第233話 始まりの村
作者(:3)∠)_「ハッピーバースデー自分!!」
ヘルニー(:3)∠)_「と言う訳で本日は作者の誕生日です。いや本当にどうでも良いけど」
ヘルフィー(:3)∠)_「そこは祝ってあげましょうよ」
ヘルニー_(┐「ε;)_「しょうがないわね。ほら、きのこの山を一本」
作者ヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「祝う気持ちが欠片もないな!(モグモグ)」
ヘイフィー(:3)∠)_「と言う訳で本編です(何事もなかったかのように)」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
◆ノルブ◆
レクスさんと別れた僕達は最初の目的地であるイスラ村にやってきました。
「ええと、巡礼の旅でやってきた町や村ではそれぞれ村人の悩みを解決しないといけないんですよね?」
「あっ、はい。そうです」
レクスさん達がいつ合流するか分からないので、まずはこれからやる事をトレーシーさんに再確認です。
「おっしゃ、そんじゃ兄、姉貴が来る前に俺達で村人の悩みってのを解決しちまおうぜー! おーいそこのアンタ達! 何か困ってる事ねぇかー!」
と、言うや否や、さっそくジャイロ君が近くで何かを話し込んでいた村人達に突撃して行きました。
「おっ!? おう? な、何じゃ一体!?」
「俺達困ってる人を助けねぇといけねぇんだよ。なんか困ってる事ねぇか?」
「困って……ああ、巡礼の旅の参加者様か。ビックリしたわい」
僕達が巡礼の旅の参加者と気づいた村の方達は納得がいったと頷きます。
「いやー、いつもはバケモノみたいにゴツイ連中が押し寄せてくるから、アンタ等が参加者と分かんなかったよ」
「あ、あはは……」
それってつまりこの村の人達は巡礼の旅が開催されるたびにあの人達に困っている事は無いかと詰め寄られていたんですね。
「あの連中が押し寄せてくること自体が悩みなんじゃないかしら」
「そうなん……い、いやいやそんな事はないよ!」
あっ、村の方達が危うく頷くところでした。
「ともあれ参加者様から尋ねてくれたのは正直ありがたかったわい。悩み事ならある。というか今まさにそれをどうしようかと皆で悩んでおったところじゃ」
そう答えてくれたのは村の村長をしているお爺さんでした。
どうやら丁度分かりやすい悩み事があったみたいです。
とはいえ、神に仕える者が丁度いいなんて言うのは良くない事ですけれどね。
ともあれ僕達は村の人が抱える悩みを聞くことにしました。
「実はのう、この村からあっちの方角に暫く進むと森があるんじゃが……」
と言ってお爺さんは僕達が来た方向から少しズレた方角を指さします。
あれ? あっちの方向って確か……
「そこに薬草を採取に行った村の若いもんが、森に大量の魔物が住み着いておったと慌てて戻って来たんじゃ。幸い魔物に気付かれなんだお陰で、若い衆に怪我はなかったんじゃがの」
ああやっぱり、これはレクスさん達が向かった森の事ですね。
「森との距離を考えるといつ魔物が村にやって来るともしれん。じゃからどうしたもんかと悩んでおったのじゃよ」
確かに、いつ魔物に襲われるか分からないという状況は怖いでしょうね。
ですがそれだとちょっと気になる事があります。
「あの、巡礼の旅の参加者の方に相談はしなかったんですか?」
そう、それ程の難題なら、僕達の前に来た巡礼の旅の参加者に相談するのが当然だと思うんですが……
「それがの、頼もうと思った時にはもう誰もおらんかったんじゃ」
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
村が魔物に襲われているなんていう大問題を誰も解決せずに村を出て行ってしまったんですか!?
