第234話 幕間、聖女の独白
作者(:3)∠)_「誕生日アフタァー!!」
ヘルニー(:3)∠)_「誕生日祝いのコメントありがとうー!」
ヘイフィー(:3)∠)_「プレゼントをくださった方もありがとうございます!」
作者_(┐「ε;)_「そしてワクチン二回目の副反応からも無事帰還!」
ヘルニーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「と言う訳であとは引っ越しの諸々が完了すればひとまず落ち着くねー」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆フォカ◆
レクス君達が聖都に来てからというもの、騒動が起きない日は無かったわ。
主神の神殿の突然の改築、近郊に現れた危険な魔物の討伐、神の罰と呼ばれた戦神の神殿の司祭の消失と話題に事欠かない日々。
私の狙い通りね。
となればうるさいのは私の上司。
「即刻主神の神殿を調査する必要がありますっ!!」
などと言っているけれど、既に調査を送っているのは明白。
それどころか他の神殿同様、既に失敗したであろう事は青筋の浮かんだその顔を見れば一目瞭然。
お陰で隣の席に座る私はうるさくて仕方ない。
「しかしどうするのだね? 君の子飼いの間者は捕らえられ、道端にこの者達深夜の神殿に入り込んだ強盗と張り紙を貼られて放り捨てられていたそうじゃないか」
「左様、アレではもう聖都での、いや近隣国での活動すら不可能でしょうな。世界の果ての僻地にでも行けばともかくね」
そんな上司に嫌味を言ったのは、政敵である他部署の上級司祭様達。
この辺りの口論はいつもの事なので聞き流す事にする。
私は彼等と違って巡礼の旅に参加しないといけないのだから、無意味な口論を聞いて体力と気力を消耗したくなんてない。
「ふむ……聖女フォカよ、君はどう思うね?」
と思っていたら突然私に水が向けられドキリとした。
え!? まさか私がレクス君達をけしかけた事がバレちゃいました!?
ギルドを出る時はちゃんと顔を隠して貰ったんですけど!?
「巡礼の旅は君とその仲間達が中核となる。各地を巡る君の意見を聞きたい」
ああそう言う事か。ビックリしたぁ……
「そうですね。主神の神殿の件は確かに気になりますが、私はあえて手を出さずに放置する方が良いかと思います」
「何だと!?」
部下である私に裏切られたと思ったのか、上司が凄い顔で睨んでくる。
いやいや、仮にも上級司祭達が一堂に会する会議なのだから、もっと感情を隠しましょうよ。
だから貴方は出世できないんですよ。
「主神の神殿は派手に動き過ぎました。お陰で他の神殿から一挙手一投足を凝視されている状態です。しかも毎晩のようにちょっかいをかけられているようですから、他の神殿との仲は良いとは言えないでしょう」
「つまり主神の神殿にはわざと目立ってもらい、我々の活動を上手く隠してもらおうと言う事だね」
「はい。巡礼の旅ともなれば我が神殿も他の神殿から警戒をされるのは当然の事。しかしそこに得体のしれない力を得た主神の神殿からの警戒まで増やす必要はありません。我々は手を出さず、無害な存在を演じて主神の神殿には他の神殿に集中してもらいましょう。お互いに力を削り合ってくれれば言う事はありませんから」
本音を言えば上司の先走った行動も止めたかったのだけれど、流石にそれを止めたら私が疑われてしまうから我慢。
幸い私とレクス君達は繋がっているから、大地母神の神殿、正しくは私個人は味方だと認識してくれている筈。
あとは上の人達に気付かれないように上手く負ければ良いだけのこと。
「まぁフォカちゃんの言う事も確かだね」
その時だった、会議室の中に鋭さすら感じる声が響き渡ったの。
特別大きな声でないにも関わらず、その声が聞こえた途端会議室の中の空気がヒヤリと冷え込んだ気すらする。
「神殿長……」
そう、声の主は我等が大地母神の神殿の最高権力者である神殿長だった。
「確かに得体のしれない相手にわざわざちょっかいをかけるのは下策だね。アタシ等は他の神殿が失敗する様を外から観察して主神の神殿の実力を測る事にするよ」
「「「「「はっ!!」」」」」
ただ一人、上司だけが不服そうだったけれど、神殿長の決定には逆らえない。
こうして会議は主神の神殿には手を出さず、巡礼の旅に専念する事が決定したのだった。
上司然り、全ての者が命令に従うとは限らないけれど、それでも多少はレクス君達の助けになる事でしょうね。
「そうそうフォカちゃん」
会議も終わり皆が部屋を去りつつある中、何故か神殿長が私に話しかけてきた。
うーん、何か嫌な予感がするわ。
この人が何の儲けにもならない話をするとは思えないし……
あといい加減フォカちゃん呼びは止めてもらいたい。
私ももういい年……あ、いえ、まだまだそんな年ね!
