第239話 温かくてちょっとドキドキするもの
作者 _(:3」∠)_「今週二度目の更新ですよー!」
ヘルニー_(┐「ε:)_「ヒュー! 待ってました!」
ヘイフィーヾ(⌒(_'ω')_「お風呂回ですよー! そういえば今までなかったねぇ」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さまの声援が作者の励みとなっております!
「困った……!!」
そう、僕達はとても困っていた。
何を困っているかというと、この施設には男湯が無かったからだ。
それだけならまだいい。僕達男が入らなければいいからだ。
けど今の僕達は巡礼の旅に参加するために性転換の魔法薬の力で女の子になっている。
そしてお風呂には聖地で働く沢山の女性神官達が美容促進の実験に参加という名目で混ざっていた。
「君達、早く入らないと体が冷えてしまいますよ」
「え、あ、はい……」
そう、この状況で僕達だけ入らないという選択肢はとても不自然に見えてしまうんだ。
「ど、どうしよう……」
僕とジャイロ君とノルブさんは三人で固まってどうするか相談する。
「やっぱ逃げるのが一番じゃね?」
「そうだよね!」
「ですが施設の使い方はレク、ラクシさんが説明する必要があるのでは?」
「いやいやいや、それはリリエラさん達に任せればいいと思うよ!」
くっ、どうすればいいんだ!
「普通に薬で女になったことを伝えればいいんじゃない?」
「「「え?」」」
いつの間にかやって来たメグリさんの言葉に僕達は目を丸くする。
お風呂に入るのに僕達が男だってバラす!? それはマズいでしょ!
「だって巡礼の旅じゃ男が魔法薬で女になるのは暗黙の了解なんでしょ? だったらそれとなく伝えれば察してくれると思う」
「「「あっ」」」
そういえばそうだった。
巡礼の旅って戦力を確保するために性別を変えて参加するのが常態化してるんだった。
「なんで気付かなかったんだ俺達……」
「慌てるあまりすっかり忘れてましたね」
◆
「はー、いい湯だねぇ」
メグリさんを通じて神官達に察してもらった僕達は、魔法で浴室内に壁を作って事実上の男女別にしていた。
今後も巡礼の旅を行う事を考えれば、聖地で働く本物の女性神官達も安心できるので無事許可が下りたんだよね。
ただ事情を知らないトレーシーさんには首を傾げられたんだけど、僕達の故郷の風習って事でなんとか納得してもらえた。
「特別な役割を持った方は同性でも肌を見られてはいけないなんて不思議な風習ですねぇ」
「え、ええ。そういう訳なので、故郷に戻るまでは別の湯船に入らせてもらいますね」
なんて一幕もあった事で、ようやく僕達は広い湯船でゆっくりする事が出来たんだ。
「ふいー、この露天風呂ってのもイイモンだな兄、姉貴!」
大浴場から露天風呂に移動したジャイロ君は露天風呂が気に入ったみたいだね。
でもモフモフと一緒に泳いじゃだめだよ。
「へぇー、これが温泉なのね。なんだか肌がすべすべするわ」
「うんうん、素晴らしいわね。まるで肌が蘇るような気分よ!」
「私達、これからは毎日このお風呂に入る事が出来るんですよね!」
「「「「サイコー!!」」」
仕切りの向こうからリリエラさんや女性神官達の嬉しそうな声が聞こえてくる。
「それにしてもやっぱりリリエラは凄い」
と、メグリさんの真剣な声が聞こえてきた。いったいリリエラさんの何が凄いんだろう?
