第240話 聖地の夜
作者_(:3」∠)_「更新の時間だぁー!」
ヘルニー_(┐「ε:)_「へくちっ! 急に寒くなったわねぇ」
ヘイフィー_(:3」∠)_「季節の変わり目に体調を崩さないように注意してくださいねー」
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「今度はこちらの施設をお願いします!」
入浴施設を修復した後、僕達は神官達に頼まれて聖地の施設修復を行っていたんだ。
試練の準備が完了するまでは暇だしね。
神官達は僕が施設を修復したり用途および動かし方の分からない機器について説明すると、心底嬉しそうに喜びの声をあげてくれたんだ。
こんなに喜ばれるとこっちとしても嬉しくなっちゃうね。
「いやー本当に助かりました。何しろ聖地では新しい研究者を雇い入れるのが難しいですからね」
と、神官の一人が聖地の雇用についてぼやく。
「そうなんですか?」
「ええ、何しろ聖地ですから、迂闊な者を招き入れる訳にはいきません。それにここは神々より賜った地、いわば聖地の施設すべてが神器と呼んで差し支えない為、施設を傷つける可能性がある調査や実験は許可が下りないのですよ」
あー、責任問題になるのを嫌がる上司と、信仰第一の権威主義者達から横槍が入るんだね。
分かるよ、僕も前世や前々世で似たようなことがあったからね。
「ですからこれらの設備の直し方や用途を知っていた貴女の知識は本当に助かります。何しろ巡礼の旅の参加者ですから面倒な手続きなしに聖地に入れますし、正しい知識を持っているから施設は傷つきません。いや本当に助かりました」
どうやら聖地はマジックアイテムの修理技師も入る事は出来ないみたいだね。
それにこれまで見てきただけでも、この人達がマジックアイテムに関しては多少の知識しかない素人同然のにわか研究者だと分かる。
聖地の研究をして良いのは聖地に入る事を許された身元が確かな聖職者のみで、その人たちの中で一番マジックアイテムに明るい人達しか研究者にはなれないんだろうな。
でもそれはイコール専門家という訳じゃない。
そんな事情もあって、専門家らしい専門家が居ない聖地の研究は遅々として進まないんだろう。
こういう時、教会の権威主義が円滑な活動の邪魔をするなぁ。
「次はこちらをお願いします!」
神官達に案内されて次の施設に向かう途中、ふと僕は見覚えのある物に目を奪われた。
「あれは……」
そこにはいくつもの同じような形の器具が並べられていたんだ。
「何これ?」
「随分と大きいけど、何に使う道具なのかしら?」
見知らぬ道具にミナさん達は首をかしげる。
「キュフン?」
モフモフも気になるのか、近くにある器具の上でポンポンと飛び跳ねている。
「変な形してんなー。ノル……ノリエ、これってなんだ? 教会で使う道具なのか?」
「え? ええと僕も知らない道具ですね。トレーシーさん、聖都ではメジャーなものなんですか?」
「へっ!? い、いえ私も知りません」
ジャイロ君に問われたノルブさんが慌ててトレーシーさんに確認するけど、トレーシーさんも見た事がないと首をかしげていた。
でもしょうがない。これは別に教会とは関係ない道具だからね。
「これはトレーニング器具ですよ」
「「「「「「トレーニング器具?」」」」」」
僕の言葉に皆が振り返る。
そう、ここに設置されていたのは全てトレーニング器具だったんだ。
「そうです。これ等の器具は鍛えたい部位をピンポイントに鍛えるトレーニング器具なんです。これはこうやって使う事で腕の筋肉を鍛え、こっちの器具はこう使うことで普段あまり鍛えないこのあたりの筋肉を鍛える事が出来るんです」
「トレーニング器具……そんな道具があったのね」
「冒険者ギルドでも見たことないわね」
こういう道具はメンテナンスにお金がかかるから、荒くれ者が多い冒険者ギルドだと壊されたら堪らないと設置を見送ったんじゃないかな?
