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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
魔法学園編

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251/355

第251話 魔法学園に仮入学しよう!

作者_(:3 」∠)_「新年最初の更新だよー!」

ヘルニー(∩´∀`)∩「新章ですよー!」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「今回は学園シティアドベンチャーだよ!」

作者/ヘルニー(。・ω・。)?(。・ω・。)?「アドベン……チャー?」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

「ねぇ皆、ちょっと一緒に来てほしいところがあるんだけど」


 朝食を終え、そろそろ冒険者ギルドに顔を出そうかと言う時にそう告げたのはミナさんだった。


「何かあったんですか?」


「私のお爺様から呼び出しがあったんだけど、場所が場所でね。一人で行くと面倒事に巻き込まれそうなのよ」


 へぇ、ミナさんのお爺さんか。

 確かミナさんの魔法の師匠でもあるんだっけ?


「ミナの爺さんかぁ……あの爺さん、俺が居るとやたら絡んでくるんだよなぁ」


 けれどジャイロ君はミナさんのお爺さんと聞いて面倒くさそうにため息を吐く。


「ミナさんのお爺さんはジャイロ君に当たりがキツいですからねぇ」


「そうなんだよなぁ」


 二人は仲が悪いのかな?


「ジャイロは悪い虫扱い」


「俺は虫じゃねぇ!!」


「それで面倒って事は何か物騒な話?」


「いいえ、そういうのじゃないわ。ただ私一人だと口車と勢いで押し通されそうなのよ。お爺様、口が上手いから。だから皆にも来てもらう事でそっちの都合に従う義理はないって表明したいのよ」


 リリエラさんは荒事の危険があるのかと警戒していたけれど、ミナさんの反応を見る限り違うみたいだ。


「なんだか込み入った事情がありそうね。それでどこに行くの?」


「……魔法学園よ」


 ◆


「へぇー、ここが魔法学園かぁー」


 ミナさんに連れられて僕達は王都にある魔法学園へとやってきた。

 入り口で門番さんに止められたけど、ミナさんが見せた招待状を見せたらすぐに入れてくれた。

 どうやらミナさんのお爺さんは結構な人脈を持った人みたいだ。



 でも僕にとってその辺りは大して重要じゃなかった。

 何しろ魔法学園の中を見るのに夢中だったからだ。


 魔法学園、それは僕の前世にもあった魔法専門の教育機関だ。

 確か前々世の時代に創立された教育機関なんだよね。

 ただあの頃にはもう僕はいい年だったから入学した事はないんだよね。

 前世の頃は魔人との戦いが激しくなっていたり、強力な魔物の活動が活発になっていた事もあって、僕は即戦場に投入され実戦の中で訓練を受けていたから、やっぱり魔法学園に通った事はなかったんだ。

 そんな僕が二度の転生を経て遂に魔法学園にやって来たと思うと感慨深いものがあるなぁ。


「こっちよ」


 ミナさんは迷うことなく僕達を案内する。

 もしかしてミナさんは以前にもここに来た事があるのかな?


「もしかして以前にもここに来たことあるの?」


「たまにね」


 同じことを思っていたらしいリリエラさんが質問すると、ミナさんは隠すことなく答えてくれた。


「それにしても……」


 僕達の進む道には誰の姿も見えない。

 けれど分かる。

 誰かが見ている。

 それも一人や二人じゃない。数十人、いやもしかしたら数百人は見ているかもしれない。


「でも分かり易すぎるんだよなぁ」


 そう、僕達を見ている視線はあからさま過ぎた。

 目の前に出てこっちを凝視しているんじゃないかと思うくらいに。

 その視線を感じていたのは僕だけじゃなく、皆も居心地悪そうだ。


「ふわぁ~あ」


「フキュ~ウ」


 ああ、ジャイロ君とモフモフは気にして無さそうだね。

 けどここまであからさまだと僕達を警戒や監視してる訳じゃなさそうだね。

 どちらかと言うと威嚇かな?

