて事になったら、それこそコイツ等が可哀想だぜ?」
どうやら僕達は歓迎されていないようで、チクチクと言葉のトゲが投げつけられる。
うーん、けどコレ、前世や前々世でもよく聞いたセリフだなぁ。
自分達の縄張りに入って来た新入りを牽制するいつものヤツだ。
こういう時は相手の挑発に乗ったりせず、さっさと実力を見せるのが一番なんだよね。
だって彼等は僕達をわざと挑発して実力を見せろって言ってるんだから。
そして実力を見せれば何事もなかったかのように僕達を受け入れ歓迎してくれる。
お前なかなかやるじゃないかってね。
でもこういう新入りへの洗礼は時代が変わっても変わらないんだなぁ。
「んだよアイツ等、雰囲気悪ぃ連中だな」
けれど彼等の意図に気づかなかったジャイロ君は、その振る舞いに苛立ちを見せていた。
しょうがないよね、演技とはいえ仲間を侮辱されたんだから。
ただ、侮辱された当のミナさんは黙ったままだった。
「どうしたんですかミナさん? さっきから黙りこんで。まさかとは思いますが、僕と再会して気まずいんですか?」
「……ねぇ」
とそこで初めてミナさんが声を発した。
「おや、やっと返事をしてくれましたね。さぁ、今までいったいどこで何をしていたのか……」
ニヤニヤとした笑みを張り付けながら、彼がミナさんに話しかける。
けれどミナさんの発した言葉で、その笑顔が凍りついた。
「貴方、誰だっけ?」
「…………は?」
「「「「「「え?」」」」」」
って、あれ? 彼はミナさんの知り合いじゃないの?
「ん? ミナの知り合いじゃねぇのかコイツ?」
同じことを思ったのか、ジャイロ君がミナさんに問いかける。
「それが全然思い出せないのよね。どこかで見たような気がするし、全然知らない気もするし……ねぇ、貴方誰だっけ?」
「……は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ミナさんの容赦ない一言を受け、青年の絶叫が試験会場に響き渡った。
うん、ドンマイ……
モフモフΣ(:3)∠)_「まさかのアウトオブ記憶」
メグリ(‘ω’)ノ「名前すら憶えられていないとは哀れな」
学園長_:(´д`」∠):_「それよりも早く試験始めたいんですけど?」
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