「はい、何でしょうか?」
「いやね、巡礼の旅に向かうアンタに激励をしてなかったと思ってさ」
「はぁ」
神殿長は私の目をじっとみつめると、こう告げた。
「平和を求めるのはウチの教義にも沿う事だから良い事だけどね、わざと負けたら承知しないよ!」
「は!? え!? それって!?」
「アタシからはそんだけだよ。あとは頑張りなフォカちゃん」
それだけ言うと神殿長は会議室から出て行ってしまったのだった。
◆
「……アレ、どこまで分かっていたのかしらね?」
会議室での出来事を思い出した私はつい独り言を呟いてしまう。
レクス君達の事を気付かれていたのか、それともそこまでは気づいていなくても私が神殿間のバランスを考えて手を抜くことを見抜いていたのか……
「どちらにせよ、手を抜くわけにはいかなくなったわね」
あの神殿長に見抜かれていた以上、ここで手を抜いたら後でどんなお仕置きが待っているとも知れないもの。
不本意だけど、本気で挑むしかないようね。
「それは良いんだが、俺達はいつまでこの格好でいればいいんだ?」
と、決意を新たにしていた私に、野太い声が語りかけてきた。
振り返ればそこには背中に二振りの大剣を背負った骨太の女性の姿が。
「巡礼の旅が終わるまでですよ、リソウ」
私は女性の問いかけに対し、自分が良く知るとある冒険者の名を呼びながら答える。
「今はその名前で呼ぶな」
名を呼ばれた女性が苦虫をかみつぶしたような顔で文句を言ってくる。
そう、彼女の正体はSランク冒険者として名高い双大牙のリソウその人。
「失礼しました、リリカちゃん」
改めて私はリソウを仮の名前で呼び直す。
ふふ、可愛らしい名前よね。
「……やっぱり名前で呼ぶのを止めてくれ」
けれどそれも嫌だったのか、リソウは名前を呼ぶなと言って不貞腐れてしまった。
我が儘ねぇ。
「だがな、テントの中でくらい元に戻ってもいいんじゃないのか? どうせ参加者の殆どが男なんだろ?」
そう言ってきた神経質そうな女性もまた私の良く知るSランク冒険者。
その名も天魔導ラミーズ。
「そういう訳にもいかないのよラミーズ。男が参加していたという証拠が出る事がマズいの」
「けどよぉ、これは知り合いには見せられねぇぜ。特に俺の愛する女達にはさ」
そして会話に最後に加わったのはやはり私と同じSランク冒険者のロディだった。
「そうですか? 寧ろ喜ばれそうですよロディ」
「勘弁してくれよ……」
そう、私は自分と知己を結んだSランク冒険者全員に協力を要請していた。
表向きの目的は自分が所属する神殿の戦力を補強する為、けれど本当の目的はレクス君に主神神殿の助っ人になってもらう為に。
レクス君だけを呼び出したら、Sランク冒険者に依頼を出しただけで何もさせずに帰すと言う不自然な状況になってしまう。
これでは主神神殿に謎の助っ人が現れた時、その正体がバレてしまいかねない。
そうなれば彼を呼び出した私の目的もバレてしまう。
けれどそこにリソウ達も居れば、私は知り合いのSランク冒険者全員に協力を要請したけれど、レクス君にだけは断られてしまったからそのまま帰ってしまったという不自然でない理屈が出来上がる訳。
勿論リソウ達に協力を要請したかったのも本音ではありますけどね。
何しろ他の神殿も巡礼の旅に勝つためにあらゆる手段を使ってライバルを蹴落としにかかるでしょうから。
恐らくは我が大地母神の神殿も同様に何かしらの策を立てている事でしょうね。
そして今、彼等は彼女等になっていた。
巡礼の旅に参加する為、レクス君同様性別を変える魔法の薬を飲んでもらったのだ。
……残念ながらあの子達の様に可愛さは得られなかったけれど。
「くっ、教会が管理する秘地への入場許可が対価でなければ!」
「希少な魔法資料をちらつかされなければ!」
リソウ達が何度目かの同じぼやきを呟きます。
私は彼等に仕事を受けて貰う為、かなり貴重なカードを何枚も使う事になった。
正直かなりの出費と借りを作る事になったけれど、その甲斐あって彼等は私に協力を約束してくれた。
「はぁ~、うっかり口説いたのが大地母神の神殿長の孫娘でなければ!」
「「いやそれは自業自得だろう」」
ただ一人、ロディだけは神殿長様の孫娘にちょっかいをかけてしまった事のフォローで仕事を受けてもらったのだけれどね。
確か冒険者志望だったあの子が偶々ロディに出会った事がきっかけなのよね。
何せ新人冒険者にとってSランクと言えば雲の上の英雄なんだもの。
それが異性ともなれば、憧れちゃうのも仕方ないと言えば仕方ないのかもね。
「い、いや~、ははは」
問題はその英雄から口説かれちゃったことなのよね。
そりゃあね、憧れの人から口説かれたら若い子は有頂天になっちゃうわよ。
しかも対人経験が少ない所為で社交辞令を本気で受け取っちゃったから話は厄介な事になっちゃって……
ロディ、この貸しは本当に高いんだからね。しっかり働いて貰うわよ!