 俺達がお前達の振る舞いを見ているぞって。


 魔法学園はどうか知らないけど、前世で騎士団と合同で戦った時や、他国に招待された時に同じような視線を感じた事はある。

 きっと僕達に視線を向けている人達も、自分達の縄張りで勝手な事をしたらただじゃおかないぞって脅しをかけてきているんだね。

 でも心配はいらないよ。

 僕達は君達と戦いに来たわけじゃないんだからね。

 それを伝える為、僕はひと際強い視線が送られてきた方向に微笑みかける。


「……!?……」


 それが功を奏したのか、笑みを送った一角の視線は消えた。

 どうやら分かってくれたみたいだね。

 そして学園の建物に入り、その奥へと進んでいくと、物々しい扉のある部屋へとたどり着いた。


「この中に私を呼び出した相手がいるわ」


 ミナさんは見た目こそ変わらないけれど、明らかに臨戦態勢に入っている。


「いい? この中では何を見ても驚かないでよ。そしてこの中で起きた事を外で話したりはしないでね」


 成る程、守秘義務って奴だね。

 情報を守る為、そして自分の命を守る為に必要な事だ。


「ええ、分かりました」


「分かったわ」


「おっけー」


「ん」


「分かりました」


 皆も同じように了承の意を送ると、ミナさんが緊張した顔でドアをノックする。


『入りたまえ』


 すると部屋の中の人物はノックしたのが誰かを問うことなく入室を許可した。

 これはやって来たのがミナさんだと既に知っていたからだろうね。


「失礼します」


 僕は心の片隅に警戒を残しながら部屋に入る。

 さて、ミナさんは戦いはないと言っていたけれどあの緊張ぶり。一体どうなる事やら。


 ◆


「おおーっ!! 待っておったぞミナよぉーっ!!」


 入って第一声はそれだった。


 そして誰かがこちらに向かって飛び込んでくる。

 襲撃!?

 先頭のミナさんはあらかじめ察していたのか、危なげなく躱す。

 その次に位置していた僕は相手の動きがあまりにも遅い事から、本気で攻撃する意思がないと判断して回避。

 リリエラさんとメグリさんは面食らったもののすぐに我に返って回避する。


「おわぁーっ!?」


 ただ、退屈そうにしていた所為で注意を怠ったジャイロ君が避け損なって地面に押し倒される。

 ノルブさんはまだ部屋に入っていなかったお陰で巻き込まれずに済んだみたいだ。


「ブ、ブギュウ……」


 あっ、モフモフが巻き込まれて下敷きになってる。


「ほっほー、元気しとったかーミナよ! 相変わらずフワフ……んん? 随分とゴツく……それに堅い……って誰じゃぁーっ!!」


 下敷きにされたジャイロ君を撫でまわしていた人物は、しかしその感触がミナさんではないと気付き、警戒というより怒りに近い声を上げる。


「俺だぁーっ!!」


 同様に押し倒されたジャイロ君も怒りの声を上げて反論した。


「貴様小僧ではないかぁーっ! ミナをどこに隠したぁーっ!!」


「そこにいんだろ! 良いからどけぇー!」


 ジャイロ君に押しのけられたその人物が立ち上がると、ミナさんが心底疲れたようなため息を吐く。


「はぁ……相変わらずねお爺様」


「「お爺様?」」


 ミナさんの言葉に僕とリリエラさんの声がハモる。


「ええ、この人は私のお爺様。ナギベルト=カークスよ」


「苗字って事は貴族!?」


「え? ミナさんって貴族だったんですか!?」


 ジャイロ君達と同じ村からやって来たって言ってたから平民だと思ってたんだけど、違ったんだ!


