第245話 新時代の聖女達 前編
作者_:(´ཀ`」 ∠):_「先週は二度目の更新をするかもと言ったな! ウソになった」
ヘルニー└(┐Lε:)┘「ごめんね。作者が悪いので私は悪くない」
作者_(:З)∠)_「自分だけ逃げるなー!」
ヘイフィーヾ(⌒(_'ω')_「その分今週はまぁまぁ多めの分量です。というか予想外に書きすぎて前後編だよ!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さまの声援が作者の励みとなっております!
◆フォカ◆
生き残っていた同僚の司祭が何かを掲げた瞬間、周囲が真っ黒な霧に包まれていた。
いえ、正しくは毒の霧に。
幸い神殿より貸与された解毒のマジックアイテムがあったおかげで何とかなったけど、問題はその中でも一番高価な猛毒を解除するマジックアイテムが音を立てて砕けてしまった事。
困ったことにこのアイテムはいざという時の為に用意された使い捨ての品で、常時型発動型の解毒マジックアイテムでは無意味と判明してしまったわ。
「くっ! お前たち、私の傍を離れるな!」
幸いにもラミーズが風の結界を張ってくれたお蔭で、再び毒の直撃を受ける事は免れた。
でも、普通の毒ではないのかじわじわと私達は不調に襲われていたの。
「アンチドーテ!」
私は解毒魔法を使って仲間達の解毒を繰り返す。
「全く、いったい何を使ったのやら」
私は今も黒く輝きながら毒霧を産み出し続ける宝玉を掲げる笑みを浮かべる同僚の姿を見つめる。
「はははっ! これは凄いな! 毒の霧を出して敵を無力化するマジックアイテムか!」
「なんてものを使うの! すぐにそれを止めなさい!」
けれど彼女は私の言葉を鼻で笑い飛ばす。
「はっ、せっかく起動させたのだ! そんな馬鹿な事をするわけがないだろう!」
「それにしたって毒はやり過ぎです! それに私達まで巻き込むつもりですか!」
「巻き込まれたくないならサッサと逃げればいい。巡礼の旅は私が制覇しよう。最も、その代わりに我が派閥が我が神の教えの主流となるだろうがな」
くっ、こんな所に派閥間の争いを持ち込むなんて!
「はっはっはっはぁぁぁぁ!?」
けれど、何故か得意満面だった彼女はそのまま地面に倒れてしまった。
「あ、あれ……?」
「どうしたんですか?」
「か、体が痺れて……動かな……」
もしかして……
「貴女にも毒が回ったの?」
「ば、バカな!? 私には貴重な高級解毒マジックアイテムがあるのだぞ!?」
そう言って彼女が慌てて懐から取り出した解毒マジックアイテムは、見るも無残に砕け散っていた。
あー、これは完全には壊れてるわね。
原因は恐らく強すぎる毒を間近で吸収し続けたからかしら?。
「た、助けてくれ!!」
一転彼女は私達に助けを求めてくる。
いっそ清々しいくらいの掌返しね。
とはいえ、仮にも同じ大地母神を信仰する同僚です、流石に見捨てる訳にはいかないか。
まぁ、後でしっかりケジメは付けて貰うけどね。
「なら早くそのマジックアイテムを止めなさい!」
「だ、駄目だ! 止め方が分からん!」
「何でそんな物使ったのよー!」
いくら何でも無計画にも程があるわ!
「上の方から送られてきた協力者から渡されたんだ! 発動させるだけで他の参加者達を蹴散らす事が出来ると」
それでこの有様かぁ。
いくら功名心に逸っていたとはいえ、流石に危機感が足りなさすぎるでしょ!
寧ろ、そんなだから利用されたのでしょうね。
「ならせめて遠くに捨てて! このままでは近づくこともできないわ!」
「わ、分かった!」
同僚は急いでマジックアイテムを遠くに放り投げようとするけど。何故かをブンブンと振るだけでマジックアイテムを捨てる気配がない。いったい何をしているのかしら?
「て、手から離れん!?」
手から離れない? それってもしかして!?
「成る程、呪いのアイテムと言うことか」
即座に原因に思い至ったのはラミーズだった。
だけどこれは厄介なことになってしまったわね。
呪いのアイテムと言う事は、アレを何とかするには浄化の魔法を使う必要がある。
でも浄化の魔法を使うには問題があるのよね……
そうこう考えているうちに、同僚はどんどん顔色が悪くなっていく。
まだ辛うじて息はあるみたいだけど、このままじゃ長くは持たないわね。
たしか彼女の所属は一番強硬手段に躊躇いのない派閥だったかしら?