「それがのう、若い衆が森から戻ってきたのは、運悪く巡礼の旅の参加者様達が去った後だったんじゃよ」
「運が悪いにも程があるわね……」
確かに、巡礼の旅で受けれる筈の最大の恩恵をわずかな時間の差で受けれなかったと言うのは不運にも程があります。
「そんな訳での、村のもんとどうするか考えておったんじゃ。村を守る為に村の周囲に壁を作るか、村を捨てて別の町に逃げるかをな」
「村を!? 本気ですか!?」
村を捨てると言うのは相当の決断が必要です。
僕達が暮らしていた村もそうですが、村には皆が苦労して作り上げた家や畑があり、そう簡単に捨てる事は出来ないからです。
「無論別の町に移住するという意味ではないぞ。聖都に使いを出して魔物の討伐を頼むつもりじゃ。しかし聖都から討伐隊が来るまでに村が襲われる可能性が高いでの、逃げるか守りを固める必要があるんじゃ」
成る程、そう言う事でしたか。
ですが逃げるとしても街道を行く旅人を狙う魔物に襲われる心配があります。
大人の集団なら魔物も警戒するでしょうが、子供や老人、それに病人も居るでしょうから、数日の旅といえど危険と言えます。
そう考えると村の防衛を強化する方が力のない人達には良いかもしれません。
「ラクシ達が見に行ってるから心配ないと思うけど、道中の魔物を考えると森から出た魔物が心配よね。そう考えると村を守る為に頑丈な柵を作る必要があるか」
けれどミナさんの言葉に村長が否と首を横に振ります。
「いやいや、村のもんが見た魔物の数を考えるとちょっと頑丈な程度の柵なんぞでは防げんそうだ。もっと頑丈な、それこそ町を守るような壁でないと」
「ま、町を守るような壁!? そんなのかなり大規模な工事になりますよ!?」
「うむ、出来れば木ではなく、石かなにか頑丈な素材を使った壁で家と同じくらいの高さは欲しいの」
「しかも家と同じ高さの頑丈な壁ですってーっ!?」
村長の要求にトレーシーさんが絶叫するのも分からないでもありません。
何しろそれ程の壁を作るとなると……
「家と同じ高さの頑丈な壁だなんて、それこそ専門家が時間をかけて作るようなものですよ!? 素人の私達だけで作ろうとしたらどれだけかかるか……」
「っていうか、それもう砦の壁よね」
「ど、どうしましょう……」
トレーシーさんが困惑の顔でへたり込みます。
そうなりますよね。これはもう完全に旅の人間に出来る内容じゃありません。
しかし巡礼の旅では困った人の悩みを解決しなければいけません。
この状況で村の人達を見捨てる事は、巡礼の旅を棄権するに等しい行為でしょう。
……何より、一人の司祭として村の人達を見捨てる訳にもいきませんしね。
「やはりそうか……となると後は聖都か近くの町まで村のもんを護衛して貰って、その間に神殿に頼んで魔物を討伐してもらうしかないのう。そうなると荷物を纏める時間も……」
「いえ、それなら僕が何とか出来ると思います」
「「え?」」
僕の言葉に村長とトレーシーさんが目を丸くします。
「村を覆う広さの石の壁で良いんですよね?」
まず僕は事を成す前に、改めて村長に条件を確認します。
「う、うむ。じゃがそっちのお嬢ちゃんが言っていた通り、一人で出来る事ではないぞい?」
「そ、そうですよ! 村や町を守る大きくて頑丈な壁なんて、職人が何か月、何年もかけてやる仕事ですよ!?」
確かに、砦や大きな町なら職人や作業を手伝う工員の数が多いですから、比較的早く作る事が出来ます。
ですがこの村に居る職人の数はそう多くはないでしょう。僕達の暮らしていた村もそうでしたし。
村の人に手伝わせるにしても、専門家以外の人間では壁の出来にムラが発生します。
それでは魔物の攻撃から耐えきるのは難しいでしょう。
特に問題なのは、壁が出来たとしても、繋ぎとして使っている素材が完全に乾かないとその硬さを十全に発揮する事は出来ません。
ですが今の僕ならそれ等の問題を全て解決する事が出来るんです。
「まぁ見ていてください」
僕は村の全景を確認する為、飛行魔法で浮き上がります。
「と、飛んだぁーっ!?」
「ひ、人が空を飛んでおる!?」
「え!? ど、どうなっているの!?」
地上で村の人達が驚く声が聞こえてきて、ちょっとやってしまったなと思ってしまいましたが、まぁそれは後で反省しましょう。