「私は平民よ。お爺様が名誉貴族なの」


 名誉貴族、それは特別な活躍をした平民に与えられる爵位だ。

 名誉貴族は通常の爵位前に名誉とつく事で通常の貴族と違う事が分かるようになっている。

 ただ平民に与えられる爵位なので、同じ爵位の本物の貴族よりも一段劣る扱いになるんだ。


 でも貴族年金も貰えるし、何より貴族の地位は平民にとっては最大の身分証明になるからそれだけでも十分な価値がある。

 貴族の身分を得る為に結構な額の賄賂を支払って名誉貴族になりたがる商人は多い。

 何しろ商品に箔が付く上に貴族に会いやすくなるからね。


 ただ一つ気をつけないといけないのは、名誉貴族は一代限りの爵位と言う事だ。

 つまり貴族なのは本人だけで、家族は平民。子供に爵位を継がせる事は出来ない。

 一応本当の意味で貴族になる方法もあるけれど、それは今は関係ないので置いておこう。


「おお、ミナ! そこに居たのか!!」


 と、ミナさんに気付いたナギベルトさんがこっちにやってくる。

 ジャイロ君のように巻き込まれてはたまらないと、僕達は慌てて道を開ける。


「おお、おお、やはりミナの撫で心地はこうでないとな」


 ナギベルトさんはミナさんの頭をぬいぐるみのように撫でる。


「お爺様、私もう成人しているんですよ。それにここには私達以外の人達も居ます」


 とミナさんは僕達ではなく、部屋の奥に視線を向ける。

 僕達も同じように視線を向ければ、そこには苦笑しながらこちらを見る老人の姿があった。


「おお、ようやく私に気付いてくれたか」


「ご無沙汰しております。ゼンザール学園長」


 ミナさんが頭を軽く下げて挨拶すると、ゼンザールと呼ばれたお爺さんは満足そうに頷いた。

 それにしても学園長って、もしかしてこの人が魔法学園で一番偉い人なの?


「うむ、久しいな。所でそちらのお友達も紹介してはくれないかね?」


「これは失礼しました」


「なぁミナ……」


 ナギベルトさんが何か言おうとしたのだけれど、ミナさんはそれを無視して僕達の紹介を始める。


「こちらがレクス、現役の冒険者で私に実戦で使える便利な魔法をいくつも教えてくれた魔法の先生です」


「ほう、君も魔法を使えるのか! それにミナとあまり年も変わらないだろうに、実戦で有用な魔法を他人に教える事が出来る程に魔法に習熟しているのか! それは素晴らしい!」


 僕も魔法を使えると聞いて、ゼンザール学園長が嬉しそうな声をあげる。


「初めまして。レクスと言います。といっても僕の魔法の腕は大したこと無いですよ。亡き師匠の方が遥かに優れた魔法使いでした」


「ほうほう、慢心せず先達への敬意を失わぬ心根は心地よいな」


「学園長、こちらがリリエラ。私達の先輩冒険者で彼女も優れた魔法の使い手です」


「初めまして。と言っても私の魔法は槍の補助に使うものですので、二人と違って自在に使いこなす事は出来ません」


「いやいや、魔法も突き詰めれば手段の一つ。貴方にとって最も有用な使い方をすれば良いのです。自分の力を卑下する事などありませんよ」


「恐縮です」


 へぇ、ちょっと驚いた。

 正直研究機関の魔法使いとかは特権階級意識の強い人が多いから、この人もそういうところがあるのかなって少しだけ警戒していたんだけど、意外にもと言ったら失礼だけど、ゼンザール学園長はとても人格者だった。

 良いなぁ、前々世の研究者もゼンザール学園長みたいに温厚な人達ばっかりだったらよかったのに。


「そしてこっちがジャイロ、メグリ、ノルブです」


「俺達はオマケ扱いかよっ!!」


「ああ、ナギベルトから聞いているよ。ミナの幼馴染達だったね」


「はい。腐れ縁とも言いますけど」


 その後もミナさんとゼンザール学園長は和やかに世間話をしていた。

 ただ僕達はその横で動く人影が気になってどうにも会話に集中できないでいたんだ。


「おーいミナ? 聞こえてる? お爺ちゃんだよー?」


 そう、ミナさんのお爺さんであるナギベルトさんだ。

 ナギベルトさんは何とか自分も会話に加わろうとしているんだけど、ミナさん達に完全に無視されている。

 あ、いや、ゼンザール学園長が笑いを堪えているから完全にわざとだね。


 そしてミナさんもいい加減にうっとうしくなってきたのか、仕方なさそうにため息を吐くとナギベルトさんの方に顔を向ける。

 もしかしてこの二人仲が悪いのかな?