まさか部下が巻き添えになるような品を使うなんて、何を考えているのかしら?
「おい、結局のところ、アレどうするんだ?」
ロディが彼女を、正しくか彼が手にしているマジックアイテムをどうするのかと聞いてくる。
今の私は彼らの雇い主、止めるか無視して先に進むかどっちにするのかと言いたいのね。
「さすがにアレを放置するわけにはいかないわ。何とかして止めないと」
これ以上神聖な聖地を毒で汚させるわけにはいかないものね!
「となると破壊するにしても毒が邪魔だな。ラミーズ、アイツの所まで風を届かせる事は出来るか?」
「無理だな、この毒霧はあの宝玉を中心に集まる性質があるらしく風で払ってもまた戻ってくる。俺達が毒の影響を受けるのはそれが理由だ。それにあそこは毒霧の発生源だ。影響を受ける速さはここの比じゃないぞ」
宝玉に近づくのは危険すぎると、ラミーズが待ったをかける。
これは困ったわね。正直ラミーズの力を当てにしていたのだけど。
「ついでに言うと呪いのアイテムを破壊するのは最後の手段にしておいた方が良い。最悪の場合、内部で凝縮されていた呪いが一気に外にあふれ出して大惨事になるぞ」
そうなのよね。全てじゃないけど、呪いのアイテムには壊れた際に周囲を巻き添えにする危険な品もあるのよ。
「となると浄化の魔法で呪いを解除するか? 出来るかフォカ?」
「無理よ。浄化の魔法を行うには清められた聖堂で複数の司祭と共に行う必要があるの。でもここじゃとても……それに毒霧が溢れるあの状況では浄化どころではないわ」
実質浄化は不可能、破壊した場合は私達だけでなく聖地の方達にも危険が及ぶ。
どうしたものやら……
「ふむ、やるとしたら一旦毒霧の外に出て、氷の魔法であのマジックアイテムを凍らせるくらいか。氷で固めれば毒の霧を吹きだす事も出来まい」
「出来るの!?」
ラミーズに問うと、彼は静かに頷き返す。
「ただし持ち主に傷を与えずにアイテムだけを凍らせるのは無理だな。アイツも巻き添えを喰らう事になる」
「まぁそこは自業自得だ。フォカの回復魔法を使えば命だけは助かるだろう」
「そうね。それしかないのなら……」
方針を決めた私達はすぐに毒霧の外に出ようとしたのだけれど、何故かラミーズが結界を動かそうとしなかった。
「どうしたラミーズ?」
「不味いな、毒霧の密度と中心に集まる力が強まっている。奴さん、俺達を逃す気はないみたいだぞ」
なんという事かしら、あのマジックアイテムによって私達は毒霧の中に閉じ込められてしまったみたい。
「くっ、このままだと魔力が尽きて殺されるぞ!」
「こうなったら一か八かアレを破壊するしかないな!」
「だから浄化もせずに破壊するのは危険だと言っているだろう!」
「だがこのままだと状況は悪化するばかりだ。なら最速であの宝玉に近づいて破壊するしかないだろ」
私達の制止を振り切って飛び出そうとしたロディだったのだけど、彼は突然膝を突いたかと思うとそのまま両手を地面につけて倒れ込んでしまう。
「どうしたロディ……うっ!?」
ロディだけじゃなかった、リソウも、ラミーズもそして私も眩暈を感じて膝を突いてしまう。
「これは一体……」
眩暈、動悸、体の痺れ……
「まさか、毒が!? ア、アンチドーテ!」
私は即座に解毒魔法を発動させたのだけど、痺れが無くなる様子はなかった。
「魔法が、効いていない!?」
それはつまり、この毒霧は私の解毒魔法では解毒しきれない程に強い毒と言う事!?