「凄いって何が?」
「それはもう……胸が」
「ちょっ、ちょっと、どこ見てるのよ!」
……ええと、なんというかちょっと聞いてて困っちゃうかな。
「ト、トレーシーさんはどうですかー? 少しは疲れがとれましたかー?」
気恥ずかしさを振り払うように、僕はトレーシーさんに声をかける。
元々この施設を修復したのは身体強化魔法の訓練で疲れたトレーシーさんに休んでもらうためだからね。
「はい~。凄く気持ちいいですぅ~。お風呂ってこんなにいい気分になれるものだったんですねぇ~」
壁の向こうからリラックスしきった声が聞こえてきたので、役に立ったみたいで良かった。
「それにしてもこれだけ沢山のお風呂があるなんて贅沢ですねぇ。しかもお湯は自動で新しいものに入れ替わるなんて、王族でもこんな贅沢は出来ませんよぉ……はふぅ」
真面目な顔をして大浴場について考えていたノルブさんだったけれど、大量のお湯に身を浸してリラックスしたのか、すぐに考えるのをやめて湯船の縁にもたれかかってゆらゆらと体を揺らしていた。
「キュフゥーン」
さっきまで露天風呂に居たモフモフが今度はバブルバスに飛び込む。
パチャパチャと沈まないように湯船を泳いでいるんだけど、浴槽の底から出る泡に揺られる長毛はまるでクラゲの様でちょっと面白い。
「とはいえ、これ以上入っていたら湯あたりしそうだし、そろそろ出ようかな」
そろそろ出ようと湯船から立ちあがると、ジャイロ君も露天風呂から戻ってくる。
「俺も出るわー」
「僕はもう少し温まってから出ます~。今度は露天風呂に入ろうかなぁー」
ノルブさんは広い湯船が気に入ったみたいだね。
「キュフーン」
モフモフも暑くなってきたのか湯船から上がって僕達についてくる。
けど正直お湯から上がってペタンと萎れたその姿は、濡れたモップの様でちょっと直視し続けるのが大変だ。
「リリエラさーん、僕達は先に出ますねー!」
「はーい! 私達はもう少し入っていくわー!」
壁の向こうのリリエラさんに声をかけるとすぐに返事が返ってくる。
「皆さんも湯あたりには気をつけてくださいねー」
「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」
何かまた人が増えてるような……
◆
「……」
「……」
僕達は黙って体を拭くと、魔法の袋から取り出した着替えにそでを通す。
その間なんとなく視線を動かしたりはしない。
いやだって、視線を動かすと見えちゃうじゃないか。
……お互いの裸が。
いや分かっているんだ。気にし過ぎだって。
でもさ、元は男でも今はお互い女の子の体。
それを見ちゃうのはなんというか……その、気まずいんだよね。
そんな訳で僕達はどちらが何を言うともなく無言で視線を合わせずに着替えをしていたんだ。
「キュフフフフフッ!!」
そんな僕達の気まずさなんて知らないモフモフは、足元でブルブルと体を振って水気を飛ばす。
「キュフン」
あーっさっぱりしたと言いたげなモフモフの姿に思わず苦笑してしまう。
お前はメスになってもそういう気持ちとは無縁で良いなぁ。石鹸と美肌効果でフワフワの長毛になってるけど。
そして衣擦れの音が消えた事を確認した事でようやく僕達は視線を合わせた。
そこには着替えを終え女の子らしい可愛らしい格好になったジャイロ君の姿があった。
その服はフォカさんの用意した予備の衣装だ。うん、僕もなんだけどね。
「「……」」
お互いに言葉が出ない。
似合うねと言えばいいんだろうか? いや男同士でそれはないよね。
僕もそんなこと言われたらなんて返事をすればいいのか分からない。
「「……」」
無駄に長いような短いような時間が流れる。
「えっと行こうか」
「お、おう」
僕達は何と戦っているんだろう?
◆
「「あ”あ”あ”あ”あ”」」
その後はリリエラさん達が出て来るまでマッサージ施設に戻ってのんびりすることにした。
「っつーかあいつ等いつになったら出てくるんだよ」
けどそれもすぐに飽きてしまったジャイロ君が退屈そうに足をブラブラと揺らすと、それに興味を示したのかモフモフがピョンピョンと飛び上がってじゃれついている。
「へへっ、ほれほれ」
「キュフン! キュフン!」
ジャイロ君は丁度良い暇つぶしになると思ったのか、脚をパタパタさせてモフモフと戯れる。
そんな風に時間を潰していたら、ようやくリリエラさん達がやってきた。
「おまたせー」
「おせーぞおま……っ」
そろそろモフモフと遊ぶのにも飽きてきたジャイロ君が文句を言おうとしたんだけど、何故かその声が止まる。
「どうしたのジャ……ぁ」
同じように体を起こしてリリエラさん達の方を見ると、その光景につい僕も声を上げてしまった。
合流した湯上りのリリエラさん達の髪は乾ききっていないのかしっとりとしていて、何とも言えない色気に溢れていたんだ。
脱衣場でジャイロ君と目を合わせた時とは違う感覚。
これも温泉の美肌効果の影響……なのかな?
お陰で何とも言えないムズムズとした感覚になってしまう。
「「「「……」」」」
それを察したのか、なんとなく皆して居たたまれない空気になってしまった。
うう、どうしよう、何か気の利いた事を言った方が良いのかな?
「キュフゥーン」
こういう時に限ってモフモフは遊び疲れたのかゴロゴロと転がっている。
くっ、役に立たないぞモフモフ!
「す、すみませーん、遅くなってしまいましたー!」
そんな時だった、慌てた様子でやって来るノルブさんの声と足音が近づいてきたんだ。
た、助かった! ナイスタイミングだよノルブさん!
「あっ、お帰りなさいノリエさ……」
「「「「「「「「う”ぁっ」」」」」」」
「へっ? 何ですか皆さん?」
最後に合流したノルブさんの姿は……
「「「「「「「「「美少女だ」」」」」」」」」
それは温泉の美容効果の影響かはたまた本人の資質か。
未だ濡れた艶やかな髪を肌に張り付かせた姿で現れたノルブさんは、非の打ちようもない程に完璧な美少女だった。
モフモフ _Σ(:3」∠)_「もうお前がヒロインで良いんじゃないかな?」
全員_(┐「ε:)_「「「「「「「「「賛成」」」」」」」」」
ノルブヽ(ill゜д゜)ノ 「一体なんの話ですか!?」
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