代わりに騎士団あたりには導入されてそうだけど。
「この器具達にはそんな用途があったのですか!?」
皆と話をしていたら、先導していた神官達が戻ってきて会話に加わる。
「ええ、この道具はここを押すと起動して器具を動かした回数や適正な運動量を教えてくれるんです」
「まぁ! ではこれもマジックアイテムなのですか!?」
「ええ、そうですよ」
「なんと、体を鍛える為のマジックアイテムとは、それもこれが全て……」
「何の為の器具なのか全く分からなかった……」
神官達は自分達が見落としていたものの正体を知って驚きの声をあげる。
けれど僕は体を鍛える為の道具が聖地にある事に違和感を感じていた。
入浴施設、それにトレーニング器具の数々。
これじゃ聖地と言うよりも……
◆
「お食事をお持ちしましたー!」
「「「「「「「わーい!」」」」」」」
聖地の施設やマジックアイテムを修理した僕達は、夜も遅くなった事もあってそのまま宿泊する事になった。
幸い聖地には宿泊に使える部屋も多く、僕達は大部屋を貸して貰えることになったんだ。
そして部屋でまったりしていると、神官達がもの凄いご馳走を運んできてくれたんだ。
「うわー、凄い」
「聖地の自慢の料理です! 是非ご賞味ください!」
神官達は自信満々でご馳走を勧めてくれたので、僕達は素直にそのもてなしを受ける事にする。
文字通り下にも置かないもてなしというやつだった。
「「「「「「「いっただっきまーす!!」」」」」」」
「キューッ!!」
さっそく料理を頂くと、口の中一杯に料理の味が染み込んでくる。
「うん、美味しい!」
「教会の料理っていうから、もっと地味な奴かと思ってたけど、意外に豪勢だよな!」
確かに、聖地の料理は野菜だけじゃなく、肉や魚に鳥、それにキノコや果物と盛りだくさんだ。
「それに良い材料を使ってるわ。さすが聖地だけあって仕入れにも金かけてるわね」
「こんなに贅沢な食事、神に仕える者としてどうかと思うんですが……」
「おっ!? ノル、ノリエはいらねーのか!? じゃあ俺にくれ!」
「だ、駄目ですよ! 人の食事を取るのは良くない行いです!」
ノルブさんの食事にジャイロ君が手を出そうとすると、ノルブさんは慌てて皿を抱えて守る。
「えー、でも贅沢な食事は良くないんだろ?」
「いえ、振舞われた料理に罪はありません。僕が責任を持って頂きます」
「なんだよ、お前も食いたいんじゃねーか」
「「「「「「「あははははっ!」」」」」」」
そんな感じで聖地での夜は過ぎて行ったんだ。
◆
「おはようございます。朝食をお持ちしました」
「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」
朝食は聖都の神殿でも食べられている司祭用の修行用の食事らしいんだけど、これもとても美味しかった。
「凄い、美味しいです。うちの神殿の修行用の食事とは大違いです。美味しい」
主神の神殿の食事情との違いに衝撃を受けたトレーシーさんが何度も美味しい美味しいと繰り返している。
「ごちそうさま」
美味しい朝食を食べ終えた僕達は今後の予定を話し合う。
「僕は聖地の人達と施設の確認かな。今動いてるものでも劣化してる可能性が高いし」
「俺は聖地の冒険だな! まだ見てない場所が沢山あるからよ!」
「ん、聖地ならお宝があるかも!」
「メグリさん、聖地でそのような発言をしてはいけませんよ!」
「そうです! 神々から罰を受けますよ!」
そしてうっかり口を滑らせたメグリさんにノルブさんとトレーシーさんのお説教が始まってしまった。
「くっ、迂闊だった……」
「私はあのトレーニング器具を使って修行してみたいわ。で、その後はまたあのお風呂で汗を流そうかしら」
「良いわね。私もあの泡の出るお風呂に入りたいわ」
リリエラさん達は一服したらまたスパに入るつもりみたいだね。
「それにしても何か忘れているような……」
そんな事を考えた時だった。
「巡礼の旅の参加者様達が到着致しましたー!」
施設の中に飛び込んできた職員さん達がそう叫んだ事で、僕達は忘れていた事を思い出したんだ。
「「「「「「「あっ、巡礼の旅をしてたんだった」」」」」」」
モフモフヾ(⌒(_'ω')_「ぷかー」
ジャイロ_(:3」∠)_「極楽極楽」
ノルブ_(:3」∠)_「朝風呂も良いですねぇ」
参加者たち:("°Д°);「や、やっと着いた……」
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