「何か御用ですかお爺様?」


「おおーっ! やっと反応してくれたぁー! 元気しておっ……」


「話があるのでしたら、用件のみを手短に。私も仲間も冒険者として忙しいので」


 と言ってミナさんが僕達に視線を送ると、ナギベルトさんがあからさまに邪魔そうな視線を僕達に向けてくる。


「うう、しょうがないのう」


 仕方なさそうにため息を吐くとナギベルトさんがミナさんに事情を話し始める。


「……ミナはわざとお爺さんを無視する事で焦らせて用件をさっさと話させた。そうしないとお爺さんは延々とミナとお喋りをしたがるから」


 と、後ろに回り込んできたメグリさんが小声でミナさんの辛辣な振る舞いの理由を説明してくれる。


「成る程ね。私達を連れてきたのも、目に見える形で忙しさをアピールするつもりだったってわけね」


 リリエラさんからもそう言う事かと納得の声が小さく聞こえてくる。


「とはいえミナよ。そんな事はもう気にせんで良いぞ。儂のコネでお前の魔法学園への入学が決まったからの」


 へぇ、ミナさん魔法学園に入学するんだ……


「「「「「ええ!?」」」」」


「お? 何だ?」


 ナギベルトさんの驚きの発言に、思わず僕達まで声を上げてしまった。


「お爺様! それはどういうことですか!?」


「言った通りじゃよ。お前を魔法学園に入学させるんじゃ。勿論不正ではないぞ。ちゃーんと正式な入学じゃ。なにせ儂の孫じゃからの。優秀なのは間違いない」


 ええと、それは答えになってないような……

 同じ事を思ったんだろう。ミナさんはゼンザール学園長にギラリと鋭い視線を向ける。


「あー、いやそのだね。前学園長の強い推薦もあって君に入学試験を受けて貰う事になったんだ」


「前学園長?」


「……お爺様の事よ」


 ミナさんのお爺さんが魔法学園の前学園長!?

 もしかしてミナさんのお爺さんってかなり凄い人なんじゃ……!?


「お爺様の孫だからといって私が優秀とは限りませんよ」


「分かっているさ。だからちゃんと試験を受けて貰うつもりだよ」


 まぁそこは大事だよね。不正入学なんてしても、本人にちゃんとした学力がなければ結局はついていけずに落ちこぼれてしまう。

 入学試験があるのはある意味生徒の為でもあるんだから。


「それは問題ないといっておろう。ミナは儂の孫で唯一魔法の素質を受け継いだ優秀な孫なんじゃからな!!」


「だーかーらー! お爺様の孫は関係ありません!」


 ああ成る程、確かに魔法の才能は万人に受け継がれるわけじゃない。

 大魔法使いの家系の子供は魔法使いの才能を高く引き継ぐ確率が高い事が多いけど、あくまで確率が高いというだけで絶対じゃない。

 生活魔法が使えるのと、仕事として成立するレベルで魔法を扱うことができるのには大きな壁があるからね。

 ただ剣を持ちあげる事が出来るのと、剣に振り回される事無く自在に振るえて、剣技を使えることは別の問題だ。


 そう言う意味でナギベルトさんはミナさんが職業として魔法を扱えるレベルの才能を見せた事が嬉しかったんだろう。


「と言う訳で魔法学園に入学するのじゃミナよ! そうすればお前の未来はバラ色じゃぞ!」


 うん? 魔法学園に入学するだけなのに未来がバラ色?