「さっ、いつまでも愚痴ってないで働いて働いて。急いで野営の準備を終えないといつまでも眠れないわよ」
「「「とほほ~」」」
私達は今、他の参加者達と共に野営の準備をしていた。
魔物よけポーションが出回るようになったことで、体力が保つギリギリまで移動に時間を使えたのは大きい。
更に副次的な効果として、野営の安全度が高くなったのもありがたいわね。
新たに開発された便利な道具に感謝しながら街道脇でテントを設置していたその時……
ソレは現れた。
ゴウッ!!
「え?」
突然突風が吹いたかと思うと、何かが私達の横を通り過ぎた。
「な、何!?」
「大丈夫かフォカ!」
「え、ええ」
突然の異常事態にすぐにリソウ達が武器を構えて警戒する。
けれどソレはもうどこにもいなかった。
一瞬で私達の前から姿を消してしまったのだ。
「魔物の襲撃か!?」
「総員警戒態勢!」
他の参加者達も異常を察したのか、野営の準備を中断して周囲の警戒を始める。
「今、何かが物凄い勢いで傍を通り過ぎて行ったように思えたけど……」
「ああ、それも複数だったな」
流石はロディ、私にはそこまで分からなかったわ。
「……探査魔法を使ったが、近くに魔物反応はない。今の奴はとっくに俺の索敵範囲外に出たようだ」
ラミーズも魔法で周辺の警戒をしていたけれど、首を横に振って謎の存在を捕捉する事は出来なかったと報告してきた。
その姿はちょっと悔し気だ。
「どうする? 場所を変えて野営するか?」
ロディの提案に私は首を横に振る。
「いいえ、その必要はないわ。無駄な手間もかけたくないし、予定通りここで野宿するわ」
「良いのか? さっきの奴が戻ってくる危険もあるぜ?」
確かにそう考えるのが冒険者として当然なのは理解できる。
けれど私の冒険者の勘がその心配はないと告げていた。
「多分だけど……今通り過ぎたナニかは戻ってこないと思うわ……というか」
私は謎の存在が消えたであろう方角、つまりは次の町の方向を見ながらリソウ達に告げる。
「アレ、私達が良く知っている存在だった気がするのよね」
その姿を見た訳じゃない。けれどこの騒ぎに私は彼が起こす騒動と同じ空気を感じたのだ。
何より、今の突風は私達を攻撃してこなかった。
アレが本当に魔物ならば、今頃私達は何らかの手傷を負わされていただろうから。
「「「……」」」
同じ事を思ったのだろう。リソウ達は互いの顔を見合わせるとこくりと頷いてこちらに視線を戻して一言。
「「「確かに」」」
うん、他のSランク冒険者もそう思ったのなら間違いないわね。
「これ、本気を出しても負けそうな気がしてきたわ」
突風 ε=ε=ε=┌(o゜ェ゜)┘「先行する参加者達に早く追いつかないと!」
モフモフΣ(:3)∠)_「先行してた連中は街道脇に避難してて良かったな。もし街道で野営してたら大惨事に……」
Sランク一行_:(´д`」∠):_「「「「セーッフ!!」」」」
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