これまでは私の魔法で何とかなると思っていたけど、どうやら私達の気付かない所で毒が体を蝕んでいたみたいね。
「これは、いよいよ危ないわね……」
逃げる事も治療する事も出来ないとなれば、どうしようもない……
眩暈はどんどんひどくなり、体が勝手に地面に倒れ込んでしまった。
まさかSランク冒険者と呼ばれた私達が味方の仕掛けた毒にやられるなんて……
それも私達神に仕える者達にとって最も神聖な場所で……
「ハイエリアアンチドーテ!!」
その時だったわ、急に全身の痺れが消滅したの。
「え?」
「良かった、皆さん間に合ったみたいですね」
「ええ?」
一体何が起こったのかと顔を上げれば、そこには見覚えのある少女の顔があったの。
「貴女は確か主神様の神殿の……」
この子は確か主神神殿で働いているトレーシーという司祭……
「皆さんを助けに来ました。体の具合は大丈夫ですか?」
「えっ、ええ。大丈夫……よ」
この子が私達を? だけどこの子は司祭になって間もない筈。とてもこの毒霧の毒を解毒出来るとは……
「あちらの方もノリエさんが助けに行っているので大丈夫ですよ」
ノリエ? ああ、確かレクス君のお仲間の子の偽名だったわ……ね!?
「まさか!?」
トレーシーさんのあちらの方と言う言葉にハッとした私は、すぐに周囲を見回してノリエさんを探す。
そして見つけてしまった。
倒れた同僚に向かうノリエさんの姿を。
その傍には、あの宝玉が今も猛毒を放ち続けて……
「いけない! 逃げて!」
いくらレクス君の仲間でも、あの猛毒になんの対策も立てずに近づくのは自殺行為……って、あれ? 何でピンピンしてるの?
私達は離れた位置で結界を張っても染みこんできた猛毒にやられたのに。
ノリエさんはあっさりと倒れた同僚の元までたどり着いていた。
「ああ成る程、これが悪さをしていたんですね。まずはこれを何とかしないと解毒してもダメみたいですね」
すぐ傍で猛毒の霧が放出されていると言うのに、ノリエさんは全く具合が悪くなる様子が見られなかった。
いったいなんで!?
「ではさっそく浄化するとしましょう。ハイピュリフィケーション!」
ノリエさんが何らかの魔法を発動させたその瞬間、黒い宝玉が光に包まれたじゃないの!
そして宝玉はパキッという音を立てて真っ二つに割れると、そのまま灰になって消滅してしまった。
「って、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
うそぉーっ!? 呪いのアイテムをたった一人で浄化した!?
何の補助もなく!?
ありえないっ!!
「ハイアンチドーテ!」
私が驚いていると、ノリエさんが倒れていた同僚に解毒魔法を使う。
っていうかハイアンチドーテ? もしかして幻の上位解毒魔法!?
それをあの子が使えるの!?
すると先ほどまでピクリとも動かなくなっていた同僚の体がビクリと震える。
「うっ、うう……」
そして同僚の目がうっすらと開いていった。
「大丈夫ですか?」
「お、お前は……」
「私は主神の神殿の者です」
「主神の神殿? 主神の神殿の者が何故私を助ける……!?」
彼女が疑問に思うのも当然ね。何しろ今の私達は巡礼の旅で競い合うライバルなのだから。
「困っている人が居たら助けるのは当然の事ですよ」
「なっ!? そ、そんな理由で!?」
「それじゃあ試練に戻りましょうか」
そうして私達の命を救ったノリエさんは、何事もなかったかのように私達に試練の再開をしようと手を差し出してきたのだった。
◆戦神の司祭サントイ◆
「うぐぅ、これはまた……」
突然巻き起こった炎の中に我々はいた。
幸いにも防御用のマジックアイテムのお陰で助かったが、このままでは炎に巻かれて死んでしまうだろう。
異変が起こったのはここだけではない。
他の神殿の連中がいる場所にもこれとは別の異変が起こっていた。
異変は、他の神殿の連中が手にした宝玉を翳した瞬間に起った。
それも使った連中を巻き込んでだ。
「ふっ、使わなくて正解だったようだな」
俺は懐に隠していた宝玉を見つめる。
そう、他の神殿の連中が使った物と同じ宝玉を俺は持っていた。
上層部との連絡役が持ってきたこのマジックアイテムを使えば、必ず勝利を手にすることが出来る切り札との事だったが、この状況を見る限り疑わしいものだな。
俺はコイツを使わなかった、いや使えなかった。
俺の中に残っていた小さなプライドの欠片があの娘の前でこんなものに頼るのをためらわせたのだ。
「だが俺が使う事を躊躇っている間に他の連中に使われるとは滑稽だ」
この炎を産み出した赤い宝玉は、夜神の司祭達か。
見れば連中も結界を張って身を守っているが、あの分では保つまい。
厄介な事にこの炎は氷や水の魔法が効かない。
お陰で結界の外に出る事が出来ない有様だ。
だが結界も炎の熱までは防げない。
恐らく身に着けたマジックアイテムの魔力が尽きた時が俺達の最期だろう。
「ちっ、これまでか……」
身動きできないのでは、もうどうしようもないか。
まったく情けないにも程がある。
「おいおい、こんな所で諦めんなよ」
その時、俺は信じられない声を聞いた。
「お、お前は!?」
「よっ、また逢ったな」
顔を上げればそこにはつい先ほど別れたばかりのジャネットの顔があった。
「ば、馬鹿者! 早く逃げろ! お前まで焼き殺されるぞ!」
コイツ、何をこんな所まで戻ってきているんだ!?