今は村の防衛が先です。
……ふむふむ、村の広さはこんなものですか。
畑も入れて……今後の村の拡張を考えるともう少し余裕を持った方が良さそうですね。
「この大きさなら、エルフの郷よりは楽に出来そうですね。グランドサークルトーチカ!!」
僕が魔法を発動させると、村の周囲の地面が盛り上がり、そこから分厚い石の壁が突き出してきました。
「おぉぉぉぉぉぉ!?」
「な、なななな何が起きてるのぉぉぉぉ!?」
そして十分な高さを確保した事を確認すると僕は魔法を解除し、地上に降りてきました。
「壁の設置終わりました」
「「「「え?」」」」
「家くらいの高さの壁があれば良いんですよね? このくらいでどうですか?」
「う、うむ? い、良いんじゃ……ないかの?」
村長に確認すると、彼は村を覆う壁を見て問題ないと頷いてくださいました。
いやー、エルフの郷を防衛する際に魔法で防壁を作った経験が生きた感じですね。
規模が小さかったおかげで土の代わりに素材を石にしても魔力消費に大した差は出なかったのが助かりました。
「ただ出入口は必要なので、門が欲しい所ですね」
さすがに全てを石の壁で覆ってしまうと出入りが大変になってしまうので、街道に沿って入り口と出口の部分には壁に穴をあけておいたんです。
「おっしゃ、それじゃ俺が門に使う木を切って来るぜ!」
そう言うと今度はジャイロ君が魔法で何処かに飛んでいきました。
「「「「また飛んだぁーっ!?」」」」
「そうなると後は門を作る時間よね。でも頑丈で大きな門を作るのも手間だし……そうだ!」
と、出入り口を見ながら何かを考えていたミナさんも飛び上がります。
「「「「またまた飛んだ!?」」」」
「クレイコントロール!」
ミナさんが魔法を使うと村の外で何かが動く音が響いてきました。
「何をしたんですか?」
「壁の外周に堀を作ったのよ。あとはそこにハイドロウェーブ!!」
更にミナさんは村の周囲に魔法で大量の水を放ち始めました。
「「おぉぉぉぉっ!?」」
まるで横に向かって落ちて行く滝のような光景に村の人達が驚きの声を上げます。
「よし、これで村を守る水堀が出来たわ。あとはジャイ……ジャネットが木材を持ってくるのを待つだけね」
成る程、水堀ですか。
シンプルですが壁と合わせて使うには有効な組み合わせですね。
門が完成するまでの時間稼ぎにも使えますしね。
「ただいまーっと! こんなもんでどうよ?」
少しするとジャイロ君が何本もの木を担いで帰ってきました。
「なっ!? 木を担いでる!?」
「でけぇ!? しかも何本も担いでるぞ!?」
「どんだけ力持ちなんだ、あの嬢ちゃん!?」
年若い女の子が何本もの大木を担いで帰って来た姿に村の人達がまたも驚きの声をあげます。
うーん、昔の僕達もあんな風にレクスさんにおどろいていたんでしょうね。
今の自分が当たり前になった事でレクスさんの事言えなくなってますね……
「上出来ね。あとはこれを板にして、片側に紐を繋いで簡易な跳ね橋にすれば村を守る防壁はほぼ完成よ。ちゃんとした門が完成するまではこの跳ね橋が入り口を守る為の盾としても使えるしね」
「な、成る程のう……」
「あと堀は広めにそして深めに作っておいたから、村の人間が溺れないように気をつけてね」
「う、うむ。分かったぞい……」
そして村の大工さん達が分厚い簡易つり橋を完成させた頃、レクスさんとメグリさんが到着しました。
「お待たせ皆」
「遅いぜ兄、姉貴ー! 俺達だけで善行終わっちまったぜ」
「え? もう!? 凄いね皆!」
僕達が既に善行を終えたとジャイロ君が告げると、レクスさんが目を丸くして驚きました。
「へへっ、まぁな」
「どんな善行を積んだの?」
「それがよう……」
「その前にラクシ、森の方はどうだったの?」
ジャイロ君が村での出来事を得意げに語ろうとしたのですが、ミナさんが割り込んで森の状況の確認を優先しました。
「うん、あの人達が言っていた通り、魔物がそこそこ居たよ」
「ま、魔物が!? それは本当なのか!?」
森に魔物がいた事をレクスさんが確認したと言うと、村長さんが目を丸くして驚きの声をあげました。
あれ? 村長さんは森についてもう知ってた筈ですが?