 それってどういう意味だろう? 魔法学園はあくまで魔法の扱いを覚える為だけの技能教育機関の筈だけど……


「だーかーらー! 突然パーティを抜けると仲間達に迷惑が掛かるんですよ!」


「冒険者のパーティーに突然欠員が出るなぞよくある事じゃろうが」


「それは事故があったらの話でしょ! 普通は突然辞めたら迷惑になるの!」


 うん、ミナさんの言う事もナギベルトさんの言う事もどっちも正しいね。

 冒険者は危険と隣り合わせの仕事だから、予期せぬ脱落はどうしてもある。

 ただそれでも喫緊の状況でないのなら事前に脱退を宣言するべきだろう。


 けれどそれをミナさんが説明してもナギベルトさんは引こうとしない。


「……はぁ、ならこちらの条件を飲んでくれるなら仮入学を受け入れても良いわ」


 このままでは話が終わらないと考えたらしいミナさんがため息と共に条件を提示した。


「ふむ、何故仮入学なのかね?」


 ミナさんの言葉に疑問を抱いたゼンザール学園長がミナさんに問いかける。


「私は冒険者ですから。必要とする知識も冒険者として働くために有用かどうかです。必要な知識を得られないのならそもそも入学す必要がないでしょ?」


 う、うわぁ……ミナさんも学園長の前で言うなぁ。

 お前の所に有用な知識がないなら入学する意味はないなんて、プライドの高い相手だったら大変なことになるよ。


「はははっ、気の強い所と自信家な所は祖父譲りだね」


 けれどゼンザール学園長はミナさんの性格を熟知していたみたいで、怒ったりはしなかった。いやどちらかというとミナさんとそっくりなナギベルトさんで慣れてたって感じかな?


「いえ、自信ではありません。世の中には権威など意にも介さぬ孤高の賢者が居ると知りました。彼の知識と技を見た後では、ただ権威がある場所だからと無条件にありがたがるのは愚かと感じたのです」


 へぇ、前学園長を祖父に持つミナさんがそこまで言うなんてどんな人なんだろう。

 きっと相当な知識の持ち主なんだろうな。

 一体いつそんな凄い人に出会ったんだろう。


「「「「「……」」」」」


 すると何故か皆の視線が僕に集まっていた。


「どうしたの?」


「「「「別にー」」」」


「キュキュキュー」


 何だろう一体?


「ふむ、在野の賢者か。良い出会いを経験したようだね。私も会ってみたいものだ」


 ミナさんの出会った賢者の話を聞いて、ゼンザール学園長は嬉しそうに笑みを浮かべる。


「それで条件とは?」


 ゼンザール学園長は話を戻すとミナさんの求める条件を尋ねる。


「私の条件、それは……」


 とそこでミナさんの視線が僕達の方を向く。


「一緒についてきてくれた彼等も、私と共にこの学園に仮入学させてください」


「「「「「……」」」」」


 ええと、ミナさんの条件は僕達の仮入学……?


「「「「「って、ええぇーーーっ!?」」」」」


 な、何で僕達まで!?


「お、おいどういうことだよミナ!!」


「だって私だけ冒険から仲間外れになったら悔しいじゃない。アンタだって私と同じ立場になったら自分達だけ冒険してズルいって言うでしょ?」


「うっ、そりゃまぁ……でもだからってお前よぅ」


 ジャイロ君が慌ててミナさんに詰め寄るも、ミナさんは僕達だけ冒険を続けるのはズルいとわざとらしく拗ねたふりをする。


「でも流石に私達まで巻き込むのは感心しないわね。私とレクスさんは……」


 リリエラさんはきっと僕達は厳密にはジャイロ君達のパーティとは別のチームだと言おうとしたんだろう。

 けれど全てを言い切る前にミナさんがリリエラさんの傍により、耳元で何かを囁く。


「って事なんだけど、どう?」


「……その通りに事が運ぶならね。失敗したらその分の補填はしてもらうし、なんなら魔法学園に通うのは貴女だけにしてもらうわよ?」


「良いわ。今はそれで」


 何か二人の間で納得があったらしく、リリエラさんは一転ミナさんの条件に参加する事を受け入れた。

 そして後ろに下がりつつ小声で僕にこう告げた。


「ミナからの依頼よ。期間は仮入学の間だけ。長期になりそうなら途中で降りても良し。報酬はギルド預金に預けてあるミナの財産の半分ですって」


 ギルド預金に預けてある預金の半分!?