「心配要らねぇって。あれは俺がぶっ飛ばすからよ」
「な、何!?」
この炎をぶっ飛ばす!? 正気かコイツ!?
「リリエラの姐ちゃん、ここは頼むぜ」
「はいはい」
その言葉と共に、熱気に包まれた焼け野原に涼やかな風が吹いた。
否、風ではないこれは冷気だ。
見れば周囲が氷の壁に包まれていたではないか。
「私は回復魔法は使えないから、氷で我慢してね」
そう言ったのは、以前主神の神殿でジャネットと一緒に居たもう一人の娘だった。
「なんと……」
リリエラと呼ばれた娘は分厚い氷の壁によって炎の熱気から我々を守ってくれていた。
だが私は聞いたことがある。
特定の属性の力が強い場所で相反する属性の魔法を使う際は、かなりの集中力と魔力を消費するのだと。
だがこの娘はそれを涼し気な顔で成し遂げた。それどころか氷の壁を完全に維持しているではないか!?
「おーい、コイツも頼むわ。 何か片手が燃えてるから治してやってくれ」
そんな言葉と共に、氷の壁の外から体格の良い女が一人放り込まれてきた。
その女は夜神の司祭の衣装を身の纏っており、右腕は炭化して手の形をしていない。
成る程、この者があの宝玉を使ったものか。
そして不幸中の幸いと言うべきか、腕が炭になった事で宝玉から手が離れて近くまで逃げ延びてきたわけだ。
しかしマジックアイテムの加護があったとはいえ長く炎のなかに晒された所為で、全身が酷いやけどに覆われていた。
これでは長くは保つまい。
「これは酷いわね。皆と合流するまでポーションで間に合わせるしかないわね。確かレクスさんから貰ったのが……ああ、あったあった」
ポーション? そんなものでこの火傷が治る訳がない。
まぁ痛み止め程度の役には立つかもしれんな。
「えいっ」
リリエラがポーションを夜神の司祭に振りかけると、その体が薄く輝き、全身の火傷が綺麗に治った。
「……はぁっ!?」
え? 治った? あの酷い火傷がポーションで!?
しかも腕! 炭化して崩れていた腕まで生えている!?
「な、な、なぁっ!?」
一体何を使ったのか聞きだそうとした俺だったが、氷の壁の外に居たジャネットが駆け出した事で意識が逸れる。
「んじゃ、サクッと終わらせてくるぜ!」
ジャネットは剣を構えると炎を吹きだし続ける宝玉に向かって駆けだす。
はぁ? 剣だと!? あの子娘正気か!?
宝玉の周囲は凄まじい炎に包まれており、中心の宝玉に近づく前に焼け死んでしまうのは明白だった。
何より炎を剣で斬れる訳がないではないか!
「バーニングメルトソード!!」
ジャネットの剣が蒼い炎を纏う。だがそれが何になると言うのだ!
「馬鹿者! 炎を相手に炎の魔法なぞ通じるものか!」
そうこう言っている間にもジャネットが炎の中に突っ込んでゆく。
おお、神よ!
「へへっ、行くぜぇ! 俺の新必殺技!! バーニングメルトインパルスッッ!!」
剣から溢れた青い炎がジャネットの体を包み、その後方に陽炎の様に炎が揺らぐ。
するとジャネットの体が文字通り飛ぶような速さで前へと向かっていく。
もはやジャネットは自分の脚で走ってはいない。
まるで蒼白く燃える剣に引っ張られているかのようだ。
しかも信じられないことに、青白い炎は周囲の炎を切り裂いていた。
そして炎の中心である宝玉を貫く。
だがその瞬間、宝玉から凄まじい熱と炎が噴き出したのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
なんという凄まじい炎だ!