「ええ、でも大した数じゃなかったので、僕達で倒しておきました。これが証拠の品です」
そんな風にあっさりと答えたレクスさんは魔法の袋から大量の魔物の死体を取り出して積み上げます。
「「「「ほげぇーっ!?」」」」
あっと言う間に山となった魔物の死体にトレーシーさんと村の方達が腰を抜かしてへたり込みました。
いやまぁ、確かにいきなりあんなものを見せられたら驚くところが多すぎてビックリしちゃいますよね。
「あと、村に来るまでに発見した魔物もついでに退治しておいたので安心してください!」
「は、はひ……あ、ありがとうございますですじゃ……」
積み上げた魔物の死体を再び魔法の袋に収納すると、レクスさんはトレーシーさんに向き直ります。
「トレーシーさん、次の目的地はどのくらいの距離なんですか?」
「え? あ、はい。次の目的地のカスガルの町は乗合馬車で半日くらいの距離ですね。でも今からだと到着は夜中になって危険ですので、今夜は村で泊まって、明日の朝イチで出発するべきかと」
確かにそろそろ陽が落ちてきましたし、この村で一泊するべきかもしれませんね。
「けどそれだと先に行った連中に離されちまうぜ? 連中も俺達とそこまで距離が離れてる訳じゃねぇだろうし、アイツ等も夜中に着くつもりなんじゃねぇのか?」
「ですが町の外を夜に移動するのは危険ですよ。他の神殿の方は沢山の方達で参加していますから無理が効くんでしょうけど、私達はたったの7人なんですよ?」
確かに、町の外に出る際に人数は重要な要素です。
知り合い少人数で街道を移動するのと、見知らぬ大多数の旅人達と出発時間を合わせて移動するのでは近づいてくる魔物の数が違いますからね。
「いえ、どうやら魔物よけポーションを使って次の町まで一気に進むみたいよ」
と、これまで黙っていたリリエラさんが会話に加わってきました。
魔物よけポーションと言えば、確かレクスさんが困窮する村を救うために生産を委託した品だと聞いています。
あれのお陰で沢山の人が安全に旅をする事が出来るようになったと一時は町中の話題になっていたんですよね。
「リリエラ、何でそんな事知ってるの?」
リリエラさんの情報にミナさんが疑問を抱くと、リリエラさんはにこりと笑みを浮かべて答えました。
「皆が善行を積んでる間に、私は情報収集をしていたのよ。そしたら他の参加者は魔物よけのポーションを使って夜通し走るつもりだって分かったの。多分私達がこの村で一泊することを想定して時間を稼ぐつもりなんでしょうね。普通は魔物に襲われやすい夜は町に泊まるか、外で野宿するにしても結界を張って動けないから」
成る程、確かに夜に移動する旅人は少ないですからね。
僕達がこの村で足止めされている間に少しでも距離を稼いでおくつもりなのでしょう。
そして他の参加者に後れを取らない為、いえそちらが本当の理由なのでしょうね。
「魔物よけポーションですか。あんな高い品ウチではとても用意できませんよ」
他の神殿の参加者が魔物よけポーションを使うと聞いて、トレーシーさんがため息をついて肩を落としました。
「魔物よけポーションが高い? あれはそんな高くない筈ですけど?」
「レ、ラクシ、商品の価格には輸送費もかかる」
首をかしげて不思議がるレクスさんにメグリさんが輸送費を加味していないと指摘します。
「ああ、そういう事ですか。でもそれなら僕達も急いだほうが良いですね」
「ちょっ、ラクシさん! だから今から行くのは危険ですって! 私達には魔物よけポーションもないんですよ!?」
今からでも進むべきだと言うレクスさんにトレーシーさんが止めるべきだと反対します。
「でもここで足止めされるといつまでも追いつけません。ここは次の町まで向かった方がいいでしょう。幸い、乗合馬車で半日程度の距離なら、僕達ならもっと早くたどり着けますし」
「え?」
「あれ? トレーシーさんはご存じなかったんですか? 乗合馬車って乗り心地を重視しますから普通の馬車よりもかなり遅いんですよ?」
「え? 乗合馬車が乗り心地を重視?」
「ええ、普通の馬車の半分くらいの速さですね。でも僕達なら身体強化魔法で馬車よりも速く走る事が出来るので、大体1/4の時間で着くと思いますよ」