 それはまた随分と奮発したなぁ。

 それにこちらの意思で依頼を途中で降りていいなんて。


「途中で抜けた場合の報酬は?」


「その場合でも満額だそうよ。多分ここに来る前に報酬については結論を出してたみたいね」


 逆に言えばそこまでするほど僕達に何かを手伝ってほしがってるって事か。


「皆も良いかしら?」


 リリエラさんが話終えるタイミングを待っていたんだろう。ミナさんが僕達に確認をしてくる。


「私は構わないわ」


「ん、私も構わない」


 意外にもメグリさんがお金にならない話をあっさりと受け入れた。

 メグリさんは報酬の話をされてないのに。


「ノルブは?」


「そうですね、私も魔法学園に興味がない訳ではありません。本入学は困りますが仮入学ならかまいませんよ」


 ノルブさんはジャイロ君達曰く、余所行きの口調でミナさんの頼みを受け入れる。


「レクスも良いかしら?」


 ミナさんが伺うような様子で僕の答えを求めてくる。


「うーん……」


 魔法学園か、前世でも前々世でも通えなかった学び舎。子供達が一緒になって勉強を学び、放課後はクラスメイト達と楽しく遊ぶ場所。

 つまりは普通の人生で行くだろう学校だ!


「分かりました! 僕も参加しますよ!」


 うん、普通に生きていくと決めた僕なんだ。若者が学園に通うのは普通の事だよね!


「じゃあ決まり……」


「待て待て待てよ! 俺を無視すんなよ!」


 と、ジャイロ君が待ったをかけた。


「お前な! 何で俺の答えは聞かないんだよ!」


 ジャイロ君は自分への確認が無かった事に対し苦情の声をあげる。


「なんだそんな事」


「そんな事ってお前な!」


 どうでも良い事の様に言われてジャイロ君が気色ばむも、ミナさんはニッコリと笑みを浮かべてこう言った。


「だってアンタは文句を言ってもちゃんと来てくれるでしょ?」


「……お、おう。そりゃまぁなぁ」


 絶対味方になってくれると分かっているから聞く必要なんてなかったと全幅の信頼を見せるミナさん。

 流石にそうもはっきりと言われてはさしものジャイロ君もこれ以上怒れないらしく、しょうがねぇなぁと受け入れてしまう。


「グギギギギッ小僧めぇーっ!!」


 ただ一人、ナギベルトさんだけは納得がいかないみたいだけど。


「とまぁそう言う事ですお爺様、学園長。私達全員を仮入学させてくれるなら、この話受けるわっ!」


 こうして、僕達の魔法学園仮入学生活が始まりを告げるのだった。

モフモフ_Σ(:3 」∠)_「これは学園崩壊待ったなし」

学園校舎:[´д`]:「ガクブル」

ナギベルト(ꐦ°᷄д°᷅)」「許さん小僧ぅぉぉぉぉぉぉっ!!」

ジャイロ:(;゛゜'ω゜')「なんでだよ爺ぃぃぃぃっ!?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 学園もの待ってました!
[気になる点] ドラスレのみんなって実は結構いい家の子が多いねぇ 第2王女に教皇の孫に学園長の孫 ジャイロもいいところの子供なのかなぁ?
[一言] お手本をどうぞー レクス登場 教師「!!!」 教師を入れて、授業再開。 学園改革開始  なんだろう、展開が目に見える。
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