氷の壁の内側に居てなお感じるこの熱量!
「はっ! 小娘!!」
ここでこれだけの熱さを感じるなら、中心に居るジャネットはどうなる!
「小娘! 小娘ぇぇぇぇぇっ!!」
ならん! このような事があってはならん!
道を踏み外した我等だけが助かり、あのお人好しの小娘が犠牲なるなどあってはならん!!
「大丈夫よ」
慌てて小娘を止めようとした私に、リリエラが氷の魔法を維持したまま告げる。
「あの子ならなんとかするわ。何せ炎はあの子の十八番なんだもの」
なんとかするだと!? どうやってだ!?
だが無様な事に俺はジャネットを助けに行くどころかこの場から動く事すら出来ず、ただ荒れ狂う炎が鎮まるのを待つしかなかった。
そして長い時間が過ぎ、ようやく炎が鎮まるとリリエラは氷の壁を消し去る。
「これは酷いわね」
その言葉通り、試練の地は酷い有様だった。
周囲は焼け焦げており、勿論そこにジャネットの姿はなかった。
あの炎に巻き込まれ、全身を焼き尽くされてしまったのだろう。
骨の一欠片すら残っていない。
それを証明するかのように、炎のその中心であった場所には真っ白な円が出来上がっていた。
「ん? 円?」
何だあの円は? 爆炎が膨れ上がった中になぜあんなものがあるのだ?
同時に何か奇妙な音が聞こえてきた。
ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥ ドォォン!!
「な、なんだ!?」
丁度白い円があった場所に土煙が立つ。
「ば、馬鹿な……」
そこに居たのはあの子娘、ジャネットだった。
「いてててっ、まさか俺が吹っ飛ぶとは思わなかったぜ」
「お、おい! 小娘!!」
私は居てもたってもいられずジャネットの下に走る。
「ん? おー、そっちも無事だったみたいだな」
「無事だったかではない! 一体何が起こったのだ!? お前は何をしたのだ!? 何故お前は無事なのだ!?」
俺は湧きだす感情を制御できずにジャネットに疑問をぶつける。
「待て待て、いっぺんに聞いてくるなって」
そう言うとジャネットは周囲を見回す。
「おー、上手く炎は消えたみてーだな。さっすが兄、姉貴に教わった通りだぜ!」
「教わった?」
「ああ、俺の姉貴に聞いたんだがよ。なんでも、炎を消すにはより大きな炎を創り出す事で炎を発生させる元を丸ごと焼き尽くせばいいんだとよ」
「そ、そんな事が……!?」
炎を炎で消す? そんな事が出来るのか!?
それにコイツ、あれだけの炎を発していた宝玉に飛び込んで髪の毛一本焦げていないとはどういうことだ!?
「成る程ね、あの白い円は貴女の超高熱で出来た空間の名残って訳ね」
「おうよ! スゲー熱い炎をちっちぇえ空間の中に閉じ込めてぎゅーっと押し込んで超熱くしちまおうって技だ! まぁその反動で俺が真上に吹き飛ばされちまったけどな!」
な、なんだその技は!?そんな技術聞いた事もないぞ!
それにその技術を教えた者とは一体何者だ!?
「ともあれ、消火完了っと! んじゃ試練再開といくか」
それ程の事をしたにも関わらず、ジャネットは何事もなかったかのように試練に戻ろうとする。
「ま、待て! 何故我らを助けたのだ……?」
あまりにも不可解なジャネット達の行動に、つい俺は疑問を投げかけてしまった。
だがジャネットは心底不思議そうな顔をしてこう言ったのだ。
「あ? んなもん困ってる連中が居たから助けに来たに決まってんじゃねーか」
「なっ!? そ、そんな理由で……?」
こ、困っていたから助けに来ただと!? 身の危険も顧みずに!?
「そんじゃ俺達は行くぜ。アンタ等もまだまだやれんだろ?」
そう言ってジャネットは駆け出していった。
「ふ、ふふ……バカには勝てんな」
二度目の背中は、直視しようがない程に眩く輝いていた……
サントイ; (つ∀<○)゜+.「トゥンク」
リリエラ└(┐Lε:)┘「今のうちになんかタワーを建設しておいた方が良いのかしら?」
ジャイロ_(:З)∠)_「次回はミナ達と兄貴の活躍だぜ!」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