「よ、1/4!?」
乗合馬車で半日の距離がたった1/4の時間で到着すると聞いて、トレーシーさんが驚きの声をあげます。
ええ、その気持ち分かりますよ。
「じゃあ行こう皆!」
「おうっ!」
「そうね、出来ればいい宿に泊まりたいものね」
「いつまでも先行されたままってのも気に入らないしね」
「ん、追い抜く」
「ええと、僕はちょっと自信ないんですけど、頑張ってみますね……」
正直、僕は皆よりも遅いのと防壁を作った事で魔力をそれなりに使ったのが心配なんですけど……
「ああ、そう言えば今日は朝からずっと身体強化魔法を使ってますもんね。じゃあこれ、皆の分のマナポーションです!」
「「「「「う゛っ」」」」」
レクスさんが取り出したマナポーションを見た瞬間、全員の口から何とも言えない呻きが漏れました。
ああ、思い出してしまいました、あの地獄の特訓の日々を……
「きょ、強制回復怖い……」
「い、いや、もう回復魔法は要らないから!」
「あわわわわ……」
「…………」
「え? え? どうしたんですか皆さん?」
ただ一人、事情を知らないトレーシーさんだけが僕達を見て困惑していました。
「さぁ、急ぎましょう」
レクスさんに強引にマナポーションを握らされた僕達は、文字通り苦虫をかみつぶしたような顔になってマナポーションを飲み干しました。
「うう、あの記憶が蘇ってくる……」
つらい思い出ごとマナポーションを飲み干した事で、不本意ですが魔力は回復しました。
何か別のものがごっそり減った気がしますが。
「じゃあ皆さん行きましょうか!」
「「「「「「お、おおー!」」」」」」
「フキュゥ!」
こうして僕達は次の町に向かって行ったのでした。
……うう、こんな事ならこの村で一泊した方が良かったかもしれませんね。
◆村長◆
「「「「……」」」」
皆声も出なかった。
長年巡礼の旅が続けられてきた事で、儂等はそれぞれの神殿から利益を得る代わりに巡礼の旅での便宜を図るようになっていた。
具体的には旅の試練である善行を簡単に終わらせる為、簡単な悩みを用意しておけというものじゃった。
まぁ昨今では他の神殿からも同じような便宜を求められておったので、うちの村で時間をかけて善行を行うものはおらんくなっておった。
勿論村のもんはその事を知らん。
知っておるのは村長である儂と一部の長老衆だけじゃ。
神殿の方々がそのような不正をしていると知られるのはマズいでの。
じゃが今回はそれだけではなく、商売神様の司祭様より自分達の後からくる参加者に無理難題を言って時間を稼げとの命令を受けておった。
そしてあらかじめ命じられていた通り、魔物から村を守る為の壁を作ってくれと儂は頼んだのじゃ。
まさか本当に魔物が森に住みついておったとは知らんかったが……
じゃがその結果出来たのは予想をはるかに超える巨大な壁。
それも文句のつけようもない程に頑丈な壁じゃった。しかも水堀付きじゃ。
「信じられん……」
これは本当に現実なのかと目の前の壁に触れるとひやりと冷たい石の感触がする。
やはり幻ではなく本物じゃった。
「あの方達は一体何者じゃったんじゃ?」
「空も飛んでおったし、もしかして本物の天使様だったんじゃ?」
何を馬鹿な事を、とは思えなんだ。
何しろ人が空を飛んだかと思ったら、地面から岩の壁が生えてきたんじゃからな。
この出来事が奇跡でなくて一体なんだと言うのか……
「本当にあの方々がそうなの……か?」
儂等は呆然としながらあの方達が去っていった方角を見つめ、気が付けば誰ともなしに跪いて手を合わせておった。
「「「ははぁー……」」」」
ドラスレ(இ ω இ`。)「うっぷ、もうマナポーション飲みたくない……」
村長(:3)∠)_「聖女様じゃ! 聖女様が村を守ってくださったのじゃーっ!!」
モフモフΣ(:3)∠)_「聖女認定二人目きましたー!」
ノルブ_:(´д`」∠):_「聖女じゃないですよ!?」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




